◆戦域情報優位は戦域戦闘優位へ直結
特集、平成27年度防衛予算概算要求概要の特集記事は、技術開発、ネットワーク型戦闘対応について引き続き。
指揮統制・情報通信体制の整備が目指すもの、陸上自衛隊全般の情報通信指揮統制能力の向上と共に米軍との情報連携が行われるよう技術開発を盛り込んだ概算要求は、当然陸海空自衛隊部内での情報共有もこれまで進められたものに加えやはりより大きく前進することと成ります。
情報優位は戦域優位、この視点は我々が戦史などを俯瞰する際にあらかじめ戦域情報や彼我勢力図等を共有知識として得たうえで、そのための必要な戦術や兵站情報を検討するため、見過ごされがちですが、実際の千医事情報は当事者の間で決して十分得られていない、ということが世界戦史上多々あったのです。これを戦場の霧、と表現することもある。
具体的には“指揮・統制・通信機能の整備・陸上自衛隊へのリンク機能導入に係る調査・研究(0.4億円)陸・海・空自衛隊のリアルタイムによる目標情報等の共有を実現するため、主に陸上自衛隊地対艦誘導弾システムへのリンク機能導入に係る調査・研究費を計上”、と示されていましたが。
これは具体的な事例として地対艦ミサイルに関する情報を共有するものとして提示されていました。12式地対艦誘導弾システムなどは導入が開始されましたが現在は標定装置を陸上から索敵させるか、電子隊による海上電子情報を集約し標定するほかありませんでした。
ここに陸海空自衛隊間のデータリンク能力を付与することで遠距離目標への対処能力を高めることが盛り込まれる、ということ。 地対艦誘導弾システムは沿岸からの照準や電子隊による標定に寄っても確かに確保できる運用能力を持っているのですが、此処が強化される。
現代戦は敵の正確な位置さえ正確に捕捉できればその時点で結果が来ます、問題は探知の精度と評価の精度、航空自衛隊戦闘機や海上自衛隊哨戒機に海上自衛隊水上戦闘艦艇や潜水艦からの情報を得たほうが確実に目標を補足しているため位置情報の精度も高いことは理解できるでしょう。
この部分をデータリンクにより実現するのですが、併せて航空自衛隊支援戦闘機や海上自衛隊哨戒機に護衛艦やミサイル艇と潜水艦も対艦誘導弾の運搬手段であるため、この攻撃に陸上自衛隊の地対艦ミサイル連隊が加わることで完全な飽和攻撃を行うことが可能となります。
更に“米軍委託教育による人材育成(0.8億円)リンク機能を運用する隊員を育成するための人材育成費を計上”、と平成27年度防衛予算概算要求概要には盛り込まれていますが、三軍統合運用という、この分野での米軍の先進的な要素を米軍から学ぶことがしめされた、というわけです。
装備面の具体的施策として地対艦ミサイルがあげられていますが、日米情報共有の面から併せますともう一つおおきな意味を有することに行づかれるでしょう、即ちこれは目標脅威情報、特に海上目標についても日米が情報を共有することとなり、米軍の索敵情報に依拠した運用が可能となる。
具体的には海上自衛隊は米海軍とのデータリンクを既にリンク16など既存のデータリンク能力により整備しています、この情報を陸海空で共有することになるため、米軍の監視情報を元に陸上自衛隊が地対艦ミサイルを運用出来る事を意味し、その大きな射程を充分に行かせることになるわけです。
他方、脱線は承知で現在の集団的自衛権論争は特に直接の銃撃や砲撃などを交えた戦闘での自衛権にばかり注目されており、情報面の連携をどの程度盛り込むのかの議論がなされていません、この点についてですが現代戦闘での情報の重要性は改めて指摘するまでも無い。
即ち、具体的運用の段階まで賛否の議論を国会等がその必要性を認識せず推移しているように感じ、違和感を覚えます。このほか情報優位への取り組みには例えば施策に“宇宙空間における対応、各種人工衛星を活用した情報収集能力や指揮統制・情報通信能力を強化するほか、宇宙空間の安定的利用の確保のための取組を実施する。”、という部分が盛り込まれていることなども無視できません。
他方で、情報優位に関する運用は、上記の技術開発と共に平成27年度防衛予算概算要求概要に盛り込まれた幾つかの施策により強化されます、特に装備面での工場に頼る部分があり、上記部分は多分にソフトウェアに依拠するものとすればハードウェアでの向上部分がある、ということ。
特に“新たな早期警戒(管制)機の取得【機種選定中】南西地域をはじめとする周辺空域の警戒監視能力の強化のため、新たな早期警戒管制機又は早期警戒機を取得”や“滞空型無人機の取得【機種選定中】広域における常続監視能力の強化のため、滞空型無人機を取得”、などの施策も大きく寄与するでしょう。
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