偏微分の順序交換したものが等しいこと(すなわちf_{xy}=f_{yx})と平均値の定理とが関係している。
「平均値の定理」というのがあるというのは知っていたが、それが偏微分の順序の交換と関係があるとは知らなかった。
f_{xy}=f_{yx}が成り立つはもちろんf_{xy}とf_{yx}が存在して、かつこれらが連続である場合である。だが、詳しく知るといろいろ定理がある。
その中で知られているのがSchwarzの定理とYoungの定理である。これらはもっと一般的に定理として知られているものの条件を緩めたものである。
いわゆる全微分可能性を知っているならば、ある点で多変数関数が1回微分f_[x}, f_{y}が存在して、全微分可能ならば、そのf_{xy}とf_{yx}が存在して、かつf_{xy}=f_{yx}が成り立つという定理である。これがYoungの定理である。
要するに、この場合には全微分可能についての精確な認識がいる。それがしっかりしてさえいれば、定理の条件があまり面倒な記述ではないので簡潔である。
一松信『解析学序説』でも全微分可能というときの全という形容詞はかっこの中に入っていて微分可能とされている。これは多変数関数の場合の微分可能とはいわゆる全微分可能ということである。
普通の偏微分可能性はx軸に沿ってとかy軸に沿っての微分可能性であり、他の方向からの微分は可能でないかもしれないのである。
昔、オイラーEulerは無条件にf_{xy}=f_{yx}が成り立つと思っていた。ところがそうでないという反例を与えた最初の人がSchwarzであったらしい。
それでどういう条件のときにf_{xy}=f_{yx}が成り立つかを調べた。これがいまSchwarzの定理として知られている。