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【京都幕間旅情】建仁寺,末法思想の時代を経て南都焼討と鎮護国家の価値観から大衆信仰の時代への変容

2023-05-31 20:00:36 | 写真
■東山の建仁寺をめぐる
 熱い春と涼しい晩春を経て熱い初夏の前に台風がやってくるという妙な気候の時節ですに少し東山を散策しました。

 建仁寺。京都の東山と云えば高台寺や清水寺と八坂神社というように歴史を現代に伝える景観が続いているところではあるのですが、不思議とその寺院は高台に並んでいるように思えて、逆に“東山という山の名を冠するのだから当然だろう”と切り返されるところ。

 祇園の少し南側、建仁寺は寺院が高台に並ぶところにあって、しかし鴨川の川辺のようなところに、しかしくっきりと堂宇を広げていまして、歴史景観地区というのだからこういう壁が続くのは当たり前に見えたその先に、拝観者を迎え入れるよう扉をひらいています。

 京都市東山区大和大路四条下る四丁目小松町、ここは京都市東山区大和大路四条下る四丁目小松町という、八坂の塔もすこし山手に見えるような立地にあります。意外と広い堂宇と庭園を広げていますが、これでも小さくなったといい、実は八坂の塔もその塔頭という。

 創建建仁2年、西暦では1202年に創建された寺院です。堂宇は思いのほか大きいのですが、21世紀の京都の街並みは南座はじめ大きく成長していることから、特徴的な五重塔など仏塔を寺域に有さない寺院故にある種目立たないのですが、それゆえなにか静けさがある。

 最初禅寺、建仁寺にはこう大書されていまして、観光客がそれ程集まらない寺院はそう、臨済宗建仁寺派の大本山、という大きな役割を担っていまして、日本に臨済宗を伝えた栄西さんが、開山となっている。すると、観光客が素通りするのはもったいないようにも。

 中世の時代、日本では仏教という宗教の存在は大きく転換を始めていました、いや仏教伝来、と飛鳥時代の歴史を小学校で学ぶ通り、確かに日本には仏教はあったのですけれど、これは国家宗教であり、単に国家鎮護を目指すことが宗教の役割ではないともいえるもの。

 勧進と作善、中世の時代には日本部仏教が国家宗教というものに大きな役割を求められる一方で、多様性を持ち始めます。それは奇遇なのかもしれませんが末法思想という、いわば仏教の時代の終末思想的解釈の時代に、哲学的な教義を持つ仏教が大衆へ向かい始める。

 末法思想は末法元年が平安朝後記、末法元年が永承7年こと西暦1052年となっています、建仁寺の創建からは150年も前ですが、末法とは最終戦争のような形で一瞬に終わるのではなく、日没と夜のとばりのように終焉が訪れると理解され、終わりの始まりとされた。

 信心を人々に求め結縁を求める、勧進は勧進帳のおかげで集金のような印象で受け止められていますがもともとは中世の頃に本格化しました布教の様式です、西行や重源の時代に本格化していまして、もっともこの頃から確かに集金は行われていた、特殊な事情により。

 南都焼討、源平合戦において平家の勢力が陰りを見せた転機の一つに奈良の東大寺など主要な寺院を平家側が焼討した事件がありました、これは軍事的な意味よりも政治的な意味が大きいものでしたが、同時に末法思想の時代に起こった大寺院の焼失は大きな意味が。

 鎮護国家、他方でこの時に政権は朝廷の権限と共に院政が続き平家の権限と二重権力三重権力状態が醸成されていたこともあり、末法思想とともに一種の世情不安を形成していた事も否定できないところです。そこに大寺院の焼失と再興されない状況は不安を高める。

 勧進はこうした最中にあって、東大寺復興等を求める新しい動きとして、つまり末法の段階を超えて新仏教を求める流れとして、形成されてゆきました。それは臨済宗を含む新しい宗派が日本に定着し始める流れとなり、建仁寺を拓いた栄西の活躍の時代となるのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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