◆課題は平成30年代までの艦艇勢力維持
コンパクト護衛艦、その位置づけと装備体系への影響などに視点を充てたのが前回ですが、今回は艦載機の新機軸と平成30年代の就役までの流れについて。
艦載型無人航空機の運用要領に関する調査、平成27年度防衛予算概算要求概要の説明をみますと各種事態における実効的な抑止及び対処を念頭に”艦載型無人航空機の運用要領等の調査(1百万円)艦載型無人航空機について、搭載センサー等の性能情報や導入後の運用要領について検討を実施”、とあります。
更に”艦載型無人航空機(イメージ)”としましてMQ-8ファイアスカウト無人ヘリコプターを思わせるシルエットが描かれています。これはかつて陸上自衛隊が練習ヘリコプターや特科部隊着弾観測用に用いたTH-55の改良型で、陸上自衛隊次期練習ヘリコプター選定の候補機ともなったシュワイザー330/333を原型とした無人ヘリコプターです。
搭載量は機体規模が大きくないため機体相応の規模ではありますが、原型機の信頼性は比較的高い。艦載型無人航空機(イメージ、とあるだけで機種の明示は行われていませんが、MQ-8ファイアスカウト無人ヘリコプターが最有力視されているとの報道もありました。巡航速度:200km/h、戦闘行動半径:203.7km、滞空時間約6時間、各種監視装置を搭載し米海軍でもLCSに搭載し運用しているもの。
MQ-8ファイアスカウト無人ヘリコプターは監視能力に加え、ミサイルの誘導などの感染による行動支援に加えて、ヘルファイア対戦車ミサイルやAPKWS 70mmレーザー誘導ロケット等を搭載し、水上戦闘艦への正面切っての対艦攻撃は不可能ですが、海賊対処任務における威嚇や阻止攻撃と不審船や武装工作船の浸透に対する無力化というような軽攻撃任務でしたらば、十分に対応します。
搭載センサー等の性能情報や導入後の運用要領について検討とはこうした情報の詳細を検討するもの。特に艦載型無人航空機はMQ-8ファイアスカウト無人ヘリコプターを選定した場合、現在の主力艦載ヘリコプターであるSH-60J/K哨戒ヘリコプターと比較しかなり小型ですのでSH-60J/K一機分の格納庫に複数機を搭載可能です。
もちろん、従来護衛艦にも搭載される可能性は充分あるのですが、航空機格納庫容積が限られたコンパクト護衛艦こそ、その能力を最大限発揮できる舞台を供することが出来るように思います。これら施策をもとにさ来年度あたりには機種選定に当たり、取得に向けて調整されるのでしょうか、もしくはコンパクト護衛艦と同時期を見計らって調達を行うのか、興味の湧くところ。
他方、これら施策が実現するまでの間は護衛艦の艦齢延伸により対応するようです。平成27年度防衛予算概算要求概要を引用しますと”護衛艦の艦齢延伸(艦齢延伸工事3隻及び部品調達7隻分:65億円)護衛艦の体制を維持するため、「はつゆき」型(1隻)、「あさぎり」型(3隻)、「あぶくま」型(4隻)、「はたかぜ」型(1隻)、「こんごう」型(1隻)護衛艦に艦齢延伸措置を実施”、とありました。
こんごう型ミサイル護衛艦は1993年より就役しており、延命改修するのか新型イージス艦に置き換えるのかの去就が注目されていたところですが、来年度予算より延命改修の予算が要求されることとなりました。はつゆき型護衛艦などは今年度にも除籍艦が出ていますが。
後期艦については維持される見通しで、あさぎり型についてもすべて延命予算が通ったこととなります。また、小型の護衛艦あぶくま型、ターターシステムの旧式化が進むミサイル護衛案はたかぜ型についても延命改修が継続実施されます。
延命改修のみならず、”「あさぎり」型護衛艦の戦闘指揮システムの近代化に際し、民生品を使用”、という記述があり、戦闘指揮システムの近代化が進められる模様です。特に護衛艦はつゆき型及び護衛艦あさぎり型は冷戦末期に大量建造された護衛艦で、比較的手ごろな大きさにより汎用性が高い点が指摘されているものの、戦闘能力に関してはどうしても見劣りすることは否めません。
旧式艦は旧式の機能、それを見込んでの単なる延命、というものでは無く戦闘能力全般の底上げが行われているところは注目すべきでしょう。この施策は少なくともコンパクト護衛艦が建造されるまでの期間、護衛艦勢力を維持する必要があり、これに基づき行われているものです。
しかし言換えればコンパクト護衛艦が建造される平成30年代までの期間がまだまだ長いことを示すものでもあり、能力向上改修は、あさぎり型全般に行われ、あぶくま型に対しても行われるのか、あさぎり型の前期艦か後期艦何れかに留まるのか、コンパクト護衛艦設計進捗の試金石ともなる部分ですから、今後の展開を見守りましょう。
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