■将来の日米関係と日本の選択
トランプ大統領就任一周年、日本はアメリカ依存の日米関係という選択肢とトランプ大統領依存を間違えてはなりません、この視点から将来の日米関係を考えてみましょう。
日米関係と日本の選択、日本はアメリカとの関係をどのように展開してゆくか。日米関係は良好ですが、将来にわたる日米関係を考えた場合までを含め考えてゆかなければなりません。これは単純に日米防衛協力という軍事面に限らず、国際規範の情勢から国際交易制度構築に国際金融システム、より踏み込み国際公序までを含め、将来的に次の変容があり得るのかを含めてです。
トランプ政権は一周年を迎えましたが、仮に次の大統領選にも勝利を重ねる事があったとしてもアメリカ大統領制に三選は無い、ポピュリズム政治が延々と継続するとは考えられませんし、次の大統領に更なるポピュリストが登場するとも考えにくく、アメリカ依存度とトランプ大統領依存度を同一視しないのは当然として、日本の独自性はより必要となる。
安全保障面では、最大の関心事です。日本は伝統的に専守防衛政策を突き詰め、事実上の本土決戦主義を国是としています。集団安全保障協力さえも認めず、近年に安倍政権が構築した安全保障協力法制が僅かに認めた程度で、戦時に平時法制を維持できない場合に超法規措置を取らざるを得ない状況が解決されたのも新世紀、小泉政権時代の法整備による。
防衛力という、最小の国家機能に留める夜警国家でさえも放棄しない重要施策について、アメリカへの依存度がある事を理由に最後の、しかし根底の依存関係から脱する事が出来ない結果が、歪な二国間関係へと展開する事は、逆にあっていいのかは国民的な議論が必要となるでしょう。ただ、防衛力整備は国際法上、核武装を唯一の例外として制限はない。
日本が防衛政策を展開する場合、アメリカとの協力は不可欠です。しかし、その依存度を提言する選択肢は皆無ではありません。相互依存はアメリカでさえ中東やアフリカ地域において有志連合各国軍の支援に何度も助けられています。ですから、自己完結の防衛力を達成する事は必ずしも現実的ではありません。しかし依存度の多寡となれば別問題です。
防衛という重要分野、特に策源地攻撃能力や弾道ミサイル防衛という重要施策、周辺地域の戦力投射や戦略備蓄という部分でのアメリカ依存度合は大きく、主権国家として少々大きすぎるものです。ただ、憲法上軍事力を持ちえない、という前提で限られた防衛力を維持している、という説明へも国内向けでは一定の説得力を有している現状があるでしょう。
憲法改正、という踏み込んだ領域まで至らずとも、基本的に防衛政策は司法府が政治問題であるとして行政府に委任しています、これを統治行為論といいますが、政治問題ゆえに行政府判断が優先するとの論理は世界では一般的です。重要なのは最高裁が付随的違憲審査に際し明確に違憲である、という分水嶺を明確に示し防衛政策へ反映させる事でしょう。
統治行為論が司法府により示されている状況下では、行政府の内閣法制局政府統一見解が憲法の番人です、何故か問題視する声も世論にありますが、行政府は直接選挙により選ばれた立法府が首班指名し、憲法により位置付けられた立法府が主体となる、これが立憲主義なのですが、違憲と合憲の分水嶺で前者に傾く前に憲法改正を行う必然性は、実は無い。
平和憲法を言い訳としてアメリカ依存を維持するのではなく、必要な防衛力、禁忌無き防衛力を明確に示した上で、司法府が統治行為論ではなく違憲を明確とする分水嶺と防衛力の分水嶺を比較し、防衛力整備を為し得ない段階で初めて憲法改正を行うべきです。しかし、分水嶺を不明確とし、研究さえ憲法上の禁忌と忖度している事が論理の袋小路を生む。
防衛力を自己完結させる私案に、陸上防衛へ地域司令部隷下に機動運用部隊として4個広域師団と機甲師団、海上防衛力として固定翼艦上哨戒機搭載のヘリコプター搭載護衛艦8隻と広域防空艦8隻から成る八八艦隊と旧式潜水艦転用巡航ミサイル潜水艦隊、地域防空大型航空団4個体制と航空総隊航空団、と提示していますが、自己完結は不可能ではない。
ポストアメリカ多極化時代の可能性、アメリカのリスクとして忘れてはならないのが、ドル国際通貨基盤の終焉という可能性です。アメリカは保護主義的商制度を従来の自由貿易主義に置き換える施策に掲げています。しかし、貿易赤字こそがアメリカドルを世界通貨へと押し上げる原動力となった事を忘れてはなりません、その為には、貿易赤字を通じ世界へアメリカドルが流通せねばならない。
世界通貨は、その地位へ中国の人民元が得る事は不可能です。中国政府が貿易赤字を歓迎し、莫大な貿易赤字を通じて人民元を世界へ流通させない限り不可能で、貿易黒字を第一とする姿勢を根本から転換させる限りあり得ません。日本円もユーロやポンド、スイスフランも不可能でしょう。すると金本位制か、まさか仮想通貨か、ドル体制を維持するのか。
保護主義がアメリカにおいて定着し、更にNAFTAやTPPといった枠組みが不安定な二国間貿易協定に置き換えられ、これが国際公序として諸外国が踏襲するようになれば、1990年代から掲げられたグローバリゼーションという枠組みが保護主義により置き換えられかねません。しかし、第三次産業が主柱を担う現代の保護主義は我々には経験がありません。
日本に考えられる選択肢としては、TPP枠組、そして気候変動防止パリ協定枠組、アメリカが離脱する事を表明する枠組について、アメリカが回帰しうる枠組みを維持する選択肢があります、これは日本のトランプ政権依存ではなく、伝統的なアメリカ重視施策を継続するものです。しかし、世代単位の長期的な新しい国際関係を構築する選択肢もあります。
外交政策において誤解されていますが、国際規格画定や国際通商条約画定等、日本は個々の分野において粘り強い交渉力を有し、外交官と官僚は情報と人脈と学術の全てを駆使し、妥協に見せ解釈の余地ある語彙を合意文書に潜り込ませ、不利な条件を呑む姿勢を示しつつその空文化を行い、原則論と相手の顔を巧みに立てつつ有利な条件を確実に盛り込む。
官僚機構と外交官の能力の高さは、この条約加盟で日本の特定産業は終わった、と報道に論じられる国際枠組み参加や条約批准や協定締結の後も、当初叫ばれたほどの重大な影響はない、という事例が多々あります。これは合意文書に確実に様々な解釈の幅を持たせる努力を行っている結果がかなり大きな比重を有しています。日本の交渉力は特に侮れない。
戦略的な視点からは、と問われれば、逆となります。これは技術面でも先端技術を極める事には長けている技術者が多いものの、技術革新や新産業開拓という分野では後れを取るように、戦術研究と技術開発では世界先端であっても用兵論や戦略論の展開では薄いように、外交関係においてもすでに構築した基盤から延長する以上の枠組み構築は不得手だ。
ポストアメリカを視野に含める国際関係の可能性、ここまで踏み込む必要は必ずしも無いですし、自由と公正の国際公序、に代わる新しい国際公序の原型を日本が世界へ提供できるかについては未知数です。ただ、アメリカが変わりつつある事は一つの事象、この継続か一過性かを含め、次の国際関係の在り方について考える必要性はあるのかもしれません。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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トランプ大統領就任一周年、日本はアメリカ依存の日米関係という選択肢とトランプ大統領依存を間違えてはなりません、この視点から将来の日米関係を考えてみましょう。
日米関係と日本の選択、日本はアメリカとの関係をどのように展開してゆくか。日米関係は良好ですが、将来にわたる日米関係を考えた場合までを含め考えてゆかなければなりません。これは単純に日米防衛協力という軍事面に限らず、国際規範の情勢から国際交易制度構築に国際金融システム、より踏み込み国際公序までを含め、将来的に次の変容があり得るのかを含めてです。
トランプ政権は一周年を迎えましたが、仮に次の大統領選にも勝利を重ねる事があったとしてもアメリカ大統領制に三選は無い、ポピュリズム政治が延々と継続するとは考えられませんし、次の大統領に更なるポピュリストが登場するとも考えにくく、アメリカ依存度とトランプ大統領依存度を同一視しないのは当然として、日本の独自性はより必要となる。
安全保障面では、最大の関心事です。日本は伝統的に専守防衛政策を突き詰め、事実上の本土決戦主義を国是としています。集団安全保障協力さえも認めず、近年に安倍政権が構築した安全保障協力法制が僅かに認めた程度で、戦時に平時法制を維持できない場合に超法規措置を取らざるを得ない状況が解決されたのも新世紀、小泉政権時代の法整備による。
防衛力という、最小の国家機能に留める夜警国家でさえも放棄しない重要施策について、アメリカへの依存度がある事を理由に最後の、しかし根底の依存関係から脱する事が出来ない結果が、歪な二国間関係へと展開する事は、逆にあっていいのかは国民的な議論が必要となるでしょう。ただ、防衛力整備は国際法上、核武装を唯一の例外として制限はない。
日本が防衛政策を展開する場合、アメリカとの協力は不可欠です。しかし、その依存度を提言する選択肢は皆無ではありません。相互依存はアメリカでさえ中東やアフリカ地域において有志連合各国軍の支援に何度も助けられています。ですから、自己完結の防衛力を達成する事は必ずしも現実的ではありません。しかし依存度の多寡となれば別問題です。
防衛という重要分野、特に策源地攻撃能力や弾道ミサイル防衛という重要施策、周辺地域の戦力投射や戦略備蓄という部分でのアメリカ依存度合は大きく、主権国家として少々大きすぎるものです。ただ、憲法上軍事力を持ちえない、という前提で限られた防衛力を維持している、という説明へも国内向けでは一定の説得力を有している現状があるでしょう。
憲法改正、という踏み込んだ領域まで至らずとも、基本的に防衛政策は司法府が政治問題であるとして行政府に委任しています、これを統治行為論といいますが、政治問題ゆえに行政府判断が優先するとの論理は世界では一般的です。重要なのは最高裁が付随的違憲審査に際し明確に違憲である、という分水嶺を明確に示し防衛政策へ反映させる事でしょう。
統治行為論が司法府により示されている状況下では、行政府の内閣法制局政府統一見解が憲法の番人です、何故か問題視する声も世論にありますが、行政府は直接選挙により選ばれた立法府が首班指名し、憲法により位置付けられた立法府が主体となる、これが立憲主義なのですが、違憲と合憲の分水嶺で前者に傾く前に憲法改正を行う必然性は、実は無い。
平和憲法を言い訳としてアメリカ依存を維持するのではなく、必要な防衛力、禁忌無き防衛力を明確に示した上で、司法府が統治行為論ではなく違憲を明確とする分水嶺と防衛力の分水嶺を比較し、防衛力整備を為し得ない段階で初めて憲法改正を行うべきです。しかし、分水嶺を不明確とし、研究さえ憲法上の禁忌と忖度している事が論理の袋小路を生む。
防衛力を自己完結させる私案に、陸上防衛へ地域司令部隷下に機動運用部隊として4個広域師団と機甲師団、海上防衛力として固定翼艦上哨戒機搭載のヘリコプター搭載護衛艦8隻と広域防空艦8隻から成る八八艦隊と旧式潜水艦転用巡航ミサイル潜水艦隊、地域防空大型航空団4個体制と航空総隊航空団、と提示していますが、自己完結は不可能ではない。
ポストアメリカ多極化時代の可能性、アメリカのリスクとして忘れてはならないのが、ドル国際通貨基盤の終焉という可能性です。アメリカは保護主義的商制度を従来の自由貿易主義に置き換える施策に掲げています。しかし、貿易赤字こそがアメリカドルを世界通貨へと押し上げる原動力となった事を忘れてはなりません、その為には、貿易赤字を通じ世界へアメリカドルが流通せねばならない。
世界通貨は、その地位へ中国の人民元が得る事は不可能です。中国政府が貿易赤字を歓迎し、莫大な貿易赤字を通じて人民元を世界へ流通させない限り不可能で、貿易黒字を第一とする姿勢を根本から転換させる限りあり得ません。日本円もユーロやポンド、スイスフランも不可能でしょう。すると金本位制か、まさか仮想通貨か、ドル体制を維持するのか。
保護主義がアメリカにおいて定着し、更にNAFTAやTPPといった枠組みが不安定な二国間貿易協定に置き換えられ、これが国際公序として諸外国が踏襲するようになれば、1990年代から掲げられたグローバリゼーションという枠組みが保護主義により置き換えられかねません。しかし、第三次産業が主柱を担う現代の保護主義は我々には経験がありません。
日本に考えられる選択肢としては、TPP枠組、そして気候変動防止パリ協定枠組、アメリカが離脱する事を表明する枠組について、アメリカが回帰しうる枠組みを維持する選択肢があります、これは日本のトランプ政権依存ではなく、伝統的なアメリカ重視施策を継続するものです。しかし、世代単位の長期的な新しい国際関係を構築する選択肢もあります。
外交政策において誤解されていますが、国際規格画定や国際通商条約画定等、日本は個々の分野において粘り強い交渉力を有し、外交官と官僚は情報と人脈と学術の全てを駆使し、妥協に見せ解釈の余地ある語彙を合意文書に潜り込ませ、不利な条件を呑む姿勢を示しつつその空文化を行い、原則論と相手の顔を巧みに立てつつ有利な条件を確実に盛り込む。
官僚機構と外交官の能力の高さは、この条約加盟で日本の特定産業は終わった、と報道に論じられる国際枠組み参加や条約批准や協定締結の後も、当初叫ばれたほどの重大な影響はない、という事例が多々あります。これは合意文書に確実に様々な解釈の幅を持たせる努力を行っている結果がかなり大きな比重を有しています。日本の交渉力は特に侮れない。
戦略的な視点からは、と問われれば、逆となります。これは技術面でも先端技術を極める事には長けている技術者が多いものの、技術革新や新産業開拓という分野では後れを取るように、戦術研究と技術開発では世界先端であっても用兵論や戦略論の展開では薄いように、外交関係においてもすでに構築した基盤から延長する以上の枠組み構築は不得手だ。
ポストアメリカを視野に含める国際関係の可能性、ここまで踏み込む必要は必ずしも無いですし、自由と公正の国際公序、に代わる新しい国際公序の原型を日本が世界へ提供できるかについては未知数です。ただ、アメリカが変わりつつある事は一つの事象、この継続か一過性かを含め、次の国際関係の在り方について考える必要性はあるのかもしれません。
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