宮崎信行の国会傍聴記

元日本経済新聞記者の政治ジャーナリスト宮崎信行が衆参両院と提出予定法案を網羅して書いています。業界内で圧倒的ナンバー1。

あべ俊子文部科学大臣「大学就学支援金改正法案」答弁し委員会付託も、前岸田政権・こども家庭庁「加速化プラン」が混乱の根源だったことが徐々に明らかに

2025年03月13日 18時13分46秒 | 第217通常会 2025年1月召集
[写真]こども家庭庁が入るビル、東京・「霞が関3丁目2番(文部科学省と同じ)」で、きょねん4月、宮崎信行撮影。

 予算の再修正が固まり、大学就学支援金法改正案をあべ俊子文部科学大臣が趣旨説明して、吊るしが下りました。ちなみに「吊るしが下りる」衆議院警務部が作成した見学用パンフレットにも明記されており、公文書で使われている言葉です。

【衆議院本会議 きょう令和7年2025年3月13日(木)】
 中央選挙管理会の委員に、城島光力さん、魚住裕一郎さんら、予備委員に元宿仁さん、豊原昭二さんらをあてる人事を決めました。
 次に、与野党が「登壇議案」だと申し合わせた「大学就学支援法改正案」(217閣法8号)があべ俊子文部科学大臣から趣旨説明されました。「重要広範議案」として珍しく文科の「給特法改正案」(217閣法9号)が指定されており、こちらは後日、総理もひな壇に座って審議されます。
 あべ大臣は「これまでの低所得世帯に加えて、多子世帯も対象にする」としました。野党議員は「こども未来戦略の加速化プラン」に盛り込まれていたと明かし、高額療養費の上限引き上げをめぐる混乱と同根だと指摘しました。大学生の兄弟姉妹は「子」なのかどうかも含めて所得控除にもからむ話になりそうです。

【参議院第一種常任委員会】
 文教科学委員会は、堂故茂委員長のもと、一番狭い「分館の2階の第22委員室」で開かれました。立憲は、改選の水岡俊一議員会長と斎藤嘉隆国対委員長が属しています。あべ大臣は答弁をそつなくこなしましたが、斎藤さんが「555日後に迫った愛知・名古屋アジア大会2026の運営について」質問した際には、事務秘書官が答弁中のあべ大臣にA4判1枚紙をあわてて差し出すシーンもありました。
 経済産業委員会は、武藤容治大臣が訪米帰りで所信的あいさつ。外交防衛委は開かれず。その他の委員会は大臣所信的あいさつに対する一般質疑がいっせいに開かれました。

【参議院予算委員会】
 「令和7年度予算案」は7日目で、中央公聴会。女性の立教大学教授の公述人からは「選択的夫婦別姓と労働経済の相関関係を示した統計による論文は、欧州でも見当たらないので、丁寧な議論を求めたい」との趣旨の後述がありました。日本総研の男性研究員からは「OTC医薬品に関して、私も薬剤師の資格があるが、日本では人口あたりの薬剤師が突出して多く、他の業務もしているため、単価を押し上げている」との説明がありました。3部では、元日本未来の党共同代表の飯田哲也さんも久しぶりに登場しました。

【衆議院予算委員会】
 予算の実施状況に関する件「高額療養費等」が開かれました。野田佳彦さんは、石破茂首相に対して、今後も当事者団体の声を聞いて、今秋の検討でも見送るべきだとしました。また重要広範議案の「年金法改正案」(未提出)を提出できないのは、福岡資麿大臣を更迭して首相も責任を負うべきだと迫ると、「与党に指示した」として与党内の調整を急がせる考えを強調しました。福岡さんとは「長い仲だ」としました。福岡さんは衆議院時代に派閥が一緒の時期があったようです。

【衆・議院運営委】
 10時半に理事会が始まり、年金法改正案の提出遅れを官房副長官が謝罪。委員会では、本会議の段取りの後、茶谷栄治・公正取引委員長候補の所信と質疑がなされました。

【衆・憲法審査会】
 今国会1回目の開催となりました。タイトルは「日本国憲法及び日本国憲法に密接に関する基本法制」とくに「選挙困難事態」。
 まず、在任7年5ヶ月となった余人をもってかえがたい橘幸信・衆議院法制局長から経緯の説明。この後のやりとりで、自民党の細野豪志さんは「原発災害当時、私は総理補佐官だったが、たしかにあのときに選挙をするのは困難だった」との意見が出ました。和田有一朗さんは「1995年1月の阪神・淡路大震災で、4月の選挙が特例法で6月になった」経験を持ち、出身の灘区から奥さんの地元・淡路島に近い神戸市垂水区にうつって再挑戦した県議選でも議席を得られなかった当時を振り返りました。

 和田さんは「私は地元は実は神戸でございまして、1・17阪神淡路の震災のときに被災地の真ん中で延期をされた統一地方選挙に出馬をした経験を持っています」と述べました。和田さんは「電気ガス水道は止まって道路は切れるし、鉄道は止まるし電車とこないし、何にもできない、駅立ちもできない。学校は避難所になっている、瓦礫の中で街頭もできない、ビラ配りもできない。こんな状況です」と述べました。そのうえで、現職の仲には、水を配ったり、パンを配ったり、弁当を配ったりした人もいたとしました。和田さんは「このとき、銭湯を経営している人もいました。落としてる人で。この人、無料で開放せずにお金を取ってお風呂開けたんです。落ちました。街の人なんて言ったと思いますか。この人ね、無料で開放してたらトップ当選だったのねって言われたんです。他の配った先生もパン配った先生も当選しました。これが現実です」と語りました。憲法とどう関係するかはあまり分かりませんが、2ヶ月延長特例法の経験者の発言が議論の厚みを増しました。

【衆・消費者問題特別委員会】
 伊東良孝大臣が所信的あいさつし、提出済みの「公益通報者保護法改正案」(217閣法32号)への意気込みを語りました。ちなみに「元彦法と呼ばれている」とし、斎藤元彦兵庫県知事(再選)のふるまいが立法事実だとする一部世論がありますが、そういうことではありません。

【官邸】
 デジタル田園都市甲子園の表彰式がありました。

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【岡田克也】あすの経済産業委でまさかのトップバッター訪米帰りの武藤容治大臣「関税」「エネ基」「さらなる高み」

2025年03月13日 08時11分48秒 | 岡田克也、旅の途中
 岡田克也さんが、あす2025年3月14日(金)の衆議院経済産業委員会の、武藤容治大臣の所信的あいさつに対する質疑で、まさかの野党トップバッターで登場することがわかりました。

 岡田さんが経済産業委員になるのは、連続当選。35年目で初めて。立憲民主党の大勝で、同党には現在12名の経産委員がいますが、意外にもトップバッターとして登場するはこびとなりました。

 第2次トランプ政権スタートにあたり、新・商務長官、通商代表との会談から帰国したばかりの武藤大臣に対して「2019年9月25日の日米首脳会談」と関税、自動車の追加関税と数量規制、既に発表された鉄鋼・アルミ関税について質問。

 閣議決定されたものの、とくに法案にはならない、新しい「エネルギー基本計画」について、AIの電力などで使用量が増える前提となったことについて中立的に質問。通産省時代は「エネ庁石油部」だったことと原発依存度が低い中部電力労組の管内であることからあまり積極派でなかったものの、郵政解散の敗北で、「51歳の元代表」になってしまったものの、2008年に後輩の福山哲郎参議院議員に誘われるかたちで「民主党地球温暖化本部長」をあしがかりに復権したことをきっかけに原発推進派に転向したことから、多角的な見地から質問すること考えられます。質問通告には「高みに向けた挑戦について」という若手議員からは見られない項目も加えました。

 岡田さんは城山三郎さんの「官僚たちの夏」が出版された翌年4月に入省。その一方で、父の岡田卓也さんが元通産省官房長を同年末に「ジャスコ」の取締役に迎えており、裏取引説がアンチにあります。卓也さんの義母が関係全国団体副会長をつとめた厚生省とあわせて通商産業省と2つの内定をとっていますが、東京大学法学部は自分の実力で入ったので、さほど不公平感は持つ世論はありません。そもそも本人の意思とは何ら関係ありません。自民党の田村重信元職員が、大店立地法(監督官庁は都道府県)で便宜を図った2つの著書に書いたことを、東京地裁・高裁が「デマだ」と認定して、高裁では田村さんに賠償金の支払いも命じています。このような経緯から、岡田さんは初当選後に、厚生委員会を希望しますが、これも本人の意思と全く関係なく入会した竹下派「経世会」の先輩・粟屋敏信筆頭理事から、「岡田君、新人の中で君が一番最初に質問できるように手配してあげたよ」とささやかれたことが、逆に、小沢一郎さん・羽田孜さんの庇護下とはいえ、1期目で自民党を離党する大胆な行動につながりました。

 通産省同期のうち、岡田秀一さんが一番出世しましたが、一年後輩の安達健祐事務次官の下で経済産業審議官をつとめる異例の人事となりつつも、事務次官はゼロでした。細野哲弘資源エネルギー庁長官と寺坂信昭原子力安全・保安院長の2人は東日本大震災東京電力福島第一原子力発電所事故の責任をとって、更迭・退職しました。

 岡田さんは昨日の同党常任幹事会で、3月20日(祝日)から23日まで、北京・南京・上海を訪れて「中国共産党との党間交流覚書」(昨年8月)にもとづく第1回(昨年8月を入れれば第2回)訪中団長として党費で訪問することが決定するなど、きょねん9月の幹事長退任後の半年も独自の存在感を発揮しています。

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