またまたドイツ語の話題で恐縮だが、先日のドイツ語のコースでK夫人が質問をされた。
それはFreiburgの新聞に出ていた写真で、お城に塔みたいな建物が下水の蓋かなんかに載っているものであった。それでこれをなんというか。
R氏が答えて曰く。これはBurgfried(またはBergfried)という。そうしたら、K夫人すかさず質問した。これはFriedhof(墓地)とどういう関係にあるのか。R氏はそれはちょっと複雑ですね、とホワイトボードを消しながら、答えた。その答えのあらましはつぎのようであった。
もともとFrieden(訳すると平和)はゲルマン民族のことばであるが、これに対するラテン語としてpasificare(これは多分動詞?)という語があった。
昔、ローマ人がヨーロッパの各地を支配したときにもちろんその各地の支配階級として君臨した。そのときに支配された現地の者たちには不満が鬱積するということがあったが、その現地民の要求のすべてを満たしたわけではないが、その一部の不満を和らげるという宥和政策をとった。
これがpasificareという語の意味である。ドイツ語にはそれに対応する語としてFriedenという語ができた。だからFriedenとは日本語でいう「平和」ではないという。ある意味で「戦争状態ではない、まあまあの状態」を指す。
支配されている者たちには不満や抑圧を感じないはずがない。だが、それを何とかなだめて支配するというので、ローマ人にとってはともかく支配される方にとっては完全な幸せではないはずだ。
もちろん亡くなった人々はもう支配者に反抗したりすることはできないので、その墓地をFriedhofというのだという。
そういえば、戦争が終わった後で、互いに講和条約を結ぶが、この講和には少なくとも純粋な平和というニューアンスがちょっと欠けているように思う。平和という語にも含意があったということだろうか。
ちなみにfriedという語を含む語にbefriedigen(満足させる)とかzufrieden(満足した)とかいう語がある。また、このbefriedigenにdをつけてbefriedigendとすれば、これは成績評価の一段階の日本でいう「良」にあたる。