【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

安倍・石破腰砕け外遊「集団的自衛権の改正法案越年先送り」公明・統一選おそれ地位に連綿し本音お漏らし

2014年05月04日 22時34分27秒 | 第186通常国会(2014年1月)好循環実現国会

(この記事は2014-05-04 07:05:17に投稿した「安倍首相ポルトガル内政懇談会」の記事に、「石破幹事長ボストン発言」の内容を加えて仕立て直して再投稿しました)

[写真]はるかなる大西洋ロカ岬で、解放感にひたる安倍晋三さん、首相官邸ウェブサイトから。

 17年ぶりとなった選挙絶対無しイヤーの高支持率の自民党の安倍晋三首相(総裁)、石破茂幹事長がそれぞれの外遊先で「おもらし」をしました。 

 大型連休に大きく政局が動きました。

 外遊先での同行記者団へのサービスである「内政懇談会」でのかなり失言に近い発言。長年の日本政治とメディアにおけるありがちなハプニングが起きました。

  わが国内閣総理大臣として初めてポルトガルを訪問していた安倍晋三首相(自民党総裁)は2014年5月2日(金)、政治日程はなし。世界遺産や宗教建築などを安倍昭恵夫人や加藤勝信官房副長官らと観光。居合わせた欧米人から記念撮影を求められました。

 そして、はるかなる大西洋を眺めた総理は、「ずいぶんと遠くへ来た感じがする」。

 この後、同行記者団との内政懇に応じたようで、このもようは日本時刻の4日(日)早朝、報じられました。

 それによると、安保法制懇の報告書は12日の週に提出していただく」と語りました。このブログの姉妹版のブログメルマガの報道を追認した格好となりました。

 そのうえで、

 「今の段階では『いつまでに』という時期を明示することは控えたほうがよい。時期ありきではなく、与党で一致することが極めて重要であり、場合によっては時間を要することもある」、「検討の方向性について政府として考え方を示していくということになると思うが、いわば政策的方向性を示すということはない。『有識者懇談会から報告書が出ました。検討をお願いします』ということになる」と語りました。

 これは、閣議決定はせず、集団的自衛権の行使に関する議論そのものを、国会閉会期間(3か月間程度か?)の自民党と公明党の協議に丸投げしたい意向を示した発言。

 これにより、野党・自民党の「国家安全保障基本法案の骨子」に盛られた集団的自衛権の行使は、安倍晋三総裁の就任・政権交代後、憲法改正→憲法96条先行改正→閣議決定による現行憲法の解釈の見直し→安保法制懇報告書を自民党と公明党の協議に丸投げするーーとどんどん後退してきました。

 何より不思議なのは、この間の、参議院議席と内閣支持率は伸びているのに、なぜ、後退していくのか。

 まさか、海外旅行で、日本を離れて、海を眺めるうちに、解放的な気分になって、「いかに今のままの地位に長くいるか」についての本音を記者の前で話してしまったのでしょうか。だいたい、内政懇なんかやらなければいいんですよ。

 この後、自民党の石破茂幹事長がアメリカ・ボストンで、日本時間4日午前(3日)に発言。これは、内政懇ではなく、同行記者団の質問に答えたようです。

 「統一地方選で集団的自衛権が争点になるような政治日程にしてはいけない」。

 ということは、自衛隊法などの改正法案の提出は来年の連休明け以降になるという日程になります。そうなると、任期はもう1年しかないことになります。自民党則は民主党規約と違って、党首以外の役員にも任期を定めており、石破幹事長は9月に任期切れとなります。石破幹事長は来年4月の統一地方選を陣頭指揮し、全国を回ることで、来年9月の総裁選に向けた足腰固めをしたいものと考えられます。

 石破幹事長は、ワシントンでの講演を終えて、ボストンに立ち寄ったようです。上記発言を伝える記事は女性の記者名となっています。当選9回にして与党幹事長となった石破茂さんは、当選7回にして与党幹事長となった岡田克也さん(現在は8回生)に長年、ライバル心を持っています。ボストンは岡田さんは1年間滞在し、エズラ・ヴォ―ゲル教授や竹中平蔵教授と出会い、政治家になる決意を固めた場所です。岡田さんは与党時代、副総理としてスリランカを訪れたことがあります。現地では、某ホテル経営者かと思うような大看板を立てて、歓迎してもらったようです。ところが内政懇に応じず、仏歯寺では、高僧に自らの両腕を縛ってもらい、「消費税が上がるまで」と心の中でつぶやきました。このつぶやきを同行記者団が読み取り、記事にしています。

 またしても、「石破、岡田にやぶれし」という感じです。

 海江田さんが4月の訪米をあまり記事にしてもらえなかったうえ、与党の行状を最大野党が同盟国首脳に伝える「告げ口外交」と見出しを立てられて激怒していたようですが、結果オーライではないでしょうか。

 終盤国会(5月7日~6月22日)に向けて、海江田万里代表への忠誠心を高め、気を引き締めなければなりません。

 いずれにせよ、民主党実力者(日米同盟当事者経験者)による、「年末の日米防衛協力の指針(ガイドライン)改訂の前には、自衛隊法改正案は出せず、越年するので、次期衆院選の争点になるかもしれない」との読みが当たりそうな気がします。

 ただ長期的には避けられない問題。例えば公海上の米軍船の援護にしても、ハワイ沖と、ペルシャ湾では、日本の権益とアメリカの権益は違います。しっかりとていねいに、みんなで勉強していきましょう。 

 そして、もう一つ。与党がボールを投げてこない場合、野党は何もすることがない。与党のボールは、予算案と税制改正法案と国会同意人事案だけでいいのか。これについては第170臨時国会で、当時の民主党代表が、首相(自民党総裁)が景気対策のパッケージをテレビ入り記者会見で発表しておきながら、それを裏付ける補正予算(案)を年内に提出できないことを、突如申し出た党首会談で見破った事例が参考になるのかもしれません。