渡辺恒雄あとつぎ宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

「こども庁設置法案」2022年提出の方向、自民党若手議員の提言を菅首相取り込むも、「虐待と教育格差」「幼・保」「国と警察と裁判所」に横串・縦串で混乱・骨抜き必死

2021年05月03日 15時38分52秒 | 第208回通常国会 令和4年2022年1月
[写真]鈴木貴子衆議院議員、おととし2019年、自民党大会会場で、宮崎信行撮影。

 「こども庁設置法案」を総選挙後の翌年となる、令和4年2022年に提出する方向性でのとりまとめを、菅首相・二階自民党幹事長が指示しました。

 自民党の若手・山田太郎参議院議員と自見はなこ参議院議員が首相への提言書をとりまとめた勉強会の独自ホームページを新設して、情報を発信しています。

 当ニュースサイト記事では、山田さんらの写真がなく、勉強会メンバーのうち主催者の近くに座っている、鈴木貴子さんの写真を使いました。

 勉強会のホームページでは、厚生労働省・文部科学省・内閣府・法務省・経済産業省に横串をさしたい、との意気込みを示しています。

 立憲民主党の枝野幸男代表は先月2日の定例会見で、「15年ほど前から、こども家庭省(子ども家庭省)を提案している」として、必要なら今国会で成立させろと挑発しました。

 しかし、首相に提出した提言書は、かなりまとまりのない内容。来月の経済財政運営の骨太の基本方針には、具体性なく「創設」だけ書き込まれることになるかもしれません。官僚による自民党族議員に対する骨抜きが活発化するのは確実。首相も二階幹事長に下駄を預けた格好とみられます。しかし、党内に置いて唯一の菅派である先輩議員・野田聖子幹事長代行が、若手の山田太郎・自見はな子参議院議員らに政策をとられたと不快感を示しており、具体的な法案が公約・提出になるかは不透明。

 提言書

 「新設する「こども庁」には子どもに関する課題(子どもの虐待、自殺、事故、不登校、いじめ、貧困、DV、非行、教育格差等)の網羅的・一元的把握と医療・保健・療育・福祉・教育・警察・司法等の各分野における子ども関連施策について、縦割りを克服し府省庁横断の一貫性を確保するための総合調整、政策立案、政策遂行の強い権限をもたせる」

 としています。「子どもの虐待・自殺・事故と貧困・教育格差」の情報を共有するために「医療・教育・警察・司法」の縦割り打破をめざす、と読めます。そもそも、医療、教育、警察、司法は所管官庁が違い、「違憲の提言書」です。

 霞が関の横串に続き、国と自治体の縦串について「国の施策のみならず都道府県、市区町村間での連携」するとしましたが、虐待・自殺・事故の情報は県の警察、いじめは市の教育委員会が情報を持っているとみられ、わざわざ「庁」をつくらない方が情報は共有できると考えるのが妥当でしょう。

 そして「認定こども園、幼稚園、保育園の設置形態の違いにかかわらず幼児教育、保育の質を担保、向上するための施策を徹底して行う」と書いており、まったくその通りですが、学校法人が経営する幼稚園と、社会福祉法人が経営する保育園は、文科省と厚労省が百年以上「代理戦争」をつづけており、2008年の小渕優子大臣リポートや、2012年の野田佳彦首相・岡田克也副総理らの「社会保障と税の一体改革」で改革した後も、「チルドレンファースト」とはとうてい言えません。

 省益と学校法人・社福法人の対立などの自民党政治の長年の祝阿を、ここ20年間の官邸主導政治の流れに乗って、縦割り排除の美名のもとに一気に押し流してしまう、稚拙な構想としか思えません。


[写真]野田聖子・自民党幹事長代行、おととし2019年2月、長野市で宮崎信行撮影。

 上述の通り派閥「きさらぎ会」が15人しかおらず、自民党総裁・幹事長室内の腹心も先輩の野田聖子幹事長代行しかいない菅首相。キングメーカー3人の1人である二階幹事長に下駄を預けた格好です。まずは来月の「経済財政運営の骨太の方針」にどのように書き込まれるかが、喫緊の焦点となります。

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菅首相(自民党総裁)は憲法9条の自衛隊明記を衆院選公約に「改憲4項目」感染症と緊急事態条項特出しせず、立憲代表は「9条」「自衛隊」に触れず「緊急事態条項を任せられない」と攻める

2021年05月03日 14時44分00秒 | 第204通常国会令和3年2021年
[画像]産経新聞、きょう2021年5月3日号。

 菅首相(自民党総裁)は、けさの産経新聞掲載のインタビューで「憲法9条に自衛隊を書き込む」憲法改正を第49回総選挙の公約に盛り込むことを明言しました。前回同様に同党の論点整理「改憲4項目」を掲げることになります。社会情勢の変化として「感染症対策」を4項目の一つ「緊急事態条項」に盛り込むかどうかは、明言せず。安倍前首相同様に、本人の強い意気込みはあまり感じられません。

 首相は産経新聞の「改憲4項目の一つである9条への自衛隊明記について。日本の安全保障に対する危機意識を踏まえ、明記は必要と考えるか」との問いに対して、次のように答えました。「もちろんです。かつてと全く違い、今では多くの国民の皆さんに自衛隊に対して理解を示してもらえるようになりました。災害時には自衛隊に救助活動や被災地の復興支援をお願いしています。一方で自衛隊は憲法に明記されていないこともあり、憲法学者ら、いまだに自衛隊は違憲だと主張する人もたくさんいる。やはり自衛隊の位置付けはしっかりすべきだと思います」。

 各種媒体の世論調査では、2014年に解釈改憲されたこともあってから、9条に自衛隊を付け加える改正には、賛成、反対、どちらともいえないが拮抗しており、賛成論が上回る調査も増えてきました。

 自民党の論点整理「改憲4項目」は自衛隊、緊急事態条項、教育の無償化、参議院の合区解消です。前回総選挙では4項目とも国会で議論するという公約でした。

 この4年間の変化を踏まえて、感染症法などの法制で「緊急事態宣言」が東京都などで発令中です。

 産経新聞のインタビューでは「新型コロナウイルスの感染拡大を受け、改憲4項目に盛り込んだ緊急事態対応に注目が集まっている」と話を振りました。

 首相は「例えば大地震の発生時に国民の命と安全安心を守るために国家、あるいは国民がどういう役割を果たすか。災害に伴う困難を乗り越えていくために極めて重く、大切な課題であることは認識しています。まずはそれぞれの政党が国会で議論することだと思います」としました。

 重ねて、「改憲4項目の緊急事態条項に「感染症」を明記する考えは」と問われると、首相は「新型コロナの感染拡大を受け、国民の皆さんが感染症にものすごく関心を持っているのは確かですよね。改憲4項目はあくまでたたき台みたいなものですから、それを基に国会の憲法審査会で真摯に具体的な議論を進めてもらうことが正しいと思います」と答えました。新型コロナ感染症対策で批判を浴びていることからあまり積極的でないようにも感じます。


[画像]同。

 立憲民主党の枝野幸男代表は憲法記念日にあたり、きょう付けで次のような談話を発表しました。

 談話全文は次の通り。

 「日本国憲法の施行から74年を迎えました。日本国民が長い年月をかけて育み定着させてきた「国民主権」「平和主義」「基本的人権の尊重」は、これまでの平和で豊かな日本の土台となってきました。しかし、一年におよぶ新型コロナウイルス感染症の蔓延拡大により、日本社会が根底から揺らいでいます。度々の休業、自粛要請、景気悪化により、閉店を余儀なくされた事業所、職を失い生活に困窮する人、学びを断念した学生、特に負担増となった女性の自死率が高まるなど、日本はこれまでに経験したことのない危機の中に置かれています。この危機的な状況を前に、政治は何をしてきたのか。感染拡大防止のため真に必要な権限は、『公共の福祉』にかなうものとして現行憲法下でも認められています。政府がここまで無策、不十分、的外れな対策しかできなかったのは、政府の権限が限定されているからでも、緊急事態条項が憲法に明記されていないからでもありません。政府が、国民の命と生活を真正面から背負うことに怯み、小手先の施策に終始してきたからです。日本に暮らす人々の命と生活を守るために政治があります。立憲民主党は、立憲主義と日本国憲法の基本理念を守り抜くこと、新型コロナウイルス感染症を、国民の皆さまと乗り切ること、そのために政治に課された役割をしっかりと果たしていくことを、改めてお約束します」

 このように、枝野さんは平和主義には言及しながら、「9条」「自衛隊」という言葉は使いませんでした。

 2014年7月1日の解釈改憲の閣議決定と枝野さんが幹事長に昇格した後の2015年9月の平和安全法制で、憲法が上書きされたので、実態としても変質した面もあります。枝野さんは、政府のコロナ失策をみて、緊急事態条項への反発を支持に取り込みたい思惑が見て取れます。

 これらを俯瞰すると、中山太郎・衆議院憲法調査会長の主張との裏腹に、政局と全く関係ない憲法論議はそもそもできないのかもしれません。

 アメリカは大量のワクチンが余っており、他国に分けるワクチン外交を始めます。平和安全法制と日米安全保障条約のスキームで、日本に早く分けてもらいたい。それが私のきょうの願いです。

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