これは前にも書いたが、英語とかフランス語で現れる相対的な程度についてである。
「君を愛する」というときに、フランス語ではJe t'aimeという。このときにJe t'aime bienとかのようにbienとかbeaucoupとか副詞をつけてはいけない。
日本語の感覚ではJe t'aime beaucoupとかいえば、「とても君を愛しているように思える」のだが、さにあらず。
本当にその君を愛しているのならば、余計な副詞をつけずにJe t'aimeといいきらなければならない。
Je t'aime bienなら、「君のことどちらかといえば、結構好きだな」くらいになる。すなわち、愛し方が相対的に小さくなってしまうという。
こういうことを教えてくれたのは小田実のエッセイだったが、彼の経験では名うての女たらしは絶対にI love youと言って、それ以外にvery muchなどという副詞はつけないと書いていた。小田実はそれが最高の口説き文句なのだと書いていたと思う。
そんなことがあるのかと不思議だったが、NHKのラジオのフランス語講座を何年も聴取しているとこのようなことを数度聞いた。どうしてそうなるのかは知らない。そういう言語なのだというしかない。
ドイツ語でも同じことがあるだろうが、残念ながらそういう話はドイツ語の関係の講座とかその他の話では聞いたことがない。
(2021.5.22付記) 黙って書いたが、フランス語では直接目的語の代名詞とか間接目的語の代名詞は動詞の前におかれる。これは英語とかドイツ語にはない規則である。
Je t'aimeを英語だったら、I love youであり、I you loveとは言わない。ところがフランス語とかイタリア語とか、たぶんスペイン語も直接目的語や間接目的語の代名詞は動詞の前に来る。
それから、フランス語では形容詞は名詞の後ろにおくのが原則である。名詞の前におく形容詞もあるが、これは特定の少数の形容詞であり、むしろ例外である。小さいpetitとか、大きいgrandとか、きれいなjoliとか、美しいbeauとか限らた少数の形容詞しか名詞の前にこない。