数年前から毎年インフルエンザの接種を受けている。これはサーズだったかのインフルエンザが流行ったときにいつも通っている、診療所の先生に接種しませんかと言われて、インフルエンザの接種をしてから毎年の恒例の行事になっている。
ひどいインフルエンザに罹ったのは私の記憶では2回ある。1回目は大学2年から3年になる春休みで、私の出た高校の卒業生が私のいた大学の受験に来たので、その世話をしたことで疲れてインフルエンザに罹った。
このときにはまるまる2週間寝床に臥せった。数日寝床に臥せっていると、体の節々が痛くなって寝て居れなくなるが、それでも起き上がることはできないので、仕方なく寝ていた。そのときに遠山啓著『無限と連続』(岩波新書)を読んだことは何回かこのブログでも書いたと思う。
他に何もできないのだから、それぐらいのことしかできなかった。
私が研究対象としている、武谷三男などはもっとすごくて学年の間の春休みにワイルの「空間、時間、物質」だか、「群論と量子力学」を読んだというから、私などとは桁が違う。もっとも彼はインフルエンザに罹ったわけではなかった。
1941年大阪から東京の理研(理化学研究所)に研究生として武谷が出て行ったときには、ワイルの「群論と量子力学」を読んで、群論を修得した人して畏れられていたらしい。その後の素粒子論グループの研究者の仲間の間では武谷はあまり計算の得意ではない人という評もあるが、若いときには結構几帳面に勉強をした人である。
晩年、武谷が養護施設のラヴィアンローズに入っていた頃に武谷を尋ねた、化学工学者の西村肇は枕頭にこのワイルの「群論と量子力学」がおいてあったと書いている。
それが武谷が長崎正幸と「量子力学の形成と論理」II, III(勁草書房)を書いていた頃なのか、それよりも後のことなのかはわからない。多分上記の書の発行後のことではなかろうかと思っている。
またまた、わき道にそれたが、もうインフルエンザに罹ったもう一度はすでにE大学に勤めており、子どもも生まれていた。
子どもは普段は家にはいない、父親が家にいるので、嬉しがって私の体の上に覆いかぶさってくる。ところが子どもが私の上に覆いかぶさられ、体の節々が飛び上がるくらい痛い。それで邪険に撥ね退けたことがあった。ときどき咳をするだけでおなかが痛いくらいだったから。
私は元来は子ども小さいときには一緒にじゃれあって遊ぶのが好きな方であった。だが、このときだけは体が痛くてどうしようもなかった。このときも2週間ほど学校を休んでしまった。その後、これほどひどいインフルエンザには罹ったことがない。
ただ、知人の研究者がインフルエンザの高熱がもとで57歳で亡くなったと知っているので、たかがインフルエンザだとは思っていない。