◆新編!与那国島第303沿岸監視隊
奄美大島への駐屯準備が来年度概算要求に含まれていましたが、与那国にはいよいよ駐屯地と沿岸監視隊新編予算が要求されています。
与那国島駐屯第303沿岸監視隊の新編配置へ継続と宿舎整備、平成27年度防衛予算概算要求概要には”第303沿岸監視隊(仮称)の新編、平素からの常続監視に必要な体制を整備し、付近を航行・飛行する艦船や航空機の沿岸監視を担う部隊を与那国島に新編・配置”と明示されていました。要求通り承認されたならば、那覇駐屯地に沿岸監視隊が編制され、新駐屯地に移駐することになるのでしょう。
第303沿岸監視隊は数十人規模の監視部隊で戦闘を念頭に置くのではなく監視を行い着上陸兆候があった際には通報を行うと共に、離島に陸上自衛隊が駐屯しているという事実を以て着上陸を行う勢力に対し無血占領はあり得ず上陸すれば確実に自衛隊との遭遇が、という事実を突き付け、抑止力とすることが目的に或るのでしょう。
こうした沿岸監視隊配置は北海道においても冷戦時代に実施されてきました。このほか、対馬の対馬警備隊のように、警備部隊、対馬警備隊は本部管理中隊と一個普通科中隊を置き、本部管理中隊の指揮通信機能を以て有事の際に連隊規模の増援部隊を指揮するという方式を採っているのですが、こうした方式もあります。
第303沿岸監視隊(仮称)の新編は、2009年頃から検討されていたもので、用地取得などでは試行錯誤も交わされたようですが、報道等を見る限り警察官数名のみという国境の離島に自衛隊が駐屯することとなり、2009年以来の検討と用地取得に関する準備が漸く新編と駐屯、という形で実現したもの。
なお、第303沿岸監視隊(仮称)の新編ですが、分屯地となるのか駐屯地となるのかは発表されていません。駐屯地とする場合少々距離はありますが最寄りの駐屯地は沖縄本島の那覇駐屯地になります、しかしこれが遠すぎるというのでしたら分屯地ではなく駐屯地とし、駐屯地業務隊を置くなど比較的規模の大きな施設となる事が予想されます。
平成27年度防衛予算概算要求概要には”与那国島への沿岸監視部隊の配置(イメージ)”として概念図が示されているのですが、図にはグラウンドを軸に十数個の隊舎等が描かれています。これは沿岸監視隊のみの駐屯地として考えるには少々大袈裟なもので、防衛省では移動警戒隊の展開なども想定した施設となる事を明示しています。
沿岸監視隊は第301沿岸監視隊が稚内分屯地及び礼文分屯地に、第302沿岸監視隊が標津分屯地に配置され、第302沿岸監視隊については羅臼に分室を置き情報連携に努めています。従って、固定の監視装置以外に移動監視班を置いて、必要に応じ第303沿岸監視隊から周辺の離島、西表島などに人員を配置する母体となる事を想定しているのかもしれません。
この点でたとえば礼文島分屯基地などには稚内分屯基地の第301沿岸監視隊の分遣隊が展開していて、十数名から二十数名が分屯し対応しているのですが、海峡監視等に専念するべく陸上自衛隊施設としては例外的に歩哨など営門の警備をおかず防犯カメラなどで対応していますし給食業務は完全民間委託と伝えられます。
礼文島の事例があるですから、第303沿岸監視隊は周辺離島との連携を考えていることは考えられます。また、稚内分屯地のように陸海空の共同施設とする方式が採用される可能性があります。もっとも、駐屯地としたのは近傍の駐屯地が遙か那覇駐屯地であるため、業務分遣隊派遣などの手間を考えた際に独自の駐屯地として完結させた、という理由もあるのですが、ね。
稚内分屯地は陸上自衛隊稚内分屯地に第301沿岸監視隊、第439会計隊、第301基地通信中隊稚内派遣隊、名寄駐屯地業務隊稚内管理班を置き、海上自衛隊部隊が稚内基地として大湊地方隊稚内基地分遣隊を、航空自衛隊稚内分屯基地として第18警戒隊と作戦情報隊電波情報収集群を、更に情報本部が電波部東千歳通信所稚内分遣班を置いています。
与那国島駐屯第303沿岸監視隊、分屯地のイメージ図等を見た限りは、特に建物の数などで稚内分屯地と似た規模の印象を受けないでもありません。駐屯地にはほかに沿岸監視レーダーを丘陵地帯に設置するという計画もあり、第二廠舎という扱いになるのでしょう。
一方で、那覇駐屯地の第15旅団について、第15ヘリコプター隊が既に創設され、輸送ヘリコプター8機と多用途ヘリコプター8機という比較的充実した航空機を有し、地対空ミサイルなどを充実、普通科連隊も重迫撃砲などを装備し遠からず対戦車誘導弾などについても造成されることとなるでしょう。
しかし、第15旅団は将来的にもう一個の普通科連隊を配置する構想が指摘され、併せて先島諸島へも警備隊の駐屯などの旅団機能強化などが想定されています。従って、南西諸島への陸上部隊の配置ですが、奄美大島配置が一段落したのちには第15旅団の増強改編を如何に行うのか、という難題が待っています。
特に宮古島への陸上自衛隊駐屯施設の検討が北朝鮮ミサイル危機における沖縄救援隊派遣以来現実味を帯びており、近傍の石垣島とともに八重山諸島への警備隊配置なども2006年の琉球新報記事等を筆頭に報じられた事例があり、実現すれば南西諸島の防備体制が漸く点と線で繋がります。他方で南九州を防衛警備管区とする北熊本第8師団は海兵隊との連携や警備管区に含まれる鹿児島県島嶼部での防衛力強化を模索中です。南西諸島の防衛強化は、このあたりまで進んだところで漸くひと段落、となるのでしょう。
北大路機関:はるな
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