物理と数学:老人のつぶやき

物理とか数学とかに関した、気ままな話題とか日常の生活で思ったことや感じたこと、自分がおもしろく思ったことを綴る。

オッシロスコープ

2009-12-30 13:29:33 | 物理学

オッシロスコープで電圧波形を見ることができると、認識したのは竹内均先生の理科Iか物理のNHKのテレビ番組だった。

もう大学院を出て大学に勤めていたと思うが、その番組で電池の端子からオッシロの端子に入力すると電圧が時間的に一定であること、交流電源につなぐときれいな正弦波形が観測できることや整流回路で半波整流や全波整流の電圧波形を見た。

それまでにオッシロでこのような電圧波形を見たことがなかったわけではない。

4年生だったか大学院に入ってすぐだったか忘れたが、友人のY君から発振回路のきれいな矩形波の波をみせてもらったことがあった。それに大学に入る前の高校3年の時に物理の先生がデモ実験でオッシロで電圧波形を見せてくれたことがあったと思う。

Y君は回路にコンデンサーを入れて、電流をさらに平滑化することを実験室で遊びと実用を兼ねてやっていた。しかし、そのときにはオッシロで電圧波形を見ることができるという認識をしてなかった。だから、竹内均さんの物理の番組は衝撃だった。

大学に勤めるようになって間がない頃に同僚のKさんが学生の物理実験を改変しようと言い出し、その手伝いをすることになったときに、三極真空管や二極真空管の作用をオッシロの電圧波形で見るといった実験を提案したのはこのNHKの番組が契機となっている。

学生実験はつぎのようであった。

二極真空管は整流回路に使われ、交流を整流する。

これを半波整流からはじめて、全波整流の整流回路を作成させる。そしてその電圧波形をオッシロで観測させる。

さらにコンデンサーをつかって、できるだけ電圧を平滑化した回路を半田ごてで製作させ、その電圧波形もまた観測させる。そのつぎの週の実験で二極真空管の特性曲線を測定させる。

さらに三極真空管では電圧の増幅作用をまず実感させる。そのためにつぎのような実験をさせる。

増幅回路を三極真空管を用いて作成させ、その電圧が増幅回路を通じないでオッシロに入力したときと比べて増幅回路を経た出力電圧をオッシロに入力したときには間違いなく電圧が増幅されていることをオッシロの画面で観測する。

普通には増幅回路を通した電圧波形は入力電圧よりも大きく増幅されてもとのオッシロの画面に入りきらなくなるので電圧の測定するレーンジを切り替えてオッシロの画面で見ることにする。

そういう実験をした次の週に三極真空管の特性曲線を測定させる。

これらの一連の電気回路の実験の最後は発振回路の作成とそのオッシロによる観測だった。

このような構想で学生実験をつくった。また、この学生実験のために簡易なシンクロスコープを数台購入した。

学生時代に私のとった基礎物理実験には確かに三極真空管の特性曲線を測定する実験はあったが、何のために三極真空管の特性曲線の測定があるのか、当時はよくわからなかった。増幅率を実験で測定した特性曲線から求めたと思うけれども。

学生のときに自分がわからなかった実験の意図をはっきりさせようとして、体験的に実感する二極真空管、三極真空管の実験を考案したのだが、当時の工学部の学生にこの配慮がわかってもらえただろうか。

これらの装置を実際に作ってくれたのは宇宙線の実験家だった、Hさんであったが、しかし学生実験の案を立てたということで実験のテキストを暑い夏休みを使って書いた。

こうして数年は真空管での実験が行われたが、そのうちにいまさら真空管でもないだろうということで、二極真空管と三極真空管はダイオードとトランジスターにそれぞれ置き換えられた。このときにも案を立てて、実験指導書をやはりつくった。

ダイオードがどういうもので、トランジスターがどういうものかもはじめは私にはよく分かっていなかったが、このときも夏休みに勉強して実験の指導書をつくった。装置そのものは前と同様にHさんがつくってくれた。

実験の指導書をつくるのは勉強にはなったが、結局はつけ刃で、そのときはわかっていたと思うが、内容はすぐに忘れてしまった。これでは物理を専攻したとは、あまり大手を振って言えない。

でも、はじめに実験の改善をしようと声をかけてくれたKさんよりはまだ私の方が少しはましであったろうか。彼は電気関係はあまり得意ではないということではじめからタッチされなかった。

Hさんに教えられて、そのころフリップ・フロップ(双安定回路)の回路を自作するくらいのことはしてみたが、それももう遠い昔のことでいまではまた、まったくわからない。