北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

トランプ大統領就任一周年:将来の日米関係展望,ポストアメリカ時代の可能性と日本の選択

2018-01-21 20:17:25 | 北大路機関特別企画
■将来の日米関係と日本の選択
 トランプ大統領就任一周年、日本はアメリカ依存の日米関係という選択肢とトランプ大統領依存を間違えてはなりません、この視点から将来の日米関係を考えてみましょう。

 日米関係と日本の選択、日本はアメリカとの関係をどのように展開してゆくか。日米関係は良好ですが、将来にわたる日米関係を考えた場合までを含め考えてゆかなければなりません。これは単純に日米防衛協力という軍事面に限らず、国際規範の情勢から国際交易制度構築に国際金融システム、より踏み込み国際公序までを含め、将来的に次の変容があり得るのかを含めてです。

 トランプ政権は一周年を迎えましたが、仮に次の大統領選にも勝利を重ねる事があったとしてもアメリカ大統領制に三選は無い、ポピュリズム政治が延々と継続するとは考えられませんし、次の大統領に更なるポピュリストが登場するとも考えにくく、アメリカ依存度とトランプ大統領依存度を同一視しないのは当然として、日本の独自性はより必要となる。

 安全保障面では、最大の関心事です。日本は伝統的に専守防衛政策を突き詰め、事実上の本土決戦主義を国是としています。集団安全保障協力さえも認めず、近年に安倍政権が構築した安全保障協力法制が僅かに認めた程度で、戦時に平時法制を維持できない場合に超法規措置を取らざるを得ない状況が解決されたのも新世紀、小泉政権時代の法整備による。

 防衛力という、最小の国家機能に留める夜警国家でさえも放棄しない重要施策について、アメリカへの依存度がある事を理由に最後の、しかし根底の依存関係から脱する事が出来ない結果が、歪な二国間関係へと展開する事は、逆にあっていいのかは国民的な議論が必要となるでしょう。ただ、防衛力整備は国際法上、核武装を唯一の例外として制限はない。

 日本が防衛政策を展開する場合、アメリカとの協力は不可欠です。しかし、その依存度を提言する選択肢は皆無ではありません。相互依存はアメリカでさえ中東やアフリカ地域において有志連合各国軍の支援に何度も助けられています。ですから、自己完結の防衛力を達成する事は必ずしも現実的ではありません。しかし依存度の多寡となれば別問題です。

 防衛という重要分野、特に策源地攻撃能力や弾道ミサイル防衛という重要施策、周辺地域の戦力投射や戦略備蓄という部分でのアメリカ依存度合は大きく、主権国家として少々大きすぎるものです。ただ、憲法上軍事力を持ちえない、という前提で限られた防衛力を維持している、という説明へも国内向けでは一定の説得力を有している現状があるでしょう。

 憲法改正、という踏み込んだ領域まで至らずとも、基本的に防衛政策は司法府が政治問題であるとして行政府に委任しています、これを統治行為論といいますが、政治問題ゆえに行政府判断が優先するとの論理は世界では一般的です。重要なのは最高裁が付随的違憲審査に際し明確に違憲である、という分水嶺を明確に示し防衛政策へ反映させる事でしょう。

 統治行為論が司法府により示されている状況下では、行政府の内閣法制局政府統一見解が憲法の番人です、何故か問題視する声も世論にありますが、行政府は直接選挙により選ばれた立法府が首班指名し、憲法により位置付けられた立法府が主体となる、これが立憲主義なのですが、違憲と合憲の分水嶺で前者に傾く前に憲法改正を行う必然性は、実は無い。

 平和憲法を言い訳としてアメリカ依存を維持するのではなく、必要な防衛力、禁忌無き防衛力を明確に示した上で、司法府が統治行為論ではなく違憲を明確とする分水嶺と防衛力の分水嶺を比較し、防衛力整備を為し得ない段階で初めて憲法改正を行うべきです。しかし、分水嶺を不明確とし、研究さえ憲法上の禁忌と忖度している事が論理の袋小路を生む。

 防衛力を自己完結させる私案に、陸上防衛へ地域司令部隷下に機動運用部隊として4個広域師団と機甲師団、海上防衛力として固定翼艦上哨戒機搭載のヘリコプター搭載護衛艦8隻と広域防空艦8隻から成る八八艦隊と旧式潜水艦転用巡航ミサイル潜水艦隊、地域防空大型航空団4個体制と航空総隊航空団、と提示していますが、自己完結は不可能ではない。

 ポストアメリカ多極化時代の可能性、アメリカのリスクとして忘れてはならないのが、ドル国際通貨基盤の終焉という可能性です。アメリカは保護主義的商制度を従来の自由貿易主義に置き換える施策に掲げています。しかし、貿易赤字こそがアメリカドルを世界通貨へと押し上げる原動力となった事を忘れてはなりません、その為には、貿易赤字を通じ世界へアメリカドルが流通せねばならない。

 世界通貨は、その地位へ中国の人民元が得る事は不可能です。中国政府が貿易赤字を歓迎し、莫大な貿易赤字を通じて人民元を世界へ流通させない限り不可能で、貿易黒字を第一とする姿勢を根本から転換させる限りあり得ません。日本円もユーロやポンド、スイスフランも不可能でしょう。すると金本位制か、まさか仮想通貨か、ドル体制を維持するのか。

 保護主義がアメリカにおいて定着し、更にNAFTAやTPPといった枠組みが不安定な二国間貿易協定に置き換えられ、これが国際公序として諸外国が踏襲するようになれば、1990年代から掲げられたグローバリゼーションという枠組みが保護主義により置き換えられかねません。しかし、第三次産業が主柱を担う現代の保護主義は我々には経験がありません。

 日本に考えられる選択肢としては、TPP枠組、そして気候変動防止パリ協定枠組、アメリカが離脱する事を表明する枠組について、アメリカが回帰しうる枠組みを維持する選択肢があります、これは日本のトランプ政権依存ではなく、伝統的なアメリカ重視施策を継続するものです。しかし、世代単位の長期的な新しい国際関係を構築する選択肢もあります。

 外交政策において誤解されていますが、国際規格画定や国際通商条約画定等、日本は個々の分野において粘り強い交渉力を有し、外交官と官僚は情報と人脈と学術の全てを駆使し、妥協に見せ解釈の余地ある語彙を合意文書に潜り込ませ、不利な条件を呑む姿勢を示しつつその空文化を行い、原則論と相手の顔を巧みに立てつつ有利な条件を確実に盛り込む。

 官僚機構と外交官の能力の高さは、この条約加盟で日本の特定産業は終わった、と報道に論じられる国際枠組み参加や条約批准や協定締結の後も、当初叫ばれたほどの重大な影響はない、という事例が多々あります。これは合意文書に確実に様々な解釈の幅を持たせる努力を行っている結果がかなり大きな比重を有しています。日本の交渉力は特に侮れない。

 戦略的な視点からは、と問われれば、逆となります。これは技術面でも先端技術を極める事には長けている技術者が多いものの、技術革新や新産業開拓という分野では後れを取るように、戦術研究と技術開発では世界先端であっても用兵論や戦略論の展開では薄いように、外交関係においてもすでに構築した基盤から延長する以上の枠組み構築は不得手だ。

 ポストアメリカを視野に含める国際関係の可能性、ここまで踏み込む必要は必ずしも無いですし、自由と公正の国際公序、に代わる新しい国際公序の原型を日本が世界へ提供できるかについては未知数です。ただ、アメリカが変わりつつある事は一つの事象、この継続か一過性かを含め、次の国際関係の在り方について考える必要性はあるのかもしれません。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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トランプ大統領就任一周年:日米新時代,アメリカ孤立主義回帰の杞憂とポピュリズムの憂鬱

2018-01-20 20:00:53 | 北大路機関特別企画
■日米関係とアメリカ第一主義
 菅官房長官は今週の記者会見で一周年を迎えるトランプ政権について、両首脳の揺るぎない信頼関係のもと新次元の日米同盟の時代を築きあげていきたい、と述べました。

 アメリカにトランプ政権が誕生し、本日20日で一年となりました。大統領選当時は民主党クリントン候補に対し、大衆迎合主義的な所謂ポピュリズム政策を中心とした政策を展開し、アメリカを支えた中間層の後退がこのポピュリズムの根底に流れていることを痛感させられました。そして同時に、選挙戦当時に公約が曖昧であった事が不確定要素でした。

 F-35戦闘機の話題から始まった初の日米首脳会談、トランプ政権はアメリカ第一主義を掲げ、実質国家は自国を第一としなければ他国第一主義では主権者の義務に国家が答えられない為にある種当然なのですが、あの安倍総理のF-35の話題から始まる初会談を経て、アメリカ第一主義でありながら、アメリカは孤立主義に至らない事を明確と出来た訳です。

 現在でこそ、トランプ政権はアメリカを中心とした国際公序の維持に努めると共に、様々な施策を展開し、中にはラジカルな、メキシコとの国境に壁を建設、イスラエル首都にエルサレムを認定、イスラム教徒入国禁止、オバマケア国民皆保険制度廃止、という施策が並んでいますが、安全保障上及び外交政策上は従来の伝統的な国際関係を維持しています。

 偉大なアメリカを復活させるのか、孤立主義に回帰するのか、環太平洋包括協力協定TPPからの離脱、北米自由貿易協定NAFTAからの脱退、在欧米軍や在日米軍と在韓米軍の抜本的縮小、これらはアメリカが世界唯一の超大国から退き、欧州はロシアの影響力を、朝鮮半島では北朝鮮、北東アジア地域では中国、西太平洋は日本に押し出される構図を示す。

 現在の国際公序は自由と公正を基調とした規範が普遍化し、国連憲章や多くの国際法上の強行規範がその機能を有しています。ただ、自由と公正を世界に広めたのはアメリカが欧州と共に第二次世界大戦を勝利し、得られたものであり、自由と公正は人間の安全保障や自己実現の権利へ直結する人権基盤と不可分です。しかし、世界の価値観は単一ではない。

 アメリカが、かつて第二次世界大戦参戦まで堅持していた孤立主義に回帰、NAFTA脱退とTPP離脱はその端的な施策ですが、世界に関与しない施策へ戻ったならば、第二次世界大戦当時の大国関係とは比較にならぬ程アメリカへ単極化している現状、その地位からアメリカが退く事は、自由と公正以上に領土拡張や海洋閉塞を企図する諸国の急拡大に繋がる。

 トランプ政権は、TPPからの離脱、NAFTAからの脱退を掲げましたが、当初挙げていた防衛面での後退には踏み切りませんでした。当初は北朝鮮の核開発と長距離ミサイル開発を日本北朝鮮間係争と見なし、北朝鮮がアメリカ本土を射程に収める長距離弾道ミサイル開発を1990年代より一貫し継続する実情を当初は無視していましたが、現在は転換した。

 北朝鮮の非核化と長距離弾道段開発に際し、最も声高に経済制裁を世界へ呼びかけているのは日米であり、ここにはトランプ大統領が大統領選時代、日本に核武装を認める姿勢を示したうえで、日本の核兵器によりアメリカが関与せずともアジア地域の安定化を図らせるとの消極的、しかしラジカルな施策はリアリズムに基づく政策へ置き換えられています。

 NATOとの関係についても当初は見直す姿勢を示しており、特にNATOは1991年のソ連崩壊以降、戦車や水上戦闘艦に戦闘攻撃機等の正面戦力を欧州周辺事態へ対応する安定化戦力へ転換し、装甲戦闘車や耐爆車両と戦力投射艦の整備に転換しており、ロシアの2014年クリミア併合以降、従来型大規模武力紛争の脅威に直面し、大わらわで戦力再編を行う。

 欧州諸国の戦力再編はまだまだ時間を要しており、また、冷戦後にNATOへ加入した中東欧諸国は冷戦型装備の多くを廃止し、地域安定化装備へ限られた予算体系下で移行する過渡期にある為、突如ロシアの圧力を突きつけられた瞬間には、アメリカの重戦力が不可欠、在欧米軍に派遣される重旅団戦闘団とストライカー旅団のポテンシャルは欠かせません。

 その上で、トランプ政権を評価する視点ですが、アメリカにおけるポピュリズム政治へ止めを刺したことでしょう。ポピュリズム政策は朝三暮四に基づく政策が多く、討議に調整や妥協という政治システムを通さない表面的な政策は、表面的な数字上での成果にしか収斂せず、結果的に問題が期待される形での解決する事は非常に難しいと言わざるを得ない。

 ポピュリズムは世界を見通せば直近の事例が日本の民主党政権時代に示された施策、埋蔵金財源に子供手当制度、後期高齢者医療制度廃止と最低補償年金制度、ガソリン暫定税率廃止や高速道路完全無料化、企業団体献金禁止と事業仕分け、普天間飛行場沖縄県外移設と防衛費5000億円削減、が省庁間調整や予算検証抜きに提示され全て実現しませんでした。

 政策決定者にポピュリストが就任した場合は確実に失敗するか、強行したならば膨大な財政赤字が発生します。しかしだからこそ、ポピュリストは自らこそこの難局を克服しうる簡単な仕組みがあるとして、最大野党や次席議会勢力に位置し、大きな発言を発します。論理が単純であり時間の無い主権者でも政権公約を読みやすい、という形ではありますが。

 政権政党や首班指名に及ばなかった場合にこそ、与党や首班を次席からその成果を批判し、あの時に我々を選んでおけば、との批判が可能となるのですが、この発言を広く示すことでポピュリズムは一定以上支持を得続けます。しかし、憲法制定権力を持つ独裁者でもない限り討議や調整を考慮せず施策を決定する事は出来ず、だからこそ第一位となりえない。

 ポピュリストが政権を担った場合はどうなるのか、この難しい状況を具現化したものがトランプ政権です。様々な問題が噴出していますが、現在の国際情勢は不安定といわれつつもまだ最後の安定は破綻していない。この状況下でポピュリズム政権が誕生したならば、主権者がポピュリズム政策の実現性を直視し、次は無いでしょう。戦時には破局に繋がる。

 戦時にポピュリズム政策を政策決定者が始めるならば、一つの問題領域を解決する事が別の問題領域を著しく悪化させる朝三暮四の状況に陥り、破局的な結果に終わるでしょう。現在のアメリカだからこそ、失敗した場合にもまだ戻る道が残されている。そして日本の民主党がポピュリズム政治に失敗した後の様に、主権者は政権選択の失敗を繰り返さない。

 アメリカがTPPからの離脱を主張し実際に離脱しましたが、TPP離脱論は相応の支持があっての施策でした。しかし、TPP枠組みそのものは日豪が中心となり維持されており、将来アメリカに引き返す道は残される。NAFTAについてもカナダとメキシコが中心となり維持されます。メキシコの壁建設ですが既にフェンスがあるのですから費用以外は戻り得る。

 しかし、全く不確定要素が無いとは言い切れません。それは朝三暮四の施策が地域ごとの分離に繋がらないか、南北戦争当時の経済関係に共通する部分が無しといい得ません、勿論内戦は全くあり得ませんが、合衆国の州ごとの団結に分離が生じかねない。そして、アメリカの二大政党制に基づく長期的な安定が不安定化しないか、これは大きな懸念です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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平成二十九年度一月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2018.01.20/01.21)

2018-01-19 20:06:48 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 寒さとは気温よりも濡れるか否か、また風速に左右すると実感する今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか、今週末ですが一般公開行事はありません。

 今週末の自衛隊行事無し、という週末にはまったりと撮影機材を防湿庫から取り出し手入れをしたいところですが、こういう週末こそ全国に残る軍事史跡の散策に出かけてみてはいかがでしょうか、軍事史跡も現在は自衛隊や米軍が継承する施設は多いのですが、歴史を辿れば日本を代表する名城も過去には陸軍などが継承し、史跡が残っている事がある。

 大阪城、現在は千僧の第3師団管区ですが、鉄道唱歌にも“三府の一に位して、商業繁華の大阪市、豊太閤の築きたる、城に師団は置かれたり”と謳われているように、明治建軍と共に大阪城には陸軍大阪鎮台が置かれ、第4師団、“淀兵団”へと改編、第8歩兵連隊と第9歩兵連隊と第10歩兵連隊及び第20歩兵連隊を以て佐賀の乱や萩の乱と西南戦争鎮圧に出動、日露戦争へも参戦しました。

 第4師団司令部庁舎は1936年に昭和天皇大阪行幸を祈念し大阪城天守閣と共に建設され、大戦中も師団司令部、また中部軍管区司令部として機能、戦後は大阪市警本部、大阪府警本部、大阪市立博物館として市民に親しまれ、2001年に閉館されました。老朽化故に取り壊しが危惧されましたが歴史的価値が認められ、ミライザ大阪城として親しまれています。

 さて撮影の話題。カメラバック、その種類は大きく区分すれば二つに大別できるかもしれません。特にカメラバック構成の材質の面で、二類出来るという視点です。それは、固いカメラバックか、柔らかいカメラバックか、ということ。要するにジュラルミンやアルミ合金等の金属製と硬質樹脂製の固いか、ナイロンやコットンにゴアテックスといった布製か、ということ。

 ジュラルミン製に代表される金属製カメラバック、これはコットン製カメラバックの代名詞であるDOMKEが1960年代末に開発されるまで、報道写真用撮影機材輸送の代名詞的存在はジュラルミン製でした。当時は撮影機材の防水性能が非常に限られており、レンズ部分を衝撃から防護する為にも頑丈さが求められ、コットン製は妥協の産物とされました。

 ジュラルミン製カメラバックですが、固く背負えば背中との接触部が痛くなりますし、柔軟性が皆無なので搭載機材以上のものを詰め込むことは出来ません。しかし、防水を考えればこれほど完璧なものは少なく、ふたを開けて機材取り出し、閉めてしまえば完全防水です。また強度次第で椅子や脚立替わりにもなり、疲れるとこの利点が大きくなりますね。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭

・今週末の自衛隊行事はありません

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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商級原子力潜水艦と識別,防衛省が沖縄尖閣諸島接続水域潜航の中国潜水艦艦型識別結果を公表

2018-01-18 20:14:39 | 防衛・安全保障
■おおなみ,最新中国原潜探知
 護衛艦おおなみ、おおよど、が中国の最新鋭攻撃型原潜の探知追跡に成功しました。これは逆に中国が最新型原潜を沖縄近海の接続水域へ進出させた事も意味する。

 沖縄県尖閣諸島接続水域に潜航侵入した中国原潜は、商級攻撃型原潜と共通する形状と紹介しましたが、防衛省の分析により最新型の商級攻撃型原潜だと正式に発表されました。作戦行動中の商級攻撃型原潜が捕捉されるのは初の事例で、これは2004年に沖縄宮古島沖へ領海侵犯し海上警備行動により追跡された漢級攻撃型原潜の後継艦にあたるものです。

 商級攻撃型原潜は2007年ごろに衛星写真により建造されている様子が確認され、また航行中の様子も衛星写真により確認されました。この情報に合わせるように2007年夏に中国海軍機関誌へ商級攻撃型原潜の写真が掲載され、その存在が公式に認められることとなりました。諸元は未発表ですが水中排水量は7000tから8000t、建造数等は不明のままです。

 漢級攻撃型原潜は海上自衛隊により簡単に捕捉され、当初から指摘された水中放音の大きさが、海中で銅鑼を叩くが如く、と表現される程に巨大な騒音を放つ事が実証され、海上自衛隊は第二次大戦中の反省から潜水艦への対処能力を常に重視してきた事もあり、延々海上自衛隊護衛艦と哨戒ヘリコプターに追尾され続け、国内テレビ報道で中継、居場所を隠せることが戦力の潜水艦、世界で初めて作戦中の原潜位置がテレビ中継されるという大変な不名誉を被ったのはご承知の通り。

 ヴィクターⅢ型攻撃型原潜、中国はロシア政府へ潜水艦の静粛化技術の提供を要望し、ロシア海軍からは冷戦末期にソ連海軍が26隻を量産、比較的静粛化が達成でき、日米貿易摩擦に乗じ東芝ココム違反不正精機輸出事件へと繋がった事で有名な潜水艦の情報を提供したとされます。このヴィクターⅢ型技術提供を受け、商級攻撃型原潜は建造されたという。

 商級攻撃型原潜は上記の通り、衛星写真により上空からの形状が判明しているほか、中国海軍機関誌にその写真が公表している為、防衛省が東シナ海において潜航を続けた潜水艦が浮上、その写真を撮影し発表した時点で商級攻撃型原潜である可能性が高いと考えましたが、一点、中国海軍公表写真と比し防衛省発表写真は艦橋基部に盛り上りがありました。潜水艦は水上戦闘艦よりも特に航行中は識別できる点が少ない為、一枚だけの写真ではここの判別が難しい。

 商級攻撃型原潜改型、中国海軍では商級攻撃型原潜093型原潜を拡大し、巡航ミサイル原潜として095型攻撃型原潜を建造中という識者の推測、093型原潜後期型が順光見合いる運用の力を強化し、船体形状に若干の変化があるとの識者の推測がありますが、今回防衛省は商級攻撃型原潜に巡航ミサイル運用能力を特筆しており、後者の可能性を示しました。

 中国軍は早い時期から長距離巡航ミサイルの開発整備を進めています。例えば、昨年紀伊半島沖に進出したH-6爆撃機では機体設計は1950年代の、アメリカのB-52爆撃機も設計は1950年代ですが、手堅い、古い航空機でした。しかしH-6は射程2500kmの長剣07巡航ミサイル六発を搭載する巡航ミサイル爆撃機で、航空機は古いものの長距離巡航ミサイルを搭載した場合、この脅威度は決して低くはありません。

 商級攻撃型原潜後期型であった場合、商級攻撃型原潜中国海軍公表写真になかった艦橋基部の形状変更が巡航ミサイル搭載能力へ充てられた可能性が高く、少なくとも尖閣諸島周辺から九州や本州西部を攻撃可能であると考えられます。こうした意味から、中国海軍が日本の接続水域へこうした最新鋭艦を展開させた行動の意味は決して小さくはなく、自衛隊としては必要な監視体制をこの海域へ広げざるを得ない。

 しかし、商級攻撃型原潜について海上自衛隊は初めて明確な音響データを収集する機会に恵まれました。また、汎用護衛艦や小型護衛艦でも中国の最新鋭攻撃型原潜を充分識別追尾できることを示す。中国海軍は潜水艦音響情報秘匿に熱心であり、アメリカの音響測定艦を警戒し、例えば就役前の洋上公試では騒音を発する特務艦数隻を周辺展開させ、音響情報を秘匿するほか、アメリカ音響測定艦の進路妨害を行った事さえあり、今回の情報は大きい。

 護衛艦おおなみ、おおよど、は商級攻撃型原潜に随伴していた江凱Ⅱ型フリゲイトを一定以上離隔させていた事が、少なくとも潜水艦単体が写った海上自衛隊の写真から推測できます。最新鋭攻撃型原潜を容易に捕捉できたことは、漢級攻撃型原潜領海侵犯海上警備行動以来の音響情報収集の成果であり、同盟国や友好国とこれらは共有される事となります。

 中国海軍も過去の教訓から学ぶようで、過去発生した漢級攻撃型原潜領海侵犯の際には継続追跡権を行使され延々と追尾されました。今回は新型の商級攻撃型原潜であり、護衛艦を振り切る事が理想ではあったのでしょうが、数日間追尾を続けられたことで逃げ切れない事を認識すると、あっさり東シナ海の公海上に浮上し中国国旗を掲揚、という構図が読み取れる。逃げる事を諦めた事は一つの進歩といえるかもしれません。

 一方、繰り返しになりますが問題の大きさは、中国が海上保安庁巡視船で捕捉できない潜水艦をこの海域へ進出させたという事実です。海洋法執行機関の公船である巡視船にはソナーはありません。従って、尖閣諸島周辺海域の警戒には護衛艦を常時展開させる必要があり、中国海軍の軽率な行動が原因とはいえ、結果的に一段階緊張度が大きくなりました。こうした行動を一つ一つ抗議し、中国側の恫喝を抑えねばなりません。

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鎮魂:兵庫県南部地震-阪神大震災発災23年,ポスト東日本大震災と危機管理の平時有事境界

2018-01-17 20:18:59 | 防災・災害派遣
■鎮魂:阪神大震災発災23年
 巨大災害は必ずやってくる、大陸外縁弧状列島である日本には宿命とさえ言えます。

 兵庫県南部地震阪神大震災から今日で23年となりました。淡路島北部から明石海峡にかけての震源に端を発するマグニチュード7.3の直下型地震は、当時世界最大の港湾機能を持つ神戸市を直撃、その自身は広く福島県から鹿児島県まで有感地震を観測しています。神戸市と淡路島では震度7、犠牲者は6435名に達し、東日本大震災まで戦後最悪の震災でした。

 神戸の東灘区を覆う大火災の空撮や長大な高速道路高架橋脚が一斉に倒壊している報道映像は今でも記憶に残り、特に当方は早朝の地震に起こされたものの、昼前には火災も鎮火するだろうと安穏と報道を視ていたのですが、実際は真逆、摩耶水害を契機に豪雨対策の進んだ家屋が多数倒壊し、圧死者と大火災の被害、当時は純粋に怖かった事だけを覚えています。

 阪神大震災は、日本が災害国家である事を強く認識させられるもので、特に危機管理の視点から課題を強く突き付けたものともいえましょう。特に我が国では1923年の関東大震災を筆頭に巨大災害が繰り返し襲来しているのですが、第二次世界大戦後、危機管理の認識と運用が新憲法により大きく転換した後には関東大震災規模の災害は僥倖にもありません。

 戦後の地震、1993年の北海道南西沖地震は戦後初めて地震被害で200名以上の犠牲者が出ており、1960年チリ地震津波被害、1983年の日本海中部地震、何れも百名以上の犠牲者が出ました。
M8.2の1952年十勝沖地震、M8.3の1968年十勝沖地震、1974年の伊豆半島沖地震、1978年伊豆半島近海地震と宮城県沖地震、1984年の長野県西部地震、何れも数十名の犠牲が。

 しかし、阪神大震災の被害は直下型地震として神戸市と淡路島に激震が集中し、そして文字通り桁違いの人命が、戦後最大の地震被害と称された北海道南西沖地震被害の30倍近い犠牲者が、と。この巨大災害ですが、戦前と戦後での災害を区切る重要な要素が一つあります、それは戦前とまた戦時中に明確であった法的な緊急事態と非常大権の位置づけです。

 次の巨大災害は必ずやってくる、残念ながら2011年3月11日に発災した東日本大震災は阪神大震災よりも一桁多い犠牲者、同胞が亡くなりました。ただ、日本が経験した歴史地震や地質学と火山学が地層に刻む災害を俯瞰しますと、阪神大震災を引き起こした兵庫県南部地震以上の都市直下型地震や東日本大震災以上の被害に繋がる海溝地震は発生し得る。

 危機管理の視点から、この命題はもう少し考える必要はないでしょうか。もちろん、消防団と水防団を更に広範に組織化して民間防衛まで拡大し巨大災害に備える、自治体の防災備蓄をより多く政策として定着させる、都市の強靭化へ耐震補強や指定公共事業者の強化を行う、という施策もあり得るのでしょうが、より深い意味で“危機管理”が要るだろう。

 憲法を改正して、と踏み込む論調は別の見解に繋がる可能性がありますが、戒厳令を含む国家非常大権の下で旧憲法下であれば国家が国民に対し責任を持つ枠組が存在していましたし、緊急事態であれば平時手続を省略し、被害局限化に特化した施策を法的手続きに則り行う事は出来、少なくとも超法規措置の決断を現場に押し付ける事はありませんでした。

 この命題を敢えてこの震災慰霊の日に提示しましたのは、阪神大震災での自衛隊人命救助は数十名であったが東日本大震災では一万九〇〇〇名規模の人命を救出した、その上で阪神大震災の反省から平時では問題があるものの違法性が無い範囲内で自発的に行動した結果である、文民統制上は問題という余地がある、とした論文を最近、目にしたためです。

 阪神大震災は歴史地震を振り返れば数多くの巨大地震が大阪湾沿岸北部を襲っているのに対し、経験的に神戸市は巨大地震の被害を受けにくいとの根拠の薄い認識に基づき、大震災を想定した防災訓練が充分行われず、労働組合や市民団体の要望から防災訓練に自衛隊を参加させず、しかし、自治体の防災能力が不充分である状況下で被害が拡大しました。

 危機管理という視点からは、上記視点は文民統制上の問題視するのではなく、平時から緊急事態には行政上の平時手続を省略する枠組みを文民統制の範疇で定めて置く事で回避できるものであり、平時と有事という概念を完全に同一視しています。平時に有事の手続き省略を行う事は問題が多いのですが、有事の際には時間こそが人命を多数左右しかねない。平時の内に有事の対応策を文民統制枠内で決めるべきだ。

 大規模災害、特に先進国では稀有な、20世紀以降数千の人命が災害で失われる事例、特に予報可能な気象災害ではなく突発的に生じる地震被害というものは日本が集中して多く、東日本大震災と阪神大震災の被害が突出しています。逆に言えば、この二つの災害程の人的被害は、先進国では戦災を含めて中々考えにくく、危機管理の軸に震災が妥当性がある。

 アメリカでは1965年のアリューシャン地震がマグニチュード8.7と巨大で津波も発生しましたが過疎地であり経済的被害に留まり、マグニチュード9.3という1964年のアラスカ大地震の犠牲者は131名、サンフランシスコを直撃の1989年ロマプリータ地震犠牲者が63名です。ハリケーンカトリーナ被害が2541名、アメリカではハリケーンが大きな脅威です。

 欧州では1980年のイタリアイルピニア地震の犠牲者が2400名、2016年のイタリア中部地震が300名以上、という巨大被害を及ぼしていますが、欧州最大の自然災害は1755年のリスボン地震、実にリスボン半分近い人命が失われましたが、過去千年を視た場合で、欧州での被害は長期的な農業被害と経済停滞に繋がる洪水被害の方が大きく認識されています。

 こう考えますと、勿論我が国では現行憲法下、危機管理というものは考えられつつも、有事と平時の境界線を無視した制度が多々残ります。次の災害を考えればこそ、阪神大震災の犠牲者、あの悲劇の根本が再来したその時に、人命被害を少しでも局限化出来る、表層ではなく深層に踏み込んだ危機管理の様式というものを、検討すべきではないでしょうか。犠牲者に冥福を祈りつつ。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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陸上防衛作戦部隊論(第六八回):装甲機動旅団再検討日本版機甲支隊案,兵站戦闘支援案

2018-01-16 20:02:37 | 防衛・安全保障
■兵站:前方戦闘支援任務
 日本版機甲支隊案、この視点で忘れてはならないのは前方での戦闘支援任務の在り方です、これ如何で短時間にて戦闘力を使い果たしかねない。

 装甲中隊戦闘群、支隊として戦車戦闘梯隊と機械化戦闘梯隊の2個戦闘単位を持たせる提案です。戦車戦闘梯隊が戦車3両に軽装甲機動車7両に中距離多目的誘導弾2セットから成る部隊、機械化戦闘梯隊が装甲戦闘車7両に81mm迫撃砲3門から成る部隊、として支援部隊を基幹とします。支援部隊は連隊戦闘団へ配属される部隊から抽出し編成する。

 支援部隊は、あくまで連隊戦闘団の一員として運用されるため、専ら連隊段列より中隊集積地へ、第一に弾薬、第二に糧食、第三に燃料を集積しますが、戦闘時を除く陣地構築や軽開示における常続補給任務とは別に戦闘時には緊急補給として装甲車両等による支援を行う必要があり、現在戦車大隊などに装備される装甲車の任務には緊急補給が含まれます。

 後方支援任務には衛生分遣隊や通信分遣隊と給水分遣隊、給食班や人事班等、中隊本部の機能を応用し対応し、中隊段列地域は、離隔した弾薬車と燃料車の補給地区、人事班及び衛生班と給食班と通信班の業務地区、後方支援連隊直接支援部隊等の機動車両とエンジン点検等支援委充てる重レッカー車を装備する整備地区、以上3地区で中隊段列を構成する。

 整備地区、後方支援連隊整備大隊直接支援小隊分遣隊として装甲中隊戦闘群へ派遣し前方野外整備所を開設、野外整備作業を実施する。理想としては後方支援連隊整備大隊直接支援小隊分遣隊へ11式装軌車回収車と96式装備車輪装甲車を配属する事が望ましいのですが、この場合、所要装軌車回収車は12両となり、戦車大隊定数と比較し過大でしょう。

 装軌車回収車は連隊段列地区へ一括して集約し、後方支援連隊整備大隊直接支援小隊へは重レッカー車と整備班が乗車する96式装備車輪装甲車を展開させ、基本的に回収任務は連隊段列地域からの装軌車回収車の展開支援を前提とします、装甲中隊戦闘群支援部隊はこのほか、補給分隊を中隊弾列地区へ展開させ、3t半燃料車及び3t半トラックを集積する。

 補給地区、弾薬車として3t半トラック2両と燃料補給車として3t半燃料車2両、弾薬車は戦車3両と装甲車両14両に迫撃砲5門を運用するため、所要弾薬は膨大なもの、この為、車載の弾薬に加え更に1基数を中隊段列地区に増加携行する、機械化大隊と捜索大隊編成時には連隊段列へ集積が合理的ですが、中隊単位での戦闘では中隊が集積すべきでしょう。

 業務地区、中隊運用幹部と中隊先任曹長へ軽装甲機動車を配備、衛生要員車両に高機動車、給水1/4tトレーラーに中隊用野外炊具2号と併せ高機動車/1t半トラック3両、通信班に高機動車、更に小隊長車として連絡用に1/2tトラック4両等が加えて必要となります。補給地区に業務地区と整備地区は中隊運用幹部と先任曹長が掌握できる範囲内へ展開します。

 第一線部隊への補給は、所要物資情報を戦車及び装甲戦闘車など装甲車両より電送し掌握した上で中隊段列地域より、中隊補給幹部が先導する中隊本部車両、高機動車か可能ならば軽装甲機動車の先導を受け、3t半トラックへ燃料缶や弾薬箱と飯缶を積載し各小隊を巡回補給する所謂ログパック輸送方式と戦闘車両が段列地域へ戻る再補給を併用し戦い抜く。

 装甲中隊戦闘群支援部隊は、軽装甲機動車2両、96式装備車輪装甲車1両、高機動車5両、1/2tトラック4両、3t半トラック2両, 3t半燃料車2両、重レッカー車1両、中隊本部車両と後方支援連隊整備大隊直接支援小隊分遣隊及び補給隊分遣隊等の18両を基幹とすれば、概ね戦闘支援能力を最大限発揮でき、支隊として一定の独立戦闘能力を、構成できます。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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北朝鮮国連制裁監視支援新任務【前篇】実任務増大の海上自衛隊支援へ三自衛隊協同が必要

2018-01-15 20:16:36 | 防衛・安全保障
■実任務増大の海上自衛隊
 北朝鮮核開発経済制裁違反の密輸監視が海上自衛隊新任務となりました。しかし、海上自衛隊の任務は規模の限界を超えており、三自衛隊の協同を視野に入れるべきと考えます。

 RF-4偵察機、航空自衛隊が誇る戦術偵察機ですが、過去に海上自衛隊はソ連艦隊の識別用にこのRF-4偵察機の導入を検討した時代がありました。フィルムを高性能カメラにより撮影し、その上で基地にて現像しなければならないという手間はあります。さて、海上自衛隊、現在は多数の実任務を同時並行しており、その能力の限界分水嶺にあるといえる。

 かなり厳しいです、とは基地の街を散策していて聞こえてくる言葉です。十年ほど前にもミサイル防衛任務とアラビア海対テロ給油支援任務の同時展開に際し聞こえてきた声ではあるのですが、十年間で防衛力は特に護衛艦の規模で維持、実質増強は実現していません。逆に12隻が量産された護衛艦はつゆき型が大半練習艦移籍か除籍され汎用艦の不足著しい。

 ノーベル平和賞受賞の核兵器禁止条約推進団体ICANベアトリスフィン事務局長が広島の原爆慰霊碑に献花、広島での講演で北朝鮮により核兵器が使用される危機的状況へ警鐘を鳴らしました。仮に核兵器禁止条約が核不拡散条約を強化し、特に核兵器国以外の核保有国への一致した核兵器放棄への強制措置を執り得るならば日本が主導し進める枠組と考えるのですが、現状、海上自衛隊に無理を通してでも経済制裁により何とか北朝鮮核開発を阻止せねばなりません。

 航空自衛隊や陸上自衛隊の装備の中で、海上自衛隊が実施する実任務について支援することは出来ないかを真剣に検討すべき段階となっているのかもしれません。海上自衛隊の任務は、主なものだけでもソマリア沖海賊対処任務、南西諸島中国艦船警戒任務、日本海北朝鮮弾道ミサイル警戒任務、国連制裁履行支援東シナ海日本海黄海上船舶監視任務、など。

 国連制裁履行支援東シナ海日本海黄海上船舶監視任務、これは北朝鮮核実験及び長距離弾道ミサイル実験を受け新たに追加されたことが13日に報道された海上自衛隊の新任務で、広範な海域において第三国船舶から北朝鮮船舶への禁制物資移転を監視し追跡する任務です。ただ、南西諸島警戒と海賊対処任務にミサイル警戒任務だけでも手一杯といっていい。

 RF-4E/EJ戦術偵察機でも、例えば北朝鮮船舶の偵察写真撮影、こうした写真でも大型フィルムを用いており通常のデジタル一眼レフカメラ以上に積載物資等を写真情報解析に大きな画像情報を収集できます。滞空時間についてRF-4E/EJはP-3C哨戒機ほど長くなく、継続的追尾には限界がありますが、海上自衛隊のP-1やP-3C哨戒機の補完は可能でしょう。

 U-125A救難機、航空自衛隊では遭難航空機や災害派遣に際し、救難ヘリコプターに先行し遭難者や遭難現場の特定などの情報収集と救難物資投下に用いられる航空機ですが、U-125Aにも捜索用のTIE赤外線暗視装置と捜索レーダーを搭載、運用は捜索救難機ではありますが、洋上用搭載機材の性能からは海洋哨戒機としての能力を十分に有しています。

 C-130H輸送機、大きな滞空時間とともに空中給油能力を付与した機体も航空自衛隊には配備されています。実は飛行中に扉の開閉が可能である輸送機は、世界では捜索救難機として運用される事例が多い。海洋遭難事案では余裕ある機内に多くの要員を搭乗させ、双眼鏡等による捜索を実施可能です。夜間は厳しいですが、監視任務には適した機体の一つ。

 LR-2連絡偵察機、陸上自衛隊の連絡偵察任務にあたる航空機です。原型機であるスーパーキングエア350は、アメリカ陸軍ではMC-12WとしてISR機、つまり情報収集機として運用されています。ビジネス機としての座席数と比較的長い航続距離を有する使いやすい航空機であり、このLR-2等も陸上自衛隊機ですが、海洋監視任務の一翼を担えるでしょう。

 海上自衛隊の任務が限界を超えつつある、具体的には過剰勤務により事故が発生する分水嶺を意識しなければならない状況を考えねばならない状況、今回の新任務は商船の監視が任務であるのだから、海上自衛隊の艦艇や航空機でなくとも対応できます。勿論、海上保安庁巡視船等も協同する任務ですが、救難機や連絡機の転用に敢えて臨むべきでしょう。

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【日曜特集】横須賀地方隊伊勢湾展示訓練2010【8】US-1と艦隊機動(2010-08-21)

2018-01-14 20:09:19 | 海上自衛隊 催事
■伊勢湾展示訓練艦隊行動
 US-1A救難飛行艇、最後の一機が2017年に除籍されUS-2へ大任を譲りました、この飛行展示の後に背湾展示訓練は展示訓練この日最後の艦隊行動展示へと進みます。

 伊勢湾展示訓練、横須賀地方隊が実施する海上自衛隊展示訓練です。近年は海上防衛への関心の高まり、それ以上に一般でも応募し当選すれば艦隊を撮影する事が出来るという情報のインターネットでの流通により非常に多くの方々の関心を集めることとなりました。

 横須賀地方隊の伊勢湾展示訓練という事で横須賀地方隊の歴史を振り返る内容を中心に写真特集を掲載してきましたが、展示訓練という夏に執り行われます洋上で展開される我が国海上防衛力を見学にて、どのように眺めるかについて、ちょっと振り返ってみましょう。

 今回お世話になったのは、多用途支援艦えんしゅう、ひうち型多用途支援艦です。観艦式程ではないものの展示訓練となりますと、どうしても艦隊行動をしっかりと撮影したいものですが、その為には撮影位置というものが重要です、まず洋上に出る事が先決ですが。

 艦隊の先頭を往く先導艦に乗艦できれば、これに勝るものはありませんが、そもそも乗艦する艦艇は応募の時点で選ぶことはできません。希望艦艇等を聞いてくれればよいのですが、艦隊行動の観点から防衛上、長期的に示す事が出来ない部分もあるのかもしれません。

 艦名を視て、恐らく観閲部隊の後方だな、とか、受閲部隊の先頭に違いない、とか一喜一憂するのも、この展示訓練の一つの姿なのかもしれませんが、まずは乗艦する際に寝坊して遅れないことが肝要です。出港順は各艦に違いがありますので、早い艦もあるのです。

 整備旗、といいまして艦艇の出港準備完了と共に掲げられる旗があります。展示訓練等では流石は海上自衛隊の模範と実力を見せる為に、出航準備が完了しない艦艇というものあありませんが、遅刻すると乗せてもらえません。時間にゆとりを持つ事が大事ですよね。

 自衛隊、余り団体行動で時間を守れない人を揶揄する言葉に、整備旗、という呼び方がありまして、即ち、その人が集合地点に居るのならば他の人は全員そろっているだろう、という事で、おう整備旗も来ているな、という言葉もある模様、成程気をつけねばならない。

 しかし、展示訓練、興奮してと言いますか、乗艦する場合は何故か目が覚めているものでして、遅刻する、という話はあまり聞かないのですよね。もっとも、日曜日と云いますと、日朝キッズアニメの影響で元々早起きする、という人もここ数年は多いようですけれども。

 乗艦に際して、いや、先んじてお弁当はどうするか悩むところです。お弁当はかつて当方、観艦式に焼き肉弁当を準備し、横須賀地方隊の方に、これ、艦上まで持っていくのですか、と笑われた事もありますが、確かに考えるとコンビニ系弁当箱は食べた後の処理が面倒ではある。

 駅弁で、名古屋名物とり飯、日本SF界の巨匠である小松左京氏が小説“首都消失”の冒頭で駅弁として主人公に絶賛させていた駅弁でもあれば、あれはコンパクトであるものの中味がしっかりと入っているだけに満足感が大きいのですが、名古屋駅でしか売っていない。

 とり飯、薄く切った名古屋コーチンの味付け鶏肉が、山菜五目御飯の上に数枚まぶせられており、沢庵の漬物と共に厚紙ごと木籠細工の弁当箱に収まる。“首都消失”では主人公が新幹線名古屋駅にて東京への帰路購入し、道中三河安城付近から謎の濃霧に襲われます。

 横濱しうまい弁当、とも名古屋とり飯は重なるものがありまして、首都圏で当方の一押しは横濱しうまい弁当なのですが、多くの弁当が華美と荘厳さに併せて価格高騰に突き進む中、弁当の素朴さと手軽な価格帯を維持しているという意味で別格の駅弁といえましょう。

 閑話休題。艦上に上がりましたらば、やはり撮影位置というものは大きな関心事です。なにしろ、陸上自衛隊駐屯地祭や航空自衛隊航空祭は年がら年中日本のどこかで行われているものですが、海上自衛隊の展示訓練となると全国で各地方隊が一回だけ、貴重そのもの。

 撮影位置で慌てて右舷左舷を間違え、何も来ない側に陣取っては折角血税で動く護衛艦や支援艦艇に広報というご厚意に頼る身の上、乗せて貰うからにはしっかりと海上防衛力の現状を把握し、2010年の写真を2017年に掲載するにしてもしっかり報じる義務も生じる。

 気概はそんなもので、撮影位置を選ぶのですが、なにしろ撮影位置というものは状況次第でどんどん変わってきます。しかし人口密度はそれなりにあるのですからそう簡単に観閲行進は正面から見たうえで訓練展示は戦車の前へ、陣地変換、という訳にもいきません。

 一方、当方が撮影位置を陣地変換せずとも艦は動いているのですから陸の上で戦車や戦闘機を撮影するとは訳が違うのです。ここだな、と撮影位置を決めましても艦隊行動によっては、いや、此処だと見えるものも見えなくなるのか、という状況、多々生じかねない。

 展示訓練案内パンフレットというものはこうした状況でかなり重要です。観閲部隊なのか受閲部隊なのかで、観てもらう艦隊なのか観る艦隊なのかが違ってきますし、艦隊が単縦陣、つまり艦が全部一列に航行する際に前の方を行くのか後ろを進むのかでも違ってくる。

 単縦陣で艦隊が航行する際に、乗艦する艦が先頭の先導艦ならば間違いなく撮影適地は後部甲板、後続する艦艇が単縦陣で進む様子を先導艦から撮影すれば、艦隊が一列に進む様子をしっかり撮影する事が出来ます。艦隊行動は単艦の体験航海ではやはり見られません。

 単縦陣は外国の留学生で徴兵にて海軍の取られた連中の話を聞くとかなり難しいらしい、それも一隻二隻、一隻では陣形は取れませんが、少数ではなく十隻単位で、しかも艦型が違い、護衛艦から掃海艇まで単縦陣を組むというのは、もう練度が相当の必要とのこと。

 艦隊行動は、一見行進の技量を誇るだけの陸軍の様相で時代錯誤と誤解しがちですが、船団護衛やミサイル戦闘では死活的に重要で、洋上補給等の基礎にもつながる部分です。これが出来ないと、外国艦艇の某国艦の如く日本の国際観艦式へ向かう途上座礁しかねない。

 撮影位置で単縦陣の後方にいる場合は、前甲板か艦橋付近が撮影適地です。艦橋は操艦の邪魔にならないよう一部立ち入りが制限されていますが、艦長航海長等と機関長や飛行長に砲術長とのテレトーク会話等きびきびとした行動が雰囲気として体験できる航海となる。

 単縦陣後方にいる場合の撮影場所ですが、もう一つ、上部構造物付近で搭載艇等日影となる位置も撮影適地となります。この位置ですと、観閲部隊であっても受閲部隊であっても、先を往く艦艇と、対向するもう一方の単縦陣を一枚に収める事が出来、すると迫力が凄い。

 伊勢湾展示訓練2010ですが、当方は多用途支援艦えんしゅう艦上にて、上部構造物の搭載艇とファンネル付近、煙突と書くべきか、この位置にて撮影する事としました。右舷と左舷を往復しやすい位置にありまして、搭載艇が真夏の伊勢湾の直射日光を防いでくれます。

 横須賀地方隊の展示訓練のみならず、真夏に行われる展示訓練は灼熱の太陽との戦いです。雨天の場合は中止もあり得るので、雨天との戦いでもあるのですが、直射日光を多少避けられて、しかし見晴らしの良い場所を確保する選定も、撮影の一つの技巧といえましょう。

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海上自衛隊,北朝鮮臨検支援!核開発の国連制裁履行へ日本海・東シナ海・黄海で監視追跡新任務

2018-01-13 20:09:09 | 国際・政治
■自衛隊,北朝鮮禁制品移転阻止
 海上自衛隊がアメリカ海軍をはじめ有志各国と協同で、北朝鮮行き船舶への禁輸品輸出阻止海上臨検支援を開始した、との報道がありました。

 政府は国連安全保障理事会による北朝鮮核実験及び長距離弾道ミサイル実験を受けての追加制裁決議を確実に履行するべく、新たに日本海や東シナ海及び朝鮮半島西側の黄海一部を対象に警戒監視を開始する命令を発しました。海上での北朝鮮船舶へ石油関連物資等禁輸品提供の監視が狙いです。この新任務は大量破壊兵器拡散防止イニシアチヴPSI参加各国と協同し行われる。

 国連安保理決議第2397号は、長距離弾道ミサイル実験を受け、実施された北朝鮮への追加制裁決議であり、当初はアメリカが北朝鮮への原油完全禁輸を求めましたが、中国ロシアの反対姿勢と拒否権行使示唆により妥協しました。しかし、石油関連資材輸出については広範に盛り込まれており、この制裁を確実に履行したならば、大きな効果が見込めるもの。

 北朝鮮への海上監視任務強化を行う背景には、公海上において北朝鮮船舶へ第三国船舶からの禁輸対象の石油関連物資移転が監視により判明しており、制裁逃れの密輸が極めて広範に行われている疑いがある為です。原油完全禁輸には至っていませんが、現在の制裁も確実に実施されたらば経済制裁効果は高い、しかし完全に履行されないという現状があり、抜け穴閉塞が狙い。

 監視任務は、海上自衛隊護衛艦や哨戒機による情報収集が主体となります。護衛艦からの臨検は今回の政府命令では含まれず、写真撮影や映像撮影により禁輸品輸出を監視し追跡、実際の臨検任務はアメリカ海軍が実施するとのこと。この任務は過去のソマリア沖海賊対処任務や同意多発テロアラビア海海上阻止行動給油支援と並ぶ海上自衛隊の実任務となる。

 PSI大量破壊兵器拡散防止措置,として我が国は、2001年の9.11同時多発テロ以降、核関連物質や長距離弾道ミサイル等の大量破壊兵器と大量破壊兵器運搬手段の世界規模の拡散を阻止する国際協調へ参画しています。これは当初、核の闇市場を通じテロリストによる核爆弾テロを阻止する狙いでしたが、現在は北朝鮮による核拡散の危機が顕在化しており、この枠組みを応用するかたちです。

 しかし、海上自衛隊実任務は、ソマリア沖海賊対処任務、日本海北朝鮮弾道ミサイル警戒任務、南西諸島中国艦艇警戒監視任務、三方面作戦を実施しています。海上自衛隊は世界でも多数の大型水上戦闘艦を保有する勢力を有していますが、実任務増大に艦艇増強が追いつかず、日本海や東シナ海及び朝鮮半島西側の黄海一部での警戒監視は大きな負担と云わざるを得ません。

 艦がたりない、護衛艦は、いずも型ヘリコプター搭載護衛艦2隻、ひゅうが型ヘリコプター搭載護衛艦2隻、あたご型ミサイル護衛艦2隻、こんごう型ミサイル護衛艦4隻、はたかぜ型ミサイル護衛艦2隻、あきづき型護衛艦4隻、たかなみ型護衛艦5隻、むらさめ型護衛艦9隻、あさぎり型護衛艦8隻、はつゆき型護衛艦1隻、あぶくま型護衛艦6隻のみ。

 イージス艦だけでも多忙を極める。イージス艦、海上自衛隊が6隻保有し、8200t型護衛艦として新イージス艦の建造が進められていますが、北朝鮮のグアム方面へのミサイル同時発射恫喝と繰り返される長距離弾道ミサイル実験を受け、日本海海上でのミサイル警戒任務を継続中です。また、昨日一昨日の中国潜水艦沖縄尖閣諸島接続水域侵入等行動への警戒監視も継続しなければなりません。

 経済制裁への北朝鮮反発も激化する事が考えられます。北朝鮮は経済制裁を克服するとの声明を繰り返していますが、密輸により制裁逃れを行っている実情がある。また、国連による制裁決議を戦争行為として激しく反発し、世界で唯一核拡散防止秩序を破壊し核武装する権利があると主張する北朝鮮が、経済制裁に軍事行動で反応し、我が国への挑発や限定攻撃を行う可能性もあるでしょう。

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中国潜水艦が沖縄尖閣諸島接続水域へ侵入!海上自衛隊が追跡,中国潜水艦出現に緊張激化懸念

2018-01-12 20:00:17 | 防衛・安全保障
■最新商級原子力潜水艦の可能性
 日本海側の豪雪が伝えられる中、中国海軍のフリゲイトと潜水艦が沖縄県尖閣諸島へ出現、接続水域へ侵入、沖縄県を巡る緊張がまた高まりました。

 中国海軍の江凱Ⅱ型フリゲイトが11日午前、沖縄県尖閣諸島大正島北東接続水域に侵入したのを、警戒中の護衛艦おおなみ、おおよど、及びP-3C哨戒機が確認しました。海上自衛隊が江凱Ⅱ型フリゲイトの監視を継続したところ、当該艦は海面下に国籍不明潜水艦を随伴している事が判明、他国接続水域では潜水艦は浮上航行が領海条約に定められています。

 海上自衛隊護衛艦は中国艦艇に接続水域を出るよう警告し、これを受け江凱Ⅱ型フリゲイトはその後、一度接続水域から出域し、再び大正島の北東の接続水域へ侵入しました。今回は領海侵犯には至っていません。しかし、潜航した潜水艦は大正島近海到達前に宮古島沖接続水域を航行、東北東の接続水域を北西進、最後まで接続水域内では浮上する事はありませんでした。

 本日午後に当該潜水艦が東シナ海公海上に浮上し中国国旗を掲げた事を追尾していた海上自衛隊が確認しており、その写真を撮影し公開しました。写真を見る限り、新型の商級原子力潜水艦と艦橋形状に共通点が見られます。接続水域を潜航航行した国籍不明潜水艦に対して沿岸国には継続追跡権が有る為、浮上せねば基地まで護衛艦に追跡される事を回避する為の中国側の根負けといえましょう。

 領海条約が外国潜水艦へ無害通航権を行使し領海や接続水域を航行する際に浮上航行を求めている背景には、潜航潜水艦が浮上しなければ正規海軍艦艇か私掠船や脱走艦の確認を取れない事、国籍不明では漁具損傷や汚染物質漏洩の際に沿岸国が賠償責任を問えない事、機雷敷設等沿岸国へ脅威を及ぼす可能性から領海条約14条1項と17条に禁じられている。

 菅義偉官房長官、小野寺防衛大臣は事態の緊張度を増す行為であるとして厳重に抗議すると共に外務省も杉山次官が中国の程大使を外務省へ呼び出し厳重に抗議しました。実は、今回の中国からの国籍不明潜水艦による接続水域侵入事案は、文字通り事態をエスカレートさせる極めて危険な行動となります、何故ならば海上保安庁では対応できない為です。

 海上保安庁巡視船は海洋法執行機関の公船であり、海上自衛隊の護衛艦のような海軍水上戦闘艦艇としての機能を有していません。潜水艦は海中を航行している為、浮上した場合やスノーケル航行、潜望鏡等を使用する場合を除き、巡視船の航海レーダーでは捕捉できません、潜航潜水艦は基本的にソナーで音を探るのですが、巡視船にソナーはありません。

 尖閣諸島領海では海上保安庁巡視船が警戒監視を実施しています。尖閣諸島への中国公船による領海侵犯は常態化していますが、接続水域へ海軍艦艇侵入は2016年6月以来二度目、海上自衛隊も尖閣諸島に接近せず、軍事機構による防衛行動よりも平時における法執行任務は海上保安庁巡視船が担ってきた訳です。しかし、潜水艦は状況を一転させかねない。

 中国外務省の陸慷報道局長は記者会見において通常の哨戒活動を行ったのみとして問題は無いとの立場を取りました。これは中国海軍潜水艦がこれまでと違い尖閣諸島周辺海域での行動活性化を示唆したに他ならず、潜水艦を探知できる巡視船、退役護衛艦を海上保安庁に編入させる等、が行われない限り、平時から海上自衛隊が警戒に当らざるを得ません。

 安倍首相は、今回の中国水上戦闘艦及び潜水艦接続水域侵入事案を受け、不測の事態に備えて警戒監視に全力を尽くすよう関係省庁に指示しました。平時の警戒監視任務は北朝鮮核実験と弾道ミサイル実験監視任務に注目が集まりがちではありましたが、今回の事案は改めて、南西諸島防衛へも大きな緊張状態が継続している事を端的に示す事となりました。

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