北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

御嶽山が爆発的噴火、岐阜長野県境の山頂火口付近登山者など孤立者多数で自衛隊派遣

2014-09-27 23:33:21 | 防災・災害派遣

◆観測史上最大噴火に政府対策本部設置

 本日正午ごろ、岐阜県長野県県境にある標高3067mの御嶽山剣ヶ峰山頂付近において爆発的な噴火が確認されました。

Bhimg_9741 御嶽山を旅客機機内から撮影したもの。中部国際空港と北海道などを結ぶ航空航路上に御嶽山配置し、近傍に同じく火山である乗鞍岳なども俯瞰することが出来ます。今回の噴火は1153時頃、突如として山頂付近が噴火し、大規模噴火の兆候となる前駆噴火現象を経ずして大きな噴火となったため、山頂付近には百数十名の登山者が居たため、このうち十数名が重傷を負うなど被害が生じました。なお、前駆噴火は観測されなかったものの、特異ではない範囲内で噴火数十分前までに火山性地震が増大したと気象庁が発表しています。

Bhimg_9742 御嶽山について。御嶽山は木曽御嶽神社の御神体として崇敬を集めています。今回の噴火は山頂付近の登山者が噴火最初の爆発を撮影し、世界を驚かせました。御嶽山は山麓より御岳ロープウェーが運行されており、一定の経験があるならば比較的容易に日帰り登山も可能な3000m級山岳として知られており、特に本日は週末土曜日であったこともあり、紅葉時期とも併せ登山客が多かったとのことでした。反面、御嶽山付近は林業が盛んで、土曜日で林業従事者への人的被害は一部抑えられた、といえるかもしれません。

Bimg_9455  噴火の直接被害について。山頂付近の爆発的噴火と共に、山頂付近長野県警や岐阜県警が集計した情報によれば10名以上が意識不明の重体、40名以上が重傷を負っており、このほか山頂付近に数名、7名程度が火山灰に埋没しているとされ、救助を急いでいます。加えて孤立者は現在一部の山小屋に41名が孤立しているとNHKにより報じられました。噴火当初は火山弾や灰神楽から逃れるため多くの方が山小屋に避難しましたが230名が下山した、とのこと。

Bhimg_3153  被害全般について。交通や降灰による被害が出始めています。NHKによれば、今晩に入り山梨県甲府市に火山灰の降灰が確認されており、今後首都圏などに火山灰による被害が生じる可能性が指摘されています。また、交通への被害としましてJR東海高山線などは平常運航され、現在のところ問題はありませんが、旅客機の航空航路などに火山性エアゾルを中心とした火山灰の広がりが懸念され、羽田空港発着の航空便一部について数十分から一時間程度の遅れが出ています。

Bhimg_1418 政府の対応について。安倍晋三首相は外湯から帰国した本日、御嶽山の噴火を受け、被災者の救助に総力を挙げるとともに、登山者や住民の安全確保に万全を期すことなどを指示しています。また、長野県の阿部守一知事は長野県の防衛警備及び災害派遣を担当する第12旅団の赤松雅史陸将補へ災害派遣要請を出し、陸上自衛隊による災害派遣が開始、山頂付近での航空偵察などを筆頭に自衛隊の行動が始まっているほか、長野県警などへの中央からの支援も開始されました。

Img_2603  自衛隊の災害派遣ですが第12旅団は空中機動を重視した旅団編成であるため、走行車両などに限界があります。今後、火山灰などが堆積し、避難誘導などに装軌式装甲車が必要となった場合、北部方面隊等から73式装甲車が管理替えにより配属される可能性があるほか、観測支援などで装甲ドーザや施設作業車などが第12旅団長隷下に配属される可能性があり、噴火が大規模となった場合、御嶽山周辺の第12旅団と第10師団に第1師団を加えた統合任務部隊が編制されるかもしれません。

Nimg_8985_1 航空機と火山灰の関係について。航空機は火山灰の中を飛行する事は出来ません、そして噴煙は火山灰の一種ではあるものの視覚では認識しにくい火山性エアゾルが航空機の運航を阻害します。火山性エアゾルは肉眼では見えにくいもののエンジンに取り込まれるとタービン部分の高熱で溶岩に戻り排気口の部分で冷気に曝され凝結、エンジンを閉塞し破壊します。加えてピトー管に詰まり速度計を破壊、ガラスに高速で衝突し研磨させ視界を奪い、レドームも研磨しアンテナなどを破壊します。見えないため回避が難しく、この為飛行できないのです。

Bhimg_9743 被害の予想について。御嶽山は約80万年前に中部火山帯の噴火活動により誕生し、最大3500mほどの火山となっていましたが、爆発的噴火により山頂部が吹き飛ばされ、現在の標高となりました。その後5万年ほど前の大噴火を最後に小康状態が続いていたため、死火山に類別されたのですが1979年に突如噴火し、この事例を契機に死火山という概念が再定義されることとなっています。1979年10月28日からの噴火は火山灰が遠く北関東の前橋市まで到達、広範囲に火山灰被害を及ぼしました。

Bhimg_3391 火砕流について。今回も既に小規模なものが観測されていて、噴煙柱崩落型という吹き上がった火山ガスを含む火山排出物がそのまま重力によって下にたたきつけ広がるという方式と思われるものが国土交通省監視機材により観測されました。特にその速度が時速100kmを越え、広範囲に展開する為警戒を要するものです。窓の無い頑丈な建物に避難すれば、高温ガスである火砕サージを避ける事が出来ますが、火砕流本体と遭遇した場合埋没して蒸し焼きになる可能性があり、想定避難地域からの迅速な退避こそが唯一の対処となります。

Nimg_1766  火山弾について。本日の噴火では既に火山弾が山小屋の屋根などを破壊するなど被害が生じ始めています。気象庁によれば現在の規模の噴火により最大4kmを火山弾が飛ぶ可能性が指摘され、警戒を呼びかけています。ただ、小型の火山弾はより遠くに飛びますので、周辺地域の方々は極力外に出ないように、また犬小屋などの愛犬も併せて屋内に退避させることが望ましいでしょう。微弱な火山性ガスを飼い犬が先んじて検知して飼い主を避難させた事例があり、愛犬を人命と同列に大事にしなければなりません。

Db_img_9736  ラハールについて。火山灰は短時間で硬化し火山アスファルトへと変質し、これにより山間部の保水力が一挙に失われることとなり都市部の傾斜地アスファルト舗装道路が降雨時に一挙に流れるように、山間部で突如土石流が発生します。警戒を要するのは、少量の降雨でも大規模なラハールへ展開する点で、特に九月は台風被害が集中する時期であることから警戒が必要です。そして下流まで影響がある事を忘れてはなりません。また、昨年の伊豆大島ラハール被害のように長期を経ても発生する為、長い警戒が必要でしょう。

Bimg_5624 最大規模の噴火が発生した場合について。岐阜基地航空祭予行のブルーインパルスと御嶽山、木曽川水系の上流にある御嶽山は高い標高と相まって中京地区の主要都市から望見出来ます。特に名古屋市や岐阜市の平野部は山間部の山岳崩壊による土石流により成立した沖積平野ですので、最大規模の噴火が仮に発生した場合に、中京圏への土石流被害は想定され、岐阜基地の各務原市丘陵地帯は御嶽山の火山性堆積物により構成、5万年前の大規模噴火による火山性土石流所謂ラハールは小牧基地近くの犬山市でも確認されています。

Bimg_9572  現在のところ、火山噴火予知連絡会などからそもそも御嶽山がどの程度のマグマを蓄積しているかについて資料が無いため分からない、としていますので最大規模の噴火が起こるという過去の事例は地学的出来事の羅列に過ぎません。しかし、単なる可能性として、ですが、今回の噴火が前駆噴火であり、数日から数週間を置いて山体崩壊、1888年の福島県磐梯山のような山そのものが爆発により吹き飛ぶ破局噴火が生じ、数十km以内が火山弾と火砕流による大打撃を被る、という想定は必要か不要か、を検証する必要は、あるでしょう。

Bhimg_6441 御嶽山は1979年の噴火まで死火山と思われていたものの突如噴火し活火山となったように分からない事が多々あります。北関東まで気象庁は火山灰情報を出しているため、呼吸器系等への防護から家屋などの保全まで、また今後の噴火状況によっては御岳周辺だけではなく木曽川水系でのラハール被害も想定されますので、正直なところ、このまま収まる可能性もあれば、最大規模の破局噴火につながる事も想定しなければなりません。最新の情報とともに、火口周辺4kmの火山弾対策、200km以内の火山灰対策、万全を期す必要があります。

北大路機関:はるな

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コメント (4)
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