田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

近代美術館講座 5 予譲(よじょう)の絵馬

2018-11-09 20:58:37 | 講演・講義・フォーラム等

 予譲(よじょう)と聞いても大方の方は「何それ?」という思いではないだろうか?私もご多分に漏れない一人だった。その予譲の絵馬が国内の寺社の多くに祭られているという。予譲の絵馬を研究する方からお話をうかがった。

                

            ※ 東京・浅草寺に奉られている入江北嶺作の「予譲刺衣図」です。

 11月8日(木)午前、道立近代美術館主催の「美術講座プレミアム」の第5回講座(最終回)が開講された。この日は北大文学研究科の鈴木幸人准教授「予譲(よじょう)の絵馬の絵画論」と題して講義された。

 

 「予譲」とは、中国の春秋時代の晋の国の刺客だそうだ。その予譲は自らが仕えた主君・智伯が権力闘争に敗れて、政敵の趙襄子(ちょうじょうし)から辱めを受けたことに対して、主君の屈辱を晴らすために命がけで趙襄子を追うのだが、命を奪うことはできずに反対に危機に陥った。そこで予譲は趙襄子からもらい受けていた上着を剣で斬りつけることで仇討を全うし、その後自殺したという。

 この「予譲の仇討」は、「忠臣蔵」の仇討と通ずるところがあり、日本においても注目された人物のようだ。

            

 その予譲が上着を剣で斬りつけている図「予譲刺衣図」の大絵馬が東京・浅草寺に奉られているそうだ。作者はなんと箱館生まれの入江北嶺というそうだ。

             

            ※ 絵馬の中には、こうした木彫のものもあったそうです。

 先述したように、この「予譲の仇討」は国内でも注目され、各地の寺社に多くの絵馬が掲げられたという。紹介されたものを羅列すると…、

◇滋賀 三井寺「予譲刺衣図」

◇埼玉 箭弓稲荷神社「予譲の仇討」

◇山口 下関住吉神社「予譲刺衣図」

◇大阪 道明寺天満宮「予譲刺衣図」

◇東京 亀度天神御嵩神社「予譲刺衣図」

◇東京 堀ノ内妙法寺「予譲刺衣図」

◇東京 目黒蛸薬師堂「予譲刺衣図」

などなどである。

 その他にも紹介されたが、講師の鈴木氏はそれらの絵馬を一つ一つ訪ねて歩いたということだ。

          

           

 この「予譲」に関しては、絵馬ばかりでなく、近代絵画や絵手本、小説、落語、歌舞伎などでも取り上げられているそうだ。

 小説では山本周五郎が昭和33年に「よじょう」と題する小説を発表している。タイトルを「よじょう」としたのは、社会が予譲の説話を知らない社会となっていたことからひらがなのタイトルを採用したと言われているようだ。

 

 自分の勉強不足をさらすようであるが、日本においてその昔「予譲」がこれほど注目されていた人物だとは知らなかった。これは前述したことだが、主君の仇討という物語が「忠臣蔵」のストーリーと相通ずる点が日本人の琴線に触れたということなのかもしれない。