Mさんの論文で知ったのは、クリフォードの遺稿の日本語訳『数理釈義』(博聞社、1889)が発行されていることである。
これにはベクトル、複素数、行列式、ハミルトンの四元数、グラースマンの広延論(Ausdehunglehre)の簡単な記述があるとのことだ。すぐにE大学のOPACを調べたら、幸いなことに蔵書のなかにあることがわかった。
もう年末なので、年明け早々に調べに行くことにしたい。これは菊池大麓訳である。たぶん、これがこれらの話題についての日本初の紹介であろうか。
クリフォードはいまではクリフォード代数の創始者として知られている。最近の日本語のテクストでは金谷健一さんの『幾何学と代数系』(森北出版)の第6章にクリフォード代数の紹介がある。
だから、現代的なクリフォード代数ではこの書のお世話になればいいが、歴史的には『数理釈義』が役に立つであろう。クリフォードは1845-1879だというから、34歳の若さで亡くなっている。だが、新しい代数系を発見した。もっともそれがどういうものか知っているわけではない。
(注)クリフォード代数の解説は日本語では最近まで特別な分野以外ではなかったと思うが、金谷健一さんの上記の本で一般的になってきたのかもしれない。