ニュースサイト宮崎信行の国会傍聴記

元日本経済新聞記者の政治ジャーナリスト宮崎信行が衆参両院と提出予定法案を網羅して書いています。業界内で圧倒的ナンバー1。

財務省、平成28年度から30年度ないし32年度(2020年度)までの特例公債法案を国会に提出へ

2015年07月03日 05時57分39秒 | 第190回通常国会(2016年前半)

 財務省は、第190回以降の国会(平成27年秋、平成28年)に、平成28年度から30年度ないし平成32年度(2020年度)までの特例公債発行法案を提出する方針を決めました。

 2015年7月3日付日本経済新聞が報じました。

 財務省は2016年4月1日から3年間ないし5年間にわたり特例公債を発行できる法律を今秋に制定したい構え。

 仮に5年間となるとプライマリーバランス(PB)黒字化と東京オリンピック年となる、2020年度予算まで(財政法4条の特例である)赤字国債が発行できることになります。

 平成27年度予算では、平成24年特例公債法により「30・8兆円の特例公債」を含む、60・0兆円の公債発行が可能だと、一般会計予算総則第6条に盛り込まれています。これとは別に、一般会計予算総則第8条に「財務省証券と一時借入金」が20・0兆円可能となっています。財務省証券は、いわゆる「短期国債」であり、一時借入金は、地方交付税の前借り分として、銀行に入札させて借り入れている分です。

 新発債、借換債、短国、一時借入金をあわせた合計80・0兆円は、日本銀行(黒田東彦総裁)による「マネタリーベースの年80・0兆円拡大」の量的金融緩和政策とまったく一致。日銀は、すべての政府の新規の借金を、市中銀行を通して、日銀券で引き換えていることになります。いわば国債の貨幣化です。

 債券市場に、長国、短国を安定的に供給することを法制化することで、債券市場の変動性(ボラティリティ)を抑えたいねらいもあると考えられます。

 特例公債法案は、民主党第1次与党期の衆参ねじれ後である「第45期衆議院第21・22期参議院」時代に、野党・自民党による「吊るし」で政局の最大の的になりました。

 平成23年度の特例公債法案は、野党・自民党の後藤田正純・衆議院財務金融委員会筆頭理事による引き延ばしで、2011年2月23日(水)になってようやく審議入り。ところが3月11日に東日本大震災が発生。4月29日に玄葉光一郎民主党政調会長と石破茂自民党政調会長らにより「3党合意」ができ、「民主党マニフェスト4kの政策効果の検証」の3党実務者協議と引き換えに成立。(関連エントリー)。

 平成24年度の特例公債法案は徹底的な吊るしにあい、11月14日の野田首相の近いうち解散と引き換えに成立。その際、平成25年度~27年度の新規立法を不要とする特例措置が盛り込まれました。

 財務省は法案に財政健全化の長期目標を書き込みたい考えもあると思われます。

 政府・自治体の長期国債の総額のGDP比を指標にして、中長期的なキャップ(上限)をかけた場合、借入金や短国の増大、インフレタックス(物価上昇により債務残高を小さく見せかけること)、通貨安(ドルベースでの債務残高を小さくすること)などの抜け道が拡大しかねません。インフレ、超円安、最悪の場合は「戦争」など、国民生活への負担は甚大になるリスクあり。そのため、公共事業費、社会保障費などの政策経費の歳出のスリム化目標にとどまる、のがベストでしょう。

 第190回国会は平成27年秋に開かれるとは限らず、平成28年1月召集の通常国会に法案の審議がずれ込む可能性もありえます。

以上


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