『ふたりの微積分』(岩波書店)という本は2012年10月に発行された本である。「積分記号下のパラメータでの微分による積分」について書いてあるからということで購入したのだが、購入した時にチラッと読んだだけであまり読んだことがなかった。
ちょっと他の仕事があったので、探していたときに目に留まった。どんなことが書いてあるのかなと開けて拾い読みをした。
著者はスティーヴン・ストロガッツという応用数学者である。現在彼はコーネル大学の応用数学の教授である。
もっとも本の中にはちょっと辛いことも書いてある。
彼はそのときMITの準教授であったが、まだ業績が十分でないからテヌア(tenure)を与えられないとMITの委員会から手紙をもらったとある。その手紙にはもっと論文でヒットを飛ばして業績を挙げたら、再考してもいいとかあったとか。もっとも訳書には言葉としてテヌアという語は使われていない。
その後で彼はイサカのコーネル大学から正教授の認定をするから来ないかと誘いがかかり、現在はコーネル大学に勤めている。
MITが特にテヌアの資格をあたえるのに厳しい大学なのかどうかは知らない。その昔、MITの有名教授だったノバート・ウィナーは彼が勤め始めたころはMITは二流の大学であったと彼の自伝に書いてあったと思う。
それからもう100年近くもたったのだから、評価が違っているのは当然と言えるが、少なくともストロガッツたちに厳しかったことは事実であろう。
さて、冒頭に挙げた本だが、微積分の話題に限られているが、これは原題の"The Calculus of Friendship"を反映しているであろう。
高校で数学をストロガッツが教わったジョフリー先生との手紙のやり取りを題材にしてストロガッツが書いている。けっこうおもしろそうな数学的なテーマについて書かれているが、それだけではなく、ちょっと人間的な話もある。
大学在学中のころ兄から医者になったらいいのではないかと説得されかけたこと、だが、彼の母が数学と物理学好きならその道に進むと言ったらいいじゃないかと言ってくれたために、数学と物理との境界にあたるようなカオスとか非線形力学を専門とするようになったらしい。
ここのところが、おもしろいと感じた。物理学者のファインマンの本で有名になった「積分記号下でのパラメータ微分による積分」の話も出てくる。そして、ファインマンが高校時代に微積分を独学で学んだというウッズ(Woods)の微積分学の本のことも出てくる。
そして「積分記号下でのパラメータ微分による積分」がこのウッズの本の何ページから何ページに出ているかも参考文献のところに出てくる。
この本を購入したとき、インターネットでどれくらいの値段でこのウッズの本が買えるか調べたことがあるが、古本での値段が1万円くらいしたので購入することはあきらめたと,このブログで書いた覚えがある。
もし私がもっと若かったなら購入したかもしれないけれどとそのときにも書いた。
(注)その後、E大学の図書館でWoodsの本を借り出して、コピーをとってそのコピーをもっている。図書館でもあまり人が入らない書庫の箇所においてあり、図書館の人に頼んで借り出したのを覚えている。