北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

特集:平成27年度防衛予算概算要求概要⑦・・・重要施策、南西諸島防備強化Ⅲ

2014-09-09 22:26:02 | 防衛・安全保障

◆誕生!那覇基地第9航空団、40機のイーグル部隊

 重要施策、南西諸島防備強化の第三回は予てより計画されていた那覇基地の第83航空隊の第9航空団への拡大改編の概算要求盛り込みについて。

Tbimg_1949  平成27年度防衛予算概算要求概要には”戦闘機部隊2個飛行隊の配備に伴う第9航空団(仮称)の新編、南西地域における防空態勢の充実のため、那覇基地に1個飛行隊(F-15部隊)を移動させるとともに、第83航空隊を廃止し、第9航空団(仮称)を新編”と記されています。

Tbimg_3292  具体的には九州福岡県の築城基地第8航空団について、現在第8航空団はF-15戦闘機を運用する第304飛行隊とF-2支援戦闘機を運用する第6飛行隊が展開していますが、このうち第304飛行隊を抽出し那覇基地に移す。その上で那覇基地の第83航空隊に所属する唯一の飛行隊である第204飛行隊のF-15とともに第304飛行隊を加えF-15戦闘機2個飛行隊体制を構築し40機のF-15による防空に充てる、という構想です。

Tbimg_2265  築城基地の第8航空団ですが、航空隊への引き下げが行われるのか航空団体制が維持されるのかについて明示はありません。他方で新田原基地の第5航空団も現在一個飛行隊が教育訓練部隊へ転換されたため一個飛行隊のみの運用となっていますので、西部航空方面隊と南西方面航空混成団は、基地の数などは違うものの戦闘機飛行隊数では同格となり、九州からF-15戦闘機が全て転地することになる点、何気に重要な転換です。

Tbimg_0879  航空団と航空隊では補給や整備などの後方支援能力が異なりますので、この動向には注視したいところですが、例えば新田原基地から飛行教導隊を移駐させる、もともと飛行教導隊は築城基地に展開していた部隊が新田原基地に移駐したのですけれども、こうした施策を行うならば航空団規模を維持する必要が出てくるでしょう。

Tbimg_1798  特に新田原基地は日米合同訓練を沖縄から抽出し沖縄の基地負担縮小を行う訓練移転基地の一つですので、手狭となる可能性は無視できず、築城基地の去就に注視したいところ。反面、築城基地の第8航空団の一個飛行隊化とともに新田原基地の第5航空団も一個飛行隊化、これにより西部航空方面隊の要撃飛行隊は二個飛行隊のみとなります。

Tbimg_1867  教育部隊として第23飛行隊のF-15や飛行教導隊のF-15等は残るのですが、もともと航空自衛隊そのものが西方の、特に朝鮮半島湯時の再発を警戒し部隊配置を行ってきました、そういう意味で九州の防空に関する空白は危惧するところではあります、何よりも空白地帯は突かれやすい脆弱点、どうなるのでしょうか。

Tbimg_2359  他方で、航空自衛隊は現在F-2支援戦闘機二個飛行隊を以て編成する三沢基地の第3航空団に最初のF-35戦闘機を配備する方針を示しており、将来的には余剰となるF-2支援戦闘機が三沢基地から築城基地へ移駐する、という可能性も無くはありません。場合によっては新田原のF-4EJ改を三沢のF-2で置き換え、九州に支援戦闘機の運用を集約させることも考えられるでしょう。

Tbimg_3180  もともと2008年まで那覇基地にはF-4EJ改を装備する第302飛行隊が一個飛行隊置かれていただけでしたが、首都防空を担う茨城県の百里基地第7航空団と那覇基地第83航空隊との間で南西諸島防空強化を視野にF-15を運用する第204飛行隊と管理替えを行うことでF-15の沖縄配備が実現しました。しかし、その転換実現の時点で、まさかここまで中国機による我が国領空への接近と緊急発進件数が爆発的に増大するとは想像もしていなかったのではありますが。

Tbimg_9649  無論、このころにも南西諸島への脅威増大は認識こそされていたのですが今位置ほど大きな脅威度は考えられておらず、わずか数年で第83航空隊を基幹とする南西方面航空混成団は航空自衛隊の緊急発進件数の半数近くを時には占める事となり、戦闘機は訓練計画を立てられず実任務に専念、他航空団より増援を受けて漸く要撃体制を維持しているという状況でした。

Tbimg_9871  このため航空隊ではなく航空団への拡大改編は必要性が痛感されていたところですし、併せて低空侵入機による防空識別圏突破による領空侵犯事案も発生したため、那覇基地にE-2C早期警戒機を運用する飛行隊を三沢基地から配置させ、暫定対処を採ってきました。気づけば、防衛の空白と呼ばれた那覇基地には海上自衛隊の那覇航空基地の機体を合わせ、自衛隊有数の航空拠点となっていた、というもの。

Abimg_3301  早期警戒機前進配置の暫定措置は今年度から臨時配備を正式に飛行隊へ格上げ、警戒航空隊第603飛行隊那覇基地に新編というほど状況は切迫しています。そして、那覇空港に降りるたび、他基地からの応援と思われる部隊マークを掲げた多数の自衛隊機を見るたび、考えさせられるものがありました。

Img_6610  こうした状況を鑑みるに九州方面の防空均衡という問題は少々気にはなるところですが、那覇基地の防空能力を一応充実させ、過度な飛行隊の対領空侵犯措置任務対応という現状から改善の方向に進むことは、率直に評価されるべきでしょう。少なくとも現状の一個飛行隊から二個飛行隊に増勢されるのですから楽観的な要素を期待したいところです。

北大路機関:はるな

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コメント (1)
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