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縄文小説家・森裕行のブログです。身近な縄文を楽しみ生き甲斐としています。「生き甲斐の心理学」の講師もしています!

大きな幸せ、小さな幸せ!(時間と空間の旅④ 10/10)

2014-03-09 | 第二章「五感と体感」

 「これを成し遂げたら幸せがくる。ひょっとしたら、それは大きな永遠につながるかもしれない」。私も青春時代にそんな考えを持ったことがある。海潮音のカールブッセの詩は有名で、なんとなく影響を受けたのかもしれない。

山のあなた   カアル・ブッセ

山のあなたの空遠く
「幸(さいはひ)」住むと人のいふ。
噫(ああ)、われひとゝ尋(とめ)ゆきて、
涙さしぐみ、かへりきぬ。
山のあなたになほ遠く
「幸(さいはひ)」住むと人のいふ。
 
 青春時代は、どういうわけかこのような考えをもつことが多いようだが、それゆえ心の健康を損ねてしまうことも。
さて、7世紀の大津皇子も、文武両道の人で当時はスーパースターのようだった。次のような壮大な非凡な詩を書いている。
 

天紙風筆画雲鶴

山機霜杼織葉錦

(以下、懐風藻 江口孝夫訳 講談社学術文庫 P59-60

大空の紙に風の筆勢で雲翔ける鶴を描き

山姿の機に霜の飛び杼で紅葉の錦を織る)

 そして、大津皇子は天武天皇の後ろ盾もあり、19歳の時に政治に颯爽と登場し、八色の姓などの難しい政治的難題に力を発揮したり、私生活でも石川郎女(大名児)と激しい恋愛をしたりする。しかし、天武天皇が不治の病に陥り、後ろ盾を無くしてくると、一転して孤立化していき(大津皇子個人の問題というより政治的な構造の問題と観る説もある)、最後は日本書紀によると、皇后や草壁皇子に対する謀反で死罪となる。

 次は処刑前の和歌と漢詩であるが、何とも言えない味わいの歌を残している。

ももづたふ磐余の池に鳴く鴨を今日のみ見てや雲隠りなむ (萬葉集 3-416)

    金烏臨西舎 (金鳥 西舎に臨み)
    鼓声催短命 (鼓声 短命を催す)
    泉路無賓主 (泉路 賓主無し)
    此夕誰家向 (この夕 誰が家にか向ふ)

大きな夢と挫折を味わっただろうが、何とも言えない味がある。

さて、「これを成し遂げたら幸せがくる。ひょっとしたら、それは大きな永遠につながるかもしれない」という考え方もあるが、次のような考え方もある。「もう、既に今、永遠に通じる世界の中に生きている、それゆえに、この小さな出来事を大事にしよう」。この考え方は、ちょっと変かなと思われる方も多いかもしれないが、哲学・宗教の世界では意外にも主流派。

 大津皇子の歌は、どうなのだろうか。いろいろ考えさせられるが、かわいい鴨がキーワードかもしれない。大津皇子は、すでに永遠の中にいるのかいないのか。

時間と空間の旅 ④ 10/10

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