【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

65歳定年でも「高齢期の職員にしっかり働いていただくことが必要であると認識している」と異例の閣議決定、伊藤たかえ国民民主党副代表の質問主意書に対する答弁書

2021年05月25日 21時07分09秒 | その他
[写真]国民民主党の伊藤たかえ副代表(参議院議員)先月2021年4月、東京都港区「虎ノ門ヒルズ」で、宮崎信行撮影。

 60歳から65歳までの国家公務員は「しっかりと働いていただくことが必要であると認識している」ーー官僚の心のうちがにじみ出た閣議決定がされました。

 これは、国民民主党副代表の伊藤孝恵(伊藤たかえ)さん(参議院愛知県区)が提出した質問主意書への答弁書に書かれたもので、同種の答弁書では多少心が通った書きぶりで、キャリア・ノンキャリアの身分制ながらも年功序列を重んじる体育会系からの脱皮を図ろうという気風を感じます。

 この答弁書は、国民民主党の伊藤孝恵(伊藤たかえ)副代表が提出した質問主意書「204参質問69号」に対する答弁書で先週金曜日、令和3年5月21日付で閣議決定されました。

 伊藤さんは「官僚の65歳定年延長が、国会対応業務ができる若手・中堅職員の超過勤務を益々加速させるのではないかと考えるが、政府の見解如何 」と問いました。

 これに対して政府は「国家公務員については、若年層の長時間労働を是正するとともに、全ての職員がやりがいを持ってその能力を存分に発揮できるよう働き方改革を推進していくことが急務であり、そうした観点からも、高齢期の職員にしっかり働いていただくことが必要であると認識している」と答弁。そのうえで「政府としては、こうした認識の下、国家公務員の定年引上げ等を内容とする国家公務員法等の一部を改正する法律案を今国会に提出したところである」と続けました。

 現在、参議院には「国家公務員法改正案」(204閣法63号)が維新以外の賛成で、「地方公務員法改正案」(201閣法53号衆修正)が、全会一致で修正された送られてきており、残り3週間で、委員会での審議を迎えます。両案の今国会成立は確実な情勢。65歳引き上げプログラムの完成は10年後になります。

 以上です。

【5/25の国会のまとめ】渋滞し始めた参・内閣委は「障害者差別禁止法案」を審議し「国家公務員法改正案」は次回へ衆の「土地規制法案」の審議に軟弱な基盤

2021年05月25日 20時41分46秒 | 第204通常国会令和3年2021年
[写真]岸防衛相と中山泰秀副大臣、きのう、東京都千代田区大手町で、宮崎信行撮影。

 緊急事態宣言と東京五輪ばかり注目されますが、枝野幸男さんの文春新書「枝野ビジョン」も売れているようです。私はきのう読みました。

 95%前後の成立率が確実な「全人代国会」ですが、参議院内閣委員会が渋滞を始めました。

【参議院内閣委員会 きょう令和3年2021年5月25日(火)】

 「障害者差別禁止法改正案」(204閣法59号)が坂本哲志大臣から趣旨説明されました。このため「65歳定年の国家公務員法改正案」(204閣法63号)の審議は後回しとなりました。衆議院から送られてきた順はこの通りでした。また、両案とも短時間の審議で全会一致で衆議院を通過してきました。但し、衆議院内閣委員会であすも審議する「土地規制法案」について、自民党・公明党の間でも異論がくすぶっているようで、野党国対としては明確に反対でないけれども、与党内の混乱で審議未了廃案などになればいいなという程度の軟弱基盤は作れていることになります。

【衆議院議院運営委員会 同日】

 大島理森衆議院議長が高木毅議院運営委員長に対して、政治分野における男女共同参画について、IPU列国議会同盟がつくった検討項目リストを活用して日本の国会の問題点を洗い出すよう指示しました。

【衆議院議院運営委員会国立公文書館・憲政記念館建設小委員会 同日】

 小委員会が開かれました。民主主義のインフラ「国立公文書館」を、7年後をめどに、現在の憲政記念館の近くに合築するプランを練ります。憲政記念館や国会前庭と呼ばれる土地は衆議院が単独で所有しています。この場所に新しい憲政記念館・新しい国立公文書館ができると、国立国会図書館とも一体となった地域になります。アメリカ公文書館はアーキビストが積極的に情報を探しに行き、それを活用してジャーナリストが書いた著作は2万冊を超えるそうですから、半世紀回顧録を書き続けるキッシンジャーのように情報は資源だという認識が確立する、かなりいいきっかけとなりそうです。期待しています。

【衆議院本会議 同日】

 「自然災害義援金差押禁止恒久化と東日本大震災などでの5特措法を一本化する法律案」(204衆法18号)が全会一致で衆議院を通過し、参議院に送られました。

 「改正公選法」(204参法28号参先議=発議者関口昌一自民党参議院議員会長)は立憲民主党、維新、国民民主党が反対し、自民党、公明党、共産党が賛成多数となり可決され、成立しました。

 「改正海上交通安全法」(204閣法49号参先議)は全会一致で可決し成立しました。2か月以内の政令で定める日から海上保安庁が施行。

 「教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律案」(204衆法19号)が全会一致で可決し、参議院に送られました。萩生田光一大臣が提出を見送りながらも、超党派の議員立法で全会一致で可決。萩生田さんの政治センスが光ります。

 「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律案」(204閣法61号)が全会一致で可決し、参議院に送られました。環境省はまだ法案があります。

 今週はもう本会議はありません、次回は来週火曜日。

【衆議院決算行政監視委員会 同日】

 「平成30年度・令和元年度決算承認案」について財務大臣が趣旨説明(概要説明)をして、審議入りしました。会計検査院長がFMS、租特などを説明。今国会のうちに、全閣僚入り質疑がありそうです。

【参議院外交防衛委員会 同日】

 「コニハク」こと、立憲民主党の白真勲さん小西洋之さんが中山泰秀防衛副大臣の2分間遅刻とイスラエルとともにあるツイッターを追求し、維新の鈴木宗男さんが政府と立憲の両方に吠える今国会最も対立色の強い委員会となりました。

 きょうの審議は3階建てで、中山副大臣の発言とそれに対する質疑、議案審議入り、ワクチン集中接種に関する集中審議となりました。

 白さんは、参議院委員部に確認し、外交防衛委員会に政府側が遅刻した事例は過去に見当たらないとの答弁を引き出しました。小西さんは中山副大臣が防衛省全体の情報共有の責任だと発言したことをなじりました。鈴木宗男さんは、「当日は、松川るい防衛大臣政務官(自民党参議院議員)が、今どこどこを通過しましたと実況をして教えてくれたことを、あなたたちは理事だから知らないだろう」となぜかキレ、過去に、片山さつき委員長が理事懇に遅刻したほか、小西さんも質問当日に遅刻したと激しくなじりました。

 「日本セルビア租税、日本ジョージア租税、同投資条約の承認案」(204条約5、6、7号)「日本におけるOECDの特権条約の改定承認案」(204条約11号)が趣旨説明され、次回に対政府質疑がされることになりました。

 また、鈴木宗男さんは法相も要求し、副大臣が出てきましたが、どういういきさつか、衆議院法務委員会に出ないことも多かった、佐々木聖子・出入国在留管理庁長官(法務省国家一種キャリア官僚)が出てきました。鈴木さんはウィシュマさんがなくなった「報告書を出すのはいつなのか」を繰り返し問いましたが佐々木長官は逃げ切りました。「ビデオを出さない保安上の理由」の「保安」について「収容施設の映像の質やカメラの位置などが特定されるからだ」と田所嘉徳法務副大臣が答弁し、「あなた、官僚が書いたもものを読んでいるだろう」と迫り、衆議院議員としての未来は無いと切り捨てました。

【参議院文教科学委員会 同日】

 「著作権法改正案」(204閣法57号)が全会一致で可決すべきだと決まりました。これに先立つ質疑で、ALS患者であるれいわ新撰組の舩後靖彦さんが文字パネルを使って質問して介助者が代読するのですが「障害者にとっての著作権法の在り方」というようなやや大上段からの質問が多く、太田房江委員長(自民党)が「え、誰」と戸惑いながらも、萩生田大臣が引き取り、そつなく答弁しました。萩生田さんは2019年9月から大臣なので、この2年間、舩後さんの質疑に答弁する大臣はすべて萩生田さんだったんだろうと思います。

【参議院厚生労働委員会 同日】

 「後期高齢者2割負担の高齢者医療法や健康保険法などの改正案」(204閣法21号)の審議が続きました。成立は動かない公算ですが、採決に向けた世論の変化があるかもしれません。

【参議院環境委員会 同日】
 「地球温暖化対策推進法改正案」(204閣法47号)は、会派に属しない平山佐知子さんも含めた全会一致で可決すべきだと決まりました。2050年カーボンニュートラルに向けた税制改正事項も入っており、菅内閣9月発足時の「グリーン」「デジタル」が早々に規定化。旧民主党政権は福山哲郎さんが中心になってまとめた「地球温暖化対策基本法案」を満を持して提出し、衆議院で可決されましたが、鳩山由紀夫首相・小沢一郎幹事長ダブル辞任による混乱で、参議院で審議未了廃案となり、その後は審議できず、もともとあった温対法の改正で政策がプログラムされています。

【参議院農林水産委員会 同日】

 「農林水産業貯金・保険法改正案」(204閣法58号)が趣旨説明され、次回質疑。

●参議院経済産業委員会は定例日ですが開かれませんでした。「産業競争力強化法改正案」(204閣法23号)はあすの本会議での代表質問後に付託される見通し。

●参議院法務委員会は「改正少年法」の成立に前後して「入管難民法改正案」の衆議院での審議をせず廃案にすると与党が決めたため手持無沙汰となり今日は開かれませんでした。「LGBT差別禁止法案」(未提出)は内閣委と法務委のどちらで審議されるのでしょうか。

●参議院総務委員会は開かれず、65歳定年の法案を国家を先に審議入りさせる全体の日程だと思われます。

●参議院財政金融委員会も開かれませんでした。

【閣議】
【経済財政諮問会議】

 閣議は午前8時55分スタートと余裕のある朝。また、経済財政諮問会議で、経済財政運営と改革の基本方針いわゆる骨太の方針2021の骨子案が了承されましたが、安倍・菅政権前半に比べれば、小ぶりなものになりました。

【自民党役員連絡会】

 記者会見で、二階俊博幹事長が五輪開催について判断する時期が近づいているという趣旨の発言をしたようです。

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「感染症を機に進める新たな仕組みの構築」を全世代型と並ぶ社会保障改革の柱に「骨太の方針2021」

2021年05月25日 19時49分07秒 | 第208回通常国会 令和4年2022年1月
[写真]首相官邸裏のすいせん、きょねん5月下旬、宮崎信行撮影。

 政府はさきほど令和3年2021年5月25日(火)首相官邸で「経済財政諮問会議」を開き、「経済財政運営と改革の基本方針2021、いわゆる骨太の方針2021」の骨子案2ページを公表しました。

 このうち「第3章 感染症で顕在化した課題を克服する経済・財政一体改革」の中に「2.社会保障改革(1)感染症を機に進める新たな仕組みの構築(2)団塊の世代の後期高齢者入りを見据えた基盤強化・全世代型社会保障改革」という項目が入りました。

 安倍・菅政権は、「全世代型社会保障推進会議」を内閣官房に置き、厚労省は室長代理以下に留め置きました。報告書のうち、最後の事項「後期高齢者の自己負担1割から2割に引き上げる」が、きょうの参議院厚生労働委員会でも審議されまもなく法律として成立。この後の改革工程表として「感染症を機に進める新たな仕組みの構築」とのメニューが入り、今後何らかのネーミングがなされるかもしれません。

 それが何を意味するかは分かりませんが、世界で最も多い病床を減らす地域医療構想プログラムを進める法律が先週成立しましたが、感染症対策としての病床減らしはあまり考えられず、民間病院が1万を超え、政治力も強い構造を変更したいとの思惑があるように思われます。年金・介護保険などの抜本改革はなさそうです。

 「骨太の方針2021」は、来月決定されると思われます。

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アメリカが日本に渡航中止勧告も「米オリンピック選手団派遣とは関連しないと米から事前に連絡」と外相、緊急事態宣言は6月20日(日)まで延長が不可避

2021年05月25日 10時12分47秒 | 第204通常国会令和3年2021年
[写真]外務省と国会議事堂、きょねん2020年8月、宮崎信行撮影。

 茂木敏充外相は、アメリカが日本への渡航中止勧告を出したことについて「アメリカのオリンピック選手団の派遣には、関連しないと事前に連絡を受けている」と語りました。さきほど令和3年2021年5月25日(火)の参議院外交防衛委員会での、立憲民主党の白真勲さんへの答弁。

 外務省官房審議官は「日米政府は、コロナ対策については本件も含めて緊密にやり取りしている」とし事前に連絡を受けていたとしました。外相は、アメリカは「CDC」国立疾病研究所の判断を受けて「疾病の予防のために」レベル4にしたのであって、東京オリンピック・パラリンピックへの選手、役員、マスコミ関係者など「必要な場合の渡航まで禁止しているわけではない」と述べました。

 内外の諸情勢に大きな変化がありました。

 アメリカが、こちら時刻のきょう未明、レベル4「渡航中止勧告」にしました。数か月前から8割の国にその措置をしていました。日本の感染数は減少傾向ですが、国立研究所の分析結果だとして、発表されました。集団的自衛権で日本の存立危機をまもってくれませんでした。IOC本部がある米英メディアは淡々とした報道のようです。

 きのうの読売新聞に続き、NHKも、6月20日(日)までの緊急事態宣言延長が避けられない観測を報じました。日経によると、菅義偉首相(自民党総裁)は「今週末」に判断するとしましたので、今回もまた金曜日の判断となりそうです。

 アジアの感染状況は、人口比でインドがワースト1位、イランが2位、ネパールが3位、フィリピンが4位、日本が5位。インドネシアは人口比ではついに日本より改善しました。日本も落ちたものです。優等生のベトナムで英国変異株が出たほか、台湾では接種率1%未満のワクチンの奪い合いがおきているようです。いずれにせよ、日本はアジアワースト5位という体たらく。英紙によると、英国変異株は世界で49か国以上で発見されたようです。とはいえ、3分の2の国は水際で止めたという言い方もできそうで、菅内閣の失政であることは間違いありません。











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