演習「場の量子論」(サイエンス社)は柏太郎さんの著作である。
柏さんはいう。場の理論のテクストはどれも大部である。500ページから1000ページにも及ぶ。それでこれらの本をセミナーで読み上げるには数年がかかる。それを1年くらいで演習をしながら理解できたらいいだろう。そう思ってこの本を書いたという。
大胆な試みである。同じように比較的薄い場の量子論のテクストに坂井さんの本があるが、ちょっと覗いてみたらどうも間違いがありそうである。Schroedinger 描像だと状態ベクトルは時間に依存するが、それが演算子が時間に依存しているととれるような記述があった。
これでは信用して坂井さんの本を読むことはできない。単なるボンミスだと思うが、これに見られるように忙しい公務のすきの縫って本を書くのは大変だということだ。
柏さんの本はいまは改訂版が出ていて、私も先日購入した。時間に暇があれば一日1問を実行したいと思うが、その暇がない。もっと手っ取り早い方法はないものか。
Euclid の昔から「学問に王道はない」。これはギリシア時代のある王様が幾何学を習うのに悲鳴を上げたときにEuclid の言った言葉だという。それはそうだろうが、やはりなんとかすべきだろう。しかし、場の量子論では柏さんの本が役に立つだろう。