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【日曜特集】平成28年第1空挺団降下訓練始【01】中谷元防衛大臣の到着(2016-01-10)

2019-08-11 20:15:08 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
■正月幕之内の第1空挺団
 陸上第1空挺団、日本自衛隊に精鋭部隊は数あれど間違いなく最精鋭筆頭に挙げられる、別名日本唯一の軍隊とはここ。

 陸上幕僚長岩田清文陸将が搭乗するCH-47JA輸送ヘリコプターが飛来する、岩田陸将は元71戦車連隊長という戦車乗りで、元第7師団長、前任はあの東日本大震災統合任務部隊司令官を務めた事で評価され東北方面総監から陸幕長を補職された君塚栄治陸幕長です。

 ここは千葉県習志野訓練場上空、この日は2016年1月10日、毎年念頭に挙行される第1空挺団降下訓練始が挙行される念頭記念日です。第1空挺団は大臣直轄部隊である中央即応集団即応部隊であり、世界中如何なる任地へも危険な任務へも即応する空中挺身部隊だ。

 CH-47JA輸送ヘリコプターは陸上自衛隊が55機と世界的に見ても多数を装備していまして、更に航空自衛隊もレーダーサイトへの輸送用に20機を運用、自衛隊全体で75機を運用しています。川崎重工でのライセンス生産により、稼動率と信頼性も高い点が特色です。

 第1ヘリコプター団はCH-47JA輸送ヘリコプターを32機集中配備する自衛隊最強のヘリコプター輸送部隊で、この日は降下訓練始め視察の高級将官や政府要人の空輸支援にも当っています。空輸支援に加え、当然降下訓練始めへ参加する機体も既に退去展開している。

 第1空挺団降下訓練始め、この訓練は展示訓練的な意味合いが大きく、報道公開されると共に広く一般にも公開されています。毎年この行事が最初の自衛隊行事撮影という方も多く、開門時間は勿論、早朝というよりも深夜の時間帯から訓練場前に並ぶ人も多いという。

 高射教導隊第3中隊の87式自走高射機関砲が待機位置へ前進してゆきます。空挺団の年頭行事ではあるのですが、その支援には陸海空自衛隊の様々な部隊が協同していまして、なかなか見る事が出来ない装備品が普通に参加しますのも、多くの見学者が集う理由の一つ。

 第1戦車大隊の10式戦車が。おお、歓声が。2016年では既に北海道の第2戦車連隊と第1戦車大隊と第8戦車大隊へ配備開始、間もなく第71戦車連隊と第4戦車大隊へも配備開始となる、ただ、戦車数削減政策により本来この年に第3戦車大隊への配備予定は中止に。

 CH-47JA輸送ヘリコプターが更に一機、上空に展開します。第1ヘリコプター団はここ習志野訓練場の所在する千葉県と並ぶ千葉県木更津市、木更津駐屯地に駐屯しています。CH-47JA輸送ヘリコプターとは、CH-47J輸送ヘリコプターの航続距離を延伸したもの。

 空挺隊員が落下傘で降下する。先程飛行のCH-47JA輸送ヘリコプター一機の後部扉から空へ躍り出た空挺隊員と直後に開く落下傘、見よ落下傘!空に舞い、とはいうもののん、いきなりの空挺降下開始か、とまだカメラ準備できていないのに、等という様な流れには。

 降下試験ですので、そんな流れにはなりません。この日は快晴、ですが、一定以上の強風ですと落下傘降下が中止、となる事もあります。ここ習志野訓練場は空挺部隊の訓練場としては、米軍特殊部隊員が驚く程に狭く、強風の最中で降下しますと市街地に出てしまう。

 UH-1J多用途ヘリコプターとペトリオットミサイル、ペトリオットミサイルは都市部防空用の航空自衛隊の装備ですが、これは別に訓練参加ではなく、習志野分屯基地に展開する第1高射群第1高射隊の装備で、万一の低空侵攻に備えて、日夜即応体制を執っています。

 兒玉恭幸陸将補、第1空挺団長の空挺降下です。第1空挺団降下訓練始めでは伝統として空挺団長以下主要幹部と最年長の空挺隊員と共に最年少の空挺隊員が先陣を切って降下します。空挺団は全員空挺徽章持ち、有事の際には指揮官先頭で戦闘落下傘降下ができる。

 空挺とは空中挺身の略称です。これは旧軍時代の造語なのですが、諸外国の空挺部隊は直訳しますと落下傘部隊やパラシュート部隊という名称が付与されます。ただ、主力から前進し独立戦闘を担うという空挺部隊の運用を考えますと、落下傘部隊よりも納得がゆく。

 空挺団は陸将補の空挺団長を指揮官に1佐の空挺団副団長と空挺団高級幕僚を置き、空挺団本部、第1空挺大隊、第2空挺大隊、第3空挺大隊、空挺特科大隊、空挺団後方支援隊、空挺通信中隊、空挺施設中隊、という編成です。各部隊の隊長が、この降下で続いて行く。

 696ML/12落下傘、2000年から採用されているフランス製落下傘ライセンス生産品を装備しています。実は既に13式空挺傘としてこの降下訓練始めの時点では後継落下傘が採用されていますが、この降下訓練始めは全部隊が習熟している696ML/12落下傘を用いました。

 13式空挺傘、落下傘に高性能低性能はあるのか、と疑問がもたれるかもしれませんが、696ML/12落下傘では狭い地域へ集中投下する考慮は無く、低速で空中接触した場合に絡まる危険がありました、13式空挺傘はこの点が改良され、多数が同時展開できるように。

 CH-47JA輸送ヘリコプターが、四つ星を冠して要人輸送任務に当っています。この行事では統合幕僚長と海上幕僚長に航空幕僚長が視察します。先ほどの陸上幕僚長到着は、ここまでの空挺団幹部の降下を視察する、という目的で一足先に進出したのでしょうか、ね。

 55名の人員を同時空輸するCH-47JA輸送ヘリコプターは着陸時に物凄い砂塵を巻き起こします。詰め込めば80名程度ならば普通に空輸できますが、1982年にフォークランド紛争ではイギリス陸軍が通勤電車方式で詰め込み210名を短距離空輸した事例もあります。

 要人が続々と到着する。CH-47JA輸送ヘリコプターは、中距離多目的誘導弾や93式近距離地対空誘導弾にP-19対空レーダ装置と牽引車を含む120mmRT重迫撃砲と軽装甲機動車等を空輸できます。短距離ならば、FH-70榴弾砲や81式短距離地対空誘導弾本体も載る。

 C-1輸送機が、離陸したCH-47JA輸送ヘリコプターの奥に見えました。既に降下訓練は試験効果により視程も風速も共に可能という決定があり、空挺降下に備えて既に航空自衛隊輸送機複数に分乗した空挺隊員は千葉県上空を旋回しつつ降下開始まで、空中待機中です。

 中谷元防衛大臣の到着、中谷大臣は第一次小泉内閣において第67代防衛庁長官を経験、第三次安倍内閣では再任され、今回の降下訓練始めを第14代防衛大臣として視閲しました。そして防衛大学校出身で2尉まで務めレンジャー徽章も有しますが、退官し政治の道へ。

 中谷大臣は宮沢喜一代議士秘書等を務め1990年に衆院選に郷里高知県より候補、以来一貫し経験を積んでいます。ちなみに防衛大学校ではこの当時の陸幕長の先輩に当るとも。あまり関係ないですが、誕生日は10月14日でして、鉄道の日にあたる。これは余談ですよ。

 要人輸送は此処で完了、在日米軍関係者を含め多くが。なお、この降下訓練始めを欠席する防衛大臣は再選できないという逸話がありましたが、民主党政権時代の北澤俊美大臣と一川保夫大臣と田中直紀大臣は此処に来ていたが後の衆院選で全員落選、逸話だったよう。

 高高度を飛行するCH-47JA輸送ヘリコプター、良く見ますと高高度を飛行する機体の後部から人員が飛び出しているのが見分けられるでしょうか、そう、高高度自由降下を始めている様子が見えます、いよいよ、ここから2016年第1空挺団降下訓練始めが開始されます。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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5 コメント

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Unknown (ハリー)
2019-08-11 22:43:06
こんにちは
第一空挺で、よくわからない情報がありまして。
空挺団には対テロ中隊が編成されている、という記事でした(特殊作戦群とは全く別に)。
「軍事研究」2007年3月号の高井三郎氏の記事なんですが、調べても、この記事以外には全く言及されていません。事実誤認?なのか、ご存知の方はいらっしゃいますでしょうか?
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Unknown (流線形)
2019-08-11 23:00:50
宮崎県都農町、都農神社内にある護国神社に「空挺落下傘部隊発祥の地」という石碑が建っております。
そばの唐瀬原(からせばる)で編成されました。
今でも、航空自衛隊の基地である新田原(唐瀬原の南隣、「原(バル)」は宮崎弁で広い段丘のこと)の航空祭で、第1空挺団が空挺降下を展示しているのは、そういった経緯があると聞いております。
最後の組織的な軍事行動は、バテレ峠防衛戦だったと思います。
その様子について、祖父(砲兵)から生証言を聞いております。
(野砲兵連隊は、リンガエン湾で艦砲射撃により壊滅)
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新田原 (はるな)
2019-08-31 12:13:39
流線形 様 こんにちは

新田原の空挺降下、上手く撮れましたので、空挺関連の話題に良く写真を使っていますが、なるほどそういう歴史がありましたか
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訓練部隊 (はるな)
2019-08-31 12:18:58
ハリー 様 こんにちは

対テロ中隊、普通科群中心に訓練目的で臨時集成されたという話はよく聞きます。訓練部隊の編成は部隊新編の手続きが団だけで完結しますから、ね。で、情勢次第で、書類上、妙に臨時集成の期間が長く無いか、いえいえ実動目的の改編ではございません、という。
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Unknown (ハリー)
2019-09-01 22:55:07
はるな様
なるほど、そういった事情があった訳ですね。
ありがとうございます。
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