「源流から未来へ」というのは思想の科学社から出された「思想の科学」の50年を振り返った出版物の一つである。M大学の図書館から借り出してよんでいるのだが、鶴見さんが50年を振り返っていまさらに武谷三男の存在の偉大さを感じているという口ぶりが伺える。
鶴見さんのまわりの思想の科学の七人の創立同人はそれぞれにその存在意義が大きかったらしい。思想の科学の天皇制特集号が中央公論社によって断裁されたときに都留重人は「思想の科学」の弱腰を朝日新聞の論壇で叱ったというが、それは表のことで裏ではこの特集号が自主的に出版できるための手はずを整えていたという。
そういう表の面ばかりではなく、裏の面も知るとそれぞれの創立同人の奥行きの深さというかそういうものに感心をする。だから、表だけを見ていてはいけないのだと思う。
もっとも、部外者である私たちは表の面しか見ることができないのだが、それを誰かの対談等で少しでも覗き見ることができるのはうれしい。
鶴見さんは自分の先生は唯一都留重人さんだけだという。それはそうだろうが、思想の面での武谷の鶴見さんへの影響も見逃してはならない。
鶴見さんは思想の大部分をやはり独自につくりあげて来たように思われる。それは間違いがないのだが、どういう風に武谷が影響を与えたかということはかなり語られているが、それでももっと知りたい気がする。
残念なことはいくつかのミスプリがこの書にあることである。このような大著だからしかたがないのだが、もう一つ緻密な校正が欲しかった。また、座談の中に意味がとれないところがある。校正の段階で指摘する人がいてほしかった。