北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

安保法制への最大の誤解、徴兵制(第4回):現代戦はプロでなくては務まらず一朝一夕に練成できない

2015-08-11 22:35:25 | 防衛・安全保障
■戦後七〇年に見る現代戦
スポーツ未経験の生徒たちが創意工夫で全国大会へ短期間で実力をつけ臨み廃校や廃部を免れるために汗を流す、フィクションではよくある話ですが現実では難しい。

前回までの視点、大規模な人員を確保する必要がないならば、懐疑者の視点からは短期化して徴兵制が指向される可能性は無いのか、欧州各国では、冷戦終結後、大規模な陸軍が不要となった事を受け、徴兵期間を大きく短縮する事で対応しました。最短で六か月、というものがありました。こうした事が行われる危惧は杞憂なのでしょうか。

結論を先に示せば杞憂です。何故ならば、現代戦はプロでなければ勤まらずその要請は簡単ではない、欧州各国が、スイスやスウェーデンにフィンランドなど永世中立国を例外として徴兵を終了もしくは無期限停止した背景には、短すぎる徴兵期間では兵員の練度を十分に上げられないからです。体力一つとっても、半年間で練成できる能力には余りに制約が多い。

現代戦はプロでなくては務まらず一朝一夕には無理です、半年間の徴兵、我が国が仮に徴兵制度を半年とした場合ですが、自衛隊の人員規模は55万名、となるでしょう。これならば駐屯地を二段ベッドや護衛艦のような三段ベッドとして、隊舎を高層化して、なんとか詰め込めるかもしれません。食堂と浴場は足りませんが、まあ、非現実的であっても限度を超えた常識の範疇の非現実、というところでしょう。

しかし、自衛隊は教育期間だけで半年を要するのです。自衛隊は最低限度の第一線戦闘要員としての資質と小銃の射撃と整備などに入隊から三か月間、前期教育として基礎を習得させます。そして次の三か月間で、普通科や機甲科や特科など専門教育を行う後期教育を第一線部隊で行います。そして新隊員特技課程を履修する。

戦後七〇年、少々古い視点からは簡単に見える第一線要員の練成は簡単で張りません。現在は自衛官候補生課程として10週間に短縮していまして、少々、例えば早い時期に徒歩機動10kmが組み込まれ、体力練成が追いつかない、という話があります。完全武装10km徒歩機動はかなり厳しいようで、もっとも最近の若者は体力の限界を超えて倒れるまで頑張る連中が多く感心する、と班長さんがたは驚いているようですが。

新隊員が4月に入隊したとして、6月に自衛官候補生から前期教育を修了して部隊での後記教育へ、教育修了による中隊配属は9月、となります。半年間の徴兵、などとなりますとこれだけで終わってしまうのです。教育が修了すればそれでいいではないか、というのは誤解、これはあくまで個人が軍事機構の一員として参画する素養を身につけただけに過ぎません。

自衛隊では1四期の4から6月にかけ、小隊規模演習と演習場整備を行うと共に師団旅団競技会へ錬成訓練を射撃と格闘と銃剣道及び持続走で実施し、装備と車両は物品と会計と補給及び保全の各種検査を行います。続いて2四期の7から9月にかけ中隊や連隊若しくはその戦闘団の検閲を行い、これらを行わない年度は師団演習と各種競技会を行う。

続く3四期の10から12月にかけ中隊規模の演習か検閲を行うかより大型の部隊の戦闘団の錬成訓練を行う。4四期の1から3月に掛け射撃や陣地構築に整備といった各種戦技錬成と各種競技会を行い来年度に向けての計画策定を進める、こうした体制を基本としています、行うとしと行わないとし、と示したのですが、これは自衛官の任期が二年であるため、という訳です、それ以下は想定していません。

すると、半年の徴兵期間で無理矢理人員を集めても、それは、最低限装備を以て10km程度は徒歩で移動できて、攻撃と防御へ姿勢を換えたり、小銃を整備し機関銃を扱え、無反動砲か迫撃砲の教育を受ける事は出来ましょうが、そこまで、部隊としての訓練はほとんど出来きない、という事が分かりますが、これでは意味がないという事が分かるでしょう。

北大路機関:はるな くらま
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
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南九州F-15要撃飛行隊配備!南西諸島防空主眼に新田原基地へ百里基地と戦闘機部隊交代

2015-08-10 23:00:26 | 防衛・安全保障
■新田原基地へF-15要撃飛行隊展開!
 宮崎県地方紙報道として、新田原基地へF-15要撃飛行隊が展開する計画とのこと。本日は、これから数年間の防空の大変革を見てゆこうと思います。

 南九州の新田原基地には第5航空団が展開しており、現在はF-4EJ改を運用する第301飛行隊を以て防空任務へあたっています。航空団が1個飛行隊基幹というのは特色ですが2000年まで新田原基地には第202飛行隊が要撃任務へあたっていました、第202飛行隊がF-15のマザースコードロンとして要員養成等を担った航空自衛隊最初のF-15飛行隊でした。

 2000年の航空自衛隊部隊改編に伴い、第202飛行隊はそのまま新田原基地に留まり航空教育集団飛行教育航空隊第23飛行隊へと転換し、戦闘機要員教育部隊となりました、新田原基地には航空自衛隊最強と言われる仮設敵部隊の飛行教導群が展開していますので、相当数のF-15が装備運用されていましたが、全て教育用となっていたわけです。

 新田原基地へ移転してきます予定の部隊は百里基地第7航空団の第305飛行隊で、F-15を運用しています。第7航空団は、第302飛行隊と第305飛行隊を基幹部隊としており第302飛行隊がF-4EJ改を運用し第305飛行隊がF-15を運用し首都圏の防空任務に当たっています。今回の改編で第305飛行隊が新田原へ移転すると共に交代として第301飛行隊が百里基地へ移転するもよう。

 第301飛行隊は新田原基地移駐以前に元々百里基地に展開していた部隊でして1985年に新田原へ移駐した飛行隊です。即ち、今回の部隊交代は第301飛行隊の里帰り的な移駐となるのですが、これにより百里基地第7航空団は隷下の飛行隊2個が双方ともF-4EJ改を運用する事となり、首都防空はF-4EJ改が今後担う事となりました。

 首都防空ですが、元々第7航空団はF-15二個飛行隊を基幹としていました、第204飛行隊と第305飛行隊のF-15戦闘機40機が首都防空に当たっていた訳です、首都圏は特にロシア空軍機が太平洋を東京に向かい爆撃機を南下させる東京急行経路等に要撃を行っており、一定の防空任務はあった訳です、しかし、現在の編成となった背景は、やはり南西防衛強化だったのです。

 第204飛行隊は2009年、南西諸島防空強化のため、F-15戦闘機を以て那覇基地へ移駐する事となり、那覇基地で永らくF-4EJ改を運用していた第302飛行隊と交代する形で百里基地へF-4EJ改が戻ってきたわけです。戻ってきた、とは、元々F-4EJ戦闘機の最初の飛行隊であり要員養成を行っていたのは百里基地時代の第301飛行隊でした。

 なお、那覇基地は現在F-15が一個飛行隊運用されているのみですが、年明けに北九州築城基地の第8航空団よりF-15を運用する第304飛行隊が那覇に移駐し那覇基地の第83航空隊は第9航空団へ改編予定です。第8航空団は第304飛行隊にF-2を運用する第6飛行隊が配置され、現在のままですと、九州は北九州がF-2飛行隊と南九州がF-4EJ改飛行隊のみとなるところで、このあたり百里からの移転となった背景の一つといえるやもしれません。

 首都防空は二個のF-15飛行隊が担っていたのですが、一個が2009年に沖縄へ南西諸島防空強化に向け那覇基地へ移転し、そして次の部隊改編で南九州の新田原基地へ移駐する事となりました。東京防空に旧式のF-4を集中するという大きなリスクを抱えてでも、日本国家は南西諸島防空に重点を置こうとしている、こう表現する事も出来るでしょう。

 一方、百里基地ですが、日本のファントム発祥の地であるとともに、二個のF-4EJ改要撃飛行隊を配置すると共にRF-4偵察機を運用する偵察航空隊が展開しています。こうして、ファントムは岐阜基地の飛行開発実験団等の少数機を除けば全て百里基地へ集中される事となり、整備能力と補給面で効率化が図れるやもしれません。

 偵察航空隊には第501飛行隊が隷下に配備されていますが、2009年の部隊改編により第501飛行隊支援に当たる偵察航空隊整備群が第7航空団に移管されていますので、今後の改編により第7航空団は3個のファントム飛行隊を運用する、現存する世界最大のファントム航空団となる訳です。

 更に一部報道では、新田原基地の飛行教導群が拠点を北陸日本海側の小松基地へ移駐するとの情報があります、飛行教導群は飛行教導隊から2014年に改編された部隊ですが、当初築城基地に編成された部隊が新田原基地へ移駐したものです。小松基地沖には、G空域という秋田沖から山陰沖にかけての広大な訓練空域が確保されており、訓練環境向上を視野としたというもの。

 首都防空をF-4EJ改飛行隊のみとすることは、非常に大きな決断であったと考えられます、在日米軍も近くの飛行隊は三沢基地のみ、現在では厚木基地に米海軍の第5空母航空団がF/A-18E/FやF/A-18C/Dを展開させていますが、この航空団も近く山口県の岩国航空基地へ移転しますので、防空能力は大きく低下するといわざるを得ません。しかし、他に引き抜ける航空団が無かったという理由もあり、防空体制は大きく転換期を迎えているといえるでしょう。

北大路機関:はるな くらま
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安保法制への最大の誤解、徴兵制(第3回):師団を新編する装備と駐屯地の費用

2015-08-09 21:25:44 | 防衛・安全保障
■師団新編の膨大な費用
前回、第一線の普通科隊員一人の装備であっても非常に大きな費用を要する事を説明しました、そして火力の発展と電子機材や監視器材の発展により、歩兵の任務は広がるばかりで専門性が求められます。

そしてさらに、そもそも、師団、これは7000名くらいの部隊で地域を占領し攻撃と防御両方を熟す普通科部隊を中心に、装甲防御と打撃力を持つ30両くらいの戦車部隊、大砲を30門程度装備し長距離攻撃と敵の長距離攻撃部隊を撃破する特科部隊を中心に一つの方面で作戦を行う事が出きる部隊を師団というのですが、これをまるまる一個増設する場合、各種装備と車両の調達費用だけで6800億円程度かかります。

師団一つ増設する費用をゼロから揃えれば6800億円、13万の陸上自衛隊を韓国並みの徴兵期間で徴兵するとして150万まで増えるわけですから、本当に単純計算した場合195個師団増設することになってしまいます。正直に195個師団分の装備をゼロから揃えれば、戦車5850両と火砲5850門、必要な費用は133兆857億円、と。

一気に買えば量産効果で安くなるでしょうが、装備は25年で老朽化しますので最低5兆3200億円が老朽化対策で毎年必要となる。景気の良い話ですが、さすがに現実味がありません。自衛隊が現在の予算で成り立っているのは、徐々に装備を更新している為なのですが、いきなり拡大できないのです。逆説的にだからこそ一個師団に十分な予算を掛け編成する必要があり、その結果論として第一線の要員は専門性を持つ要員でなければならない。

徴兵制により拡大した場合、駐屯地も足りません。現在陸上自衛隊は155の駐屯地と分屯地を全国に置き、基盤的防衛力としていますが、これを人員が10倍となるならば1550まで増やさなければなりません。むしろ、都市部に広大な土地を購入し駐屯地とした場合、地価の関係上装備よりもこちらの方が高く成り得ます。

単純計算ですが、1000名くらいの部隊の駐屯地、隊舎に車両置き場、隊本部と会計隊などの庁舎に基地通信部隊用施設、グラウンドと食堂などの業務庁舎を含めれば概ね500×400m程度の土地が必要でして、この取得と造成の費用もままなりません。地方ならば多少土地があるやもしれませんが、駐屯地と展開のための道路網建設を行う必要があり、こちらも高くつく。

演習場も徴兵制により拡大した場合やはり足りません、最低限射撃訓練を行う必要がありますし、射場を確保しなければならないのですが、現時点で演習場と射場は不足しています、海外の演習場を探せば、豪州や米本土等、国土が狭い諸国が演習場を借りる事例はあるのですが、そうしますと、移動のための費用が高い。

もちろん、演習では大量の燃料と資材を必要としますし、糧食費用なども当然考慮せねばなりません、演習と云いますと、あくまで一例ですが小銃弾一発が220円、89式小銃は連射しますと30発入り弾倉を2.5秒で撃ち切ってしまいます。迫撃砲弾、無反動砲弾、榴弾、戦車砲弾、各種ミサイル、どれも費用が無視できません。

そして徴兵は若年労働力を一定期間軍務に就かせるわけですので、労働人口が一時的に低下します、これは大きな税収低下につながりまして、費用面だけで、あくまで純粋に費用を見ただけでも非現実的に他ならず、このように、無理に拡大する徴兵制の必要がないことは理解できるでしょう。

北大路機関:はるな くらま
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八月八日は“八八艦隊の日” 専守防衛!集団的自衛権に依存しない独自防衛力を考える

2015-08-08 22:48:04 | 北大路機関特別企画
■八七艦隊建造案!
本日八月八日は“八八艦隊の日”、そこで本日は海上防衛を主軸に集団的自衛権に依存しない独自防衛力を考えることとしましょう。

海上防衛力に関する個別的自衛権に依拠したシーレーン防衛は、1980年代頃の政策提言を行う立場のシーレーン防衛に関する研究会が、必要な防衛力として、機動運用部隊に7個護衛隊群56隻、群直轄艦にインヴィンシブル級軽空母とシーハリアーの導入が必要、と提言した事例がありまして、インヴィンシブル級を護衛艦ひゅうが型や護衛艦いずも型に、シーハリアーをF-35Bに置き換えれば今日的にも成り立つでしょう。これまで提案していますような、ヘリコプター搭載護衛艦とイージス艦に汎用護衛艦2隻を配置する2個護衛隊基幹の部隊、個人的には反対ですが、この編成で護衛隊群7個を独力で整備し維持すれば、シーレーンは独力でも防衛し得ることでしょう。

護衛艦隊7個護衛隊群の数的根拠は、我が国周辺海域と中東からの長大なシーレーンに各1個護衛隊群の2個護衛隊群を即応体制に置くというものでした、シーハリアーを1個航空隊10機と想定して運用する部内研究を参考としまして、教育航空群を加え稼動機75機、在場予備機と損失予備機を加え100機程度、ですか。同時期にホーカー社が盛んにハリアーを我が国へ売り込んでいまして、誤報でしたが110機導入検討という話題が流れました、同時期に米空軍が余剰B-52を機雷敷設用と対潜哨戒用に我が国へ打診という怪情報が流れた時代でもあり、参考ともならないのですが、自民党部内での研究がそのまま不明瞭な形を採って流れたことが遠因であるのかもしれません。

集団的自衛権を敢えて否定し、個別的自衛権に依拠した必要な海上防衛力ですが、この7個護衛隊群を独力でシーレーン防衛するための数値との事ですからそのまま参考に、各護衛隊群を2個護衛隊として現行のまま編成した場合で、必要な護衛艦はヘリコプター搭載護衛艦7隻、イージス艦14隻、大型汎用護衛艦35隻、と。現在の護衛艦隊はDDH中心の対潜掃討護衛隊とDDG中心のMD対応護衛隊に区分されていますが、護衛艦隊所要だけで56隻、中曽根内閣時代には地方配備の護衛艦がここに各地方隊へ2個護衛隊6隻を必要としまして、同時期に沿岸用護衛艦の代替を進めていましたので56隻に30隻を加え必要な護衛艦は86隻となります 。

独力でのシーレーン防衛、これは特に我が国のシーレーンが非常に長い為ではありますが、必要な護衛艦数が86隻、当時は護衛艦隊直轄艦1隻を有していましたので87隻となりますか、実は中曽根内閣以降、PKO協力法を始め集団安全保障の枠内に入りつつ集団的自衛権への解釈が内閣法制局により転換してゆく事となるのですが、上記装備数の実現困難を反映してのものとも見えてきます。潜水艦定数は現在の防衛計画の大綱が22隻、これは16隻の定数が増強されたものなのですが、16隻の必要積算根拠がソ連太平洋艦隊警戒へ宗谷海峡・津軽海峡・対馬海峡警戒監視へ、というもので22隻への拡大根拠が南西諸島での中国艦隊太平洋進出への警戒監視へ6隻の増強が必要とされたと推測されるところ。

個別的自衛権にのみ依拠しての海洋進出対処任務を考えますと、更にバシー海峡での警戒監視任務を行わなければならず、必要潜水艦数は28隻、ただバシー海峡は潜水艦基地である呉基地から距離が大きすぎるため、沖縄の勝連基地を拡大するか、回航する潜水艦を増勢する必要があるため、潜水艦定数は30~32隻程度必要とする必要があるでしょう。前述の7個護衛隊群及び地方隊所要の護衛艦87隻という数字は少々非現実的ですが、潜水艦30隻、という見積もりも少々非現実的です、が、南西諸島警戒監視任務へ6隻の増勢が行われた訳ですので、加えてバシー海峡を警戒する運用を念頭とすればこの規模の潜水艦隊が必要となり決して誇張ではありません。

護衛艦約90隻(87隻:全通飛行甲板型護衛艦7隻・イージス艦14隻など)、潜水艦約30隻(32隻)、作戦用航空機300機(哨戒機100機、固定翼艦載機100機、回転翼艦載機100機)、ここに掃海艇や掃海用航空機と救難航空機を加えた装備体系、まさに”ぼくのかんがえたさいきょうの”的な印象の装備となりました。個人的には八八艦隊構想として各護衛隊群をヘリコプター搭載護衛艦1とイージス艦1に汎用護衛艦2から成る護衛隊を2個編成する案を提示していますので、7個護衛隊群構想を示す場合には、全通飛行甲板型護衛艦14隻、イージス艦14隻、汎用護衛艦28隻、F-35B7個航空隊、と示したいのですが、流石にこれは。

八八艦隊といいますか、護衛艦隊と地方隊の計算をしますと期せずして87隻の護衛艦が必要、と八七艦隊構想というような言葉遊びの様になってしまいましたが。この他、個別的自衛権にのみ限定し国土を防空しようとする場合、例えば航空防衛力も、米空軍が有事の際に展開できる航空部隊規模、嘉手納基地だけで戦闘機を350機収容できるといいますので、機動運用可能な戦闘機として航空自衛隊は350機の運用、全体で450機程度の戦闘機が必要となってしまうでしょう。

陸上防衛力は、陸上自衛隊はかなりの防衛力を整備していますので、戦車定数を400両程度確保できれば、あとは適宜通信能力強化と無人機や普通科部隊の装甲化促進で対応できるとは考えます、が、空中機動能力だけは米海兵隊の増援に匹敵する程度増強しなければ島嶼部を含め機動防衛が不可能となりますので増強しなければなりません、が、AH-1W/Z攻撃ヘリコプター12機、UH-1N/Y汎用ヘリコプター 12機、CH-46中輸送ヘリコプター/MV-22可動翼機48機、CH-53E重輸送ヘリコプター32機、AV-8B攻撃機40機、F/A-18戦闘攻撃機24機、EA-6B電子戦機4機、KC-130空中給油機6機、海兵航空団の規模は戦闘序列はこの程度、これを自衛隊が別枠で整備し、投入できる体制を整備しなければなりません。

さて、集団的自衛権を否定し個別的自衛権を行使する範囲内にて、必要な防衛力を整備し我が国のみでの大陸からの軍事圧力へ対処する、という方策、実際現在の野党民主党などは防衛力整備こそが重要としまして、政権時代には削減していた防衛力強化を提唱し、領域警備法などを示しています、更に個別的自衛権に依拠した周辺事態法により、政府が提唱する集団的自衛権行使への対処の代案ともなるとの考え。

日米同盟があり、集団的自衛権は2000年代の解釈で既に行使できないが保持している、との判断が統治行為論に基づき憲法判断を最高裁判所より授権した内閣法制局により為されているのですが、ここを面子だけで個別的自衛権に基づく防衛力整備により達成する場合には、これだけの装備と人員拡充が必要となるわけです。ただ、7個護衛隊群にインヴィンシブル級軽空母を配備しシーハリアーを運用するという構想は過大なのではないの、科との視点があるやもしれませんので若干捕捉を。当時必要とされたシーハリアーは、ソ連海軍航空隊のバックファイア超音速爆撃機からの超音速対艦ミサイル攻撃へ外洋上でイージス艦と共に対処するためのものでした。

そこで、与党部内での意見として仄聞した限りでは、インヴィンシブル級軽空母ではなく、当時計画中であった4万tクラスのシャルルドゴール級原子力空母を通常動力化し、F/A-18C戦闘機を搭載し中距離空対空ミサイルにより視程外戦闘を展開しなければ対応する事は難しいのではないか、という意見があった程、とのこと。中国海軍航空隊は旧式ですが新型巡航ミサイルを投射する長距離爆撃機を運用しているほか、この後継機に関する研究は既に2010年頃より開始されていると伝えられ、アメリカの空母航空団を含む海上航空打撃力を想定せず個別的自衛権により対処しようとするならば、上記の必要防衛力は決して過大ではないといえるやもしれません。

結論から述べますと、日本国家が最大限の資源を国土防衛に投入し、一国だけで永世中立国に近いほどの覚悟を以て防衛力を整備すれば、日米安保条約に基づく集団的自衛権行使に依拠せずとも、我が国は独伊の防衛力で国土の防衛は不可能ではありませんが、これには非常に大きな負担が掛かるものです。しかし、その負担は非常に大きく、当方個人的な私見を述べればやるべきではありません。実際、世界の永世中立国はスイスやオーストリアが代表例として未だに徴兵制を以て陸上国境防衛に多大な負担を国民に強いていますし、諸外国からの介入を自力で排除し専守防衛一国平和を守り抜くことへの国民負担を耐え抜くのか、世界の平和に世界の一員として参画するか、という判断は主権者が選ぶ次元の問題ではあると考える次第です。

北大路機関:はるな くらま
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平成二十七年度八月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2015.08.11-13)

2015-08-07 22:15:45 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
今週末の自衛隊関連行事、海上自衛隊の一般公開が週明けに行われる程度、です。

お盆の時期となりまして自衛隊関連行事は一休み、というところではあります。海上自衛隊東京音楽隊ふれあいコンサート倉敷、ぼんぼり祭 吹奏楽の夕、たそがれコンサート2015、と執り行われるのですが、事前応募が必要な抽選制となっていまして、艦艇一般公開のようにはいきません。

ミサイル艇おおたか一般公開、週明けの12日に福島港で行われます、宮崎県串間市の福島港でして、海上自衛隊HPには一般公開は12日となっているのですが、実施します宮崎地方協力本部によれば8月11日(火)~13日(木)、となっていました、足を運ばれる方はご注意ください。

さて、お盆の時期です。海上自衛隊の艦艇は、警戒監視任務に当たる艦艇以外は極力母港へ帰港する事が多く、基地一般公開は中止される事もありますが、たとえばヴェルニー公園や佐世保シーサイドパークなど艦艇を基地周辺の遊覧船などから眺めるにはちょうど良いといえるでしょう。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭
・8月12日:宮崎県串間市福島港ミサイル艇おおたか一般公開・・・http://www.mod.go.jp/pco/miyazaki/index.html

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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陸上防衛作戦部隊論(第二六回):装甲機動旅団編制案の概要 普通科連隊のFV中隊とLAV中隊等

2015-08-06 22:04:09 | 防衛・安全保障
■装甲機動旅団編制案の概要
装甲機動旅団、装甲機動旅団編制案の概要を今回より記載してゆく事としましょう。

広域師団構想、普通科部隊の編制やその隷下の装甲機動旅団基幹装備としての装甲戦闘車の話題に航空機動旅団との連環、方面隊と広域師団との関係等を記載してきましたが、戦車が縮小され、且つ統合機動防衛力として緊急展開能力が必要とされる新しい状況へ、という改編を期したものです。

これまで示しましたが、広域師団は打撃力中心の旅団と機動力中心の旅団の連合、空地一体の機動打撃を期したもので、陸上自衛隊の師団旅団を戦車を中心とした機動運用部隊主体の装甲機動旅団、戦車を持たないものの方面隊航空部隊の装備を一手に引き受ける航空機動旅団へ改編し、二個旅団を以て広域師団を編成する、というもの。

今回から装甲機動旅団の概要を提示してゆきます。旅団は人員4900名:戦車41両・装甲戦闘車90両・特科火砲30門・MLRS16門を基幹とします。旅団司令部、司令部付隊 、普通科連隊、普通科連隊、普通科連隊、戦車大隊、偵察隊、特科連隊、特殊武器防護隊、高射特科大隊、施設大隊、通信大隊 、飛行隊、後方支援隊、音楽隊、を基幹編成とします。それでは旅団基幹部隊を各個に見てゆきます。

普通科連隊は3個普通科中隊基幹とし、連隊編成は、本部管理中隊・FV中隊・FV中隊・LAV中隊・重火器中隊、以上です。本部管理中隊は、本部小隊・通信小隊・情報小隊・施設作業小隊・衛生班・輸送班・NBC班、などを以て連隊の戦術支援に当たりますが、こちらの編成などについては連隊戦闘団の項目にて後述しましょう。

FV中隊は装甲戦闘車を運用する編制で、戦車縮小の代替として装甲戦闘車の増勢を念頭とした編成部隊です。本土での武力攻撃事態に加え、国際平和維持活動への参加へも装甲戦闘車は重要です。機関砲を運用する装軌式装甲戦闘車を装備し、戦車との協同を重視した機械化普通科部隊を構成、連隊戦闘団編成時には戦車中隊と共に機械化大隊を編成する。

装甲戦闘車の整備は多くの予算的措置を要しますが必要です。普通科部隊の任務は近接戦闘にある訳ですが、基盤的防衛力から統合機動防衛力への防衛基盤の抜本的変革を視野に、全国への均一部隊配置体制という前提が防衛計画の大綱改訂により転換された事で、防御力の一端に部隊機動力、即ち機動打撃能力を加味する必要が生じ、このための装甲戦闘車の配備です。

LAV中隊は軽装甲機動車を装備する中隊で幹線道路沿いの機動力はFV中隊よりも大きく、普通科連隊基幹部隊である普通科中隊にあって進出速度の大きさと限定的な対戦車戦闘能力や乗車戦闘能力を以て機械化普通科部隊の先鋒を担うと共に、敵機甲部隊との遭遇後は機械化普通科部隊展開までの前地戦闘、続いて後方連絡線確保等に威力を発揮しましょう。

FV中隊とLAV中隊ですが、LAV中隊については既に全国の普通科連隊のほぼすべてに装甲車化された中隊があり、北部方面隊を除く本土の普通科連隊にはこの装甲車部隊にLAV中隊が充てられており、編成はそのまま応用できます。しかし、FV中隊の装甲戦闘車は、取得費用は大きくなるでしょうが、装甲機動旅団が限られた戦車による機動打撃を展開する以上、調達しなければなりません。

各中隊は、一例として、FV中隊が装甲戦闘車14両と軽装甲車両を基幹として編成は中隊本部・FV小隊・FV小隊・FV小隊・迫小隊、という編成とし、LAV中隊が軽装甲機動車22両と軽装甲車両を基幹としまして中隊本部・LAV小隊・LAV小隊・LAV小隊・迫小隊、という編成です。軽装甲車両は主として1個小銃班を輸送可能な四輪駆動軽装甲車を想定し、迫撃砲小隊の輸送を想定します。

四輪駆動軽装甲車は、高機動車の後継として予てより北尾次期艦が必要性を提示しています軽装甲車両で、82式指揮通信車の設計時案として存在した四輪駆動型を軸に不整地突破能力をかなりの部分で犠牲としてでも、10名規模の普通科隊員を乗車させ機動可能な小型装甲車で、重迫撃砲牽引や近距離地対空誘導弾システムに多目的誘導弾用の運用車両としても応用するもの。

重火器中隊は、重迫撃砲小隊2個と対戦車小隊2個を基幹として、連隊の火力運用を担います。重迫撃砲小隊は120mm重迫撃砲4門を装備し、対戦車小隊は中距離多目的誘導弾4セットを運用、中隊の装備定数は120mm重迫撃砲8門と中距離多目的誘導弾8セットを運用、2個対戦車小隊についてはLAV中隊へ配置し対戦車能力強化にも充てる想定です。

北大路機関:はるな くらま
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航空防衛作戦部隊論(第三回):航空防衛力、我が国航空自衛隊の概要

2015-08-05 22:16:10 | 防衛・安全保障
■我が国航空防衛力の現況
航空自衛隊の改編案に関する特集、それではまず航空自衛隊の装備航空機について、どの程度であるかを見てみましょう。

F-15戦闘機200機、F-2支援戦闘機80機、F-4戦闘機50機、以上戦闘機320機、ただし教育訓練用などに多数が転用されている。F-15は近代化改修が推進中で、F-2支援戦闘機のレーダー換装なども進んでいます、将来戦闘機として2017年よりF-35Aの配備が開始され42機がF-4戦闘機の後継機として配備される。

F-15はうち約90機を数十億円の予算により近代化改修を行い、その能力が大きく向上されているほか、他のF-15についてはデータリンク能力と外装ポッドによる能力向上を計画中、F-2支援戦闘機についても空対空戦闘能力の強化に向けた改修が進み、また旧式化著しいF-4戦闘機も90年代には初期のF-16と並ぶ空対空能力を付与させました。

この中で対領空侵犯措置任務へは、航空自衛隊は北海道の千歳基地と東北北部の三沢基地、北関東の百里基地と北陸の日本海沿岸は小松基地、北九州の築城基地と南九州の新田原基地、そして沖縄の那覇基地に戦闘機部隊をおき、レーダーサイトが我が国飛行情報区に併せ設定された防空識別圏へ国籍不明機が侵入した場合に五分以内に二機の戦闘機を離陸させ対処する体制を構築しています。

輸送機は、C-1輸送機26機とC-130H/KC-130H輸送機が16機運用中で、更に新輸送機C-2が試験中です。この他にKC-767空中給油輸送機4機を運用中であるほか、さらに4機の追加が決定しています。要人輸送機としてボーイング747が2機とYS-11が2機にU-4が5機運用中です。C-2輸送機は当面C-1輸送機の後継に充てられるほか、電子情報収集機などへの派生型開発計画があります。

早期警戒管制機E-767を4機運用、航空自衛隊は早期警戒管制機と早期警戒機を併用しており、早期警戒機はE-2C早期警戒機を13機運用中で、更にE-2D早期警戒機を4機導入予定、E-2Cは延命改修が行われる為早期警戒機は増勢する事となっています、これは既存E-2CがE-2Dに将来的に代替される事も意味するでしょう。

救難用航空機としてU-125が23機、UH-60Jが35機、CH-47が15機、運用中です。練習機はT-4練習機212機など311機ど運用中、このほか情報収集に当たる装備としまして、EC-1とYS-11EA/EBの電子戦機7機を運用中、偵察機はRF-4偵察機約30機を装備していますが、現在は老朽化により10機強まで縮小し、航空自衛隊はRQ-4高高度無人偵察機の導入計画を進めています。

この他全国28カ所のレーダーサイトと有力な地対空ミサイル部隊を有し、全国に広く基地を展開させると共に、更に哨戒機等を海上自衛隊が大型哨戒機等を運用している関係上利用できる自衛隊基地も多く、更に民間空港が全国に広く分布している事から、必要な滑走路の確保は比較的柔軟に対応でき、この部分も航空作戦能力を高めています。

北大路機関:はるな くらま
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政府の日本企業による海外防衛産業買収へ関連法規解釈変更に関する一考察

2015-08-04 22:23:25 | 国際・政治
■海外防衛産業買収・資本提携
政府、日本企業による海外防衛産業買収へ関連法規解釈変更、本日はこの話題について。

日本企業による海外防衛産業買収を政府が方針に転換するとの報道がでましたが、そもそも防衛産業の定義が不明確で何とも言えません、そして反発する方も居るようですが、そういった方は我が国企業で防衛産業はどの会社か、充分な知識がない方も多かったりします。ですから、資本提携や海外買収というと、また勘違いしがちな方々が、戦争準備か、とうとうはじまるか、と身構えそうなものですが、この誤解について。

じつは防衛産業同士の国際資本提携や買収は既に広く行われていまして、思い出すのは2005年(もう10年も前!)、東芝がアメリカのエネルギー企業ウェスティングハウスを買収しようとしたときのひと騒動でした、ウェスティングハウスは防衛部品を供給していたのです。仮に日本のグループ企業となった場合はどうなるのか、法制度をしっかり理解していなかった場合、日本の武器輸出三原則にどういう影響が生じるのか、アメリカ海軍への装備などの供給に支障が起こる事は無いのか、など。

東芝はサザエさんのCMで“エネルギーとエレクトロニクスの東芝”と自負しているように、エネルギー部分が強く、原子炉など原子力部門が強いのですが、同じく原子力部門に伝統と技術をもつウェスティングパワーを買収し、技術力と経営体力を強化しようとしたものです、が、ウェスティングハウスはアメリカ海軍の原子力空母や原子力潜水艦向け原子炉製造や核燃料の精製を行っている企業でしたので、アメリカ政府とひと悶着起こったかたち。

しかし、一見して軍需産業ではなく、東芝も防衛産業という側面を以て買収しようとしたわけではありません、もともと核兵器や原子力艦艇を持たない日本に原子力分野の防衛産業を買収する意味は無かったわけなのですが、アメリカ政府の視点からは、自国の原子力艦艇の原子炉と核燃料を受け持つ企業が買収されるという状況が生じた訳ですので、少々関心を持たざるを得なかった、ということでした。

現在東芝の子会社ですが、核燃料と原子炉は防衛用として完成していなければ武器輸出三原則に当時規制される防衛装備品には当たりませんし、日本国内からの供給でも、日本企業ではないので、米海軍などへの供給は従来通り続いています。しかし、形の上では東芝の子会社が米海軍へ原子炉を供給しているわけでして、ちょっと考えると、凄いことだと思うのですが、意外と日本国内で報道された際には騒がれませんでしたね。

なお、東芝は日本国内では意外と知られていませんが防衛産業の一角を担っています、防衛需要の全体比率が小さく、実質、本業の片手間に防衛装備品を生産しているかたちですが、81式短距離地対空誘導弾を1960年代から苦心の末完成させ、日本最初の地対空ミサイルシステムを完成させた企業でして、後継の11式短距離地対空誘導弾システムや91式携帯地対空誘導弾と93式近距離地対空誘導弾を生産し、陸上自衛隊野戦防空の全装備生産を担い、ミサイル生産では三菱電機や川崎重工とならぶ名門企業の一つ。基幹連隊指揮統制システムReCsも東芝です。

一方、我が国防衛産業がフランス企業に買収された事例があります、勿論中小企業で防衛分野の企業というような小さな話ではなく、2014年の資本金6058億1300万円と売上高10兆4825億2000万円に営業利益4983億6500万円、かなりの大企業です、そしてその買収に際し防衛部門の存在は買収へ日本政府が関与する事由とはなりませんでした、その企業とは、ルノーによる日産自動車買収と子会社化です。

日産自動車というと、一般的な視線からは、四輪駆動車でも自衛隊に納入しているのか、と思われるかもしれませんが、現在IHIに譲渡しました日産の航空宇宙部門が防衛装備品分野のロケット関連を担当していました、ロケットというと人工衛星を打ち上げるイメージがありますが、その一部門がロケット弾の製造を担当していました、着上陸阻止の決定打というMLRS多連装ロケットシステムのロケット弾生産や110mm個人対戦車弾など、担当していたわけです。

今回は法解釈の変更という部分が伝えられるように、既に防衛産業の海外企業買収は行われています、もちろん、防衛装備移転三原則により防衛装備品の海外供与が行われますので、海外企業の買収は、防衛装備品海外移転へ寄与する視点からの対応が行われる事となるのでしょうが、既に防衛産業同士の買収というは広く実施されており、更に航空自衛隊の次期戦闘機F-35の決定により、多国間国際分業での生産が執り行われる事が決定しており、法解釈変更により実情を換える、というものではなく、実情に法解釈を合わせている、という視点で行われている、と理解することが出来ましょう。

北大路機関:はるな くらま
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安保法制への最大の誤解、徴兵制(第2回):ライフルマン一人の装備費用

2015-08-03 22:03:21 | 国際・政治
■普通科隊員一人の装備
徴兵制に関する特集、今回は費用面から少し説明してみようとおもいます。

さて、徴兵制、何故有り得ないかといいますと、人口1億2000万の日本国が韓国なみの1年9か月の徴兵期間を施行して徴兵制を行う場合、陸上自衛隊が韓国軍の三倍、つまり150万名も集まってしまうのです。すると、駐屯地も演習場も足りませんが、なにより装備が足りません。そして、装備ならば買って揃えればよい、となるかもしれませんが、そうもいきません。

戦車部隊には戦車が必要ですし、特科部隊には大砲と大砲を命中させるための気象観測装置や対砲レーダー等の標定装置と輸送車両が必要となります、施設科部隊には建設機械だけではなく戦場で障害を除去し、逆に防御で障害を構成する為の装備が必要ですし、通信部隊には専用のデータ通信装置が民間インフラが皆無の地域でデータ通信する装備が必要、これらを確実に動かせる後方支援部隊も必要です。

一番安上がり、と誤解されるのが歩兵、ライフルマンですが、現代はそうはいきません。勿論訓練の基幹と費用は別ですが、そちらは後述しましょう、自衛隊では戦闘に参加し様々な状況で生き残るための最低限必要な期間は、つまり一人前になるまでの、という事ですが、二年程度必要、といわれていますが、後述します。

装備品、普通科隊員、88式鉄帽と戦闘防弾チョッキ2型に防弾付加器材を装着し身に着け、戦闘防護装備防護マスクと防護衣を準備、暗視装置を準備し89式小銃に照準具を取り付け携行し弾薬入と戦闘シャベルや水筒と救急キットを弾帯に装備し、戦闘靴を履く。防衛省装備施設本部の調達情報を見ますと、一人完全武装させるだけで190万円、かかる。

普通科隊員10名が集まれば1000万円の高機動車、装甲化する場合は4名を2700万円の軽装甲機動車に乗車させる、もちろん、1丁250万のMINIMI分隊機銃が数名に一人必要ですし、敵戦車に備えるには最低でも一発75万円の110mm個人対戦車弾パンツァーファストⅢを数発容易しなければならないわけで、安易に人数を増やせば大変なこととなってしまいます。

十倍に人員が増えるのであれば、一人あたりの装備に掛かる費用を十倍にする、それができないのならば十分の一の18万円で可能な限りの装備を、となるのでしょう。しかし、89式小銃が30万円です。老朽化した64式小銃やもしかしたら警察予備隊時代に供与された第二次大戦中のM-1小銃が残っているかもしれませんが。

それでも鉄帽が5万6000円、戦闘服3型が予備含め2着で2万8000円、戦闘靴が1万5000円、弾帯と弾薬入れに水筒とシャベルを合わせ1万8100円、雨衣が1万5000円、約13万2000円です。戦闘防弾チョッキがないので砲撃が来たら死傷、防護マスクが無いので毒ガスが散布されれば死傷、暗視装置が無いので夜間は戦闘不能、ですが、ね。

例えば徴兵制を施行している諸国では、全てではありませんが装備が非常に老朽化している事例が多い。お隣韓国では、現役部隊を基幹とした部隊は装甲車に新型を持ち戦車も比較的新しいのですが、徴兵部隊では個人装備がヴェトナム戦争時代にアメリカより供与されたものの仕様で装備、戦車は1950年代に設計されたものがまだ現役です。

数が必要となりますと、どうしても費用を掛けなければ質に影響するもので、報じられるものだけで、靴や被服の不良品や弾薬の不良など、予算さえかければ対応できる事が予算不足に悩むという事が多く、2000年代にイラク復興支援へ海外派兵した際にも、韓国軍は当初、鉄帽がケブラー製ではなく鉄製、防弾チョッキもイラク派遣部隊で当初はレベルⅠの耐破片用となっていました。

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安保法制への最大の誤解、徴兵制(第1回):何故徴兵制は我が国に有り得ないのか

2015-08-02 22:05:01 | 国際・政治
■徴兵制は何故有り得ないのか
10周年を迎えましたWeblog北大路機関、その新特集は、安全保障法制整備への国民の懸念として最大の誤解、徴兵制が安保法制により敷かれるのではないか、という視点について、今回から誤解を解いてゆきたいと思います。

安全保障法制整備に伴い我が国において徴兵制が施行されるのではないかとの指摘が主に野党と一部民間団体などより為されています。安全保障法制は国土が戦場となる以前に域外での予防外交の延長として防衛力を用い得る視点ですので、この論理が不明瞭なのですが、以下のような三段論法に依拠し生まれた発想のようです。

まず、自衛隊が安全保障法制に依拠し国外での戦闘が可能となる、すると大規模な戦闘により自衛官の犠牲者が大勢出るかもしれない、犠牲者続出ならば自衛隊を志願する規模が大きく減るだろう、故に不足する自衛官を増勢するために徴兵制で無理矢理入隊させられるに違いない、子供たちを戦場に送るな、と。

ううむ、分からない論理です。最初は冗談で皮肉を利かせたつもりなのだろうと解釈していたのですが、防衛や軍事への基礎知識は我が国では主体的に資料を集め知る意思がなければ得られませんので、全く予備知識のない方々、特に中高生の方々が不安を抱いているようで、このあたり、分かりやすく解説する必要を感じるようになりました。

現在ではあり得ません、冷戦時代の想定として、特に集団的自衛権は論外という政府解釈があり、大規模紛争の想定がソ連軍の日本本土直接侵攻という時代、集団的自衛権が無いという前提なのですから対処するのが日本一国として、米軍が1980年代に三沢へ再展開する以前、横田基地以北の防衛が自衛隊だけであった頃、ならば、多少説得力はあったやもしれません。

ソ連が相手であれば、日本の位置は太平洋外縁部の弧状列島で戦略上の要衝でしたし、ソ連領サハリンから北海道までは30kmの距離でした。識者の視点には、ソ連軍を本土奥深くに迎え撃つ前提で、北海道北部に戦線を押し止められない場合、本土防衛に陸上自衛隊の人員規模が足りなくなる、との指摘は為されていまして、それこそ最悪の場合は、専守防衛が相手の侵攻を待って防衛に当たるとの特性上、理論の喚起に必然性があったのです。

専守防衛は相手を迎え撃つ前提、領域外で阻止する選択肢を省いていますので、専守防衛を前提とする限り、国土が戦場となるのは必然で、その結果として戦線拡大を阻止できなければ、徴兵してでも押し止める必要か、戦闘に巻き込まれるという形の参加という危惧はありました。

この点、専守防衛を固持する方が戦闘に巻き込まれるリスクは大きく、一部野党が、海外で戦争する国にさせない、との標語を街頭に貼り付けています、対義語は、戦争は近くて速い国内で、というところでしょう。戦争に行かせない、という選択肢は、しかし国家間の武力紛争が少なくとも二か国以上が参加し行われるものですので、1国だけで戦争をしない、と決めることが出来ないのです。

無抵抗ならば蹂躙されるだけですので戦争にさえなりませんが、この選択肢はありません、相手側に攻撃の意思があれば、戦争に行かずとも戦場がこちらにやってくる、これを国外で大きな武力紛争に展開する以前に抑止阻止するものですので、上記のような想定はそもそも成り立ちません。

こうした上で、徴兵制が我が国で採用し得ない事由を幾つかみてゆくこととします。まず人口、我が国は1億2000万の人口をもち、この中から志願制により13万の陸上自衛隊を維持しています、海上自衛隊と航空自衛隊がそれぞれ4万5000名程度の規模です。人数的に、そもそも徴兵制を必要としていない事が分かるでしょう。

中国人民解放軍や朝鮮人民軍が100万の兵力を持っているのに対し、少々規模が小さいようにも見えますが、日本は島国ですから、海を軍隊が渡り、燃料弾薬の海を越えた補給を維持する事は容易ではなく、このために現在の人員規模で防衛し得る、として防衛力整備が為されてきました。

我が国隣国の韓国は、陸上国境を経て北朝鮮の朝鮮人民軍を対峙していますので、徴兵制を敷き、徴兵期間を1年9か月として、人口4000万の韓国が50万人の陸軍を有しています。陸上国境がないという島国日本は、陸上防衛力に加え海上航空防衛力の重要性が大きい為、大規模な陸軍が必要ないのです。

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