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私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

北大公開講座「2030年へのシナリオ」 3

2013-07-27 22:13:28 | 大学公開講座
 北大の公開講座も5回目、6回目になり、少しは私にも関心のあるテーマが講義題となってきた。北海道の交通の問題、我が国の医療の問題、いずれも興味深く拝聴することができた講義だった。 

 5回目、6回目の日程・内容・講師は次のとおりだった。
 ◇第5回 7月18日(木) 「北海道の都市と交通の将来展望」
                 工学研究院准教授 岸  邦宏 氏
 ◇第6回 7月22日(月) 「わが国の医療と薬の近未来像とは」
               薬学研究院教授 武田 宏司 氏

          
          ※ 第5回講座「北海道の都市と交通の将来展望」の講義の様子です。

 第5回の「北海道の都市と交通の将来展望」の岸氏は①札幌駅前通地下歩行空間開通の意味、②北海道新幹線の札幌延伸について、③都市間交通ネットワークと地方の交通、と主として3点について論じた。

 地下歩行空間が開通したことによって予想されていたとおり、札幌駅→大通駅間の地下鉄利用者は減少したが、都心が一体化し、都心としての魅力が向上することによって全体として利用者増に繋がることが期待される。そうした視点からの事後評価が重要な視点であるとした。

 北海道新幹線の札幌延伸については、開通時に人口減が進み、利用者減に繋がるのではないかというマイナス面については触れられることがなかった。そのことよりは、札幌延伸によって、札幌駅がますます北海道の都市間交通の拠点となることから、札幌駅周辺の再整備の必要性が強調された。

 都市間交通のネットワークの問題にしても、地方の急激な人口減という問題があるのだが、講師の岸氏は交通計画の専門家らしく交通網の整備を制限するのではなく、交通網(高速道)をさらに整備することによって、地方の産品の物流の迅速性、観光圏の拡大、救急医療への貢献などプラス面に目を向けた論評が目立った。

 最後に厚真町を舞台にした自治体内の公共交通の在り方について、氏の研究室が取り組んだ実践が紹介された。コミニュティカフェと地域公共交通を融合した取り組みで、面白い試みとは思ったが、聴いていた私には決定打となるような試みとは思えなかった。


 第6回の「わが国の医療と薬の近未来像とは」では、医療の現状と近未来の姿について興味深いお話を聴くことができた。

 氏はたくさんの資料を提示して日本の医療の実状を説明した。その中で印象的だったのは、日本と欧米各国との医療体制の違いだった。日本の医療はこれまで「何時でも、何処でも、誰でも診療を受けられる体制」を目ざしてきた。これは1960年代に欧米各国が取ってきた制度であり、日本はそれを追いかけていたが、その間、欧米など先進国が目ざしていたのは、①充実した教育体制と厳格な専門医認定制度、②病院機能の集中化・集約化、③病院と診療所の密接な連携体制、④チーム医療の推進と業務範囲の職種による制限の見直し、⑤医療安全と患者権利尊重のためのシステム、などの医療体制を構築することだったという。

 日本の医療体制は今、欧米各国のような医療体制に移行すべく、各種の改革を行っているという。その改革の一つとして「初期臨床研修制度」が導入されたことで、地方の病院の医師不足が深刻化したり、平均在院日数が減少したりするなどの変化が起こってきているという。
 そして今後であるが、お話を伺うと日本の医療は確実に欧米先進国のような医療体制に移行しつつあるということが実感できた。このことが、私たち診療を受ける側にしてみるとけっして良いことばかりとは云えない部分もある。そこのところを注意していかねばならないと思う。

 さらに伺っていて、国の医療体制というものが政治と密接に結びついていることを改めて教えられた思いである。国の医療体制を巡る制度改革の論議にも関心を持つことの大切さを教えられた思いである。