北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

特集:平成27年度防衛予算概算要求概要⑩・・・新装備開発、コンパクト護衛艦Ⅱ

2014-09-17 21:02:26 | 防衛・安全保障

◆大型でも小型でも一隻は一隻という概念からの脱却

 特集平成27年度防衛予算概算要求概要、今回で10回を迎えましたが、前回に続いて新装備開発コンパクト護衛艦、この話題を特集しましょう。

Gimg_5906  平成33年度までに完成のコンパクト護衛艦は従来の護衛艦大型化の潮流にどう影響を及ぼすか。満載排水量2900tの護衛艦あぶくま型、満載排水量19000tのヘリコプター搭載護衛艦ひゅうが型、結局は護衛艦定数の枠組みでは同じ一隻であり、1995年以降、限られた護衛艦ならば大型護衛艦の方が航続距離や搭載センサー、それに航空機運用能力等の面で利点が大きい、というかたちで大型化に志向してゆきました。

Img_5758  そこで、概ね2000t台の満載排水量で推移し、2900tの護衛艦あぶくま型でさえも小型護衛艦としては大型に分類されると呼ばれた時代から、護衛艦隊用の護衛艦、護衛艦隊は太平洋上での作戦行動を念頭に航続距離を算定していたため、大西洋を基準とするNATOの水上戦闘艦よりも航続距離の大きさが求められていたもので、大きかったのですが。

Img_9165  地方隊へ護衛艦隊の大型護衛艦、一挙に護衛艦はつゆき型の満載排水量4000tから4200t、続いて護衛艦あさぎり型が護衛艦隊から新型の護衛艦たかなみ型に押し出される形となり地方隊配備が展望、満載排水量4800tの護衛艦が出されつつある中、小型護衛艦の沿岸海域での対潜哨戒などの運用特性が顧みられなくなる状況となったわけです。

Himg_0213  その後、護衛艦は地方隊に護衛隊を置き護衛艦隊とは外洋か近海か、という任務区分を、地方隊を運用責任指揮官とし、護衛艦隊を練度担任指揮官とする、指揮と訓練の分化に関する改編が行われ、地方隊配備の護衛艦もすべて自衛艦隊司令官の隷下に編入されました。ここで、大型護衛艦と小型護衛艦の枠ではなく、護衛艦の特性と練度に見合った運用へと転換され、今にいたるところです。

Img_9093  しかし、このなかにあって、コンパクト護衛艦という概念が模索され始めたわけで、その背景に或るものをどう考えるべきなのか。ひとつは大型化を重ね、あきづき型護衛艦にいたっては汎用護衛艦枠でありながら満載排水量は7000tに達している状況です。大型艦は航続距離が大きいのですが、維持費と建造費もやはりまた大きい。

Gimg_2725  この大型艦が艦艇建造の一種の指針と言いますか、基準と言いますか、既定路線となっている現状からの一時的な脱却を目指し、護衛艦隊用汎用護衛艦と同程度の能力を果たせる能力がコンパクト護衛艦に求められているのか。もしくは地方隊用護衛艦の再来としてかなり性能を絞って運用する前提であるのか、関心は尽きません。

Jimg_4492  あらたな護衛艦用レーダ一ステムの研究開発、平成27年度防衛予算概算要求概要には”新たな護衛艦用レーダシステムの研究(59億円)対空、対水上レーダ用等の空中線(アンテナ)を共用化し、小型化を図るとともに、各種センサの連携により、性能を向上した新たな護衛艦用レーダシステムの研究を実施”、とあります。

Cimg_6402  平成33年度に就役するという計画ですので、建造は平成30年度あたりから始めなければならず、これは言い換えればレーダーシステムなどは既に既存の管制した技術を構成要素としまして、評価試験などを含め28年度から開始できる、という程度でなければ間に合わないでしょう。

Eimg_0453  レーダシステムの研究(イメージ)、としてその概略は示されているのですが、概念図では従来の護衛艦が対水上レーダ装置と対空レーダ装置に電子妨害装置を別々に装備しているのに対し、新たな護衛艦(イメージ)ではこれら三系統の機能を単一レーダーに集約することを目指しています。また、解説では機能を集約化する、という表現も用いられていて、単一塔型マストへの集約ではなくレーダーアンテナの共通化という視点が見て取れます。

Kimg_8695  この点ですが、あきづき型のFCS-3のような印象を持つと共に、除籍された護衛艦いしかり、及びその派生型で拡大型の護衛艦ゆうばり型が対水上レーダを対空レーダ兼用と、建造費の節減の視点から実施していたことを思い出します、また、除籍された護衛艦いしかり、及びその派生型で拡大型の護衛艦ゆうばり型は共に76mm艦砲用の射撃指揮装置も対空捜索用に利用されていました。

Iimg_2346_1  もちろん、専用のレーダ装置の性能と比較すれば当然と言えば当然なのですけれども、ゆうばり型の方式は必ずしも効果的とは言えず、後方警備ではなくコンパクト護衛艦の任務が第一線での警戒監視を行うことを考えれば専用のレーダ装置が必要であり、結果的に新規開発を行う事となったのでしょう。コンパクト護衛艦は新防衛大綱を見る限り10隻以上建造される見通しで、その基幹装備となる本装備は注目すべき事例でしょう。

Img_0965  一方で、性能をある程度絞ったとしても、現在考えられているコンパクト護衛艦は満載排水量で4000t程度、これはOHペリー級やノックス級といったフリゲイトよりも緒方で、韓国海軍の大型駆逐艦クワンデドデワン級よりもやや大型で、イギリスの23型フリゲイトと比較しても同程度、それによりコンパクトであるために性能もそこそこ、という発想で観る事は必ずしも高くありません。

Img_7290  後述する無人機と共に、海上自衛隊の実任務に在って大きな負担となっている南西諸島警戒任務はもちろん、ソマリア沖海賊対処任務のような遠隔地での任務にも、特に3000tを越えれば世界では大型水上戦闘艦に区分されるといわれていますので、船体規模や航続距離などの面からは充分対応できる規模でしょう。

Himg_0621  コンパクト、と言いましてもそれは海上自衛隊の護衛艦全体が大型化している故の論理で、満載排水量3000tを越えれば大型水上戦闘艦と区分される今日の世界では大型に部類します、アフリカ程度であればいけないという距離ではありません。海賊対処、こちらが同時に護衛艦隊護衛隊群の汎用護衛艦の任務や訓練体系に無視できない負担となっていますので、コンパクト護衛艦に代行できるのならば、それは海上自衛隊全般の練度にも好影響をもたらすことは間違いありません。

北大路機関:はるな

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