北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

平成二十七年度八月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2015.08.23)

2015-08-21 22:34:03 | 防衛・安全保障
■自衛隊関連行事
 今週末は富士総合火力演習が行われ、インターネット中継も行われます。富士総合火力演習、そもそもいったいどんな演習なのか、について、素朴な疑問ですが、これが意外と奥深い。

 その歴史を紐解きますと1961年より自衛隊部内学生へ現代戦の様相と火力の威力を展示する目的で開始されたもので、当初は“総合展示演習”と呼称されていました、最先端の戦術研究成果も示され、最新装備の一般公開の場として、またヘリボーン戦術が日本初公開されたのは1962年の総合展示演習でした。

 1972年に総合火力演習と呼称が改められ一般公開が開始、当時は知る人ぞ知るもので、インターネット普及以前は地方協力本部を通じて情報を入手し、駐屯地創設記念行事の様に実質自由に見学できた時代がありました、しかし1992年には3000名以上の一般見学者が並ぶこととなり、抽選制へ、そして現在は30000名が見学する国内最大の公開実弾演習となっています。

 富士総合火力演習は富士駐屯地の自衛隊富士学校とその隷下にある富士教導団により実施されます。富士教導団は幹部自衛官、旧軍でいう将校の3尉任官と同時に最初の部隊教育を担い、小隊指揮官としての素養を修得させるとともに、普通科、機甲科、特科の専門教育に当たります。

 即ち、近接戦闘に当たる普通科、機動打撃と対装甲戦闘にあたる機甲科、長距離火力戦闘と対砲兵戦にあたる特科の幹部専門教育と戦術研究、そして新装備試験を行う教育部隊です。軍事科学と戦術を常に最先端とするべく運用研究と理論研究が常に展開されている、ということ。

 富士教導団は教育部隊ですが、幹部への教育が目的とされた部隊であり所属する隊員はその指揮へ範となる行動と能力を求められた最精鋭そのもの、普通科教導連隊、特科教導隊、戦車教導隊、偵察教導隊、教育支援施設隊、以上4000名規模の人員を有する旅団規模の部隊です。

 その装備は戦車54両、火砲20門、装甲車100両、各種ミサイルなどを装備する精鋭部隊であり、有事の際には富士教導団は富士戦闘団として第一線へ投入される戦略予備部隊であるとともに、首都圏を防衛する第1師団の支援も任務に含まれ、教育訓練部隊として最新装備の運用へ範を示す部隊として練成されてきました、更に演習は、航空学校と高射学校、第1師団等の支援が加わり、本年は旭川の第2師団も参加していました。

 この競争率の大きな富士総合火力演習ですが、冒頭に記しました通り、入場券が無い場合でもインターネット中継にてその様子を見ることが出来ます。富士総合火力演習のライブ映像配信について、陸上自衛隊HPに詳しい記載がありますので、そちらもご覧ください。また足を運ばれる方へ、第二北大路機関にて参考情報を掲載中ですので、そちらもどうぞ。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭
・8月23日:富士総合火力演習2015・・・http://www.mod.go.jp/gsdf/

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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航空防衛作戦部隊論(第五回):航空防衛力、大陸からの脅威実数から実態を視る

2015-08-20 21:45:36 | 防衛・安全保障
■比較:航空自衛隊と中国空軍
前回までの掲載の通り、中国空軍の規模は航空自衛隊の規模よりも大きいことは確かです。

中国はフランカーシリーズで377機あり、対する我が航空自衛隊はF-15戦闘機200機なるほど優勢です、航空自衛隊は戦闘機を300機ようやく超える程度ですが、もともと中国空軍は数千機を有する空軍でしたので、近代化と共に質的向上と数的縮小が並行したとして、まだ十分な規模を有している事が分かるでしょう。

ただ、多数装備されたMiG-17戦闘機コピーのJ-5戦闘機は1992年に、MiG-19戦闘機をコピーしたJ-6戦闘機も2010年に全廃となっています、特にJ-6戦闘機は3000機が生産され一応超音速飛行が可能であったため中国空軍の数的大きさの象徴となっていましたが、こちらはSu-27などの配備とともに急速に姿をけし、除籍されました。

日本まで飛んでこれる脅威はどの程度なのか。仮に膨大な空軍力を以て対峙したとして、どの程度の航空機が展開し得るのかが脅威の実数です、そして我が国は島国であり海洋国家ですから、本土防空戦へは国境が隣接していない、海洋を以て隔てている、との強みが非常に大きい。

純粋に脅威対象となる航空機はフランカーシリーズの377機、生産が続くJ-10戦闘機が250機、です。航空自衛隊の倍以上の機数ですが、しかし航空自衛隊の作戦機の規模から考えますと、対処は特に大陸側が我が国だけにすべての戦闘機を投入する訳ではありませんので対処不能ではなく、現実的な範疇の脅威ではあります。

更に稼働率という面から双方の航空機の特性を見てみますとまた地穿った一面が垣間見えます、元々の設計はアメリカや欧州の戦闘機の基本理念が稼働率を最大限高めるものに対し、旧ソ連製航空機が最低稼動率を高めて第一線に投入可能な航空機数を維持するとの思想背景があり、中国機は後者のもの。

アメリカや欧州の戦闘機は最高稼動率が高いものの整備負担などを無視すれば最低稼動率が非常に低いものが多いのに対し、旧ソ連製航空機は最小稼働率が比較的高く、ある程度整備不良であっても離陸できるものの最高稼動率が低くなっています、中国は自国内に生産基盤を有し整備能力を高めていますが、稼働率には限界がある、という事を示しています。

従って、適切な防空体制を我が国が構築し、稼働率の維持と戦闘基盤の強化、基点となる飛行場の確保と何よりも航空作戦を継続的に展開する為の基地と補給基点の補給網を構築しておくならば、仮に大陸側からの大きな軍事的圧力が掛けられた場合にあっても、一定期間防空を継続する事は可能だ、といえるでしょう。

北大路機関:はるな くらま
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
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新イージス艦(8200t型ミサイル護衛艦)建造費、防衛省来年度予算概算要求へ盛り込み

2015-08-19 23:37:34 | 防衛・安全保障
■イージス艦8隻体制完成とNIFC-CA統合防空システム
 防衛省の来年度予算概算要求へイージス艦建造費一隻が盛り込まれる方向で調整中とのこと。

 8200t型ミサイル護衛艦の二番艦にあたり、はたかぜ型ミサイル護衛艦しまかぜ後継となります。これにより海上自衛隊のミサイル護衛艦8隻はイージスシステム搭載艦に統一される事となり、ターターシステム搭載艦は、1965年に就役した初のミサイル護衛艦あまつかぜ以来の艦隊防空任務をイージス艦へ譲る事となります。

 新しいイージス艦ですが、今年度の平成27年度予算に8200t型護衛艦1隻の建造費とともにもうい1式のイージスシステム等取得費が盛り込まれており、このイージスシステムを搭載する護衛艦として船体とイージスシステムを除く兵装システム等が来年度予算に盛り込まれる事は事実上決定していましたが、こちらが具体化したかたち。

 海上自衛隊は、1993年就役の、こんごう型ミサイル護衛艦よりイージスシステムの導入を開始し、7200t型として4隻が就役、続いて7700t型としてミサイル護衛艦あたご型2隻が就役し、ターターシステム艦はたかぜ型2隻と8隻のミサイル護衛艦が護衛艦隊の艦隊防空を担っています、8200t型では、イージスシステムは最新型となり、アーレイバーク級ミサイル駆逐艦最新仕様と同型のベースライン9が採用され、レーダー部分もSPY-1DMk7が搭載されます、米海軍の海軍統合火器管制防空システムNIFC-CAと統合防空ミサイル防衛能力IAMDへの協同が可能となります。

 NIFC-CAは、航空自衛隊が導入する新早期警戒機E-2Dにも目玉装備となるもので、艦隊のリモートセンサーとして早期警戒機や、またデータを連接する事で戦闘機との接合も可能となります。NIFC-CAは米海兵隊が米海軍との協同作戦にも用いられ、艦隊防空能力を陸上に展開した戦闘部隊の防空掩護に応用する共同交戦能力にも応用されるため、艦隊間の防空能力を高めるだけではなく、米海軍や米海兵隊との共同運用、将来的には航空自衛隊の防空システムへの海上自衛隊艦艇の参入を可能性として含みます。

 言い換えれば航空自衛隊の防空をイージス艦が参画する可能性も示し、導入されるであろうスタンダードミサイルSM-6/RIM-174ERAMとの連接性も示します、これは対航空機用に現在運用されているSM-2の後継となり射程は、SM-2の100kmから実に370kmに達し、水平線を越えての防空任務が可能となりましょう。

 統合防空ミサイル防衛能力IAMD能力付与が併せて行われ、アメリカ海軍の弾道ミサイル防衛システムと海上自衛隊イージス艦の協同がより迅速に且つ広範に展開可能となります。これは日米のイージス艦センサーの統合運用に関する可能性が大きく開けます。元来、イージス艦は艦隊防空にあって水平線上に展開する敵索敵機や哨戒機を長射程のSM-2スタンダードミサイルにより迎撃し、情報優位を相手に取らせない能力が求められました。

 加えて多数の対艦ミサイルによる飽和攻撃に対し、同時多数の迎撃能力を行使し艦隊防空に当たる事が求められました。旧ソ連の超音速爆撃機バックファイア60機がイージス艦2隻により護衛される護衛隊群8隻を攻撃した場合でも第一撃で20%の損害に抑える事が出来るという当時の研究があり、大きな防空能力が期待されてきました。

 一方、現在審議が参議院にて進む安全保障法制における集団的自衛権行使に関する核心部分は、弾道ミサイル防衛での日米共同の強化が視野に含まれており、NIFC-CAへの連接能力を視野に、技術に対応した能力構築へ法整備を進めているといえるやもしれません。自衛隊のイージス艦は勿論、多くの装備はネットワークに加入することで共同交戦能力を行使します、これを欠く運用はあたかもインターネットに接続しないパソコンのようなものですから。

 こんごう型の就役から今年で22年、そろそろ延命改修を視野に含めねばならない時期となり、こうした時期にイージス艦8隻体制が完成するわけですが、こんごう型のミサイル防衛能力付与に続き、あたご型へのミサイル防衛能力付与と近代化改修が行われます、8隻体制完成は、長い期間を要しましたが、ようやくその完成が見えてきたといえるでしょう。

北大路機関:はるな くらま
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安保法制への最大の誤解、徴兵制(第5回):長期間を要する人員の体力練成と部隊養成

2015-08-18 21:39:33 | 防衛・安全保障
■個人技量を高練度部隊へ昇華する難易度
前回に引き続く徴兵制について、今回は個人技量を高練度部隊へ昇華する難易度との視点から。

訓練検閲、つまり部隊として行動できているかどうかの評価、一回受けられるかどうか、になてしまいまして、そもそも二年間の一任期で自衛官候補生に応募し任官した隊員でも戦闘団検閲は一回しか受けられません。部隊の一員として、大きな作戦の末端を小銃を抱えて担う、簡単そうに見えるのですが普通科隊員の歩兵としての素養の養成は簡単ではないのです。

欧州各国が徴兵制を排し若しくは休止した背景は、まず半年間で兵士を養成できても戦闘部隊として養成できない、そして半年間で「予備役に編入し軍隊を去ってしまうという前提で多数の辞任を毎年教育し続ける事の費用と負担の均衡が取れない、という判断があったからに他ならないのです。さらに空軍や海軍になりますと、基地警備と車両積載支援などしか、本当に半年ではやることを教えられない。

また、体力とっても簡単に身に付きません。普通科隊員は、射撃と格闘技術に銃剣格闘技術と持久走能力が求められます、徒手格闘は主として日本拳法および合気柔術を原型として禁じ手を含めた殺傷力と即戦力を持つ技のみ厳選した総合格闘技術、 銃剣格闘は着剣した小銃を用いて行われるものでもともとは宝蔵院流槍術から発展した旧軍銃剣術の現代版、短剣格闘は銃剣を利用して行われるものです。

現代に格闘等、と思われるかもしれませんが、残念ながら戦争に区分される武力紛争は土地の収奪に収斂する目的で行われるため、敵が我が土地を奪い占有する意図、それに対し防護し兌換する我、という構図がどうしても成り立つものでして、この場合、陸上戦闘はどうしても最後は我と彼、一対一の構図となるためで、必須とはこういうことに他なりません。

自衛隊体力検定、普通科隊員は一級を採る事が求められます。自衛隊体力検定一級は腕立て82回に腹筋85回に3000m走11分26秒以内と懸垂17 回と走幅跳び5m10cm以上、ソフトボール投60m、全部できて一級でして、一つでもクリアできませんと二級、若しくはそれ以下になります、正直当方には無理です。

新隊員教育の前期教育で求められるのは自衛隊体力検定七級ですと、腕立て伏せ28回、膝半屈腹筋40回、3000m走16分33秒、懸垂腕屈伸3回、走り幅跳び3m60cm、ソフトボール投げ30m以上、と。これなら高校生の頃運動系部活にいた方は何とかなりそうですが、当方の様に放送部兼合唱部ですと、特に3000m走が厳しいかもです。ソフトボールもコツを掴まないと意外にとびません。

これが半年で練成できるものでは無いのです。もし皆さんの中に、小中高と全く格闘系競技に体育授業以外で参加した経験がない中で、大学にて日本拳法や合気道に柔道や空手等のサークルに参加し、有段者となるまでを御頃観られた方がいるのでしたら、その難易度が分かるのでは、と思います。コンパ重視の和気あいあい系ならば、参加でき交友関係を深められるでしょうが、大会重視ですと未経験者がついてゆく事は難しい。

北大路機関:はるな くらま
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新空中給油輸送機を要求、KC-767に続く新型機を防衛省来年度予算概算要求へ盛り込み

2015-08-17 22:42:11 | 防衛・安全保障
■ポストKC-767
 NHK報道などによれば、防衛省は来年度予算概算要求へ新型空中給油輸送機の導入予算を盛り込むとのこと。

 空中給油輸送機は、戦闘機等が空中で給油を受け飛行時間や航続距離を延伸する用途に用いられ、戦闘機の長距離飛行の際の中継地着陸を省き迅速な展開を可能とする事例、戦闘空中哨戒任務での滞空時間延伸を目指すもので、前者は例えば航空自衛隊機のアラスカなどでの訓練機動時の給油へ用いられるもの。

 航空自衛隊では既に小牧基地へKC-767空中給油輸送機4機を配備し運用しています。空中給油輸送機は貨物型旅客機を原型としている為、パレット輸送等や人員輸送にも大きな能力を有し、国際人道支援任務へもその輸送能力を発揮しており、防衛省は中期防衛力整備計画において予てよりその増勢を発表していました。

 来年度予算概算要求へは、現在運用中のKC-767をそのまま増勢するのではなく新型機を導入するとの報道が為されています。この背景にはKC-767がボーイング767-200ER型旅客機を原型としている点で、1980年代の原型機であるボーイング767-200ERをそのまま入手する事が難しくなった為でしょう。

 さて、新型機についてですが、現在のところ具体的な機種名は示されていません。最有力候補はKC-767の改良型に当たる米空軍向けKC-46Aです、ボーイング767-200ERFの機体に767-300ERの主翼とボーイング787のコックピットを合わせた最新型で給油装置も最新型となり、これは早期警戒管制機E-767とKC-767と767系統の航空機を導入した航空自衛隊としては最適の機種といえるやもしれません。

 機種については概算要求と予算閣議決定後に示されるという事ですので、政府専用機としてボーイング777が導入予定ですので777の派生型として新規開発の可能性が皆無ではありませんし、候補の一つにエアバスA330MATTが売り込まれる可能性もあります。ただ、総合評価方式を採る場合、整備性と部品供給の面からKC-46Aに対抗するのは難しいところ。

 KC-46AはKC-767と比較し全長と全幅、そして給油用燃料搭載能力が若干程度増大しています、そしてプラットアンドホイットニーPW4062ターボファンエンジンを採用しています、ただ航空自衛隊はE-767やKC-767にC-2などにGE-CF6-80C2B6Fターボファンエンジンを採用していますので、日本仕様としてエンジン換装などが要求される可能性が高い。

 元来、航空自衛隊は空中給油輸送機導入の際12機程度の取得を要望していましたが、1990年代の時点でその要求は財政再建を背景に難しいものとなり、米空軍のKC-135による訓練を行うと共に運用研究を含め4機のKC-767を導入しました。今回の予算要求に盛り込まれたのは、ようやくその防衛基盤構築が実現するのだともいえ、感慨深いものです。

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陸上防衛作戦部隊論(第二七回):装甲機動旅団編制案の概要 戦車大隊

2015-08-16 22:41:44 | 防衛・安全保障
■装甲機動旅団戦車大隊
広域師団構想の機動打撃力骨幹火力を担う装甲機動旅団戦車大隊について。

戦車大隊は3個戦車中隊基幹とし、編成は大隊本部・戦車中隊・戦車中隊・戦車中隊 、とします。装甲機動旅団の主要装備に当たり、戦車を運用しての機動打撃の骨幹を構成します。戦車定数は41両で、戦車配置が大隊本部に2両、戦車中隊が13両、戦車小隊が4両と中隊長車1両、戦車中隊3個を以て39両、大隊直轄2両を合わせ41両です。もともと広域師団の発想は、新防衛大綱が300両で充分とした戦車を北海道と九州南部に集中する極めて歪な部隊配置を行うため、限られた戦車ならば北海道と九州に集中させなければ、薄く戦車の集団運用を展開できなくなるとの施策に対し、戦車を持つ旅団と高度な航空機を持つ旅団に分け、戦車中隊を装甲戦闘車中隊と併せる機械化大隊を機動打撃力の骨幹とする発想から論理が梁間りました。

90式戦車、10式戦車、戦車大隊は陸上自衛隊が誇る新鋭戦車の何れかを装備します。74式戦車は機動戦闘車に代替されますが、機動戦闘車は装甲機動旅団ではなく航空機動旅団へ配備すべき装備で、普通科部隊が装軌式装甲戦闘車を装備することから90式戦車か10式戦車による高い不整地突破能力と直接照準火力投射能力を以て機動打撃を展開します。90式戦車と10式戦車は、共に複合装甲と120mm滑腔砲を搭載し自動装填装置による高い行進間射撃能力と砲安定装置及び目標自動追尾能力を有すると共に、基幹連隊指揮統制システムへの連接能力を有する事から、装甲機動旅団に求められる戦術能力全般を有しており、将来的にも十分な能力を発揮できるでしょう。併せて戦車の光学監視装置は非常に大きく、基幹連隊指揮統制システムとの連接で装甲機動旅団の情報収集主力ともなる。

戦車大隊は3個戦車中隊を基幹とします。この3個中隊は、現在の本土戦車大隊と北部第11戦車大隊が2個戦車中隊基幹となっている点に鑑みますと、やや大型の戦車大隊となっていますが、これは装甲機動旅団隷下の普通科連隊が3個連隊基幹である点に依拠しており、連隊戦闘団編成時には各普通科連隊へ配属する想定です。戦車中隊は、連隊戦闘団編成時に普通科連隊隷下のFV中隊2個とともに機械化大隊を編成しますが、可能であるならば各戦車中隊にFO:特科前進観測用の戦車等を装備し、第一線火力との連接を強化します。ただ、防衛計画の大綱には戦車定数が示されており、FO用の戦車を捻出する事は出来ません。96式装輪装甲車か軽装甲機動車を充てる事となりましょう。

戦車中隊は、中隊長、副中隊長、運用訓練幹部、3個戦車小隊、となるのですが、副中隊長と中隊先任曹長用の戦車を確保する余裕がありません。したがって副中隊長と中隊先任曹長用には軽装甲機動車を配置します。中隊管理班へ73式装甲車を充当する事が望ましいのですが、老朽化が進み、装甲戦闘車では用途が限定、96式装輪装甲車は不整地突破能力が限定されますが、消去法ですと96式装輪装甲車を中隊本部に充てる事となります。その上で、戦車小隊は4両です、1号車に小隊長が、2号車に小隊陸曹、3号車と4号車が続き、小隊長車と3号車、小隊陸曹車と4号車が奇数偶数で運用します。小隊編成には3両も有り得ますが、小隊長と小隊陸曹で小隊を二分することが出来ませんし、1両が戦闘で損耗した場合の戦闘継続が不可能となります、戦車部隊としての最適解は4両ということ。

戦車定数41両、一個方面隊を担う広域師団の戦車はこの41両のみですが、理想を言うならば、大隊長の直轄に1個中隊を加え54両必要なところです、しかし防衛計画の大綱と機動打撃力の骨幹となる機甲師団を維持する場合、防衛大綱の定数を300両とし、最大限350両とした場合でも、この41両という数量がギリギリとなってしまいます。ただ、機動打撃力に関しては一定水準が維持される編成としました、即ち、装甲戦闘車と連携する運用を前提とするのですから、作戦単位は3個を維持できます。一方、旅団が一個として運用する場合、例えば旅団全般が地域防備に当たる場合、普通科連隊は独立し運用されることとなり、戦車大隊は大隊長隷下、所要の普通科中隊の配属を受け、独立した代替として運用する事も考えられるでしょう。

北大路機関:はるな くらま
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8.15:第二次世界大戦太平洋戦争大東亜戦争終戦から七〇年

2015-08-15 12:00:00 | 北大路機関特別企画
■終戦七〇年
 本日は8.15、第二次世界大戦太平洋戦争大東亜戦争終戦が終わった日です。

 犠牲者350万、戦後70年の安倍首相談話、先の大戦への反省と戦後の諸国への感謝を幾度も触れつつ、未来志向で希望が持てる内容にまとめられていました、併せて、子孫に謝罪を続ける宿命を負わせてはならない、とし、これは戦後一貫した平和政策と周辺国との和解に関する各国との合意にも示されています。

 特に首相談話に示された第一次世界大戦後の世界平和への新しい国際秩序への挑戦者となった事による大戦勃発への反省は、視点を変えるならば、第二次世界大戦の膨大な犠牲のもとに成立した今日の国際秩序と平和について、戦後世界各国の厚意から世界政治の舞台へ復帰した我が国が、守る立場の諸国に対し、傍観者たるのか主体的に参画するのかを問うているようにも思えました。

 平和について、祈るだけの平和主義から、如何にして戦火の惨禍から人々を守り、そして諸国民がより良い平安を憩う世界を構築するか、幸いにして我が国はその意味と価値を知り、更に参画する能力と気力を有しています。続いて、祈るだけの平和主義を密やかに営むのか、平和構築への世界からの責任に応えるか、70年の思索を広く示すべきでしょう。

 併せて、大戦と植民地支配への反省は戦後の平和主義として結実しましたが、これは今日までの友好国への感謝と我が国社会を支えるあらゆる人々の努力により維持されたものですが、一方で、我が国の平和と不戦の誓いを他国に今日の国際秩序への力を以ての変更を試みる挑戦者に悪用させることは、過去の我が国の施策を反省するからこそ、防がねばなりません。

 そして大戦への反省は、必ずしも戦前の我が国とおなじ道を歩もうとする国家への予防外交と国際秩序への挑戦から国際秩序への回帰を促す施策を制限するものではありません。過去の反省と過去からの歩みを信じ、未来へ向かわなければならないからです。戦後70年のこの日、こうした事を考えましたしだいです。
 
北大路機関:はるな くらま
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平成二十七年度八月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2015.08.15-16)

2015-08-14 23:15:37 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
明日は終戦記念日ですが、本日は今週末の自衛隊関連行事について。

今週末はお盆ですので、自衛隊関連行事として行われるものは一般公開 in 宇品2015として広島県広島市の宇品外貨埠頭1万トンバースにて行われます練習艦しらゆき一般公開のみ、お盆でも艦艇一般公開が行われるのが少々意外でした、はつゆき型護衛艦の最古参の一隻、是非お近くの方は足をお運びください。

この他の艦艇一般公開は行われません、艦艇広報などはやはりこの時期中止される場合がありますので、基地広報HPなどをご確認ください。また陸上自衛隊の駐屯地祭や海上自衛隊の展示訓練に航空自衛隊の航空祭も行われません、富士総合火力演習の教育訓練等が開始されますが、こちらは一般公開されません。

ただ、お盆の時期は艦艇が母港に帰港している事が多く、艦艇基地の埠頭は多くの艦艇が停泊、横須賀のヴェルニー公園や佐世保の佐世保シーサイドパーク、舞鶴の前島埠頭と赤レンガ博物館、呉のアレイからすこじま、などから基地に停泊する艦艇を間近に見ることが出来るでしょう。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭
・8月16日:一般公開 in 宇品2015練習艦しらゆき一般公開・・・http://www.mod.go.jp/msdf/

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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航空防衛作戦部隊論(第四回):航空防衛力、中国空軍力の軍事的圧力水準

2015-08-13 23:03:56 | 防衛・安全保障
■中国空軍の規模
我が国へ多数の航空機を接近させ、緊張度を高めている中国空軍ですが、その規模を見てみましょう。

航空自衛隊の戦闘機を見ますとF-15戦闘機200機、F-2支援戦闘機80機、F-4戦闘機50機、以上戦闘機330機、と前回紹介しましたが、対する中国空軍の規模はどの程度なのか、戦闘機数だけではなく、日本周辺までを戦闘行動半径に含めている航空機の規模などから見なければこの装備水準が充分であるのか不充分であるのか、判断できません。

中国空軍、膨大な機数を持つ事は確かですが、努力し対処し得る規模なのか否かについて。冷戦最盛期には1940年代の戦闘機を含めソ連製コピー戦闘機を膨大な数を有しているという印象があり、数は多いものの我が国防空識別圏をその戦闘行動半径に含めていない機体が主力、という固定観念が定着していますが、現在ではその配備数が一桁減ったものの、戦闘行動半径が沖縄や九州と本州も含めた機体の比率が高まりました。

中国空軍の装備体制について、ロシア製Su-30戦闘機73機、Su-27戦闘機75機、輸入した機体はこのふたつ。加えてJ-16、Su-30中国ライセンス生産機が24機、J-11、Su-27中国ライセンス生産機が205機、所謂フランカーシリーズで377機、イスラエルよりラビ戦闘機の技術援助を受け開発されたJ-10戦闘機250機で生産継続中です。海軍航空隊を含めるともう少し大きいですが。

空軍、更に二線級ですがMiG-21独自改良型のJ-8戦闘機192機、同J-7戦闘機528機、JH-7攻撃機とQ-5攻撃機計240機、即ち第一級の戦闘機が637機、そして旧型機、これらは戦闘行動半径で何とか大陸沿岸部から南西諸島周辺まで飛行する事は出来るのですが、低空飛行や空戦機動に対応できず、データリンクの面で現代戦へ対応できません。

中射程ミサイルを運用できないJ-7とJ-8など超音速戦闘機と超音速攻撃機が加えて960機、という陣容です。データリンク能力が無く、新世代機の後備えとして本土防空に参加する事も難しく、一説には無人機に改造し攪乱用に用い得るといわれます。くわえてJ-7複座型のJJ-7練習機が200機運用中とのこと。  

爆撃機は1952年にソ連が開発したTu-16をコピーしたH-6爆撃機が120機のみ。早期警戒機として実験的試みとしまして後述するY-8輸送機にレーダーを搭載したKL-200を7機装備し、Il-76を原型とする最新鋭のKJ-500が開発中、輸送機はソ連製Il-76輸送機を導入中で14機を装備、主力輸送機はソ連製A-12輸送機をコピーしたY-8輸送機が54機と改良型のY-9輸送機が9機、となっています。

特殊用途航空機として、Y-8電子偵察型が19機程度、旅客機原型で電子偵察型のTu-154が4機、H-6爆撃機原型のHY-6空中給油機が10機、この他に複葉機のAn-2輸送機を200機程度や初等練習機に人員輸送機等を多数装備しており、全体的な航空機数は3000機を超える規模となっています。

北大路機関:はるな くらま
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米陸軍ヘリコプターが沖縄本島沖に墜落、UH-60系統機で艦船発着に失敗し7名負傷

2015-08-12 22:56:30 | 防衛・安全保障
■沖縄で米陸軍ヘリコプター墜落事故
 本日1300時過ぎ、沖縄県沖縄本島沖にて米陸軍のUH-60/S-70系統ヘリコプターが海上にて墜落しました。この事故について、事実関係と推測を交え背景を見てみましょう。

 報道では米陸軍所属のUH-60汎用ヘリコプターとされていますが、機体形状と塗装の特色から特殊作戦用のMH-60特殊戦ヘリコプターの可能性があります。機体は米事前配備船のワトソン級車両貨物輸送艦レッドクラウド艦上に横倒しになる形で墜落し、これにより17名が搭乗していた内7名の負傷者が出ました。

 UH-60は我が国でも多用されており、陸上自衛隊がUH-60JA多用途ヘリコプターとして約40機を、海上自衛隊がSH-60J/K哨戒ヘリコプターとして140機を納入、救難ヘリコプターとしてUH-60JAを20機程度、航空自衛隊も救難ヘリコプターとしてUH-60Jを40機程度導入し運用中であるほか、改良型の開発が進んでいます。

 UH-60の機体そのものは米陸軍の汎用ヘリコプターとしてや派生型が海軍の哨戒ヘリコプターや攻撃ヘリコプターとして、空軍の救難ヘリコプターや特殊作戦用として運用されるほか、原型機S-70が我が国以外に周辺国では台湾の中華民国軍と韓国軍、更に天安門事件以前に中国へも輸出され人民解放軍が高山部での汎用ヘリコプターとして少数を運用中です。

 事故はうるま市浜比嘉島の東側5kmから10kmの海上で発生し、第一報が海上保安庁に寄せられたのはキャンプ瑞慶覧からです。UH-60は陸軍機で在日米軍ではキャンプ座間第78航空大隊へ5機程度が配備されていますが、在日米軍の機体ではありません。ただ、沖縄にはアメリカ陸軍第1特殊作戦群第1大隊が展開しており、その支援用として特殊作戦仕様のMH-60が展開する事があり、嘉手納基地等に展開しています。

 ワトソン級車両貨物輸送艦レッドクラウド艦上にて事故が発生しましたので、事前配備船の点検飛行等をおこなっていたのかと当初は連想しました、事前配備船は揚陸艦とは異なる輸送船で、師団規模の部隊装備を紛争などが想定される地域に近い海上へ事前に数隻の輸送艦に配置し、有事の際に人員のみ輸送機により緊急展開させる事で師団規模の戦闘部隊を急速増派させるもの。

 しかし、事前配備船には航空機や航空燃料が搭載されていますし、ワトソン級には停船中に発着可能な飛行甲板は設置されているものの、揚陸艦ではありませんので、整備区画などは元々配置されておらず、何よりも17名の人員が搭乗し飛行するという事は考えにくい事から、若干困惑しました。

 この点について、続報に着艦訓練中に発生したもので、ヘリコプターには陸上自衛官も2名搭乗しており、負傷者7名のうち2名がこの陸上自衛官であったというものがありました。報道では、この2名の自衛官は中央即応集団の所属とのことで、中央即応集団隷下の特殊作戦群要員がアメリカ第1特殊作戦群第1大隊の要員と共同訓練を実施していた可能性が浮かびます。

 MH-60は前方赤外線監視装置やGPSに気象レーダ装置と機体自衛装置等を搭載し、極限状態で運用される為、リスクの非常に高い状況での運用を想定し訓練します。こうした事情はありますが墜落した機体は尾部とローター部分が破断するなど大きな損傷を受けており、航空事故に対し発生した沖縄県は非常に神経質となっており、海上での事故とはいえ批判の声が予想されます。

北大路機関:はるな くらま
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