智恵泉(ちえいず)はNHKの火曜日の夜のEテレの番組である。
先週から夏目漱石を取り上げている。彼を慕って訪問する若い人が多くて、漱石がそれらの人の個性を見抜いて適切な指導を書簡等でされたことによって多くの人材育成に大きな力があったという。
夏目漱石はもちろん彼の小説で有名であり、森鴎外と並んで明治の二大文豪である。文学者の塩田良平さんが昔「森鴎外の小説は年をとってくるとますます味わい深いものになってくる。一方漱石の小説は若い時に読んでも年をとって読んでも同様におもしろい」と言われていた。
これほど適切に二人の特徴を表した評を私は知らない。
しかし、湯川秀樹博士はあまり夏目漱石の小説がお好きでなかったように私には思われた。特に小説の「坊ちゃん」については「中央(東京)の地方蔑視だ」というご意見であった。
私などは松山に40年以上も住んでいるのだが、若いときに博士からそういうご意見を伺うまではそんなことを考えたこともなかった。私の感覚は鈍磨している。