北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

F-35 調達正式契約を航空自衛隊次期戦闘機として6月29日までに締結

2012-06-20 23:40:14 | 防衛・安全保障

◆機体価格は102億円、ただし開発費分担費未知数

 防衛省航空自衛隊は16日、次期戦闘機としてF-35の調達を正式に契約すると発表しました。

Img_8806 契約は6月29日までに実施され、初年度調達機として4機分を契約、一機当たりの取得費用は102億円と、当初予算の99億円を弱化うわ廻ることとなりますが、これにより十年にわたりその決定が注目された次期戦闘機が決定、航空自衛隊用の初飛行から41年を経たF-4EJ戦闘機の後継機が正式に調達されることとなりました。

Img_7838 一説には調達費用高騰と開発計画の難航を背景に防衛省が辞意戦闘機選定を白紙撤回し、別の機体の導入を模索するのではないか、という見方もあったようですが、この場合、再度の選定には更に一年以上の年数を要し、F-4戦闘機の運用について、今でもかなりの無理を重ねているだろう実情からは大きな懸念があったところ。

Img_9353 他方で、機体価格は102億円という想定の範疇に収まっていますが、初度調達品を始め今後我が国が様々な内容を経て支出しなければならない開発費分担金という問題は解決されていないのです。102億円ですが、上位開発参加国であるイギリス海軍が導入を計画するF-35Bの単価1億ポンドと変化はなく、開発に不参加であり開発費を支出していない我が国はこの負担をしなければなりません。

Img_8860_1
 このほか、F-35は第五世代戦闘機に当たり、ソフトウェアの近代化改修が能力維持に大きな影響を及ぼすという点のほか、国内での近代化改修を行うことが実質的に不可能であり、制空戦闘ではなく統合打撃任務に用いる機体と、航空自衛隊の運用体系と必ずしも合致しない中をどのように適合させてゆくのか、これも大きな問題となるでしょう。

Img_8891 そして納期が実質的に何時になるのか、航空自衛隊の飛行隊に実際に配備されるのはいつなのか、即ちF-4EJ改をいつまで運用しなければならないのか、という問題はこれからの課題ということでもあり、まだまだ予断を許すところではありませんが、少なくともF-4EJの後継機が決定した、航空自衛隊が第五世代戦闘機を導入する、この点は歓迎すべき決定と考えます。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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UNMISS南スーダンPKO 陸上自衛隊第二次派遣部隊現地到着 第一次派遣部隊と交代へ

2012-06-19 23:05:32 | 防衛・安全保障

◆第二次派遣部隊330名は北部方面隊主力

 派遣開始当時緊張が伝えられた南スーダンPKOは現在のところ順調のようです。

Img_2377 朝雲新聞が伝えるところによれば、松木信孝2佐指揮下の南スーダンPKO第二次派遣部隊主力が6月9日、チャーター機により千歳空港を出発、10日に南スーダン首都ジュバへ到着したとのこと。続いて第二波は22日に出国予定とのこと。この第二次派遣部隊は330名規模となり、施設隊としての人道支援任務を進めてゆく。

Img_0070 この第二次派遣部隊の到着を受け、第一次派遣部隊のうち、小野栄二2佐以下の60名が羽田空港へ帰国し、宿営地整備任務が完了、部隊生活基盤を構築し、今後の任務への万全の態勢を整えたとの報を苦を行い、続いて今月中には第一次派遣部隊全てが帰国するとのことです。

Img_3651 特に今年初旬に南スーダン軍が国境地域で軍事面に劣勢にも拘らずスーダン軍へ攻勢に出たことから情勢が心配されましたが、現段階では小康状態を保っています。ただし、国境地域の画定が行われていない現状では、紛争要因が解決に至っていないため、PKO以外の面から外交面でこの解決に進む必要があることは忘れてはなりません。

Img_5435 他方、今回は政府専用機を政府任務への運用へ残す必要が阿多事からチャーター機を用いましたが、今後の国際平和維持活動などへの協力を考えれば、大型輸送機として全日空の中古でよいのでボーイング747が欲しいところ。今後、国際貢献任務の展開をどうするかで左右されることですが、海外展開能力は、これまで以上に真剣に取り組んでゆく必要があります。

北大路機関:はるな

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日米韓共同訓練、立入検査訓練・捜索救難訓練中心に朝鮮半島南方海域にて21日より実施

2012-06-18 20:24:14 | 防衛・安全保障

◆海上自衛隊からは、くらま、きりしま、ゆうだち参加

 防衛省によれば、今週木曜日と金曜日に当たる21日、22日に日米韓共同訓練を行うとのことです。

Eimg_1096 海上自衛隊からは、護衛艦くらま、きりしま、ゆうだち、の三隻を派遣。米海軍からは原子力空母ジョージワシントン、そのほかミサイル巡洋艦など数隻を派遣、韓国海軍も艦艇数隻を派遣、訓練実施海域は朝鮮半島南方海域において実施され、訓練では戦術運動訓練、立ち入り検査委訓練、捜索救難訓練が行われるほか、参加艦艇による写真撮影も実施されると発表されました。

Eimg_6596 日米合同訓練は日常的に実施されていますが、日韓合同訓練が実施されたのは1998年、比較的最近の実績となっています。訓練内容から、一定の水準であり、データリンクを結んでの対水上対空対潜訓練にはまだまだ政治的制約があり実現に至る見通しは立ちませんが、日米韓の参加国による訓練の機会は2008年より始まった試みで、ここから実績を積み重ねる必要があるといえるでしょう。

Eimg_9283_1 一方で海上自衛隊は、先日の北朝鮮ミサイル事案に際し、落下危険海域へイージス艦を集中させていたため、弾道ミサイル発射失敗の情報を得られる黄海上にイージス艦を展開させず、その情報把握が遅れた反省があり、今後は同様の事態に際し黄海へのイージス艦展開を検討中です。そうした運用の転換を考慮するのであれば、日米韓の対空戦闘情報に関する水上戦闘艦間のデータリンクは今後考える必要があることから、今回のような訓練の頻度と内容を深化させてゆくことが必要と言えます。

北大路機関:はるな

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海上自衛隊地方隊への一考察④ 海上自衛隊基地のNBC防護体制をいかに構築するか

2012-06-17 22:29:43 | 防衛・安全保障
◆同時に原子力事故下の基地機能維持という側面
 地方隊の任務には基地機能の維持と自衛艦隊への補給支援が含まれますが、NBC防護という視点をもう少し考える必要があるかもしれません。
Timg_86_24 基地が核攻撃を受ければ、迎撃を行うほか着弾後に実施できる能力は無く、基地周辺に分散された燃料施設や弾薬庫など無事である施設を集約し、最小限の維持を行うほかは、残念ながら放棄するほかありません。しかし、これは極論であり、例えば化学兵器による基地への攪乱攻撃などは現実的に考えられます。化学兵器と生物兵器について、洋上を行動中の艦艇に用いることはほぼ不可能であり、こんごう型以降の護衛艦はNBC防護能力があることから能力は限定的です。しかし基地というものははどうか。
Timg_832_8 この視点はゲリラコマンドー対処という視点で指摘するべきでしたが、現在のところ、海上自衛隊の除染装備は限られており、知る限りでは海上自衛隊に化学戦部隊はありません。護衛艦には除染装備が装備されており、携帯除染器が装備され、防護服による展示も地方隊展示訓練では行われているのですが、かぎられたものです。この点、航空自衛隊の基地についても比較的高い基地防空体制はあるのですがNBC兵器対策となれば戦闘機搭乗員へのガスマスクを含めこれから検討事項、という水準でしかない点は問題と考えます。
Timg_872_7 基地は特に全く移動することが無い、そして戦略目標となります。基地の支援が無ければ水上戦闘艦部隊も潜水艦部隊も航空部隊もその能力が大きく制限されてしまう。もちろん運搬手段は色々と考えられるのですが、弾道ミサイルだっても、かなり命中率が低いという前提は加害半径を化学兵器により補完する形で対応出来ます。核攻撃ですが、これは基本的に自衛隊としては弾道ミサイルや巡航ミサイルに対し、この技術と能力が高まっているのですが、落達以前に迎撃、という選択肢以外に対応できる術はありません。
Timg_5872 化学兵器ですが、特に基地が化学兵器への対処能力を欠いている場合には化学兵器攻撃、これは弾道ミサイルを含めてエスが行われるのに教導して地上と水中からのゲリラコマンドーの襲撃が行われる可能性を無視してはなりません。基本は悪意が無い自然災害と異なり軍事行動は悪意の投射であり、複合的な攪乱として十分考えられるのです。警備隊が大混乱の状況に攻撃を受ければ、どうなるのか。この視点は必要ではないでしょうか。
Timg_2546 海上自衛隊基地ですがNBC攻撃に際し、実のところ化学防護車のような陸上自衛隊の花形装備を導入する必要はありません、そういうのも化学防護車は不整地突破能力を有する野戦における化学兵器使用への汚染状況の観測が任務の車両であり、海上自衛隊基地には、もちろん周辺部の山間部は別として基地内に不整地と呼ばれるものは無いためです。この点予算面から実現性は高まるといえるでしょう。
Timg_2626 化学剤監視装置、これも車載運用ではなく可搬式のものを必要に応じて基地周辺の監視に用いる、そして特に除染装備に重点を置いて化学兵器攻撃に際しては迅速な中和剤散布実施により基地機能を維持するという方法が妥当であると考えます。中和剤散布は94式除染装置のようなものがあれば理想ではあるのですが、現状では加水分解を期待し消防車で散水することが限度なのですから、せめて第一歩として防護服の一定数配備と携帯除染器装備、そしてその操作を行う専門の部隊教育からでも始めるべきです。
Timg_3348 ここでも陸上自衛隊の支援を受ければ、という視点はあるでしょう。しかし、陸上自衛隊の化学防護部隊には非常に部隊数に対して任務が多く、海上自衛隊基地へ一個小隊という規模であっても有事の際に常駐を求めることは無理があるのです。特に安定基地のほか、海上自衛隊には重要な基地として航空部隊の航空基地があり、まず行えることは限られていたとしても、NBC防護という視点は持つべきではないでしょう。
Timg_4141 他方、もう一つの視点として核汚染対策は検討されるべきです。核攻撃に対しては確かに打つ手なしです、しかし、艦艇が外洋で放射性降下物の被害に遭い、基地において線量測定を行う必要が生じる、こうした事態は考えられるでしょう。そしてなにより、海上自衛隊基地の近傍に原子力発電所が位置する例があり、舞鶴基地と若狭湾原発集中地域での高浜原発、大飯原発、敦賀原発、美浜原発、横須賀基地と東海第二原発、佐世保基地と玄海原発、呉基地と伊方原発、大湊基地と東通原発、この原発への攻撃や災害による事故の想定は行わなければなりません。
Jimg_1289 護衛艦であれば、放射能除去装置として散水装備があります。放射性降下物は付着しなければ汚染を避けることが出来ますし、浸みこまなければ高圧放水を行う除染の必要がありません。除去装置は海水を大量に散布し放射性物質を洗い流す装備で、かなり早い時期から搭載されています。しかし、原子力事案となれば、特に住民救助任務等を行った場合は、住民が核汚染の降下物被害を受ける可能性があり、一つの防災拠点となるであろう海上自衛隊基地についても、こうした除染能力の保持は必要になってくるのではないでしょうか。
Timg_5974 福島第一原発事故では横須賀地方隊が多用途支援艦などを派遣し、原子炉冷却支援任務に当たっていますが、もちろん、直轄部隊としてより高度な原子力防災工作艦の建造を望みたいのですけれども、例えば電源車の海上からの小型輸送艦による輸送支援、例えば海上からの炉心冷却給水支援等が要請される可能性があります。専用艦とはいわずとも、一定の防護装備と検知装備を準備し、即応体制を構築できないか、この一点から指摘いたしました。
Timg_6345 もちろん、原子力事故は防止するべく防災設備の構築、重要免震棟の整備、火災対策など電力会社の責務です。それは認めるのですが、想定を行う限度があります。それならば原子力政策の放棄は、という視点も確かにあるでしょうが、我が国は工業国であり電力を簡単に賄えるものではありません。太陽電池一つとっても自社工場の広大な屋上に太陽電池を設置しそれだけで賄っている工場、私は聞きません。化石エネルギーへの過度な集中は、結局供給地域の安定維持へ自衛隊の強化と派遣を行わなければならないのです。
Timg_7384 原子力事故対策へ、自衛隊の部隊を新たに予算面と人員面を模索する、ということは簡単ではないでしょうが、少なくとも検知器材と除染装備、そして個人防護装備は保有されるべきです。これら装備は前半に記しました、防衛出動における化学兵器攻撃などに対しての基地防護装備とも一部重なる部分もあり、福島の経験があるからこそ、これまで見ないように意図的に忌避したリスク管理へ、それなりの予算措置を採ることは政治の義務ではないでしょうか。

北大路機関:はるな

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中国艦三隻大隅海峡通峡・ロシア長距離対潜哨戒機二機日本海上空に出現

2012-06-16 22:57:59 | 防衛・安全保障

◆中国艦及びロシア機動向に関する防衛省発表

 中国艦三隻が大隅海峡を通行、その翌日にロシアの長距離対潜哨戒機が日本海上空に出現しました。

Img_3305 鹿屋航空基地の第一航空群に所属するP-3C哨戒機が屋久島西方海域を13日、中国海軍艦艇3隻が東シナ海より太平洋方面へ航行しているのを確認しました。海上自衛隊によれば、今回航行が確認されたのは2006年より二隻が就役している大型の旅州型駆逐艦の瀋陽、そして量産型である江衛Ⅱ型フリゲイト九番艦の綿陽、加えて補給艦副清の三隻です。

Img_6654p 海上自衛隊がこの三隻を発見したのは屋久島西方410kmの海域ですが、その後警戒を続けたところ、艦隊は大隅海峡を東航したとのこと。大隅海峡の中国艦通峡は昨年までは非常に稀有な事例であったのですが、今年に入ってからは二回目とのことで、この海域における中国海軍の行動活性化を示しているともいえるでしょう。

Img_0401 中国海軍は近く西太平洋上において軍事演習を実施すると広報しており、今回の大隅海峡通峡艦艇の動向との関係は今のところ未知数ですが、この海域での活性化が近い将来、我が国に直接影響を及ぼすような挑発行為へ発展しないよう、護衛艦などによる警戒監視を強化することが求められます。

Img_6727 一方、ロシア機による日本海上空の我が国領域への接近事案が14日に発生しています。接近したのはTu-142,これはTu-95爆撃機を原型とした対潜哨戒型で、日本海を竹島北方空域から我が国へ接近、その後隠岐の島沖にて日本海を能登半島方面、新潟方面へ飛行、秋田沖にて奥尻方面へ針路を変え、奥尻島沖にて沿海州へ変針、大陸側に戻りました。

Img_8767 航空自衛隊では戦闘機などを緊急発進させ、対応しています。中部航空方面隊管区から北部航空方面隊管区へ展開しているため、いくつかの基地の戦闘機が緊急発進したことが考えられます。ロシア軍にとり、中国軍の行動活性化は関心事でもあるため、波及効果として今後の行動活性化への影響が生じる可能性も考慮に含めておかなければなりません。

北大路機関:はるな

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平成二十四年度六月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2012.06.16・17)

2012-06-15 23:14:22 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

 暑くなると信じて先週降雨の横須賀にて物凄い寒い思いをし、震えながら今度は総武線直通列車の事故ダイヤに巻き込まれ、疲労困憊の中上野の中田商店で防寒着を買うか真剣に悩んだ当方ですが、皆様はいかがお過ごしでしょうか。

Gimg_0989_1 今週末の自衛隊関連行事ですが、まず東京は晴海埠頭にて米海軍指揮艦ブルーリッジ、海上自衛隊最新鋭護衛艦いせ、が一般公開となります。姉妹艦は護衛艦しらね、でしたが、ひゅうが型の高度な指揮機能は瓦防衛庁長官時代に長官が指揮艦マウントホイットニーの能力を視察し、我が国にも同種の高度な能力が必要として盛り込まれたものですので、良きパートナーといえるやもしれません。

Gimg_26741 明日土曜日1230時に護衛艦いせ晴海埠頭入港、1550に海幕長と米太平洋艦隊司令官共同記者会見、17日1300~1700時に一般公開、18日午前中に護衛艦いせ出港。一般公開のお時間を間違えないように、日曜日の午後、かなり混雑が予想されます。注意事項、甲板上は滑りやすく躓きやすく、またテロ対策の観点から、特に武器及び凶器、ガラス及びびん類、酒類やペットに無線機は持ち込み禁止、ハイヒール及びサンダルやスカートは禁止です。手荷物検査が行われます。

Gimg_2345 陸上自衛隊関連行事ですが、名寄駐屯地祭、留萌駐屯地祭が行われます。名寄駐屯地は旭川の第二師団司令部よりさらに北上した位置にあり、最北の普通科連隊として、特に冬季での優秀さは全国に轟く第3普通科連隊が駐屯しています。第3普通科連隊は96式装輪装甲車で完全充足した装甲連隊でもあり、注目と言えましょう。

Gimg_4001 名寄、なにしろ冷戦時代、ソ連軍が稚内など道北に上陸した際には最初に戦闘する部隊であり、第3普通科連隊のほか、連隊戦闘団を素早く編成するべく第2特科連隊第2大隊、即座の情報収集へ第2偵察隊、防空へ方面隊直轄の第4高射特科群が駐屯している最前線の駐屯地です。

Gimg_2360 留萌駐屯地祭、第26普通科連隊が駐屯する駐屯地です。陸上自衛隊で最も早い時期に高機動車を受領し自動車化された部隊ですが、その後中々軽装甲機動車が導入されず、96式装輪装甲車は第3普通科連隊に集中配備され、一方、北海道日本海側沿岸にあり、山間部続く地形の中で留萌川を通じ内陸部の深川や旭川へ続く地形上の要衝を護る普通科連隊、です。写真は11旅団ですが。

Gimg_1249 航空自衛隊関連ですが、航空祭や基地祭、分屯基地祭は行われないのですが、浜松基地に隣接する浜松広報館にて、C-1輸送機の特別展示が土曜日と日曜日に行われるとのこと。このように一通り行事を列挙してみましたが、このほか、何処其処の港で自衛艦一般公開が行われる、今週末のあの駐屯地祭記述が抜けている、関西のSofmapでFUJIFILM-X10が格安の中古で売られていた、などの情報をお持ちの方は、最後のもの以外、あ、いやできれば最後のも含めお教えいただけると幸いです。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

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巨大地震“南海トラフ地震”への備えを考える⑦ 交通統制と治安維持へ警務隊強化と警察支援

2012-06-14 22:43:44 | 防災・災害派遣
◆交通統制無ければ自衛隊派遣も難しい
 南海トラフ地震は四国太平洋岸と紀伊半島へ津波による壊滅的被害を与えるものと想定されています。東日本大震災を受け、最大規模を徒の新しい想定での被害は、津波の規模が今まで以上に大きくなると再計算され、これは当然ながら同時に被害、そして救援の度合いも大きくなることに他なりません。
Nimg_4320 想定しておかなければならない大規模な被害、想定外という言葉を使わぬためにどの程度の部隊を展開させるのか、津波や山岳崩壊の危険が少ない経路はどの程度あり、そこにどの程度の部隊を展開させるのか、必要な道路占有量は、後方支援部隊は、救援物資の必要輸送量は、平時からの想定が何よりも重要です。ただし、紀伊半島ですが、中央部が山間部でありいくつかの道路が津波被害を受けた場合、長期間交通難所となる危険性があり、所謂孤立地域の危険性があります。これは東日本大震災においても津波による孤立地域は問題となりましたが、南海トラフ地震が引き起こす孤立地域はより広い地域において同様の問題を引き起こす事でしょう。

Nimg_5166 さて、自衛隊が展開する際には、場合によっては交通統制の実施が必要となりますので、警察の支援を受ける必要があります。東日本大震災においては人口過疎地域との印象を持たれている東北地方ではありますが、高速道路網は比較的充実していました。しかし、紀伊半島および四国地方の高速道路網整備状況はどうでしょうか。
Nimg_5863 高速道路の有無は重要な問題であり、緊急車両専用として高速道路を指定した場合には他の一般車両の流入を停止させ、必要な物流を含めた緊急車両通行に特化できる部分がありますが、一般道路を緊急車両用とした場合には、代替道路が無い場合には一般車両はどうしても流入することとなり、これは単なる規制通知だけでは防げるものではありません。
Nimg_8836 特に大規模災害においては広範な停電が起こり、信号機が機能不能となるため交通渋滞が起こります。高速道路ならば流入をICにて強制的に停止させれば対応できるのですが、一般道路ではこうした方策は不可能です。津波被害により警察署も被害を受ける事から交通規制は難しく、増援体制を構築するのか、警務隊による交通規制と共に災害派遣部隊を急送するのか、ということ。
Nimg_2384 また、南海トラフ地震発災までに火力発電所を大幅増という措置を採り、電力不足を快復していなければ、地震に伴う電力不足は非常に大きな問題となります。津波被害を受ける地域には大阪湾沿岸の火力発電所、伊勢湾沿岸の火力発電所など集中地域が被害を受け、原子力発電所が多く、他方で火力発電所は比較的少ない日本海沿岸へ発電拠点を移転することが出来なければ、戦後最長規模の停電が起こることは間違いなく、交通一つとってもなんだいとなります。
Nimg_3730 非常事態法制が進むNATO諸国においては、陸軍部隊の緊急移動に際して、道路使用規制が間に合わない場合には憲兵隊のオートバイ部隊を同行させます。オートバイ部隊は交差点に車列進入以前に展開し交通を強制に停止させ、部隊を通過させます。部隊を通過させたのちには再度発進し、この間他のオートバイがさらに先行して交差点の統制に当たるということ。一見した場合、これは必ずしも憲兵隊の総数を示すものではないと考えますが、戦車大隊一個、もしくは機械化歩兵大隊一個、自走榴弾砲部隊一個に対し、十数台規模のオートバイ部隊が随伴しているように見えましたので、概ね一個師団に対し、憲兵隊は縮小一個大隊規模、ということになるのでしょうか。勿論、この数字は例えではあるのですが、現在の警務隊で足りないことは確かです。
Nimg_6425 方面警務隊は、保安中隊一個と各師団旅団管区毎の地区警務隊を基幹としており、方面警務隊及び地区警務隊は指揮官に1佐が充てられていますが、警務隊は特別司法警察職員として三曹以上の隊員を以て編成されているため、人員規模は決して大きくありません。加えて、大規模災害に際しても警務隊には司法警察業務がありますので、全てを交通統制に充てることが出来ないということも事実、何とか人員規模を増勢できないか考えねばなりません。
Nimg_4136 警務隊は有事に際しては司令部警備要員としての機能、また可能であれば検問や橋梁警備などの任務に当たることが求められます。また、本来は駐屯地のテロ対策要員として小銃や自動散弾銃を携行して防備に当たるという任務が、諸外国の憲兵隊では充てられているのですが、人員不足という自衛隊の現状に際し、思い切って震災時の派遣部隊増援支援という観点から増強は検討されるべきと考えます。
Nimg_7030 考えられる選択肢としては機動運用です。首都防衛の必要性が叫ばれる今日、市ヶ谷駐屯地に警務連隊を創設し、二個大隊編制としたうえで、大規模災害時に際してはうち一個大隊を被災地の交通統制と司法警察業務に充てる、という運用は考えられるかもしれません。方面隊の保安中隊を保安大隊に拡充できれば、また違うのでしょうけれども。
Nimg_7486 他方で、警務隊と共に被災地域の治安維持をどうするか、考える必要があります。特別司法警察職員は一般市民への警察権行使権限を有しません。鉄道公安官制度のような制度があってもよいとは思うのですが、国鉄民営化とともに廃止された制度ですので、今更警察権限を警務隊に付与する、ということは難しいところ。ここで一つの方法は、海上自衛隊の海賊対処方式です。海上自衛隊は海賊対処任務部隊の派遣に際し、司法警察業務の執行権限を海上自衛隊は日本の国内法において有さないことから、護衛艦に海上保安官を4名同乗させることで対応しています。現在の都道府県警制度では難しいことではありますが、警察庁から出向というかたちで警務隊分遣隊に警察官を配置し、逮捕権と警察官への迅速な引渡しを行うことが考えられるでしょう。
Nimg_7536 このほか、機動隊など警察官の災害派遣要員への支援を、ある程度自衛隊が行う枠組みは考えられるでしょう。前述の通り、南海トラフ地震は恐らく戦後最大規模の停電を引き起こします。燃料備蓄の観点から津波がもっとも威力を発揮する沿岸部に火力発電所が集中していることから、津波岩などで送油管が破壊され、大規模火災の要因ともなるでしょう。これは、原子力発電所停止に伴い電力需給が逼迫している状態で、大阪湾伊勢湾を筆頭に火力発電所が操業を停止すれば留めの一撃となり、同時に残念なことではありますが治安の悪化を招きます。警察力の展開は何らかの手段により担保されなければなりません。
Nimg_7299 加えて、機動隊の自活能力は何とかしてほしいところではあります。各都道府県警に数台のキッチンカーと移動式トイレ車両、発電車両、合計で30台ほど確保されていれば、とも。一部で言われていることではありますが、東日本大震災では機動隊でも自活能力が無く、被災地での支援活動を行う機動隊も後方の宿泊施設を借り上げることで対応、非常に苦労を掛けたということで努力は頭の下がる思いですが、毎日片道数時間をかけ正午近くに到達、午後数時間後には撤収という方式を強いられました。
Img_6035 機動隊の方々もせめて水筒と携行食料に携帯天幕は携行してほしいところなのですが、被災地へ自衛隊の支援を受け野営できるのであれば、もう少し効率的な支援活動を行うことが出来るでしょう。あまり例が無いように思われるかもしれませんが、阪神大震災では自衛隊が警察官の自活支援を行いました。もっともその後に行われたオウム事件強制捜査では警察の自活能力が必要だと考えられ、しかし実現はされなかったのですけれども。
Img_6378 省庁間協力、ということになります。指揮系統の問題や、大規模災害に際し、各都道府県警がどの程度進出できるのか、という視点から自衛隊の支援能力、勿論自衛隊の支援も展開する災害派遣部隊の規模から完全に限界を超えているため、指揮系統の異なる組織への支援を行う意義と政策評価は慎重に行われなければならないのですが、一つの検討事項と言えるでしょう。
北大路機関:はるな

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ボノムリシャール(LHD-6 BonohommeRichard)佐世保配備 強襲揚陸艦エセックスと交代

2012-06-13 23:04:30 | 在日米軍

◆シャルが佐世保にやってきた!

 ボノムリシャール、佐世保配備、実は少々気づくのが遅れていたのですが、先日5月28日撮影の写真と共に佐世保基地へ前方展開となった新しい強襲揚陸艦を紹介です。

Dimg_7209 4月23日、佐世保基地へサンディエゴ基地から強襲揚陸艦ボノムリシャールが前方展開として配備されました。これにより2000年7月から佐世保を事実上の母港として展開し親しまれた強襲揚陸艦エセックスは日本を去ることとなったのです。ボノムリシャールは2月14日にサンディエゴ基地を出港、パールハーバー基地とグアム基地を経由し、4月9日に佐世保へ入港、ボノムリシャールはエセックスと同じワスプ級強襲揚陸艦で、ハルスワップ作業として乗員の入れ替えを行い、23日にエセックスとの交代行事を行いました。

Dimg_7215_1 ボノムリシャールはワスプ級強襲揚陸艦の1998年就役の六番艦で、交代したエセックスは1992年就役の二番艦にあたります。現在ワスプ級強襲揚陸艦は八隻が就役しており、これを拡大改良させ航空機運用に重点を置いた新型であるアメリカ級強襲揚陸艦の一番艦が先日進水式を迎えています。米海軍にはこのほかタラワ級強襲揚陸艦が就役中で、三隻のうち一隻が現役です。米海軍には強襲揚陸艦のほか、揚陸艇を搭載し重装備を上陸させるドック型揚陸艦を21隻運用しており、その渡洋揚陸能力は世界でも抜きん出ています。

Dimg_6985 ワスプ級強襲揚陸艦は三番艦以降と八番艦で仕様が若干異なりますが、ボノムリシャールは満載排水量40358t、全長258.2m、幅42.7m、喫水8.1m。蒸気タービン二基を搭載し出力は70000馬力、最高速力は22ノットです。揚陸艦として40000tを超える巨体は文字通り空前の規模で、写真では海上自衛隊有数、世界でも最も大きな水上戦闘艦に数えられる満載排水量10000tのイージス艦、護衛艦あたご型あしがら、が非常に小さく見えるほどです。

Dimg_6755 強襲揚陸艦とか、それはヘリコプターによる空中機動を重視し立体的な上陸作戦を行う母艦にあたります。標準搭載機はヘリコプター42機、VSTOL機6~8機で、ヘリコプターにはCH-46やCH-53といった大型ヘリコプターや多用途ヘリコプターとしてUH-1,それに攻撃ヘリコプターとしてAH-1Wを搭載可能、人員だけを空輸した場合最大1000名前後の兵員を同時展開可能で、これに先んじてVSTOL機、即ちAV-8攻撃機が航空打撃を実施、上陸部隊が大きな抵抗に遭った際には近接航空支援を迅速に実施し、その打撃力は強大そのもの。

Dimg_6724 こうした立体強襲上陸を行う観点から、ヘリコプターの運用を重視し、一見航空母艦のような艦容となっているのですが、乗員1123名、揚陸部隊1687名を収容しています。航空燃料は1232tを搭載、このほか艦内にドックを有していて、装甲車や火砲であれば空輸するのですが、エアクッション揚陸艇LCACを3隻収容可能、戦車を迅速に展開させることが可能。自衛用にシースパロー短SAM八連装発射器二基、RAM近接防御SAM21連装発射器二基、このほか20mmCIWSや25mm単装機関砲などを搭載しています。

Dimg_7179_1 艦載機として来月にも最新型のティルトローター機MV-22が日本へ前方展開します。普天間基地のCH-46ヘリコプターを代替し24機が配備されることとなっており、これによりCH-46は優秀なヘリコプターですが初飛行が1962年と旧式化が進み近い将来安全性に影響する程度の老朽化が指摘されていますので、ようやく近代化され、戦闘行動半径などは大きく向上、このボノムリシャールでも運用されることになります。米海軍のワスプ級に続く新型強襲揚陸艦アメリカ級は満載排水量44850tとさらに大きくなり、米海軍の渡洋作戦能力は見通せるかなり将来まで、世界最大の規模を維持し続けることでしょう。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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大宮駐屯地創設55周年記念 化学学校創設記念行事 PowerShotG-12撮影速報

2012-06-12 22:24:25 | 陸上自衛隊 駐屯地祭

◆大宮駐屯地祭2012速報
 日曜日、大宮駐屯地創設記念行事へ足を運びました。化学学校、中央特殊武器防護隊、第32普通科連隊の駐屯地です。
Oimg_4861 万一、我が国が再度核兵器の攻撃に曝されたら、そしてあの日のように地下鉄などに対し化学兵器による無差別テロが行われたならば、そしてアメリカで展開されたような生物兵器によるテロが大都市を襲ったらば、そうしたあり得るかもしれない、しかし非日常では決してない非日常に備えるのが大宮化学学校であり、我が国NBC事案への最後の砦でもあります。
Oimg_4864 大宮駐屯地祭、僅か数年前までは化学学校本校前の限られた駐車場を用いて、学校長挨拶と巡閲、訓示を行うだけの小規模なものでした。しかし、観閲行進も訓練展示も行われないものの装備品展示が、この駐屯地でしか見られない装備があり注目を集めていたとのこと、そして除染作業などの簡単な展示が行われることとなり、一昨年頃から式典会場をグラウンドとし、大規模に行われるようになったとのこと。
Oimg_4873 本年大宮駐屯地祭の最大の目玉は化学学校に配備開始となり、中央特殊武器防護隊へ今年から配備が開始となたNBC偵察車です。手前には中央特殊武器防護隊の82式指揮通信車、化学防護車と車体の共通のものが停車しており、その奥に見える一回り大きな装甲車両がNBC偵察車です。G-12で撮影したものですが、車体規模の相違が一目瞭然ですね。
Oimg_4875 式典へ整列する中央特殊武器防護隊幹部。地下鉄サリン事件という未曽有の都市部無差別テロへの派遣とそれに続くオウム真理教強制捜査支援や化学プラントへの警察捜査協力という、化学戦部隊としては世界的に稀有な実戦経験を持ち、イラク化学兵器解体作業では実際に神経ガスの砲弾の解体監視要員を派遣、世界的にここまでの実戦経験を積んでおり、実任務にも対応している部隊は少ないのではないでしょうか。
Oimg_4879 化学学校長川上幸則陸将補の部隊巡閲。巡閲を受ける第32普通科連隊も市ヶ谷駐屯部隊として地下鉄サリン事件対処に当たり、駐屯地こそ市ヶ谷駐屯地から大宮駐屯地へと移駐はしていますが、化学学校と当時除染に当たった第101化学防護隊の後身である中央特殊武器防護隊とともに、もしも、の許されざる想定への準備を怠らず首都防衛を履行した伝統ある部隊、精鋭を巡閲しました。
Oimg_4892 観閲行進。第32普通科連隊が先頭となり式典を務めます。祝辞では枝野大臣が実績から説得力を欠く祝辞を行ったのち、地元さいたま市長、埼玉県知事の祝辞に続いて、ここ化学学校出身で自民党国防部会長である佐藤代議士が祝辞を以て部隊を激励、福島県出身ということもあり、許されざる想定の最たる自体、原子力発電所事故対処に当たった部隊への祝辞と転換点を必要とする実情の視点へ、会場を沸かせました。
Oimg_4932 第32普通科連隊隊員の徒歩行進。連隊長芝伸彦1佐以下連隊本部、本部管理中隊、五個普通科中隊と重迫撃砲中隊を以て編成されています。前述の通り第32普通科連隊は市ヶ谷駐屯地に駐屯し、新宿という首都中枢部唯一の連隊として首都防衛を担ってきましたが、1999年、市ヶ谷駐屯地への防衛庁本庁舎移転に伴い、大宮駐屯地へ移駐したという歴史があります。
Oimg_4985 第4中隊の軽装甲機動車。機関銃座を防盾が奥の車両については国際協力任務仕様である点に注意。首都圏を防衛する以上、市街地での戦闘は不可避であり、小回りが利き、火力拠点ともなり、必要に応じて盾ともなる装甲車は重要です。これは、後日震災記事として大宮での写真と共に記事とする予定ですが、大規模災害やテロ事案へ、やはり大きな部隊を市ヶ谷から移したことは失策だ多のではないでしょうか。
Oimg_5034 重迫撃砲中隊の120mm重迫撃砲RT,2002年に第一師団の首都防衛編成への改編に伴い、重装備の重要性は低いとして廃止された重迫撃砲中隊ですが、翌2003年からのイラク戦争により錯綜地形の最たる市街地では迫撃砲の弾道は重要であり、直接掩護には不可欠な装備であると米軍が戦訓を経て編成に反映させました。我が陸上自衛隊でもこの点を受け、昨年2011年に重迫撃砲中隊を再編し、今に至ります。
Oimg_5044 中央特殊武器防護隊の82式指揮通信車、何故か観閲行進の経路が変更されました。さて、じつは中央特殊武器防護隊といえば化学防護車という印象がったのですが、82式指揮通信車が装備されていました。化学防護車はマスト部分などに装備年度により若干の相違があるのですが、82式指揮通信車との根本的な相違は12.7mm重機関銃にあります。化学防護車は汚染地域での任務を念頭に置いているため自衛火器は車内から操作する73式装甲車と同等の銃架に搭載されていますが、指揮通信車は違うのです。この点が正面から見た場合、最大の識別点と言えるかもしれません。
Oimg_5074 液体散布車。存在は知っていましたが始めて見る装備です。この写真だけでも大宮まで足を運んだ甲斐があるというもの。実はこの装備、除染車よりも早い時期、まだ化学防護車が60式装甲車の派生型を運用している時代から運用されている装備です。化学学校と化学教導隊、中央特殊武器防護隊にしか装備されていない装備で、昔の写真で見たことがあるのですが、観閲行進に参加するのですね。
Oimg_5087 液体散布車は化学消防車としての能力を有し、汚染地域での化学消防車としての任務のほか、広範囲に中和剤を散布する任務にも用いられるもの。例えば通常の車両で接近できないNBC汚染地域での化学火災への対応が可能であるほか、地下鉄サリン事件が路上に大量散布されるような事態であった場合、広範囲の汚染へ、除染車では対応できない場合などに出動するものです。ン福島第一原発ですが、遠距離放水ではなく広範囲中和剤散布が任務の車両で、化学剤ではなく放射性物質は中和剤が存在しないため、用いられることはありませんでした。
Oimg_5095 第102特殊武器防護隊の車列。NBC偵察車、化学剤監視装置、生物偵察車。どれもここ数年間で装備が開始された化学科部隊の最新装備です。一番の注目はNBC偵察車、全長8m、重量20t、最高速度95km/h以上、乗員4名。化学剤監視装置と生物偵察車のセンサーを搭載しているのがわかるでしょうか。また、比較的大柄な車体、と前述したNBC偵察車ですが、この車列からも大型の車両である、ということがわかるでしょう。
Oimg_5098 NBC偵察車。車体前部に並列式操縦席を有し、その背後に機関部を、車体部分は容積重視の構造となっており、車高は犠牲になっているという設計。この上には各種検知器材を搭載、車体側面は若干の傾斜を持っている形状で、道路交通法の規制乗車幅を大きく撮ることが出来ず、この中で第一線でのNBC偵察任務へ、生存性を重視しようとした部分が足回り周辺から見てとれます。銃身は重そうですが、従来の化学防護車と比較しても安定しており、他方で車内からの死角が多いのが難点とのこと。
Oimg_5118 94式除染装置と除染車3型。94式除染装置は小型で、化学防護隊や特殊武器防護隊のほか、普通科連隊などの本部管理中隊にも装備されており、毎時4両の車両や人員約50名を除染することが可能。後方は除染車3型、補給路などの地域除染に用いる装備で、勿論車両や人員の除染支援も行う装備です。化学兵器でもサリンのような神経剤は殺傷力が強くとも速やかに分解してしまうもの。
Oimg_5133 このように神経剤は攻撃用の化学兵器ですが対照的に、神経剤と比較すれば殺傷度合い、これも致死量がナノミリグラムかミリグラム単位化ということですが病院で点滴するわけでもなく、意味は少ないのですが、マスタードガスのような糜爛剤は数週間単位の長期間地域を汚染し、通行した車両の車輪や靴に付着し拡散するほか、皮膚に付着すれば爛れ、肺に吸い込めば気道を破壊、目に入れば失明するという厄介な装備で、除染により中和し無力化しなければなりません。
Oimg_5156 第103特殊武器防護隊の車列。先頭を進むのは化学防護車。元来化学防護車はNBC兵器の中でNuclearとBioとChemicalのなかで、Chemical即ち化学兵器の汚染地域へ進出し、汚染状況を把握、除染作業に先立ち重点的な任務実施地域の画定を行うための車両でした。しかし、東海村臨界事故や福島第一原発事故など原子力災害への派遣が多く、特に前者の事件を契機に中性子防護板の追加取得を実施、万一という許されざる想定への備えが、福島第一原発により発揮されることとなったのです。
Oimg_5164 化学剤監視装置。化学剤監視統治が正し呼称で、化学時検知装置というのは誤りでした。従来の化学剤感知装置は、装置内に化学剤が浸透した際に警報を発するもので、言い換えれば警報が鳴った時点で七秒以内に防護体制を採らなければ被害に遭うというものでした。しかし、米軍では湾岸戦争などの戦訓から万一化学兵器が使用された場合を警戒する遠隔監視装置の研究を実施してきました。
Oimg_5170 化学剤の遠隔監視、米軍の研究開始、これをもとに陸上自衛隊でもレーザーの反射特性と化学剤の反射特性を研究し、遠隔地での汚染分布に対し化学剤が浸透する以前に警報を発する装備として完成させたものです。装備は大型トラック搭載の評定処理装置と高機動車車載の監視装置三基、そしてヘリコプター搭載用監視装置一基から構成されます。観閲行進の写真は以上、こののち訓練展示となりますが、訓練展示は動きが早く距離も大きく、G-12の出る場面はありません。EOS-7Dの写真はいずれ紹介することとしましょう。

北大路機関:はるな

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NBC偵察車 大宮駐屯地祭一般初公開の陸上自衛隊化学科部隊最新装備

2012-06-11 23:04:57 | 先端軍事テクノロジー

◆PowerShot G-12撮影速報

 大宮駐屯地祭、撮影速報の前に先ず最新装備であるNBC偵察車の写真を紹介したいと思います。

Nimg_5203 NBC偵察車は、現在全国の部隊で使用されている化学防護車の後継として開発されたもので、化学兵器への対処初動における偵察のほか、生物兵器散布に対し、また核汚染地域での偵察任務を念頭に、十分な検知及び分析機材を新型の装甲車両に搭載する形で完成するに至ったもので、原型となる装甲車は将来装輪装甲車体系の人員輸送型や指揮通信車、自走迫撃砲や自走高射機関砲型、装甲戦闘車や偵察警戒車などの基本型となる、陸上自衛隊の将来装備体系に大きな影響を与える車両となるものです。

Nimg_5207_2 NBC偵察車は、一見重心が高くなっている印象があり、不整地走行では横転などの心配が残るところですが、部隊において運用を開始した時点では一見して思うような不整地突破能力の不安はないとのことで、路上高速走行は安定しているとのことdした。が、視界が従来の化学防護車よりも増大しているため、自車防護を如何に行いつつNBC状況の偵察を行うのか、というところは課題となるとのことです。もう一つ、車体は全長8m、重量20t、大型化していますが、乗車には化学防護車と比べ側面に乗降扉が配置され即応性が向上したとのことでした。

Nimg_5210 装甲厚は当然野暮ですから聞きませんでしたが、車体構造の細部を見たところ概ね14.5mm耐弾は確保されている、重量から同程度の各国車両と比較しますとこう考えられます。車内では移動が容易で、作業空間では一定の高さを確保しているようです。化学防護車よりも人mが増えているのですからとぷ善とはいえるのでしょうけれども。この車体前面の装甲板は車内操作から開閉が可能ですが、車高が大きいことから装甲人員輸送車とする場合はどうなるのか、見方は二つあり、元々化学剤と生物剤検知器材を有するため、車内容積を大きくする必要があるため、指揮通信車型と本車はこの形状、人員輸送型は操縦席形状を変更し、車高を抑えるのかもしれません。

Nimg_5206 NBC戦場へ、外見から遠隔化学剤監視装置としてレーザーを照射しその反射特性から化学兵器攻撃の汚染地域分布状況を把握する装置、そして生物偵察車のマストと類似の検知装置が見えています。化学防護車は自車位置の汚染状況が把握できるのみでしたので、遠隔化学剤検知能力は大きな向上です。しかし、この方式、横転時は破損しそうなのと、伸縮式マストに搭載すればより遠距離の汚染状況が把握できたと思うのですが。他方、化学防護車の難点と言われた外部土壌サンプル回収用の操作性が難しいマニュピレータは、車内から防護用ゴム手袋を介して手動で回収する方式に転換、化学実験室と同等に操作性がよくなったとのことでした。

Nimg_5199 人員輸送型がどうなるのか、ですが、恐らく操縦席をトラックキャビンタイプから戦車操縦型として前方投影面積を局限化し、排気塔部分を低下させるか配置を車体前方に転換し、車高を大きく下げ生存性を確保すると共に開発中のRWSにより車内からの機関銃操作を行うものとなるのではないでしょうか。まだまだ報道公開では軍事専門誌が招待されず、今回初めての一般公開となった装備ですので評価は定まらないものですが、陸上自衛隊の将来装備として派生型と共に大量配備されることは望ましいですね。

北大路機関:はるな

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