北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

日比共同訓練MTA15 P-3C参加、フィリピンパラワン島西方海域にて21日より開始

2015-06-20 23:54:26 | 国際・政治
■Maritime Training Activity15
 防衛省は明日21日よりフィリピン海軍との日比共同訓練MTA15を開始するとの事です。

 MTA15はMaritime Training Activity15の略で、人道支援及び災害救援訓練等の訓練を通じフィリピン海軍と海上自衛隊の人道支援と災害救援訓練等に関する能力向上と友好関係の強化を目指すものです。海上自衛隊からは第1航空隊第12飛行隊濱野寛美2佐を指揮官として、P-3C哨戒機1機と人員20名を派遣、フィリピン海軍はBNI-2A及び哨戒艦艇を派遣し訓練を行います。

 訓練はパラワン島プエルトプリンセサ空港及びパラワン島北西海域において行われるとの事で、特にパラワン島北西海域は南シナ海であり、これは1992年にフィリピンのミスチーフ環礁が中国軍に不法占拠され中比間の重大な国際紛争を発生させた海域がパラワン島西方海域に位置する事から、軍事力を背景とした中国の海洋における境界線変更へ、大きな牽制となる事でしょう。

 一方、日比間の人道分野及び災害派遣における連携体制強化は、特に過去のフィリピン台風被害への人道支援任務での自衛隊派遣等で必要性が認識されており、加えてフィリピンは環太平洋火山帯に位置する事から台風被害に加え火山災害などの懸念も大きく、この分野での協力関係を平時から構築する必要性の大きさが高いことは言うまでもありません。

 特に、大規模災害は、我が国も東日本大震災においてその危機を痛感しましたが、その被害を局限できなかった場合には国家危機へ繋がる危険性を有しており、仮に我が国の重要な隣国であるフィリピンにおいてこの種の危機が発生した際に的確に対応できない場合、重大な空白地帯の発生という危惧があります。

 この点でわが国は、専守防衛という防衛上の鎖国政策を提示し、一方で外交政策においては積極的平和主義を堅持するという、一種の矛盾を継続しており、この事が我が国周辺地域において軍事力を背景とした現状変更を試みる国家の行動を放置するかたちとなりました、我が国は周辺へ防衛力を含む関心を有している、という示唆、この意味も大きいものがあるでしょう。

北大路機関:はるなくらま
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平成二十七年度六月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2015.06.20-21)

2015-06-19 22:22:09 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 今週末、天候がやや荒れそうな予報ではありますが自衛隊関連行事の紹介を。

 今週末は北海道の自衛隊関連行事がいろいろ行われまして、最も活気ある行事は、第2戦車連隊と第4特科群の駐屯する上富良野駐屯地祭でしょう。第2戦車連隊は、現在74式戦車に90式戦車と10式戦車を混成運用しており、これは昨年に74式戦車が10式戦車に置き換わる予定でしたが第8戦車大隊配備となったため、三種混成編成となっています。

 滝川駐屯地祭、第11旅団隷下の第10普通科連隊が駐屯しており、旭川と札幌の中間を担う警備管区を受け持ちます。もともと第11旅団は第11師団時代に第18普通科連隊のみが装甲化されており、この他は自動車化されているのみでしたが、旅団への改編とともに各普通科連隊へ一個中隊の装甲車を充当するかたちとなり、第10普通科連隊も装甲車中隊を有しています。

 倶知安駐屯地祭、ニセコ要塞、とフィクションの名称が浮かぶニセコに隣接する駐屯地d、北部方面対舟艇対戦車隊、第13施設隊第361施設中隊、北部方面混成団第1陸曹教育隊が駐屯しており、特に北部方面対舟艇対戦車隊は第11対戦車隊より方面隊へ移管され、96式多目的誘導弾システムを運用する虎の子部隊です。

 苗穂分屯地開庁記念行事、北海道補給処苗穂支処が置かれている陸上自衛隊島松駐屯地の分屯地で北海道札幌市東区苗穂町に位置しています。式典と装備品展示中心の行事で、補給部隊である関係上派手な訓練展示で戦車と普通科部隊の協同等は行われませんが、その分あまり混雑しないことから、装備品をじっくり見たい、という方にはお勧めの行事です。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭
・6月21日:上富良野駐屯地創設60周年記念行事・・・www.mod.go.jp/gsdf/nae/2d/unit/butai/kamifu_station/
・6月21日:滝川駐屯地創設60周年記念行事・・・www.mod.go.jp/gsdf/nae/11d/jgsdf-post/images/takikawa/
・6月21日:倶知安駐屯地創設60周年記念行事・・・http://www.mod.go.jp/gsdf/nae/11d/jgsdf-post/images/kucyan/
・6月21日:苗穂分屯地創設63周年記念行事・・・www.mod.go.jp/gsdf/nae/nadep/dep.html

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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浅間山噴火へ自衛隊情報収集 東部方面航空隊・第7航空団・偵察航空隊が出動

2015-06-18 23:27:01 | 防災・災害派遣
■浅間山噴火へ自衛隊情報収集
 6月16日0930時、北関東の浅間山が噴火しました。

 浅間山噴火は小規模な噴火であり、微量の火山灰が4km程度の範囲内で観測される程度ではありましたが、その後の状況変化への警戒として防衛省は1026時、百里基地を離陸し飛行訓練中だった偵察航空隊所属のRF-4偵察機に対し、噴火活動の情報収集を命じ、展開させています。

 続いて1047時、百里基地よりF-15J戦闘機2機が緊急発進し、目視による情報収集にあてています。1108時には立川駐屯地より東部方面航空隊のUH-1が映像伝送装置を搭載し離陸、1112時には更に1機のUH-1が情報収集に離陸しており、情報収集へ出動した自衛隊機は5機となりました。

 小規模噴火であり、自衛隊はこの噴火活動が前駆噴火活動として本格的な噴火を警戒したと考えられますが、幸い大規模噴火には現在も至っていません。また、幸い噴火当時に周辺にいました登山客も無事下山し、災害派遣要請も出されず、情報収集は1112時の航空機離陸を以て完了しています。

北大路機関:はるな
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将来航空自衛隊練習機体系への一考察(第七回):練習機の軽攻撃能力での限界

2015-06-17 23:56:55 | 防衛・安全保障
■軽攻撃能力の限界
練習機の軽攻撃能力での限界について、前回に引き続き考えてみましょう。

空対艦ミサイルを搭載して洋上阻止に充てる、という運用も考えられますが、航法装置や電子戦装置など、防空艦を多数有する艦隊への攻撃にはかなりの装備を必要としますし、そのために機体の調達費用が増大してしまえば、Tー4練習機の後継機は200機以上必要となりますので、必要なほかの戦闘機調達費用を圧迫してしまえば、本末転倒です。

特に艦隊防空は年々強化される傾向にあり、加えて空対艦ミサイルの性能も年々向上します、これらを投射するためには、もちろん哨戒機による目標捕捉能力も大きな威力を発揮しますが、データリンク能力一つとっても運用する航空機にも必要な能力が大きくなります。

野戦飛行場の適地はさほど多くなく、巡航ミサイル脅威と弾道ミサイル脅威を想定せねばならない状況を加味しますと、あまり航続距離の大きくない航空機ですと補助飛行場や野戦飛行場が限られる以上、一カ所でも滑走路を破壊された場合などには配置航空機そのものが容易に遊兵化してしまいますし、主たる用途が練習機である以上、過度な航続距離も望めません。

対航空機戦闘ですが、アルファジェットのほか、例えばイギリス製ホーク練習機などは確かに冷戦時代の一時期に短射程のサイドワインダー空対空ミサイルを搭載し、補助防空戦闘機として運用された時代がありましたが、例えばT-4練習機と同程度の練習機に短射程の空対空ミサイルを搭載したと仮定しまして、どの程度防空戦闘に寄与するものでしょうか。

M-346練習機、イタリアとロシアの共同開発練習機などは短射程の空対空誘導弾やロケット弾などを搭載し、補助戦闘機としての運用、主たる部分は練習機と軽攻撃機運用ですが、想定している航空機は存在します、しかし、地域紛争のような低烈度紛争ならばこの種の航空機の用途はいまなお広いと考えるのですが、南西諸島の特質を考えますと、やはり違ってきます。

北大路機関:はるな
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現代日本と巡洋艦(第九回):水上戦闘艦の対水上戦闘と戦力投射任務の両立

2015-06-16 21:02:20 | 防衛・安全保障
■戦力投射と対水上戦闘
航空機格納庫の用途と巡洋艦の任務について、多用途性能と海外装備等の実例を踏まえて。

甲板から埠頭へは、クレーンを用いて車両を一両一両揚陸させる方法もあるのですが、甲板から車両用スロープを設置もしくは臨時に配置してそのまま乗降させる方法もあります。こちらの方が早く、また構造上も複雑なものではありませんので、例えばアメリカの沿域戦闘艦などは3000t前後の船体ながらこの方法で装甲車一個中隊分を輸送可能です。

輸送に重きを置いた水上戦闘艦といいますと限られてくるのですが、このほかにも一例としましてデンマーク海軍のアブサロン級多目的支援艦などは、一見がミサイルフリゲイトのような形状となっているのですが、艦内に多目的区画を有していまして、必要ならば60t級のレオパルド2A6主力戦車もこの方法で艦内から埠頭へ直接輸送できます。

海上自衛隊の場合、アブサロン級の設計は必ずしも参考となりません、アブサロン級は艦対艦ミサイルハープーンを多数装備し、多機能レーダーに支援された僚艦防空能力を有しますが、速力は水上戦闘艦艇の範疇にあって比較的低速で、両用戦艦の域を出るものではありません、加えて艦内に多機能区画を有しており、機雷敷設艦や指揮中枢艦としての能力を持ちます。

一見高性能にみえるのですが、特定任務時には多くの装備が遊兵化する事が否めず、実際には平時にあって多くの装備を取り外した艦としてソマリア沖海賊対処任務などにあたっています。しかしある種趨勢の一つといえるのかもしれませんが、そういいますのも多くの装備を取り外し平時任務へ臨む例としてはほかにカナダ海軍のハリファクス級フリゲイトなどが挙げられます。

カナダ海軍のハリファクス級は、シースパロー短SAMやハープーン艦対艦ミサイルを搭載可能な大型水上戦闘艦ですが、東京晴海を親善訪問した際にはこれらを取り外しており、57mm単装砲と三連装短魚雷発射管にCIWS高性能機関砲のみを搭載していまして、平時の任務、漁業資源管理と哨戒任務にはこれで十分、という視点のもとでの装備のようでした。

利点としまして装備を取り外す場合は、その分の操作要員が不要となりますので、単純な話として乗員を削減できます、これは一人当たりの艦内容積が増大することを意味し、二人部屋を一人で、二段寝台を一人で占有することができるという意味ですので、長期間の行動でもストレスを感じにくく、平時の長期的な行動には寄与する部分でしょう。

しかし欠点として、これは有事の際に対水上戦闘や対潜水艦および航空機の脅威へ対処するべく、急遽この種の装備品を搭載する場合、もちろん装填だけならば補給所にて搭載するだけで事足りるのですが、乗員をどう確保するのか、また、艦艇としての訓練をどのように行い、高い水準の水上戦闘艦を確保するのか、という部分においては全く対応できません。

すると、どうしても搭載する装備を平時と有事に大きく切り替えない方式で艦艇を整備する必要が出てくるのかもしれません。この部分は、平時任務と有事をどう比率として水上戦闘艦にもとめるかに帰結する部分なのですが、現在の海上自衛隊が置かれている状況は、平時任務が相応に重要ではあるのですが、有事の想定も無視できないのです。

北大路機関:はるな くらま
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8200t型護衛艦、平成27年度護衛艦27DDG競争入札募集綱領を正式発表

2015-06-15 23:10:14 | 世界の艦艇
■新イージス艦は8200t型
 防衛省は平成27年度護衛艦27DDGの競争入札募集綱領を正式発表しました。

 平成27年度護衛艦27DDGは、あたご型ミサイル護衛艦に続く海上自衛隊のイージス艦で、護衛艦隊隷下の護衛隊群における艦隊防空の中枢艦として、旧式化したターターシステム艦はたかぜ型の後継となります。特筆すべきは、この綱領添付資料に“8200t型護衛艦”と明示があった事でしょう。

 海上自衛隊のイージス艦は、4隻が就役した護衛艦こんごう型が基準排水量7200t、2隻が建造された護衛艦あたご型が基準排水量7700t、こんごう型の満載排水量が9500tで、あたご型の満載排水量が10000tとされるため、新護衛艦の基準排水量は8200t、満載排水量は11000t近くになると考えられます。

 これが示しますのは新イージス艦は8200t型の新型で、あたご型の3番艦ではない、ということです。添付資料には、イージスシステムやソナーシステム等と並び新SSM発射装置との表現がありますので、併せて従来のハープーンやSSM-1という艦対艦ミサイルに続く新型ミサイルの搭載が行われる事も意味します。

北大路機関:はるな
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日米仏共同訓練、九州西方海域にて実施 輸送艦おおすみ等数隻が参加

2015-06-14 23:02:10 | 防衛・安全保障
■L-CAT参加!九州沖で日米仏共同訓練
 海上自衛隊によれば今週末、日米仏共同訓練が九州西方海域にて実施されたとのこと。

 欧州海軍との訓練はソマリア沖海賊対処任務に併せ日常的に実施されるようになりましたが、九州沖にフランス海軍を含めた多国籍間訓練が行われるというのは稀少です。海上自衛隊からの参加艦艇は輸送艦おおすみ、第22航空隊所属のSH-60J/Kが参加し、米海軍及び仏海軍からは艦艇数隻が参加したとのことで、艦名等はまだ発表されていません。

 訓練内容は、航空機相互発着艦及びPHOTEXとLCAC・L-CATクロスデッキフランス太平洋艦隊には航空機運用能力を有するフロレアル級通報艦が所属していますが、参加艦艇にL-CATが含まれている為、ミストラル級強襲揚陸艦が参加している可能性があります。L-CATはCNIM社製汎用揚陸艇でドック型揚陸艦や強襲揚陸艦から運用、最高速力30ノットと航続距離1900kmを誇り、ルクレルク戦車を含む重装備の揚陸が可能です。

 L-CATは基準排水量285t、全長30m、全幅12.8m、126m²の貨物室に80tを搭載可能で、海上自衛隊や米海軍が運用するLCACエアクッション揚陸艇の全長26.4m、全幅14.3mと同程度ですが、航続距離は遥かに長く、速力は劣るもののエアクッションを採用せず構造上整備性の高さなどで注目されるものです。一説にはL-CATは自衛隊も関心を寄せているとされ、今回、我が国近海でのL-CAT参加の訓練は注目すべきでしょう。

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陸上防衛作戦部隊論(第十回):戦車生産基盤維持と国産乃至ライセンス生産装甲戦闘車生産

2015-06-13 18:12:32 | 防衛・安全保障
■戦車生産基盤維持
前回に続き装甲戦闘車の生産を主に戦車生産基盤維持という視点から見てみましょう。

戦車を有事の際に緊急生産する、という選択肢は、現代戦が短期により戦略目標を破壊し収束するという特性上現実的ではありません、しかしそれ以上に重要な視点は、有事が近づいた際に戦車生産基盤が国内に残っているのか、という点の方が重要で、戦車を生産可能な工場と企業の事業部が維持できるだけの受注が無ければならず、発注は無いが工場と事業部と技術者と行員を維持するよう、と求める事は出来ません。

三菱重工のほか、日立製作所なども必要ならば戦車の生産を支援し、建機などの生産ラインを応用するかたちでかなりの数の戦車を生産する想定は行われていたようで、もちろん治具の準備や鋳造砲塔に砲身などの生産、砲身を生産する日本製鋼は北海道の室蘭にありますが、戦車用の部品が間に合うかなどの疑問符はのこるものの、少なくとも戦時生産の概念はあったわけです。

さて、90式戦車の時代にはいり、30両程度の生産、1両、12両となり、10式戦車の時代には11両と月産1両さえ割り込んでいます、三菱重工の見積もりで年産50両とした場合の単価が7億円というわけですから、たとえば5億円の中距離多目的誘導弾を普通科中隊の対戦車小隊に配備するくらいならば、同じ費用で縮小規模の戦車小隊を各普通科中隊に割り振れる戦車部隊を整備した方が安上がりであるように感じるのですが、ね。

この生産数の縮小がもたらすもっとも大きな懸念は戦時生産や有事の際、とまでいかずとも緊張度が大きくなり戦車の増強画筆用となった際に生産基盤が喪失してしまうことにあります、もちろん戦車を輸出用に生産基盤を維持できる見通しがあるならば、また話は別なのですが現在のところこうした見通しはありません、潜水艦製造のように現役車両の寿命を短縮し生産数を維持する、という方策も採られていません。

戦車生産基盤の維持はかなり大きな問題であり、数年前には戦闘機生産基盤維持にかんする防衛産業各社間の協議などが行われましたが、月産1両を割り切る状況というものは完全に生産が終了する戦闘機ほどではないにしても、これ以上の戦車製造規模縮小は基盤、将来開発への影響を含め真剣に検討を必要とするほどの状況となってきています。

戦車は重厚な車体と防御力から一見錯誤しがちですが、戦車戦闘においては消耗品と考えねばなりません。戦車は消耗しても補充ができるとして乗員はどうするのか、という指摘があるでしょうが、戦車の装甲は乗員を防護することを第一として、車体が破損してでも乗員を防護する構造を採るものが多く、人員の損耗以上に車体の損耗があると考えねばなりません。

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平成二十七年度六月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2015.06.13-14)

2015-06-12 23:14:01 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 今週末の自衛隊関連行事について、東北北海道と首都圏で行事があります。

 第9師団創設記念青森駐屯地祭、津軽海峡という防衛上の重要地域を含む東北北部を防衛警備管区に受け持つ第9師団の創設記念行事、明日土曜日に市中パレードが行われ、日曜日に駐屯地にて記念式典及び観閲式や訓練展示が行われます。

 丘珠駐屯地創設62周年記念行事、札幌市内の丘珠空港に置かれる北部方面航空隊の創設記念行事、編隊飛行等が行われるとの事で、帯広駐屯地の対戦車ヘリコプター隊なども式典に参加するとのこと。

 遠軽駐屯地創設64周年記念行事、第2師団隷下の第25普通科連隊の駐屯する遠軽駐屯地の創設記念行事、96式装輪装甲車中隊を含む師団普通科連隊の記念行事です。

 よこすかYYのりものフェスタ海上自衛隊艦艇一般公開、JR横須賀駅にて行われる鉄道行事へ、隣接する海上自衛隊横須賀基地の艦艇一般公開も行われます、逸見桟橋のみの一般公開でゃありますが、横須賀基地を見学できる貴重な機会といえるでしょう。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭
・6月14日:遠軽駐屯地創設64周年記念行事・・・www.mod.go.jp/gsdf/nae/2d/
・6月14日:丘珠駐屯地創設62周年記念行事・・・www.mod.go.jp/gsdf/nae/11d/jgsdf-post/images/okadama/
・6月13日・14日:第9師団創設記念青森駐屯地祭・・・www.mod.go.jp/gsdf/neae/9d/
・6月13日・14日:よこすかYYのりものフェスタ海上自衛隊艦艇一般公開・・・www.mod.go.jp/msdf/yokosuka/

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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榛名防衛備忘録:沖縄防衛への視座、国家の確たる決意と自衛隊部隊装備体系の改編

2015-06-11 22:08:06 | 防衛・安全保障
■沖縄防衛への国家の決意
沖縄を守る決意が必要、としました前回に引き続き今回もこの視点から。

陸上自衛隊には9個師団と6個旅団の精鋭が維持されていまして、沖縄の第15旅団はヘリコプター空中機動能力では北関東信越地方の第12旅団とならび自衛隊の師団旅団中最強の装備を持ち、防空にあたる高射特科部隊は北海道の戦車師団とならび高射特科連隊を構成、装備はかなり重視されています。さすがに師団は置かれていませんが、旅団は先島諸島防衛へ増強改編の計画があります。

航空自衛隊は、那覇基地に現在の1個飛行隊に加え、九州北部から1個飛行隊を抽出し沖縄に移駐させます。戦闘機はこれで九州と沖縄が同数になるわけで、しかし日本の緊急は心の半数は沖縄からなされています、もちろん九州北部は朝鮮半島有事の際の最前線であり、本来は部隊を引き抜く余裕などはないのですが、緊急発進の異常増大を前にしかたありませんでした。

実際問題、那覇への派出は苦肉の策でした、可能ならば戦闘機が全自衛隊であと40機増強が必要なのです。南九州は新田原基地に1個飛行隊しかなく、自衛隊には九州のほか、首都防空を担う百里基地の2個飛行隊、日本海を経てロシアと北朝鮮と向き合う2個飛行隊、東北の2個飛行隊と北海道の2個飛行隊はロシアからの国籍不明機に備え、ほかから引き抜けません。

沖縄を二度と見捨てないように、という国家の先の大戦への反省から、防衛力強化を行っています。さらに財政難下、厳しい予算から陸上自衛隊はMV-22可動翼17機を導入します、予算難で導入できなかったAH-64D戦闘ヘリコプターの34機分に当たる費用、34機あれば現在九州の一部に配備されているAH-64Dをなんとか本州の大半に配備させることができる機数です。

MV-22は非常に高い航空機ですが、沖縄以外の九州に配備したとして、即座に沖縄へ有事の際に部隊を緊急展開させることが可能なほぼ唯一の航空機で、これいじょう沖縄へ自衛隊の駐留負担、特に練度維持には沖縄県の自衛隊演習場不足が厳しい状況となっていますので、主として演習場の負担という意味で、これを増大させないために無理をしたかたちでしょう。

沖縄には比較的多く足を運ぶようにはしているのですが、防衛上の空白をつくることは、基地負担軽減が結果的に危機管理上有事を誘発することとなっても、そのときは諦めるという諦観の認識があるのか、平和に家族と友人を殉じさせる悲壮な覚悟と使命感を以てのものなのか、単に考えないようにしている逃避だけなのか、一介の観光客には知ることができません。

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