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北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

特集:平成27年度防衛予算概算要求概要⑨・・・新装備開発、コンパクト護衛艦Ⅰ

2014-09-16 21:49:16 | 防衛・安全保障

◆護衛艦の近代化を目指す施策

 新章、平成27年度防衛予算概算要求概要、重要施策に続いて新装備開発の視点から見てみましょう。

Eimg_4102_1  海上自衛隊は平成33年度までの就役へ、コンパクト護衛艦の装備化に向けて技術研究を進めてゆきます。しかし、コンパクト護衛艦そのものの建造は平成27年度防衛予算概算要求概要をみる限り盛り込まれておらず、技術研究が行われます。新しい防衛計画の大綱では護衛案定数は増大することとなっていますが、現状の護衛艦は新造の予算を十分確保できず延命で対応しており、コンパクト護衛艦の建造が求められるところ。

Dimg_3036  このコンパクト護衛艦の建造に向けた技術研究は、船体研究として多様な任務対応とコンパクト化の両立を目指す研究に3億円、あらたな護衛艦用レーダ一ステムの研究開発に59億円、艦載型無人航空機の運用要領に関する調査に100万円が要求されています。護衛艦は単体装備ではなく各種装備を集積させたシステムとしての装備ですので時間を要することはある意味仕方がありません。

Img_7167i  船体研究として多様な任務対応とコンパクト化の両立を目指す研究について、平成27年度防衛予算概算要求概要、に記されているのは以下の通り”多様な任務への対応能力の向上と船体のコンパクト化を両立させた新たな護衛艦の建造に向けた調査研究(3億円)新たな護衛艦の建造に向けて、性能等を確定させるために必要となる調査研究を実施”、以上です。

Img_8847  併せて平成27年度防衛予算概算要求概要にはコンパクト護衛艦について”新たな護衛艦(イメージ)”として概念図が示されていますが、船体はモノハル型の従来構造、上部構造物はステルス性を強調し構造物中央に多機能レーダを搭載、船体全部に艦砲と恐らく各種ミサイルを搭載していると考えられる垂直発射装置VLSを配置、船体後部は飛行甲板で航空機を搭載しつつ、格納庫上にCIWSと思われる装備を有しています。

Eimg_0037  コンパクト護衛艦は当初の見解で米海軍の沿岸海域戦闘艦LCSのようなものを想定しているのでは、と分析され、当方もインディペンデンス級やフリーダム級LCSのようなを想像していたのですが、LCSは掃海任務の一部や装甲車両などの輸送を任務に含めており多機能性、特に戦力投射を視野に入れているものですけれども、海上自衛隊のコンパクト護衛艦は概念図を見る限りではこうしたものは含まれていません。

Img_1516  一部には満載排水量で4000t程度を想定しているのではないか、とも言われるところですが平成27年度防衛予算概算要求概要をみる限り規模に関する詳述はありません。しかし、コンパクト護衛艦そのものにどういった任務を想定するのか、多様な任務への対応能力の向上、としか記されていませんので現状なんともいえません。逆説的に、こうした試行錯誤があるからこそ研究が行われているのでしょう。しかし平成33年度までの就役を考えれば時間は少ない。

Mimg_7178  ともあれ、米海軍のLCSに範をとった護衛艦を建造する、としたコンパクト護衛艦建造の際の一連の報道がありましたが、米海軍のLCS計画が設計面と建造面及び運用面と、単純に全部が非常な困難に直面し、高コスト化に対し性能は思うほどではなく、設計段階に充分な技術試験をおこなったにもかかわらず機関のウォータージェットや船体構造の腐食という問題が出ています。

Img_14527  ほかにも、期待されたほど換装可能なモジュールシステムの汎用性や即応的なモジュールの換装が不可能である点、モジュールを転換することで多機能性を誇る年ながらも平時の補完モジュールの管理費用や乗員の訓練体系など、問題が運用するにつれて山積し続けているところ。

Gimg_0134  結果、逆に用途を絞らなければ対応できないという状況が報じられていた中、海上自衛隊が同様の艦艇を導入する、読み取り方によっては高いライセンス生産費用を、これは開発が難航したため開発費が膨れたためなのですが、支払って米海軍の艦艇を導入するかもしれない、と危惧された命題が杞憂であったことは朗報と言えるところです。

Gimg_4314_1  しかし、コンパクト護衛艦について、その任務範囲や航続距離など運用面でどういった護衛艦を求めるのか、未知数な部分があります。海上自衛隊は1995年の防衛大綱快晴により護衛艦定数が約60隻から約50隻に縮小され、この時を契機に2010年代まで規模縮小が進みました。

Gimg_26741  しかしその反面、護衛艦定数が60隻とされていた時代には、沿岸防備に当たる地方隊用の小型護衛艦を30隻と、機動運用に当たる護衛艦隊用の大型護衛艦を32隻、更に旗艦1隻という、大型護衛艦と小型護衛案の棲み分けが明確化していたのですが、護衛艦定数約50隻への転換と共に地方隊用護衛艦が護衛艦あぶくま型を最後に建造終了しています。

Mimg_1330  かわって、護衛艦隊に配備されていた護衛艦はつゆき型が、新型護衛艦むらさめ型の配備開始に押し出される形で地方隊へ配備が開始、海上自衛隊護衛艦全般の大型化へと舵を切る事となりました。このつながりから、いかに方向転換できるのか、ここがコンパクト護衛艦の建造、その目的、というところでしょう。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (2)
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