apaiser(アペゼー)とは人を落ち着かせるという意味らしい。先日NHKの教育放送でフランス語の講座を見ていたら、ある日本人をフランス人の女性が評価する言葉がこのapaiserであった。
この放送は再放送なので前にも見たのだが、すぐに忘れる方なので覚えてはいなかった。こんな言葉はかなりのフランス語を学んだ人でないと知らないのではないか。この中には大学の仏文科出身の人たちはもちろん入らない。そういう人は現在仏文学とかには関係がなくとも、私たち素人とは違ってある種の専門家といっていい。
ところが、この語は平和paix(ペー)という語と関係があるという。paixは女性名詞でla paixであるが、この語は広島の平和公園Le parc de paixなどいうときの平和だから、フランス語を学び始めた約50年前から知っている。
だが、そういうことを言われてはじめてやっとapaiserという語が頭に入るようになった。しかし、フランス語の語彙を私は2000語も知らないと思うので、なかなかこんな言葉を知らなくてもしかたがないだろう。朝倉季雄先生の「フランス語単語集」(白水社)だったかが2000語の収録だったと思う。
一番熱心に学んでいるドイツ語にしても、知っている語彙は3000語くらいであろうか。もっともそれであまり知的ではない日常会話なら、もちろんこれはブロークンということではあるが、それほど意思疎通に困ったことはない。たとえば、ドイツ国内を一人で旅をするくらいなら、なんてことはない。
それが少し込み入った話になると途端に口ごもってしまうのだから、人間の言いたいことというか表現したいことはその幅の広さがとても広い。
私は思考がやはりドイツ語風ではなくて、あくまで日本風なのである。だから、当然意思の疎通が十分ではなくなる。初級からはなれて中級または上級の会話のレベルに達することが如何に難しいかを示している。
それでも日夜研鑽には励んではいるが、考えずに素直にドイツ語に反応して受け答えができるにはまだまだ遠い。