■防衛フォーラム
今回は陸軍関連の話題ですが世界の趨勢は自衛隊の将来運用や装備体系に参考となる点が多いはずです。
アメリカ陸軍はM-2A4ブラッドレイ装甲戦闘車を追加調達します。これはBAEシステムズ社との間で新規契約として1億9000万ドルの追加契約は公開されたもので、この契約を通じてM-2A4ブラッドレイ装甲戦闘車とその派生型を含む70両が追加調達されることとなります。これらの製造はテキサス州とサウスカロライナ州においておこなわれる。
M-2A4ブラッドレイ装甲戦闘車は陸軍の機甲旅団戦闘団を構成する主力車両の一つであるとともに、ここ一年間はアメリカがウクライナ軍へ軍事援助として供与したものが新興したロシア軍への反攻作戦に投入され、一部の車両は撃破されていますが、強靭な防御力により一部には125mm戦車砲弾が命中した場合でも乗員と兵員を防護した事例があります。
■M-1E3戦車
M-1の設計をどこまで将来世界水準の性能を維持できるのか。
アメリカ陸軍はM-1エイブラムス戦車の新型M-1E3戦車を開発する。アメリカ陸軍は9月8日に新しい方針を発表しました、M-1エイブラムス戦車といえば105mm砲を備えたM-1から120mm戦車砲に切り替えたM-1A1を筆頭に、デジタル戦闘能力を追加したM-1A2が開発され、そのご断続的な近代化改修をA2SEP改修として続けています。
SEPとはシステム強化パッケージといい、SEP2シリーズが現在使用される最新型であるとともにSEP3の開発がすすめられ、次の段階としてSEP4が開発されると考えられていましたが、アメリカ陸軍部内ではSEPを重ねるとともに防御力を強化することで重量が70tに近づき、事実上主力戦車として運用できる上限を超えつつあることが悩みでした。
M-1E3戦車はM-1戦車の延長線上に設計されておりM-4戦車というような新設計の戦車となる訳ではありません、これにより現在M-1を近年採用し、運用する同盟国や友好国は買い替えという選択肢以外に既存戦車の近代化改修という選択肢が残される事にもなる模様で、M-1E3は2030年代にも初度作戦能力獲得を目指し開発されるとのことです。
■コンバットアームズイヤープラグ
消防士の職業病が欧州では問題になっていますが軍人さんの職業病はやはり難聴なのですね。
アメリカの3M社は欠陥あるコンバットアームズイヤープラグ耳栓による退役軍人らによる訴訟で60億ドルの和解金を支払う事となりました。コンバットアームズイヤープラグ耳栓は至近距離での銃撃や迫撃砲や榴弾砲などの射撃に際して将兵の耳を強烈な音圧と衝撃波から保護するという製品でしたが、実際には機能を果たさなかったとされる。
コンバットアームズイヤープラグ耳栓訴訟にはアメリカの数十万という退役軍人が難聴などの被害を受けたとしていて、裁判では3M社が欠陥を知りつつ納入していたことが争われたといい、全米史上最大の大規模不法行為とされていました。和解金は先ず現金50億ドルを支払いのこる10億ドルは3M株を持って充てるとともに、2029年までに支払う。
■UH-72A近代化
スバルUH-2のベルヘリコプターテキストロン社版を後継機に勧めたいものなのですがさて。
アメリカ陸軍は州兵用UH-72A軽多用途ヘリコプターを近代化改修することとなりエアバス社との間で2780万ドルの契約を結びました。UH-72Aは通称ラコタ、エアバスH-145ヘリコプターの米軍仕様、海外での戦闘任務などには想定されておらず国境警備や麻薬密輸対策に災害派遣などのために運用され、全米の州兵は107機を装備しています。
UH-72シリーズはUH-72Aのほか、後期型のUH-72Bがあり、アメリカ軍全体で480機を運用しています、陸軍はこのうちUH-72Aについて50機へコックピットのデジタル表示装置更新と航空機用デジタルマップ能力付与、また航空任務支援戦術情報端末の追加などによりISR警戒監視能力を強化するとともに回転翼部分の更新などが行う方針です。
■VBCOAP155mmSR計画
一作目のゴジラで撃ってたやつが現役という。
ブラジル陸軍はトラック式装輪自走砲VBCOAP155mmSR計画を発表しました。ブラジル陸軍の牽引式野砲は第二次世界大戦中の老朽化し射程も陳腐化しているM-114A1榴弾砲であり、元々の設計はM-1920という1920年代の設計の火砲をトラックなどによる牽引を可能としたもので、1940年代では画期的でしたが現代背はその限りでありません。
M-114A1榴弾砲は最大射程14.9kmと120mm重迫撃砲に射程を脅かされる状況であり、また半自動装てん装置などを有さないために連続射撃能力も低く陣地変換にも時間を要します。VBCOAP155mmSRはトラック式の52口径野砲を導入することで刷新を目指すもの、具体的には新規設計ではなくカエサル自走砲など海外製装備を導入する方針のもよう。
■RCV無人工兵戦闘車
この種の装備は戦車を造り続けて製造後15年経たものを支援車輛に改造した方がいいように思えてきます。
イギリスのピアソンエンジニアリング社はRCVパイオニア無人工兵戦闘車を発表しました、これはDEEI2023国際危機管理展において発表されたもので装軌式車両に様々な工兵装備を搭載し排土板による障害除去や爆導索を装備した地雷原処理車などが提示、メーカーによればこれらアタッチメントは工兵2名により30分間にて換装できるとのこと。
ウクライナ戦争におけるウクライナ軍反撃が緒戦でとん挫したのはロシアが敷設した濃密な地雷原であり、工兵能力の重要性が世界的に改めて認識されていたところでした。なお、このピアソンエンジニアリング社はイギリスのニューカッスルに本社を置いていますがイスラエルの防衛企業ラファエルアドバンスシステムズ社の子会社となっています。
■LAH軽攻撃ヘリ
KUH-1をそのままAH-1のようなタンデム複座に再設計した方が早いように思えるんですよね。
韓国軍が導入するLAH軽攻撃ヘリコプターの量産が開始されます。韓国軍はAH-64Eアパッチガーディアン戦闘ヘリコプターの導入を進めるとともに、AH-1S対戦車ヘリコプターとMD-500対戦車ヘリコプターの後継機としてエアバスEC-155を原型とした武装ヘリコプターをKAI韓国航空宇宙産業が開発を進めており、これが量産開始となります。
EC-155はユーロコプタードーファンとして日本でも警察や消防と民間などが多数を運用しているとともに武装型も提示されています、この中でKAIでは機首部分に20mm機関砲を搭載し、射程8㎞のチュングム対戦車ミサイルの運用能力を付与する、EC-155の過去に発表された武装型よりも強力な打撃力が付与、輸出を含め300機を量産する計画です。
■MRC中距離能力中隊
中距離核戦力全廃条約の失効を受けての施策だ。
アメリカ陸軍はMRCトマホークミサイル地上発射システムからの発射に成功したと発表しました。このMRCトマホークミサイル地上発射システムからの試験は6月27日にワシントン州ルイスマッコード統合軍基地に所在する第一ドメイン任務隊隷下部隊が実施したとされ、発射試験には海軍無人航空機軍事局による支援が行われたとのことです。
MRCトマホークミサイル地上発射システムは、水上戦闘艦艇に広範に採用されているMk41VLS垂直発射装置を陸上運用型としたもので、走行時には発射装置を寝かせた状態で車高を抑え、射撃時には発射装置を直立させて運用します。なおこの発射システムには海軍の長距離艦対空ミサイルであるスタンダードSM-6艦対空ミサイルの運用も可能です。
アメリカ陸軍はMRC中距離能力中隊としてトマホークミサイルを中隊規模で地上に分散配備する構想を有しており、1800㎞以遠の目標を攻撃可能であるトマホークミサイルを海軍の艦艇以外からも運用し統合打撃能力を強化する構想です。発射システムには4発を搭載、中隊は指揮車とともに4両の発射システムを運用、16発を同時発射します。
■K-239-Homar-K
HIMARSよりもMLRSの方が生存性が高いように見えるのですが路上機動性の方が重視される風潮のなかでこうしたタイヤ式ロケット砲が。
ポーランド陸軍は韓国製K-239-Homar-K装輪多連装ロケットシステムの受領を開始しました。ロシア軍事圧力増大を背景に国防力強化を急ぐポーランド軍は2022年にアメリカよりHIMARS高機動ロケットシステム500両の調達を希望するものの、費用面と量産が間に合わない事から却下され、代替案として韓国よりK-239を取得することとしました。
K-239はアメリカ製GMLRS精密誘導ロケットを含む様々なロケット弾の投射能力を持つ韓国版HIMARSとして開発されており、ポーランド軍ではポーランドの自動車メーカーが製造するJelcz-P882八輪型トラックに搭載することで運用互換性を強化しています。ポーランド軍はK-239を218両調達する構想で、全般火力支援能力を抜本的に強化します。
■VERA-NG防空監視装置
防衛装備庁のマイモレーダーという発想があながち的外れではない事を示す。
ドイツのヘンソルト社はチェコのERA社とともに画期的なVERA-NGパッシヴ式防空監視装置を開発中です。防空監視の要諦であるレーダーは自身から強力な電波を発振することで逆に位置が標定され、防空制圧部隊や対レーダーミサイルなどの標的となる問題を抱えていました。この為、距離の多寡にかかわらずパッシヴ式装備が求められていました。
VERA-NGパッシヴ式防空監視装置はESM電波探知装置とパッシヴロケーターや光学情報装置など様々な兆候から航空機の位置を標定するもので、レーダーほどの確実性や、また長距離の索敵を行えるものではありませんが、これまでレーダー以外の探知技術は限られており、将来の防空監視などにおいて新しい一歩を記録する可能性を秘めています。
■CV-90アイアンフィスト
戦車異常よりも多数が乗っていますからねえ。
スウェーデンのヘルグラント社が開発したCV-90装甲戦闘車はアイアンフィストアクティヴ防御装置を搭載します。今回搭載が発表されたのはイスラエルのエルビットシステムズ社製Iron Fistアクティヴ防護装置で、搭載車両数は示されていませんが、今後3年間で1億0900万ドルの契約規模とのこと。Iron Fistはアクティヴ防護装置では小型という。
CV-90装甲戦闘車はヘルグラント社が開発、現在は防衛産業再編によりBAEシステムズヘルグランド社が製造を担当しています。Iron Fistは砲塔側面と砲塔上部正面にミリ波レーダ装置を搭載し、対戦車ミサイルやロケット弾と自爆用無人機を捕捉、砲塔上部に搭載する赤外線センサーと擲弾発射装置によりこれらを迎撃、戦車や装甲車への脅威を防ぎます。
■クロスボウ迫撃砲
射程は120mmRTよりも短い。
イスラエルのエルビットシステムズ社はDSEIロンドン2023国際防衛シンポジウムへクロスボウ迫撃砲砲塔システムを出展しました。クロスボウ迫撃砲システムは砲塔に後填式迫撃砲と自動装てん装置を一体化させたもので、UT-120mm迫撃砲を砲システムとして採用、比較的中型の、装軌式や六輪式以上の装輪装甲車であれば搭載が可能としています。
クロスボウ迫撃砲システムは停車から30秒以内に初弾の射撃が可能で、しかし行進間射撃能力はない。最大発射速度は1分間に10発、緊急効力射では最初の1分間のみ16発を射撃可能で持続射撃能力は毎分6発、射程は10㎞とのことですが、緊急効力射の場合は射程が制限されるという。迫撃砲そのものはNATO標準弾薬に適合するとしています。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
今回は陸軍関連の話題ですが世界の趨勢は自衛隊の将来運用や装備体系に参考となる点が多いはずです。
アメリカ陸軍はM-2A4ブラッドレイ装甲戦闘車を追加調達します。これはBAEシステムズ社との間で新規契約として1億9000万ドルの追加契約は公開されたもので、この契約を通じてM-2A4ブラッドレイ装甲戦闘車とその派生型を含む70両が追加調達されることとなります。これらの製造はテキサス州とサウスカロライナ州においておこなわれる。
M-2A4ブラッドレイ装甲戦闘車は陸軍の機甲旅団戦闘団を構成する主力車両の一つであるとともに、ここ一年間はアメリカがウクライナ軍へ軍事援助として供与したものが新興したロシア軍への反攻作戦に投入され、一部の車両は撃破されていますが、強靭な防御力により一部には125mm戦車砲弾が命中した場合でも乗員と兵員を防護した事例があります。
■M-1E3戦車
M-1の設計をどこまで将来世界水準の性能を維持できるのか。
アメリカ陸軍はM-1エイブラムス戦車の新型M-1E3戦車を開発する。アメリカ陸軍は9月8日に新しい方針を発表しました、M-1エイブラムス戦車といえば105mm砲を備えたM-1から120mm戦車砲に切り替えたM-1A1を筆頭に、デジタル戦闘能力を追加したM-1A2が開発され、そのご断続的な近代化改修をA2SEP改修として続けています。
SEPとはシステム強化パッケージといい、SEP2シリーズが現在使用される最新型であるとともにSEP3の開発がすすめられ、次の段階としてSEP4が開発されると考えられていましたが、アメリカ陸軍部内ではSEPを重ねるとともに防御力を強化することで重量が70tに近づき、事実上主力戦車として運用できる上限を超えつつあることが悩みでした。
M-1E3戦車はM-1戦車の延長線上に設計されておりM-4戦車というような新設計の戦車となる訳ではありません、これにより現在M-1を近年採用し、運用する同盟国や友好国は買い替えという選択肢以外に既存戦車の近代化改修という選択肢が残される事にもなる模様で、M-1E3は2030年代にも初度作戦能力獲得を目指し開発されるとのことです。
■コンバットアームズイヤープラグ
消防士の職業病が欧州では問題になっていますが軍人さんの職業病はやはり難聴なのですね。
アメリカの3M社は欠陥あるコンバットアームズイヤープラグ耳栓による退役軍人らによる訴訟で60億ドルの和解金を支払う事となりました。コンバットアームズイヤープラグ耳栓は至近距離での銃撃や迫撃砲や榴弾砲などの射撃に際して将兵の耳を強烈な音圧と衝撃波から保護するという製品でしたが、実際には機能を果たさなかったとされる。
コンバットアームズイヤープラグ耳栓訴訟にはアメリカの数十万という退役軍人が難聴などの被害を受けたとしていて、裁判では3M社が欠陥を知りつつ納入していたことが争われたといい、全米史上最大の大規模不法行為とされていました。和解金は先ず現金50億ドルを支払いのこる10億ドルは3M株を持って充てるとともに、2029年までに支払う。
■UH-72A近代化
スバルUH-2のベルヘリコプターテキストロン社版を後継機に勧めたいものなのですがさて。
アメリカ陸軍は州兵用UH-72A軽多用途ヘリコプターを近代化改修することとなりエアバス社との間で2780万ドルの契約を結びました。UH-72Aは通称ラコタ、エアバスH-145ヘリコプターの米軍仕様、海外での戦闘任務などには想定されておらず国境警備や麻薬密輸対策に災害派遣などのために運用され、全米の州兵は107機を装備しています。
UH-72シリーズはUH-72Aのほか、後期型のUH-72Bがあり、アメリカ軍全体で480機を運用しています、陸軍はこのうちUH-72Aについて50機へコックピットのデジタル表示装置更新と航空機用デジタルマップ能力付与、また航空任務支援戦術情報端末の追加などによりISR警戒監視能力を強化するとともに回転翼部分の更新などが行う方針です。
■VBCOAP155mmSR計画
一作目のゴジラで撃ってたやつが現役という。
ブラジル陸軍はトラック式装輪自走砲VBCOAP155mmSR計画を発表しました。ブラジル陸軍の牽引式野砲は第二次世界大戦中の老朽化し射程も陳腐化しているM-114A1榴弾砲であり、元々の設計はM-1920という1920年代の設計の火砲をトラックなどによる牽引を可能としたもので、1940年代では画期的でしたが現代背はその限りでありません。
M-114A1榴弾砲は最大射程14.9kmと120mm重迫撃砲に射程を脅かされる状況であり、また半自動装てん装置などを有さないために連続射撃能力も低く陣地変換にも時間を要します。VBCOAP155mmSRはトラック式の52口径野砲を導入することで刷新を目指すもの、具体的には新規設計ではなくカエサル自走砲など海外製装備を導入する方針のもよう。
■RCV無人工兵戦闘車
この種の装備は戦車を造り続けて製造後15年経たものを支援車輛に改造した方がいいように思えてきます。
イギリスのピアソンエンジニアリング社はRCVパイオニア無人工兵戦闘車を発表しました、これはDEEI2023国際危機管理展において発表されたもので装軌式車両に様々な工兵装備を搭載し排土板による障害除去や爆導索を装備した地雷原処理車などが提示、メーカーによればこれらアタッチメントは工兵2名により30分間にて換装できるとのこと。
ウクライナ戦争におけるウクライナ軍反撃が緒戦でとん挫したのはロシアが敷設した濃密な地雷原であり、工兵能力の重要性が世界的に改めて認識されていたところでした。なお、このピアソンエンジニアリング社はイギリスのニューカッスルに本社を置いていますがイスラエルの防衛企業ラファエルアドバンスシステムズ社の子会社となっています。
■LAH軽攻撃ヘリ
KUH-1をそのままAH-1のようなタンデム複座に再設計した方が早いように思えるんですよね。
韓国軍が導入するLAH軽攻撃ヘリコプターの量産が開始されます。韓国軍はAH-64Eアパッチガーディアン戦闘ヘリコプターの導入を進めるとともに、AH-1S対戦車ヘリコプターとMD-500対戦車ヘリコプターの後継機としてエアバスEC-155を原型とした武装ヘリコプターをKAI韓国航空宇宙産業が開発を進めており、これが量産開始となります。
EC-155はユーロコプタードーファンとして日本でも警察や消防と民間などが多数を運用しているとともに武装型も提示されています、この中でKAIでは機首部分に20mm機関砲を搭載し、射程8㎞のチュングム対戦車ミサイルの運用能力を付与する、EC-155の過去に発表された武装型よりも強力な打撃力が付与、輸出を含め300機を量産する計画です。
■MRC中距離能力中隊
中距離核戦力全廃条約の失効を受けての施策だ。
アメリカ陸軍はMRCトマホークミサイル地上発射システムからの発射に成功したと発表しました。このMRCトマホークミサイル地上発射システムからの試験は6月27日にワシントン州ルイスマッコード統合軍基地に所在する第一ドメイン任務隊隷下部隊が実施したとされ、発射試験には海軍無人航空機軍事局による支援が行われたとのことです。
MRCトマホークミサイル地上発射システムは、水上戦闘艦艇に広範に採用されているMk41VLS垂直発射装置を陸上運用型としたもので、走行時には発射装置を寝かせた状態で車高を抑え、射撃時には発射装置を直立させて運用します。なおこの発射システムには海軍の長距離艦対空ミサイルであるスタンダードSM-6艦対空ミサイルの運用も可能です。
アメリカ陸軍はMRC中距離能力中隊としてトマホークミサイルを中隊規模で地上に分散配備する構想を有しており、1800㎞以遠の目標を攻撃可能であるトマホークミサイルを海軍の艦艇以外からも運用し統合打撃能力を強化する構想です。発射システムには4発を搭載、中隊は指揮車とともに4両の発射システムを運用、16発を同時発射します。
■K-239-Homar-K
HIMARSよりもMLRSの方が生存性が高いように見えるのですが路上機動性の方が重視される風潮のなかでこうしたタイヤ式ロケット砲が。
ポーランド陸軍は韓国製K-239-Homar-K装輪多連装ロケットシステムの受領を開始しました。ロシア軍事圧力増大を背景に国防力強化を急ぐポーランド軍は2022年にアメリカよりHIMARS高機動ロケットシステム500両の調達を希望するものの、費用面と量産が間に合わない事から却下され、代替案として韓国よりK-239を取得することとしました。
K-239はアメリカ製GMLRS精密誘導ロケットを含む様々なロケット弾の投射能力を持つ韓国版HIMARSとして開発されており、ポーランド軍ではポーランドの自動車メーカーが製造するJelcz-P882八輪型トラックに搭載することで運用互換性を強化しています。ポーランド軍はK-239を218両調達する構想で、全般火力支援能力を抜本的に強化します。
■VERA-NG防空監視装置
防衛装備庁のマイモレーダーという発想があながち的外れではない事を示す。
ドイツのヘンソルト社はチェコのERA社とともに画期的なVERA-NGパッシヴ式防空監視装置を開発中です。防空監視の要諦であるレーダーは自身から強力な電波を発振することで逆に位置が標定され、防空制圧部隊や対レーダーミサイルなどの標的となる問題を抱えていました。この為、距離の多寡にかかわらずパッシヴ式装備が求められていました。
VERA-NGパッシヴ式防空監視装置はESM電波探知装置とパッシヴロケーターや光学情報装置など様々な兆候から航空機の位置を標定するもので、レーダーほどの確実性や、また長距離の索敵を行えるものではありませんが、これまでレーダー以外の探知技術は限られており、将来の防空監視などにおいて新しい一歩を記録する可能性を秘めています。
■CV-90アイアンフィスト
戦車異常よりも多数が乗っていますからねえ。
スウェーデンのヘルグラント社が開発したCV-90装甲戦闘車はアイアンフィストアクティヴ防御装置を搭載します。今回搭載が発表されたのはイスラエルのエルビットシステムズ社製Iron Fistアクティヴ防護装置で、搭載車両数は示されていませんが、今後3年間で1億0900万ドルの契約規模とのこと。Iron Fistはアクティヴ防護装置では小型という。
CV-90装甲戦闘車はヘルグラント社が開発、現在は防衛産業再編によりBAEシステムズヘルグランド社が製造を担当しています。Iron Fistは砲塔側面と砲塔上部正面にミリ波レーダ装置を搭載し、対戦車ミサイルやロケット弾と自爆用無人機を捕捉、砲塔上部に搭載する赤外線センサーと擲弾発射装置によりこれらを迎撃、戦車や装甲車への脅威を防ぎます。
■クロスボウ迫撃砲
射程は120mmRTよりも短い。
イスラエルのエルビットシステムズ社はDSEIロンドン2023国際防衛シンポジウムへクロスボウ迫撃砲砲塔システムを出展しました。クロスボウ迫撃砲システムは砲塔に後填式迫撃砲と自動装てん装置を一体化させたもので、UT-120mm迫撃砲を砲システムとして採用、比較的中型の、装軌式や六輪式以上の装輪装甲車であれば搭載が可能としています。
クロスボウ迫撃砲システムは停車から30秒以内に初弾の射撃が可能で、しかし行進間射撃能力はない。最大発射速度は1分間に10発、緊急効力射では最初の1分間のみ16発を射撃可能で持続射撃能力は毎分6発、射程は10㎞とのことですが、緊急効力射の場合は射程が制限されるという。迫撃砲そのものはNATO標準弾薬に適合するとしています。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)