◆新型水陸両用車ではなく94式水際地雷敷設車
先日舞鶴基地へ行った際に航空基地周辺の海域を自衛隊の水陸両用車が試験を実施していました。
舞鶴の水陸両用車、所用があり舞鶴へ足を運んだ際に約束の時間まで時間に余裕を以て展開し、その間にちょっと前島埠頭へ立ち寄って舞鶴基地は北吸桟橋に停泊する護衛艦を撮影しよう、とカメラを構えた際に、反対方向に船のようなものが動いていることに行づき、よく見たら水陸両用車だった、ということ。
白波を蹴立てて海上を行く水陸両用車両は明らかに塗装が自衛隊車両であるOD塗装で、自衛隊の新型水陸両用装甲車か、と驚いたところ。しかし手元には18-200mmのレンズを備えたEOS-7Dのみしかなく、流石に普段から300mmレンズは持ち歩かないとはいえ、勿体無いことをしたというべきでしょう。
実は、“舞鶴 自衛隊装甲車”、“舞鶴 水陸両用車”、“舞鶴 水陸両用装甲車”、という用語での検索が相当数あり、撮影しましたのは先々月なのですが、その後もこの車両が展開していたことが考えられます。なお、何故掲載が遅れたかと言いますと、こちらは機会を逸していたため、忘れていたわけでは、多分違う、ですよ。
防衛用水陸両用車両、2009年10月22日に防衛省より“防衛用水陸両用車両技術に関する調査研究”の入札が行われ、三菱重工とユニバーサル造船が入札に応じ、ユニバーサル造船が10万5000円で入札、三菱重工が380万円で入札を提示、防衛省は実績などから検討した結果、ユニバーサル造船が落札しました。
そのユニバーサル造船舞鶴工場が舞鶴航空基地に隣接しています。ユニバーサル造船は子会社のユニバーサル特機94式水際地雷敷設車を陸上自衛隊へ納入しており、今回も車体形状の特色から94式水際地雷敷設車であることが分かり、新造車両というよりは定期整備の車両なのかもしれません。
それにしてもこの車両、意外と軽快に水上を航行していまして、速度も早め、白波が大きい点を除けば水陸両用車にはみえず、知らない人が見れば完全に舟としか思わないのかもしれません。海上自衛隊の方に聞いてみますと、ちょくちょく航行していますよ、とのこと。
しかしながら、防衛省が求めていた車両は防御力を有し着上陸任務を展開する際の第一波を構成し、海浜における重装備揚陸に向けた海岸堡の確保に必要な戦闘部隊を上陸させる戦闘車両であったのですが、着上陸は可能であるものの車高や生存性で対応できるものでは無かったといわれています。
ユニバーサル造船は94式水際地雷敷設車を原型とし装甲防御力を付与すると共にRWS遠隔操作式銃塔等を搭載する程度であったとのこと。結果的に防衛省はアメリカからAAV-7水陸両用強襲車を導入するのか、国産案を進めるのかが検討される重要な機会であったものの、これを機にAAV-7導入へ転換しました。
国産案は一方、ジェーンディフェンスウィークリー誌が今年4月7日に、三菱重工広報担当者の話として三菱重工が独自に水陸両用装甲車の研究試作を実施していることが報じられ、いちおうAAV-7と同等の運用を可能として自衛隊が想定する規模の車両を研究している、といわれているところ。
舞鶴の水陸両用車、防衛用水陸両用車両技術に関する調査研究は試作車両や実証車両の製造までを含んでいるものではありませんので、この車両は94式水際地雷敷設車の定期整備の様子と考えられます。一方で、水陸両用車の姿は、こうした話があったことを思い出させてくれる様子でした。
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)