昨年はマスコミで電子書籍が鳴り物入りでとり上げられた。それを知っていたものだから、ある出版社が電子書籍を出していると知ってメールを出して私の旧著を電子書籍として出版できそうかと尋ねてみた。
ところが意外にすでに出版している電子書籍も数冊売れただけで、ほとんど開店休業状態だという。この会社が電子書籍にしたものは出版社としてはある程度売れると思っていたものであろうし、1冊の値段もそんなに高いものではなかった。だが、売れないのだという。もちろん、村上春樹といった有名作家の小説ではない。だから仕方がないのであろうが、昨年新聞等で電子書籍が盛んにもてはやされたが、一般書にはそのブームはまだ及んでいないと考えられる。
もちろん、先進的な考えの持ち主は端末を買い、電子書籍を購入して本を置く場所の節約を図っているのだろうが、第一私などは書籍を読む端末を購入する費用さえ支出できない。だとするといずれ何十年もすれば、電子書籍は普及をしてくるとは思うが、今の日本の現状ではまだなんでも電子書籍で読むというほどにはなっていないと考えられる。
そのことを知ったので、資料を送ってもいまはまだ時期尚早との判断をしてこの出版社の方の手を煩わすまでもないと考えたので、しばらく考えて見ますとのメールを出した。
私の旧著は式がととても多い。だから、そういう式の多さを苦にしないで購入して読んで見ようかと思う人は1000人に一人も居たらいいほうであろう。これはこの日本の全人口の1000人に一人ならすごいベストセラーになるが、そうではなくて、理工系の大学教育を受けた方々で、かつそのような分野の仕事をしている人のうちの1000人に一人ならば、これは物の数にはならない。
出版社ならずともそんな本は売れないだろうということが察しがつく。例えば、ある分野の人30,000人の人の中で1000人に一人ならば、これは30人くらにしかならない。これではまるで商売にはならない。
なかなかマスコミでの話と現実とはまだまだ違うようである。