CNNによればパキスタン首都イスラマバードより北へ60kmにあるアボッタバードに潜伏中だった国際テロ組織アルカイダ指導者のオサマビンラディン氏を米海軍特殊部隊が急襲、40分間の戦闘の末射殺しました。
9.11同時多発テロから今年で十年、一時は死亡説も流れたオサマビンラディン氏が遂に発見され、射殺されました。世界貿易センタービルの旅客機自爆テロによる倒壊とアフガニスタン空爆開始、そしてイラク侵攻によるイラク戦争、十年間に渡り世界の耳目を集めた事案は一つの区切りを迎えた、というところでしょうか。
オサマビンラディン氏は9.11アメリカ本土同時多発テロの首謀者とされ、アルカイダは反米イスラム原理主義組織として繰り返しテロ攻撃を行い、多くの犠牲者が出ています。米国は2001年以来十年間に渡りオサマビンラディン氏が潜伏するアフガニスタンへ駐留を続け、アルカイダを支持するイスラム原理主義組織タリバンとの戦闘を継続し、今日に至ります。
潜伏先としてアフガニスタン山間部の洞窟地帯に隠れているとの見解が大勢を占めていたのですが、隣国パキスタンの首都イスラマバード近郊の住宅街に2005年建設された邸宅に置いて生活していたようで、側近の動向を米情報機関が長期間にわたり監視追跡、今回の急襲となったようです。ビンラディン氏射殺により国際テロ組織アルカイダは指導者を失いましたが、第二指導者は健在で残念ながらテロ行動が終息する見通しにはありません。
日本も自民党時代には海上阻止行動給油支援として部隊を派遣していましたが、ISAF等のアフガニスタン派遣はオバマ大統領が米軍部隊撤退時期を明示したため、イスラム原理組織タリバンは持久戦を展開しており、山間部地域を中心に強い勢力を維持しているのが実情。
アルカイダ指導者の殺害により終息は期待したいのですが、治安作戦は稚拙さやアフガニスタンの統治機構における構造的問題も相まって見通しは明るくは無く、タリバンが勢力をかつてのように増大させた場合にはアフガニスタンが破綻国家に陥り、再度テロの温床を提供する可能性がありますので油断はできません。
実際のところ、アフガニスタンを始め中央アジア中東諸国ではアメリカや国際治安組織の駐留により安定がもたらされるのならば支持する傾向が世論調査などにより繰り返し確認されており、タリバンのイスラム原理主義、コーラン以前の世界への回帰を促す運動に対しては懐疑的な姿勢を示しています。このため、期間は区切っていたとしても治安回復の努力は続けねばならないでしょう。
他方で、警察庁はオサマビンラディン氏殺害によりアルカイダによる日本国内における米軍基地への報復攻撃が行われる可能性があるとして、対策本部を設置、米軍基地警備の強化や空港などでの警戒を厳重にしてテロリストの日本国内での活動を未然に防ぐべく対応しています。
HARUNA
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