【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

【選挙】「11月半ばまでほぼ同じような感染状況で選挙をやることになる」として枝野代表は早期解散にギアチェンジ「早く選挙をやってしっかりした体制をつくった方が感染抑止のためにもよいのではないか」

2021年05月31日 21時16分52秒 | 第49回衆院選(2021年10月 岸田続投 枝野辞任)
[写真]枝野代表と菅首相、きょう、宮崎信行撮影。

 きょねん1月からのコロナ禍で、任期満了は近いのに、解散機運がないという憲政史上まれな「なぎ」の政局となっていますが、野党・立憲民主党の枝野幸男代表は「11月半ばまで、緊急事態宣言が出ているか出ていないかにかかわらず、ほぼ同じような感染状況で選挙戦を戦うことになる」との認識を示しました。

 枝野さんは冒頭、「本来は今日までだった緊急事態宣言が延長された。総理の短期集中的にウイルスを抑え込むとの言葉とは別の結果になった。したがって、人災と言わざるを得ない」と厳しく批判しました。そして「国会の会期は6月16日までとなっているが、今回の宣言の解除が(早くて)6月20日。それより前に国会を閉じることは全く理解できない。会期を延長して、補正予算案を編成して審議すべきだ」と語りました。

 6月9日の党首討論後に内閣不信任案を出すかどうかを問う記者の質問には言葉を濁しました。不信任を処理した後に、菅内閣が長期延長して補正予算案を出したら、野党は信任できない内閣の予算を審議することになってしまうからです。枝野さんは第49回衆院選について「早く選挙をやって、しっかりした体制をつくった方が、感染抑止のためになる要素が強まっている」と語り、解散圧力を強めるかまえを示しました。

 また、共産党との選挙区調整について「一本化は終わった」との認識を示しました。2009年のように共産党の一部候補が自主的に降りることを内諾しているかもしれませんが、比例代表並立制ですので、立憲党内の調整を平野党本部選対委員長が預かる群馬1区以外は、もう調整しない考えを示しました。

 早期解散を求める姿勢に転じた背景には、世論調査で、過去8年間に3か月ほどしかない内閣支持率が自民党支持率を下回る現象が起きていることが上げられます。菅さんの不人気で自民支持者の足が引っ張られるため、党の過半数をしめる小選挙区選出衆議院議員が菅おろしに走ることを首相が警戒することも考えられます。また、「次の首相」を問う調査に菅さんと枝野さんが6%で並んだ結果(河野さん、小泉さん、石破元幹事長に続いて)も報道されました。
 
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【5/31国会まとめ】参議院自民党・森まさこ・有村治子・自見はなこ女性トリオが決算委で「高報酬で売り飛ばされた慰安婦の存在を河野談話は見直せ」

2021年05月31日 20時54分13秒 | 第204通常国会令和3年2021年
[写真]きょうの菅義偉首相・自民党総裁、自民党役員会で、令和3年2021年5月31日、宮崎信行。

 菅さんのきょうの写真ですが、最高権力者の漆黒の孤独を切り取った写真がとれてよかったです。自民党役員会に出席した菅さん。自民党は2012年以降「幹事長代行」が総理のお留守番となっていますが、総理と同じ「無派閥」という派閥で、先輩議員の野田聖子さんが側近ということもないり、キングメーカー二階幹事長と隙間風があるのは、誰の目にも明らか。この部屋に最後に入ってきた菅さんは、蛍光ピンクのマーカーを机に置いたまま、党本部が作成した資料に目を落としていました。これまでの総理総裁はカメラ目線だったり、幹事長らと談笑したりしていたと記憶しています。この8か月間を見ていると、菅さんはこれが自分流なのでしょう。首相秘書官が党本部から事前に取り寄せればいいのでしょうが、「採用省庁の上下関係ではなく、横関係のパワハラ」ができるような人材は今の霞が関にはいません。

【参議院決算委員会 きょう令和3年2021年5月31日(月)】

 「令和元年度一般会計予備費承認案その1」
 「令和元年度一般会計予備費承認案その2」
 「令和元年度特別会計予備費」

 の3案が、財務大臣から趣旨説明され、審議の後、採決されました。「その1」「その2」は共反対、自公立国維賛成多数、「特別会計」は全会一致で承認すべきだと決まりました。

 きょうの審議は「令和元年度決算承認案」の「準総括質疑」とあわせて行われました。来週は、首相ら全閣僚出席の総括質疑で、採決に向かいます。

 この委員会は若手の練習台のような位置づけをする執行部もありますが、今回の参議院自民党は、今井絵理子委員・自見はなこ委員ら同じ顔触れに何度も質問させています。

 自民党は女性3人が質疑。うち2人は閣僚経験者で森まさこさんは「少子化担当大臣と男女共同参画担当大臣は同一人物にすべきだ」と加藤官房長官に迫り、「首相が判断することだから」としか答えられない自民党のお約束のようなくさい芝居の審議となりましたが、少子化相がショートリリーフばかりだったという問題点は与野党とも共有すべきです。

 有村治子さんも「河野談話を見直すべきだ」とし「菅内閣は、従軍慰安婦だとか、いわゆる従軍慰安婦だとか言わないで、単に慰安婦と表記すべきだと閣議決定した。歓迎したい。当時の広告に高報酬をうたった慰安婦の募集広告があり、貧しさから娘を売り飛ばした父親もたくさんいる。朝日新聞は吉田清治なる者の小説を掲載するという蛮行を行った」とし、閣議決定でも大手新聞ではなく朝日新聞と表記すべきだと主張し、加藤官房長官も同調しました。

 自見はなこさんは「質問の機会をいただきありがとうございます」と話しましたが、あすの総理入り厚生労働委員会でも5分間質疑するようです。

【参議院厚生労働委員会 同日】

 「後期高齢者自己負担2割の高齢者医療法・健康保険法など改正案」(204閣法21号)の参考人質疑がありました。定例日外の開催に野党が賛同した理由は分かりません。あす午後1時から1時間、菅義偉首相を招いての質疑をします。上述の自民・自見さんや、共産党の倉林明子さんらが質問することになります。

【参議院行政監視委員会 同日】

 「国と地方の役割分担に関する小委員会」の西田実仁小委員長の報告があり、「前回の参議院改革協議会により、行監委のさらなる厚みのために設置した。国と地方自治体の通達に関する認識の違いや、(国会の議員立法による)計画策定の在り方について議論した」と報告。この後、行政の苦情に関する中間報告を参議院規則第73条1項にもとづき議長に対して求めることを決定しました。総務省行政評価局長と総務大臣が報告してそれに対して質疑することになります。

●あすの予定

 65歳定年延長の「国家公務員法改正案」(204閣法63号)「地方公務員法改正案」(201閣法53号)が同時間帯に、参議院内閣委員会と総務委員会で審議入りする見通しで、2年越しの初ランデブーになります。

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枝野幸男代表や山花郁夫さんら法律トリックでしてやったりの表情、3年後の2024年9月まで「憲法改正無し」と断言、衆議院修正で「公平公正でなく重大な欠陥があると立法者自ら認めた法律になった」

2021年05月31日 20時26分54秒 | 第204通常国会令和3年2021年
[写真]立憲民主党の枝野幸男代表、きょう2021年5月31日、衆議院第二議員会館、宮崎信行撮影。

 してやったりの表情でした。

 枝野幸男・立憲民主党代表は月例記者会見をきょう(令和3年2021年5月31日)開き、今月6日に衆議院憲法審査会で、同党の山花郁夫幹事や奥野総一郎さんらが提出した修正案が可決したことで、2024年9月までに国会が改憲を発議できないと明示しました。

 先に解説します。

 自民党が提出した「日本国憲法改正手続きのための国民投票法改正案」(196衆法42号)は、長くたなざらしになっていましたが、今月6日、突如立憲民主党から修正案が出て、共産以外の賛成多数で可決。参議院の憲法審査会で審議されています。

 改正案は長くなりますので、引用しませんが、公布後3か月後に施行する、とあります。

 そして、立憲の修正案は

 附則第4条として「国は、この法律の施行後三年を目途に、次に掲げる事項について検討を加え、必要な法制上の措置その他の措置を講ずるものとする」を原案に付け加えます。

 その第2項として「国民投票の公平及び公正を確保するための次に掲げる事項その他必要な事項」を検討することにして、賛成派・反対派のCMやネット広告の総量を規制することなどを見直すことにしています。

 つまり、「公平及び公正を確保する」ことを「3年をめどに見直す」のですから、向こう3年間は「公平及び公正でない法律だ」ということを自ら認めた珍法律となります。もちろん、悪法もまた法なり、という言葉もありますが。

 枝野さんはきょうの記者会見で、

 「政治がいろいろ言うことは参考資料になりますが、法律の解釈は客観的になされなければいけない。弁護士として客観的に申し上げると、この法律(案)は成立した場合、現行国民投票法に重大な欠陥がある、公平公正という観点から重大な欠陥があることを、法律自体、立法者自体が認めている法律だということは法解釈上明確です。つまり、重大な欠陥がある法律を根拠にすることは、欠陥のある国民投票になることは明確だ」

 とし、向こう3年間、国会が憲法改正を発議することはできない、と明言しました。

 改憲論議自体を3年間しないのか、との問いに枝野さんは、

 「法律の解釈と国会で議論をするかどうかは別次元の問題だが、公平公正な国民投票ができないのに発議をすることは、ナンセンスだ。公平公正でないという重大な欠陥を補うことに全力を傾けるのが常識的な判断だ」と述べました。

 ですから、次の総選挙後ないし3年後に、衆議院憲法審査会が第一にすべきことは、国民投票法の改正の検討。2017年当時の振り出しに戻るだけ。

 枝野代表をとりまく執行部のほとんどが2012年の3党修正で政治巧者・自民党に「景気条項」「政令委任」「給付つき税額控除の検討」などさんざん騙されて、ほとほとトラウマをかかえていますのでやり返してやったという思いが強いのでしょう。

 自民党内には、きょねんの福山幹事長の「通常国会中に何らかの結論を得る」との約束を重視した二階俊博幹事長・森山裕国対委員長に向かって新藤義孝さんや船田元さんらが反発。1か月近く経って、新藤さんや船田さんらが二階幹事長らに弓を引く動きは顕在化していません。そしてきょうのタイミングで枝野代表が「種明かし」しましたが、今会期中残り3回(会期末当日含む)となった参議院憲法審査会で自民党が採決しなければ、立憲民主党の術中にますますはまってしまいます。

 こういうのが選挙にどう影響するのかはまったく分かりませんが、枝野代表と、おそらく山花郁夫さんは法律を使ったトリックで、与野党を煙に巻くことに成功。支持者も含めて納得いくかたちで、今の任期を終えることになります。

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