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私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

北大CATS公開講座③ 無形文化遺産を巡る

2018-11-22 14:45:37 | 大学公開講座

 講師の下休場教授にとって“旅”とは、「人間、家族、コミュニティ、社会がどのように環境に適応してきたかを知ること」だという。そのために下休場氏は無形文化遺産を巡ることでその目的に迫るという。

 

 11月15日(木)夜、第3回目の北大CATS公開講座が開講された。3回目は「無形文化遺産を巡る旅から」と題して高等研究センターの下休場千秋教授が講師を務められた。

 下休場氏は観光行動の発動要因として次の五つを挙げた。

 ① 緊張を解消したい(緊張解消)

 ② 楽しいことをしたい(娯楽追求)

 ③ 人間関係を深めたい(関係強化)

 ④ 知識を豊かにしたい(知識増進)

 ⑤ 自分自身を成長させたい(自己拡大)

 

 上記5項目の中から下休場氏は5の自己拡大のための“旅”に関心があるという。

 そして氏は旅における“旅育”の効用性を説いた。

 

 その“知育”に最適なのが「無形文化遺産を巡る」旅だと下休場氏は説いた。

 一口に無形文化遺産といっても数々あるが、下休場氏が例示として示してくれたのは地域に伝わる“祭り”についてだった。

 例示として、大阪府の科長神社、岩手県の黒森神社を紹介していただいた。そもそも日本の神社や、そこに伝わる“祭り”には土地ないし施設を厄災から守護するということが永年にわたって伝えられてきたということがある。よく「八百万の神」というような言い方もされる。

               

           ※ 写真は本文とは直接の関係はありません。日本の祭りの一風景として見てください。

 そうしたことが永年にわたり培われ、人々の中で信じられ伝えられてきた背景などについて下休場氏は縷々説明されたが、残念ながら私の理解の範疇を超えた。だからこと私に関しては、神社や“祭り”を観ることで何かを学ぶという“旅育”の対象としては不適格者なのかもしれない。しかし、下休場氏が神社や“祭り”に関わる地域の伝統が永く伝えられていることを「集合的記憶の伝承」と称したことは理解できるような気がした。

                

         ※ 写真は本文とは直接の関係はありません。カメルーンの祭りの一風景として見てください。

 下休場氏はさらに、氏の研究フィールドの一つであるアフリカのカメルーンの儀礼祭祀と民族芸術品の保存の現況について説明してくれた。民族芸術品については、有形文化財に分類されるのでここでは割愛するが、カメルーンにおける儀礼祭祀も民族の中に永く伝えられていることを伝承しているという側面についての説明があった。(集合的記憶の伝承)

 

 最後に下休場氏は無形文化遺産を巡る旅には、地域住民と旅行者の双方が、無形文化遺産の価値を理解し、集合的記憶を伝承、創造することが“知育”の機会となり、そこから新たな観光創造が可能となる。とまとめられた。

 下休場教授のお話を伺いながら、私は数年前に沖縄の先島諸島(与那国島、波照間島、西表島、等々)を訪れていたときのことを思い出していた。特に波照間島の民宿に宿泊した時だった。民宿の壁には地域の祭祀のカレンダーが張られてあったのだ。それを見ると、月間の中でかなりの回数の祭祀が行われていることが見て取れた。少なくとも私の周りでは神々への信仰とか、お祈りなどという慣習が希薄となってきているが、沖縄の先島諸島にはまだまだ色濃く残っていることを感じた一瞬だった。

 今回の講義を通して、“旅”を新たな目で見ることの大切さを教わった思いである。