■顕在化するミサイル脅威
Jアラートが北海道内、つまり日本の領域内へ落下する懸念から発令されたのは今回が初めてとのことでした。
今朝日本を驚かせた北朝鮮ミサイル発射にともなうJアラート、北海道全域にJアラートが発令され地下街か屋内への避難指示が出されるとともJR北海道や市営地下鉄などの鉄道の緊急停止措置などがとられました。これは非常に大きな混乱となりましたが、ミサイルは北海道周辺に落下したとされ、具体的なミサイルによる被害は発生しませんでした。
破壊措置命令、仮に日本本土に落下する弾道経路を飛翔した場合には海上自衛隊及び航空自衛隊へ破壊措置命令が発令され、イージス艦からはスタンダードSM-3、また地上からはペトリオットミサイルPAC-3と改良型のMSEにより迎撃が行われることとなるでしょう。ただ近年、北朝鮮ミサイルは不規則弾道を飛翔する改良型の試験が行われている最中です。
極超音速兵器、不規則機動を採るミサイルは従来の弾道ミサイルが弾道、つまり放物線を描いて飛翔するために落下予想地点の算出が比較的簡単であるのに対して、文字通り不規則機動を行うものについては直前に落下地域が変化するものであり、残念ながら落下予想地点を広く設定し警戒を促さざるを得ません、こうした状況はやはり今後も続くでしょう。
ミサイル実験が実施された背景には、先日ありましたアメリカ国防総省機密文書漏洩事件に際し、"北朝鮮の大陸間弾道弾は見かけ倒しである可能性"を示したものがあり、つまり北朝鮮はパレードなどでミサイル発射筒を搭載した車両の行進を繰り返していますが、実際にアメリカへ脅威を及ぼすものであるかについて疑問符がつく、という内容がありました。
機密文書に記された内容からは、北朝鮮が張り子の虎ではなく実際のアメリカを痛撃可能な核戦力である、という姿勢を示し、そしてなによりもアメリカに脅威を認めさせることが出来なければ抑止力は機能しません。ある意味、機密文書漏洩によりアメリカが北朝鮮の実力を疑ったことが露呈したことも、今回のミサイル実験を後押ししたのかも知れない。
大袈裟な対応であるのか。こう問われますと、今の段階の北朝鮮ミサイル実験、特に北海道上空を飛翔しうる経路を採った場合には、実は直下にあたる北海道はいくつかの点で警戒しなければならない点があるのです。それは北朝鮮が核弾頭を開発しアメリカへの抑止力として重視している点、そして核弾頭の実用性をアメリカや世界へ誇示する必要性です。
東海岸、世界地図ではなく地球儀でアメリカ本土東海岸のニューヨークやワシントンDCをねらう北朝鮮本土からの最短経路は北海道上空を飛翔し北極圏とアラスカ付近から北米上空に侵入する経路です。つまり今朝の実験の経路の場合は、実験用弾頭ではなく実弾頭が用いられる懸念がある程度存在し、落下物の脅威は相応に存在するということがひとつ。
核実験の可能性がある。非常に可能性は低いのですが、しかしリスクとして無視できない水準にあるのは、北朝鮮が核弾頭を搭載し大気圏内核実験を実施する可能性です。その背景として"北朝鮮に核弾頭の運搬能力保持を確信させる選択肢は実験しかない"ということです。つまり、再突入させ核弾頭を起爆させる技術は、まだ実験で証明されていない。
実験、核弾頭は開発できたとしても大陸間弾道弾に搭載し再突入の加圧下でも確実に制御装置と起爆装置を作動させ任意の高度で核爆発を起こす、冷戦時代に米ソがさんざん実施したミサイル実験により、米ソはその能力を持っているとされる、フランスと中国も同様の試験を実施、イギリスはポラリス交換協定がある、しかし北朝鮮は未だである、となる。
弾道ミサイルに搭載し実際に起爆する試験を、いつかは実施しなければならない、それは本番の直前に示威的に行う可能性はありますが、言い換えれば本番の直前以外に本番そのものを回避するために早めにやってしまう可能性もある、つまり日本周辺での大気圏内核実験の可能性は相応に存在するのです。だからこそ毎度でも警戒する必要があるのです。
経済制裁、日本はもし北朝鮮がこうした措置を行った場合、より厳しい経済制裁で臨むべきだ、という意見も出されるかも知れませんが、現在の段階で実施されている経済制裁だけで非常に厳しく、日本一国で行える選択肢はほぼ投了状態、これ以上厳しいのは船舶検査と海上封鎖くらいですが、後者に関しては国際法上武力行使に当るものとなりかねない。
大気圏内核実験を行えば、日本はより厳しく北朝鮮を非難する発言を繰り返すでしょうが、北朝鮮としては放送電波を無視すれば非難の声は通じません、すると実際の大気圏内核実験により得られるもの、つまりアメリカへの確実な核抑止力の完成と、日本が非難声明を繰り返すことで受ける不快感とを天秤に掛ければ、前者の利点を選ぶ可能性が高いのです。
Jアラートはこうした視点から、ミサイルが飛んだ以上、ある程度核爆発による危険が国内に及ぶ懸念があるということです。そしておそらくですが、Jアラートは次の段階の警戒警報が準備されています、それは核爆発が発生した場合の避難方法などです。一級被爆地域は、日本の都市部がいきなり攻撃される可能性は低く即座の脅威として懸念の必要はない。
核爆発、しかし二級被爆地域、つまり放射性降下物の危険がある地域については、もしそのときが来た場合にはおそらくJアラートとして準備されているものでしょう。核爆発が確認された地域の風下に対して発令され、屋内退避と放射性降下物による水の汚染などで、汚染された水や農産物を摂取しないよう、家畜を屋内避難させるよう出されるはずだ。
日本としては、迎撃能力を高めることは出来ますが、核抑止力により本土を攻撃やミサイル経路から省かせるという選択肢はありません、特に北朝鮮がミサイル実験の経路をロシア上空や中国上空を慎重に避けている点には少なからず両国の核戦力というものへの意識があるでしょう。すると日本としてミサイル実験を静観し続けるほか無いのが実状です。
しかし警戒を続け、面倒でもJアラートによる退避勧告を継続する必要がある、それは仮にミサイルへの警戒を解き、無関心となれば、相手は一段階すすめ、日本上空でのミサイル飛翔を権利として受け入れるよう強制する可能性がある。段階を進めさせることで問題が悪化するのは、例えば台湾海峡や南西諸島の実状をみれば火をみるより明らかでしょう。
専守防衛と非核主義を堅持することで平和国家という位置づけを堅持してきました我が国は、結果的にこの施策を選挙の際に国民が支持して居るもので、警戒を解いた後に仮に実際に被害が生じることがあればやはり批判が集まるでしょう。ミサイル実験はアメリカへの戦力誇示が目的である以上、今後頻度や規模の面でさらに強化される可能性もあります。
現実を受け入れるほかありません。一方、こうしたミサイル脅威の増大を考えた場合、ミサイル防衛能力を強化する必要性、過去21年間にわたり整備してきましたミサイル防衛の技術がありますが、例えばPAC-3-MSEの射程は30km、これよりも迎撃範囲の大きな迎撃ミサイルの開発もしくは導入というものを、検討せねばならない段階なのかもしれません。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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Jアラートが北海道内、つまり日本の領域内へ落下する懸念から発令されたのは今回が初めてとのことでした。
今朝日本を驚かせた北朝鮮ミサイル発射にともなうJアラート、北海道全域にJアラートが発令され地下街か屋内への避難指示が出されるとともJR北海道や市営地下鉄などの鉄道の緊急停止措置などがとられました。これは非常に大きな混乱となりましたが、ミサイルは北海道周辺に落下したとされ、具体的なミサイルによる被害は発生しませんでした。
破壊措置命令、仮に日本本土に落下する弾道経路を飛翔した場合には海上自衛隊及び航空自衛隊へ破壊措置命令が発令され、イージス艦からはスタンダードSM-3、また地上からはペトリオットミサイルPAC-3と改良型のMSEにより迎撃が行われることとなるでしょう。ただ近年、北朝鮮ミサイルは不規則弾道を飛翔する改良型の試験が行われている最中です。
極超音速兵器、不規則機動を採るミサイルは従来の弾道ミサイルが弾道、つまり放物線を描いて飛翔するために落下予想地点の算出が比較的簡単であるのに対して、文字通り不規則機動を行うものについては直前に落下地域が変化するものであり、残念ながら落下予想地点を広く設定し警戒を促さざるを得ません、こうした状況はやはり今後も続くでしょう。
ミサイル実験が実施された背景には、先日ありましたアメリカ国防総省機密文書漏洩事件に際し、"北朝鮮の大陸間弾道弾は見かけ倒しである可能性"を示したものがあり、つまり北朝鮮はパレードなどでミサイル発射筒を搭載した車両の行進を繰り返していますが、実際にアメリカへ脅威を及ぼすものであるかについて疑問符がつく、という内容がありました。
機密文書に記された内容からは、北朝鮮が張り子の虎ではなく実際のアメリカを痛撃可能な核戦力である、という姿勢を示し、そしてなによりもアメリカに脅威を認めさせることが出来なければ抑止力は機能しません。ある意味、機密文書漏洩によりアメリカが北朝鮮の実力を疑ったことが露呈したことも、今回のミサイル実験を後押ししたのかも知れない。
大袈裟な対応であるのか。こう問われますと、今の段階の北朝鮮ミサイル実験、特に北海道上空を飛翔しうる経路を採った場合には、実は直下にあたる北海道はいくつかの点で警戒しなければならない点があるのです。それは北朝鮮が核弾頭を開発しアメリカへの抑止力として重視している点、そして核弾頭の実用性をアメリカや世界へ誇示する必要性です。
東海岸、世界地図ではなく地球儀でアメリカ本土東海岸のニューヨークやワシントンDCをねらう北朝鮮本土からの最短経路は北海道上空を飛翔し北極圏とアラスカ付近から北米上空に侵入する経路です。つまり今朝の実験の経路の場合は、実験用弾頭ではなく実弾頭が用いられる懸念がある程度存在し、落下物の脅威は相応に存在するということがひとつ。
核実験の可能性がある。非常に可能性は低いのですが、しかしリスクとして無視できない水準にあるのは、北朝鮮が核弾頭を搭載し大気圏内核実験を実施する可能性です。その背景として"北朝鮮に核弾頭の運搬能力保持を確信させる選択肢は実験しかない"ということです。つまり、再突入させ核弾頭を起爆させる技術は、まだ実験で証明されていない。
実験、核弾頭は開発できたとしても大陸間弾道弾に搭載し再突入の加圧下でも確実に制御装置と起爆装置を作動させ任意の高度で核爆発を起こす、冷戦時代に米ソがさんざん実施したミサイル実験により、米ソはその能力を持っているとされる、フランスと中国も同様の試験を実施、イギリスはポラリス交換協定がある、しかし北朝鮮は未だである、となる。
弾道ミサイルに搭載し実際に起爆する試験を、いつかは実施しなければならない、それは本番の直前に示威的に行う可能性はありますが、言い換えれば本番の直前以外に本番そのものを回避するために早めにやってしまう可能性もある、つまり日本周辺での大気圏内核実験の可能性は相応に存在するのです。だからこそ毎度でも警戒する必要があるのです。
経済制裁、日本はもし北朝鮮がこうした措置を行った場合、より厳しい経済制裁で臨むべきだ、という意見も出されるかも知れませんが、現在の段階で実施されている経済制裁だけで非常に厳しく、日本一国で行える選択肢はほぼ投了状態、これ以上厳しいのは船舶検査と海上封鎖くらいですが、後者に関しては国際法上武力行使に当るものとなりかねない。
大気圏内核実験を行えば、日本はより厳しく北朝鮮を非難する発言を繰り返すでしょうが、北朝鮮としては放送電波を無視すれば非難の声は通じません、すると実際の大気圏内核実験により得られるもの、つまりアメリカへの確実な核抑止力の完成と、日本が非難声明を繰り返すことで受ける不快感とを天秤に掛ければ、前者の利点を選ぶ可能性が高いのです。
Jアラートはこうした視点から、ミサイルが飛んだ以上、ある程度核爆発による危険が国内に及ぶ懸念があるということです。そしておそらくですが、Jアラートは次の段階の警戒警報が準備されています、それは核爆発が発生した場合の避難方法などです。一級被爆地域は、日本の都市部がいきなり攻撃される可能性は低く即座の脅威として懸念の必要はない。
核爆発、しかし二級被爆地域、つまり放射性降下物の危険がある地域については、もしそのときが来た場合にはおそらくJアラートとして準備されているものでしょう。核爆発が確認された地域の風下に対して発令され、屋内退避と放射性降下物による水の汚染などで、汚染された水や農産物を摂取しないよう、家畜を屋内避難させるよう出されるはずだ。
日本としては、迎撃能力を高めることは出来ますが、核抑止力により本土を攻撃やミサイル経路から省かせるという選択肢はありません、特に北朝鮮がミサイル実験の経路をロシア上空や中国上空を慎重に避けている点には少なからず両国の核戦力というものへの意識があるでしょう。すると日本としてミサイル実験を静観し続けるほか無いのが実状です。
しかし警戒を続け、面倒でもJアラートによる退避勧告を継続する必要がある、それは仮にミサイルへの警戒を解き、無関心となれば、相手は一段階すすめ、日本上空でのミサイル飛翔を権利として受け入れるよう強制する可能性がある。段階を進めさせることで問題が悪化するのは、例えば台湾海峡や南西諸島の実状をみれば火をみるより明らかでしょう。
専守防衛と非核主義を堅持することで平和国家という位置づけを堅持してきました我が国は、結果的にこの施策を選挙の際に国民が支持して居るもので、警戒を解いた後に仮に実際に被害が生じることがあればやはり批判が集まるでしょう。ミサイル実験はアメリカへの戦力誇示が目的である以上、今後頻度や規模の面でさらに強化される可能性もあります。
現実を受け入れるほかありません。一方、こうしたミサイル脅威の増大を考えた場合、ミサイル防衛能力を強化する必要性、過去21年間にわたり整備してきましたミサイル防衛の技術がありますが、例えばPAC-3-MSEの射程は30km、これよりも迎撃範囲の大きな迎撃ミサイルの開発もしくは導入というものを、検討せねばならない段階なのかもしれません。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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