物理と数学:老人のつぶやき

物理とか数学とかに関した、気ままな話題とか日常の生活で思ったことや感じたこと、自分がおもしろく思ったことを綴る。

期待値

2024-07-05 09:21:44 | 数学
偏微分の順序の入れ替えに最近は関心があるのだが、その関心事に心が向いているのに妻が最近麻雀を始めたので確率云々と言い始めた。国士無双がどうとか。

それはともかくとして、以前に四国の数学教育協議会の研究会で高知の高校の数学のK先生が授業で宝くじの期待値を計算して見せて

「宝くじなんぞ買うものではない」

と言ったそうだ。そしたら、生徒からは「先生は夢がないねえ」といわれたとか。

宝くじがどういう場合に発行されるのかは知らないのだが、なにか宝くじを発行する団体が資金を必要としている事業を行う資金を調達するために行うものだろう。

そうだとすれば、その団体にとって宝くじを発行することによって、必ず資金調達が保証されており、かつ宝くじを買う人にも何らかの夢を与えるものでなくてはならない。

期待値は実は宝くじを買う人のためにあるのではなく、宝くじを発行する団体のために存在するのだというのが私の現在の見解である(注)。

件の数学の先生はそこまでは言及されていなかったが。

(注)まさに夢を買うのであるが、期待値を計算すると賞金を得る期待値があまりに小さいので、数学の先生は「宝くじなど買うものではない」といったのだろう。

賞金が当たるからといって、もしか自分の全財産を投入して宝くじを買い占めて見ても、確かに賞金はもらえるかもしれないが、それ以上のお金をつぎ込むことになるので大損するのは宝くじを買い占めた当人である。

このことから数学の先生の言うとおりであることがわかる。いくらか少額の宝くじの購入で夢を買うことは反対しないが。


偏微分の順序交換と平均値の定理

2024-07-04 11:47:17 | 数学
偏微分の順序交換したものが等しいこと(すなわちf_{xy}=f_{yx})と平均値の定理とが関係している。

「平均値の定理」というのがあるというのは知っていたが、それが偏微分の順序の交換と関係があるとは知らなかった。

f_{xy}=f_{yx}が成り立つはもちろんf_{xy}とf_{yx}が存在して、かつこれらが連続である場合である。だが、詳しく知るといろいろ定理がある。

その中で知られているのがSchwarzの定理とYoungの定理である。これらはもっと一般的に定理として知られているものの条件を緩めたものである。

いわゆる全微分可能性を知っているならば、ある点で多変数関数が1回微分f_[x}, f_{y}が存在して、全微分可能ならば、そのf_{xy}とf_{yx}が存在して、かつf_{xy}=f_{yx}が成り立つという定理である。これがYoungの定理である。

要するに、この場合には全微分可能についての精確な認識がいる。それがしっかりしてさえいれば、定理の条件があまり面倒な記述ではないので簡潔である。

一松信『解析学序説』でも全微分可能というときの全という形容詞はかっこの中に入っていて微分可能とされている。これは多変数関数の場合の微分可能とはいわゆる全微分可能ということである。

普通の偏微分可能性はx軸に沿ってとかy軸に沿っての微分可能性であり、他の方向からの微分は可能でないかもしれないのである。

昔、オイラーEulerは無条件にf_{xy}=f_{yx}が成り立つと思っていた。ところがそうでないという反例を与えた最初の人がSchwarzであったらしい。

それでどういう条件のときにf_{xy}=f_{yx}が成り立つかを調べた。これがいまSchwarzの定理として知られている。
 

全微分の重要性

2024-07-03 11:54:24 | 数学
2変数関数だとか3変数関数を扱うときには必ず偏導関数が必要になる。

それで普通の1変数の微分の一般化は偏微分だと思ってしまうが、これがまちがいだ。

そうではないと教えてくれる本が松田・宮本『微分と積分』(講談社)である。どの本でもそのことをはっきりとは書いてくれていないのだが、宮本先生がその点を詳しく考察してくれている。

だが、あまりこのことが知られていないのだと思う。これは残念なことである。ついでに言えば、大学の基礎数学として微分と積分と線形代数ということになって久しいが、これらの教育の背景に正比例という思想があることを知ってほしい。

最近の線形代数のテクストではそのことを書いたテクストが多くなっているのでその点では大進歩だと思っている。しかし、まだ微分と積分に関してはそこまで行っていないのではないか。

さらに、森ダイアグラムに基づいた大学の基礎数学の本が主流を占めるようになるのはいつの日か(注)。

倉田令二朗とか、森毅とかまたは瀬山士郎といった数学者の書かれた、数学のテクストがこの流れに沿ったものであるのだが、まだまだ十分ではないと考えている。

(注) 
森ダイアグラムは数学者にはまだよくは知られていないと思う。森ダイアグラムは別に森毅さんだけの発明ではないそうだが、それでもそう呼ばれている。これは森毅『ベクトル解析』(日本評論社)p.6とか倉田令二朗『数学と物理学の交流』(森北出版)p.16に説明がある。

松田・宮本『微分と積分』よりも以前に全微分可能が多変数関数の微分可能だとの見解は笠原『微分積分学』(サイエンス社)に意識して書かれていることを知った。このことをさきほど笠原の本を参照して知った。

「今晩は」をいう時刻

2024-07-02 12:53:22 | 本と雑誌
日本だったら、「今晩は」とあいさつするのは日が暮れていたり、夜のとばりが下りていたりする時刻である。

午後の3時とか4時に今晩はとかは言わない。ところがフランスとかイタリアではそれより早い時刻から「今晩は」にあたるbon soirとかbuona seraとかを使う。

私の体験ではイタリアには1976年3月だったかにPaviaにしか行ったことがないが、そこでイタリア人の友人Rollaがまだ午後4時頃だったと思うのだが、お店に入っていくときにbuona seraと言っていたのを聞いた。

実は昨日エレベーターで一緒になった人にうっかり今晩はと言ってしまい、言い訳にイタリアではと言ってしまった。

確かに午後4時は過ぎていたが、日本ならまだ「今日は」とあいさつする時刻であった。

全微分と偏微分

2024-07-01 13:46:16 | 数学
偏微分の方はだれでもわかるのだが、全微分のことはわからないで終わる。

いやこれは他人のことではなくて、私のことだ。もちろん全微分の重要性をきちんとわかる方が優秀な方ではほとんどだろう。しかし、私などはこれがなかなかわからない。

昨日、Schwarzの定理とYoung定理のことを質問されたが、あまりよく知らなかった。これは2階の偏微分の順序に関係したことである。2変数関数の偏微分2階の偏微分がF_{xy}とF_{yx}と順序がいれかわっても等しいとき、すなわち、

 F_{xy}=F_{yx}

のときの条件はなにかということである。

この機会にこのことをきちんと理解しておきたい。