MonogamyとPolygamyとはあまり聞かない言葉かもしれない。訳をつけるとMonogamyとは一夫一婦(制)でPolygamyは一夫多妻である。近代的な西欧や日本の法律では一夫一婦制であり、一夫多妻ではない。もちろん事実として一夫一婦(制)に反する例は日本でも枚挙にいとまがないかもしれないが、少なくとも建前はそうである。
ところがイスラムの社会ではこれが必ずしも建前としても原則ではない。むしろ一夫多妻であることが普通である。
30数年前にフライブルクのゲーテインスティチュートで知り合いになったシャバーナ氏はエジプトの放射線化学者であったが、仲間の日本人がこのイスラム社会の一夫多妻制をからかったときにまじめにそれはちがうのだと言っていた。
イスラムの社会で女性が一人で生きていくことが難しかったという歴史的な状況からこのような一夫多妻制度ができたのだという。それはもしかしたら男性の勝手な理屈かもしれないが、それだけではなくイスラムの社会の理にあったものだろうと思った。
もっともシャバーナ氏夫人もまた放射線化学の研究者であって、彼が一夫多妻を実行しているわけではなかった。シャバーナ氏がドイツに来た後でエジプトから彼の子供さんたちも来て、親子仲良くカールスルーエに一家で住んでいた。
私たちが外国語を習う理由の一つに自分たちの考え方以外の自分たちとはちがった考え方を知るということがある。そして、自分の母語以外で外国人と話したり、意見を交換したりするようになると、自分の考えが良し悪しは別としても如何に限られたものであったかを悟るのである。