【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

野田首相の事務秘書官に財務省主計局次長と警察庁元岩手本部長 政務は松下政経塾2期生

2011年09月02日 00時10分15秒 | 第178臨時国会(2011年9月)野田内閣

 報道によると、野田佳彦首相=国会指名済み、天皇陛下の任命後に就任=の秘書官7人が内定したそうです。

 筆頭秘書官である政務秘書官には、松下政経塾2期生で、野田議員の政策担当秘書や、蓮舫大臣の政務秘書官も務めた、河井淳一さん。政経塾2期生ということですから、民主党と自民党双方に広がる議員ネットワークを活用し、総理とのアポ取りなどでも手腕を発揮できるのではないでしょうか。

 注目は、財務省が主計局次長(3人いる)の一人、太田充さん(昭和58年、1983年入省)を送り出しています。主計局次長は3人いますが、局長および局総務課長、主計官と比べると、時間的などに余裕があり、機動的に動けるようで、財務大臣の総理昇格にともない、サッと入ります。やはり歳出の徹底した削減のうえでの消費税増税などで手腕をふるいそうです。

 警察庁から、山下史雄・官房総務課長ということで、こちらも太田さんと同じ、昭和58年入庁。岩手県警本部長の経験もあるので、復興の方での感覚もあるのでしょうか。

 そんななか、経産省からは昭和59年入省の寺沢達也さん、厚労省からは同じく59年入省の吉田学さんということで、財務・警察両省庁よりも年次が下の人を派遣してくるというのは、やはり、権力欲がないというか、おとなしい省庁なのかなあと感じます。

 ですから、財務省系の太田秘書官と旧内務省系の山下秘書官で、なにか火花が散らなければいいのですか。この辺の総理秘書官室の緊張感というのは、私はあまり好きではありませんが、秘書官当人たちにとっては何でもないようです。むしろ、野田首相をはじめとする、民主党議員から官邸入りするメンバーが気後れしなければいいのですが、たぶん気後れするでしょう。

 外務省からは寺沢達也さんで、ちょっと年次は分かりません。菅直人首相・北澤俊美防衛大臣時代に、念願の防衛省出身の首相事務秘書官が誕生しました。これまでは警察庁出身の秘書官(防衛庁出向経験ありの場合も)が兼ねるという、霞が関の常識・世界の非常識で、総理の近くに防衛省出身者がいませんでしたが、この前田哲・秘書官は続投と言うことで、官邸での足場を固めたいようです。

 麻生内閣のときには総務省出身秘書官がいましたが、今はいません。ただし瀧野欣也・官房副長官(事務)は、元総務事務次官です。

 なるべく出身省でなく、総理に仕えて欲しいと願います。

 このほか、初入閣の民主党議員事務所には、すさまじい勢いで各府省の役人や警視庁(護衛官)などがやってきます。摩訶不思議なことに、総理事務秘書官から「総理のご下命でお電話しました。官邸にお越し下さい」と言われ、国会議員が会館を出た直後に、「私、このたび、大臣の事務秘書官になりました○○です」という人物がやってきます。このほか、数十人の官僚や警視庁護衛官らがやってきて、廊下にならびます。

 このときに、秘書が「センセイが入閣した!」という高揚感と極度の忙しさのなか、次々やってくる役所の人の質問にドンドン答えると、1年後にセンセイは、大臣として何もできなかったといわれながら、事務所にさびしく帰ってきます。

 これは、もう民主党としては組閣や内閣改造は4回経験していますから、その経験のある秘書や先輩に、体験談を聞いておいた方が懸命だと思います。何事も初めが肝腎。機先を制すのはムリでも、十分に注意してください。

 総理や、大臣の事務秘書官の制度の根本的な制度改革を求めます。

【追記 2011年9月3日 午前1時】

 驚きべきことに、内閣官房副長官(事務)は、総務省(自治省)出身の瀧野欣也さんにかえて、通常国会中国交事務次官だった竹歳誠さん(昭和47年建設省・国交省入省)が就任しました。厚生省(厚労省)・警察庁・自治省(総務省)の指定席で、旧財務官僚を起用した安倍内閣は参院選に負けて、福田内閣でその前任の二橋正弘さんを1年ぶりに復活させたことがあります。二橋さんは自治省(総務省)で、旧内務官僚の指定席であることを強調する狙いがあったと思います。今回、建設省出身者が起用されたのは、国交省が4省庁(建設省、運輸省、国土庁、北海道開発庁)の合併によってできた官庁なので、天下りポストが渋滞しているからではないか、と勘ぐってしまいます。それも「大震災があったから国交省」というと、いかにも納得いくような話ですが、それは本質とは遠い話。諸課題を考えれば、自治体のことが分かる自治省出身者の方がいいでしょう。要は、組閣の前から「野田首相は2日、官房副長官に竹歳氏の起用を決めた」という断定調の記事がどこが発信源となって出ているかということです。党内バランスに配慮した組閣に手間取っていた首相に、事務の官房副長官を建設省に切り替えるという判断を自分でする余裕があるとは、推測では考えられません。残念なことです。新聞も記事にしないで欲しいと願います。
【追記終わり】

首相秘書官:河井淳一氏ら7人が内定 - 毎日jp(毎日新聞)

 野田佳彦新首相は1日、秘書官7人を内定した。政務担当には野田氏と同じ松下政経塾出身で、財務相当時に政務秘書官を務めた河井淳一氏を起用。事務秘書官は6人で、菅内閣と同数を維持する。
 
 外務省から金杉憲治アジア大洋州局兼南部アジア部参事官、財務省から太田充主計局次長、厚生労働省から吉田学保険局総務課長、経済産業省から寺沢達也通商政策局通商機構部長、警察庁から山下史雄総務課長を起用。防衛省出身の前田哲氏は再任する。


第178臨時国会は9月12日(月)召集がギリギリか? 新内閣、波高い船出か

2011年08月26日 05時28分16秒 | 第178臨時国会(2011年9月)野田内閣

 新内閣がのぞむ、「第178臨時会、第178回秋の臨時国会」の召集をめぐって、与野党のかけひきが始まりました。

 報道によると、国会対策委員長の自民党・逢沢一郎さん、公明党・漆原良夫さんは民主党の安住淳さんに召集案をだしたようです。

 「2011年平成23年9月9日(金)召集、新総理の所信表明演説→12(月)~14日(水)に各党代表質問、15(木)に衆院予算委、16(金)に参院予算委」というスケジュール案のようです。そして、外交日程としては、国連総会(第66期)のハイレベル会合が9月20日(火)に予定されており、これに行くということになりそうです。

 しかし、この自公案では、新政権の船出は波が高く、座礁する可能性が高いと考えられます。

 まず、首班指名から、組閣、認証式を経てから、ある程度の予習時間があった方が、答弁ミスは少なくなります。とくに18人の閣僚で内閣、70人で政務三役という組織を編む以上は、どうしても、その分野をもっとも得意とするわけではない議員が担当になることはやむを得ません。また、早く召集すればするほど、野党やマスコミがスキャンダル攻撃をする余地が高まります。また、平成23年度第3次補正予算(案)はどうやら10月に組み上がる気配ですので、早期に召集して、野党が「早く補正を出せ」「出せ」と言い続ければ、与党の支持率はカンタンにさがるでしょう。とはいえ、「所信表明を早くやれ」「外国で演説する前に、国会で代表質問を受けろ」という要望は、一定以上の世論の後押しを受けることは間違いないと考えられます。

 このような点を勘案すると、民主党側からみれば、「9月12日(月)召集・所信表明演説」「14(水)~16(金)に各党代表質問」というのが最善のように思えます。このあと、3次補正予算(案)の提出まで時間がかかりそうならば、いったん臨時国会を閉じるという案もあると考えます。

 なお、私としては、現時点では、第178回国会の傍聴を続けるかどうか、心に迷いを持っています。少し、民主党とは距離を置いた方がいいかなあとも、思い始めてきました。心が折れかけているというよりも、心の根っこが若干腐りかけてきています。ストレイシープ、ストレイシープ・・・女心と秋の空。 


自公「臨時国会、早期召集を」 新首相に対決姿勢  :日本経済新聞

 野党は25日、31日の今国会閉幕後、民主党代表選に勝利した新首相のもとで開かれる次の臨時国会について、9月上旬も念頭に早期召集するよう与党側に要求した。政権運営の方向性をただし、政権との距離を探るとともに新首相の出ばなをくじく狙い。自民、公明両党は東日本大震災からの復旧・復興支援には協力する一方、早くも国会論戦での対決姿勢をちらつかせてけん制している。

 民主党は29日に新代表を選出、30日に国会で首相指名選挙を実施する予定だ。自公両党は前原誠司前外相、野田佳彦財務相が提唱した大連立には原則応じない構え。民主党新体制との政策協議を経て、閣外から復旧・復興などで協力するのが基本戦略だ。

 25日の与野党国会対策委員長会談では、自民党の逢沢一郎氏が次の臨時国会に触れて「新首相は少なくとも(来月下旬の)国連総会への出席前に臨時国会を開き、所信表明などを済ませるべきだ」と主張。具体的には来月9日にも召集して首相の所信表明演説、12~14日に衆参代表質問、15~16日の衆参予算委員会を想定する。民主党の安住淳氏は「新執行部が責任を持ってお伝えする」と述べるにとどめた。

 自公両党が早期召集にこだわるのは、両党が求める民主党マニフェスト(政権公約)の主要政策見直しなど新首相の基本姿勢を国会審議で明確にさせる狙いがある。本格的な復興策を盛る今年度第3次補正予算案などで協力路線を取れるかどうかを探るためだ。

 自民党には新首相にも対決姿勢で臨むべきだとの声が多い。最大派閥、町村派会長の町村信孝元官房長官は25日の同派総会で「誰が新代表になっても民主党の基本的な弱点は変わっておらず、堂々と対峙していく姿勢が必要だ」と強調。参院幹部は前原氏が新首相に就任した場合、外国人献金問題を念頭に「冒頭から厳しく追及する」と明言した。

 自民党は3次補正成立後に衆院解散・総選挙に追い込んで政権を奪取する戦略を描く。古賀派会長の古賀誠元幹事長は25日の同派総会で「谷垣禎一総裁も是々非々などと言わず、3次補正が成立すれば即、衆院解散あるのみだ」と指摘。谷垣氏も記者会見で「政治の体制を立て直すのが現実の課題。野党として十分意識して行動しないといけない」と応じた。

 ただ、衆院選挙制度の見直し論議なども抱えており、年内解散には公明党が慎重。自民党内も「支持率の高い政権が誕生して臨時国会冒頭解散でもされたらかなわない」と懸念する声もくすぶっており、明確な政権戦略は描けていない。


「新進党」の枠組みを活用して国難と衆参ねじれを突破せよ!

2011年08月16日 16時13分33秒 | 第178臨時国会(2011年9月)野田内閣


 菅直人総理(民主党代表)は2011年8月12日(金)の閣僚懇談会でちかく総辞職する意向を示し、民主党代表選が8月28日(日)ないしは閉会後の9月に行われる見通しとなりました。また総理がかわるのは残念です。歴史の変革期には、このようなことは多いです。例えばインドネシアのスハルト大統領・韓国の朴正煕政権終了後、短期間のリーダーが続きましたが、今は中期的な任期の安定したリーダーが政治をしています。日本も次の首相で、しっかりと「ルール・オブ・ザ・ゲーム」(公選法、国会法、内閣法、国家行政組織法)をつくって、安定した政権交代可能な政治をつくっていきましょう。

 次期民主党代表では、現時点で財務大臣の野田佳彦さん(当選5回、54歳)農相の鹿野道彦さん(当選11回、69歳)、元民主党国会対策委員長の樽床伸二さん(当選5回、52歳)、元環境大臣の小沢鋭仁さん(当選6回、57歳前国交大臣の馬淵澄夫さん(当選3回、51歳)が有力となっています。民主党代表選は”1人区””単記式”の投票ですが、私たちの衆院選や首長選と違い、1回目で過半数を満たす候補者がいない場合は決選投票があります。ですから、リードしている野田さんが盤石とはいえず、まだまだ分かりません。できれば最後は話し合いによる1本化がいいのですが、「出来レース」と呼ばれかねず、難しいところです。

 昨年9月の代表選で、菅直人陣営の推薦人25人中8人なのに対して、小沢一郎陣営では推薦人25人中1人に過ぎないということを指摘しました。新進党員だった人の数のことです。

 勘違いが多いのは、小沢一郎氏は1994年の新進党結党時に幹事長、1995年の参院選勝利時は幹事長で、第2回党首選で党首になり、1996年の第41回衆院選敗北後も党首に居座り、1997年に一方的に解党宣言しました。この間、つねに幹事長か党首のいずれかにいたので、”新進党同窓会”は“小沢氏を囲む会”であるという勘違いが多くなりますが、実際には”新進党同窓会”とは”小沢一郎被害者の会”です。だから小沢候補と対抗した菅総理に8人もの推薦人がついたのですが、「昔のこと」なので誰もそれを話さないので、私がこうやってブログで指摘しないとなかなか見えてこないのです。岡田克也さんは1期生議員のケータイに電話たさい、1期生が「私は政策でこれから考えて決めます」と答えたのに対し、岡田さんは「いや、違うんだ。今度の代表選は、脱小沢体制を構築する選挙なんだ」として菅候補に投票するよう説得しました。

 そして、この1年間。小沢一郎氏は選挙の公正さに疑義を唱えていないのに、民主党政権を妨害してきました。自民党や公明党が求める「政治とカネ」の説明責任(アカウンタビリティ)では、衆議院政治倫理審査会ではなくニコニコ動画で“説明”するという国会軽視を続けました。ことし1月31日、検察審査会によ刑事起訴されたときに、常任幹事会が「無罪確定まで党員資格停止で裁判にできるだけ専念してもらう」温情判決を出したのに、かえって恨みを持ったようで、2月17日には「16人による会派離脱届け」騒動で「3分の2」構想を砕きました。このため、特例公債法案をめぐる与野党修正協議となり、統一選をはさんだ長期の協議の結果については、三宅雪子氏ら小沢グループが「マニフェスト(一部)撤回で政権交代の魂を売った」と因縁をつけるチンピラ風情。

 それはさておき、有力候補者の一人が、雑誌で「日米同盟は公共財であり、最大の資産だ」という趣旨を書いており、賛同します。やはりわが国は、経常収支黒字国でもありますから、過去に築いた資産を取り崩し、あるいはミドルリスクで投資しながら、食べ長らえていくべきでしょう。そうなると、政治による、利益の最適な配分がますます必要になってきます。

 私は「新進党」という公共財を使えばいいと思います。「新進党」は沈没船ではありません。廃止された青函連絡船「羊蹄丸」のように、引退船です。それが昨年9月の25人中8人の結束につながっています。人間ですから、「小沢被害者の会」という「憎しみ」のつながりもありますが、当選している政治家ですから「新進党懐かしいなあ」「小沢憎し」と表では言いません。だから見えにくいのですが、ただ、実はもっとも熱い政治家である、岡田さんの小沢の息の根を止めるための鬼のようなパワーは、この憎しみから生まれているのです。人間ですから。

 ◇

 3党合意で活躍した自民党政調会長の石破茂さんは、小沢氏が起訴された翌日(2011年2月1日)の衆・予算委員会でこうかたりました。「小沢さんの問題。総理、この話にそろそろ切りをつけませんか。総理は在職三十年、私も二十五年になります。その多くを、小沢さんなのか小沢さんではないのかということに費やしてきた」「ずっと、この長い間、本来我々は議論をすることがもっとほかにあったはずだ。そういう議論に我々は時間を費やすことではなくて、それは新進党であり、あるいは今の民主党もそうかもしれない、小沢さんなのか小沢さんじゃないのか、そのことに物すごく時間を費やしてきた。このことの国政の停滞、これに切りをつけないと」「私たちは、国会議員をやっていて本当にむなしくなったことがある。きょう一日きょう一日、また小沢、小沢じゃない、私はこういうことをやるために国会議員になったんじゃない、そういう思いを持ちました」と話しました。

 「またかよ!」とうんざりする代表選ですが、この代表選を小沢氏の影響力にくさびをうちこみ、怨念を越えた新しい政治のスタートにしなければいけません。民主党執行部が「大連立」と言っているのは、それにより、小沢氏の影響力を相対的に低下させるのがねらいです。今国会だけでも、会派離脱騒ぎ、不信任騒ぎと散々に振り回されてきました。もうやめましょう。

 次に、4月29日(金)の衆院財務金融委員会でこんなシーンがありました。登場人物は野田佳彦さんと公明党の竹内譲さん。この2人は、政治改革総選挙の1993年夏の第40回衆院選で野田さんは日本新党公認、竹内さんは公明党公認で初当選。そして、1回生として細川・羽田内閣を経験した後、新進党結党に参画し、第41回総選挙に出馬したモノの、小沢一郎党首の「消費税5%絶対反対」という突然の抵抗野党転向で支持を失い、事実上敗北(議席は微増)した選挙で落選してしまった仲なのです。

 「公明党の竹内譲でございます。野田大臣以下政府の皆さん、昼食もとらずに御苦労さまでございます。大変でございますが、ともどもに、しっかりとした議論をしてまいりたいというふうに思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。(略)」


[画像]公明党の竹内譲さん、2011年3月の画像、衆議院インターネット審議中継から。

「そこで、今度は歳入面からの質問をさせていただきたいんです」「(平成23年度第1次補正予算の一般会計への)外為特会からの繰り入れが2308億5896万1千円。ほかの繰り入れは何億なんですよね、(略)億円とか(略)億円とか(略)億円とか。ところが、この外為特会からの繰り入れは一千円までついている。非常に奇妙な感じがするんですよね。この数字の根拠を教えてください」。

 この質疑に対して、野田財務大臣は次のように答弁しました。「いわゆる外貨建てなので、そういう形になったというふうに理解をしています」。

 野田さんは今国会で、予算と予算関連法案の分離により、参院予算委員会の昼休みに衆院財金委員会で答弁するとったタイヘンな状態のなか、よく答弁しました。巷間言われるとおり、理解力に優れているし、体力があります。野田財務相の答弁は、今国会で3つぐらい気になるところがありましたので、まとめようかと予定していますが、はぐらかしも少ない、安定した答弁ぶりでした。ただ、この竹内さんへの答弁からすると、「外貨建て」のものを1次補正の税外収入に転用していたことになりますから、、これは外為特会の元本部分と取り崩したことになり、劇画「ゴルゴ13」で描かれるような事態です。

 本来ならば、野党議員はここで攻め込むはずだし、竹内さんはそのテクニックもありますが、ここは「新進党同窓会」として武士の情けをみせました。

 竹内さんは「いや、どうもそれは違うと思うんですよ。後ろの財務省、ちょっとフォローして」と大臣を助けます。なお、議事録では前記のようになっていますが、私は竹内さんは「それちょっと違うと思いますよ~~。後ろの人(財務相事務秘書官)に聞いた方がいいですよ~~」と言ったように記憶しています。議事録は後世の歴史家にも分かりやすいようにこうなっていて、竹内さんは同委員会の理事ですから自分で決裁しているでしょうから、これでいいでしょう。

 野田さんは、「年金の二分の一に持っていくところの、その額の最後の足らざるところの調整という形で細かい数字になったということでございます」と答弁し、竹内さんは「そうですよね。(略)そうすると大体そのぐらいの数字になってくるということですよね」と和気藹々(わきあいあい)と実りある審議となりました。

 ◇

 2月16日(水)の衆院予算委員会では、理事で公明党の富田茂之さんが質問に立ちました。富田さんは、第40回衆院選で初当選。新進党結党に参画し、第41回衆院選では小沢党首にブロック上位で登載され、再選しました。これは、創価学会や連合の支持を受ける候補者を名簿上位にして、組織票を掘り起こす作戦でした。ところが、小選挙区立候補者は名簿に重複させないという小沢氏の奇行が大混乱を招きました。なぜ奇行とまで私が言うかというと、この重複できるという改正公選法は、小沢氏らの主導でできた法律であって、自分でそういうルールにしておいて、「小選挙区で勝ってこそ、政治家だ」と、それはたしかにもっともな、筋が通った話しなのですが、法律と筋論の境界線があいまいで、命令を受ける方としては訳が分かりませんでした。そうやって新進党が解党し、公明党公認候補として第42回衆院選にのぞんだ富田さんは、組織票では当選ラインに足りず、落選してしまいました。同じ公明党でもいろいろなパターンがあります。現在は5期生です。

 で、富田さんは、昨年9月の尖閣諸島問題のさざ波が残っていた1月に中国出張し、日中友好協会会長の加藤紘一さん(自民党)らと、国務委員(外相より格上)の戴秉国さんと会ったときのエピソードを披露しました。

 「公明党の富田茂之でございます。実は、ことしの1月11日から13日まで、日中友好協会会長を務める自由民主党の加藤紘一衆議院議員に同行させていただきまして、この尖閣問題で前面に出てこられました中国の戴秉国国務委員や元駐日大使の武大偉朝鮮半島事務特別代表と会談をさせていただきました」「私にも質問の機会をいただきましたので私の方から戴秉国さんに、『実は以前に戴秉国さんにお会いしたことがある』、1997年と1998年の2回、当時まだ戴秉国さんは中国共産党対外連絡部の部長さんでしたけれども、今、民主党の幹事長をされている岡田克也先生とか、中川正春さんも御一緒だったんですが、当時、戴秉国さんとお会いしていろいろな話をさせていただいたことを御紹介しましたら、にこにこされて、『おお、新進党!!』と言われました。新進党で行きましたので、当時のことを思い出されたんだと思うんですが、よく覚えていらっしゃるなということでした」。

 「新進党」というキーワード一つで和気藹々となった戴秉国国務委員は富田さんとけっこうディープな話になります。まず、分かりやすく、下のマンガにまとめました。


                                               (作成 宮崎信行)

 マンガでお分かりいただけたかと思いますが、富田さんの2月16日の質問を引用します。

 「私は戴秉国さんに、問題が起きたときに岡田さんと直接やり合ったらよかったじゃないですかという話をしました。なかなか民主党の皆さん、中国とのパイプがないということで苦悩されていたと思うんですが、そういう話をしましたら、戴秉国さんも、そのとおりだ、直接話がしたかった、いろいろあってできなかったけれども、これからは一対一の直接の対話が大事だと思うと。会談が終わった後、わざわざ私のところへ歩み寄ってこられて、富田さん、岡田さんにちゃんとこの話を伝えてくれと言われたんですね。本当に大事なことだと思います、いろいろなパイプがありますから。私の方からは、さまざまなレベルでの対話のルート、例えば一緒に行っていただいた加藤紘一先生とか、政界を引退されましたけれども自民党の元幹事長だった野中広務先生とか、日中間で本当にいろいろなパイプをつくってこられた方々を、与野党関係なしに、そういった信頼関係を築いてきた方たちのルートを利用したらどうだろうかという話をしましたら、戴秉国さんも、そのとおりだと思うというふうに言われていました。それで、岡田幹事長にもその旨をお伝えしました」とのことでした。

 このように、小沢一郎氏による解党宣言で、新進党員は、民自公にちらばってしまいましたが、今こそこの人脈を公共財として活用すべきでしょう。とくに民主党には地方議員や推薦首長が少ないという、震災復興では構造的な問題があります。こういったところを、公明党や、あるいは自民党に補って欲しい。これは国益のためです。また民主党の地方議員不足は構造的な問題ですから、責め立てても何のメリットもありません。

 公明党代表の山口那津男さんは15日、記者団のぶら下がりで、大連立構想について、「まったく否定するものではないが、具体的に意思決定する段階ではない」と語ったそうです。これは、公明党という組織のしっかりした政党ですから、代表の一存ではなく、地方議員や、支持者・とくに創価学会員の意見を聞かないと決められないということを言っているのだ、と私は理解します。

 衆参ねじれでは、民主党・国民新党と公明党の3党では、参議院で128議席。参院小沢グループが8人造反しただけで、またしても国政は混乱します。輿石東会長がしっかりと参院民主党をおさえてくれていますが、やはり、自民党も含めて大連立を申し出ないといけないのはこの現況があります。ただ、立ち止まって考えるよりも、走りながら考えるしか方策はありません。

 わずか3年間だけ存在した新進党ですが、光り輝いていました。新進党員からの内閣総理大臣はいまだに一人も出ていません。菅直人首相で森喜朗首相退陣後に5代、親が町長の森さんも世襲とすれば、村山首相退陣以来8代連続で家業が政治の世襲議員の総理大臣の負の連鎖は断ち切ることができました。非世襲→非世襲というバトンタッチとなると、平成元年(1989年)の竹下→宇野→海部首相以来ということになります。日本は民主制の国です。

 そして、念のため、言っておきますが、新進党員といっても、今国会で活躍しているメンバーは「小沢被害者の会」として心でつながっていますから、この公共財を利用して、小沢首相が誕生することは絶対にありません。夕刊紙などで、「小沢氏が公明党に接近」などと出ますが、それは、公明党・創価学会で第一線を退いた人と会って、お互いの存在感をしめそうとしているだけです。

 怨念の政治を乗り越えるためには、小沢氏を乗り越えることが大事です。剛腕は「私たち国民の投票」だけで十分です。

 政権交代ある政治を日本に根付かせるため、ルール作りが肝腎です。衆院の任期中は総理がかわらないようにする(ただしリコールはできる)ことが大事です。まさに訓政期であり、システムをしっかりつくっていきましょう。

 そのためには・・・

 新進党の枠組みを活用しましょう!

 別段、排他的な意味でなく、各党の交渉窓口の要所要所に使えばいいと思うのです。

 あの日と同じ澄んだ瞳で。

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