三角法の始まりは? どこにあるか。
武藤徹先生の高校数学読本の第2巻『図形のはなし』(日本評論社)の三角比のはじまりのところを読んでみたら、円の弦について述べた箇所があって、それがのちの三角関数の正弦表にあたるものだとの説明があった。
それはいいのだが、何故そのような円の弦の数表をつくった人がいたのかという目的が書かれてない。それで、この箇所を先週の土曜日に読んだのだが、欲求不満に陥った。
日曜にはそのことを忘れていたのだが、その本を自宅に持ち帰っていたことに昨夜の夜遅く気がついた。
いくら読んでみてもその目的は書かれていない。今日仕事場にきて、グレイゼルの『数学史』II(大竹出版)を読んだら、三角形の解法に役立つからと目的が書いてあった。
武藤先生は私の尊敬する数学者の一人であるが、長い教師生活でそういう疑問が生徒や学生から出ることを忘れてしまわれたのだろうか。本をつくるときには、客観的な読者がいて、ここがわからないという指摘がなければ、いい本は書けない。
武藤先生くらい偉い先生になると書かれたものに注文をつけられる、読者や昔の生徒さんはもうおられないのだろうか。もしそうなら、先生にとっても残念なことである。
一言付言すれば、上に挙げた本が全体として価値がないなどとたいそれたことを言っているのではない。現に私はそのシリーズを全冊購入してときどき参考にしているのだから。