山本義隆氏の『熱学思想の史的展開』(現代数学社)の22章を必要があって読んだ(注)。
それと同時並行的に高林武彦氏の『熱学史』(海鳴社)のそれに対応した章も読んでいる。
高林さんの『熱学史』の対応した章は読み終わってはいないのだが、つまらない些細な感想を述べておく。
明らかに山本氏の方はきちんと全部論文を読んで、それをフォローした記述であり、氏のきちんとした姿勢が伝わってくる。
だが、些細なことだが、言葉に難しいところがところどころある。山本さんが衒学的な人だとは思わないが、どうも私などは絶対使わないと思うような漢語の語が使ってある。これでもわかる人にはわかるのだろうが、やはりもっと平明な言葉で表現をしてもらいたい。
その点が高林さんの方にはない。高林さんは名文を書く人と知られていた。この熱学史がその名文で綴られているかどうかはわからないし、高林さんも難しい語を知らないわけではないのだろうが、少なくとも私が首をひねるような語句は使われていない。
山本さんは、もちろん高林さんの書も読んだ上で『熱学思想の史的展開』を書かれているので、表現が難しいということはよくわかるが、それでもやはり平明な言葉を使うべきだと思う。
大著のたった1章を読んでの感想であるから、「群盲象をなでる」の類の評であるだろう。だが、他の章を読む気を私にいつ起こるかの心配をさせた。
(注) 『熱学思想の史的展開』は筑摩書房の文庫として3巻にわけて今では出版されている。しかし、こちらの方は山本さんによって新しくの改訂されたということではあるが、まだ手に入れていない。
このアマゾンの書評を読むとこの書が優れた書であることは多分判断できると思う。だが、読み難い書でもあると思う。そこら辺が読者としては残念に思う。