久しくレポートを失念していた。講師は外国人の流入増加によって犯罪が増えると考えるのは被害妄想ではないか、という。日本の社会の中に外国人労働者が定着できるようなシステムを構築できれば犯罪リスクは減少させられる、というが…。
しばらくこの講座のレポを怠っていた。すでにこの講座は8月22日に第4回目の講座を終え、講座全体が終了している。慌てて、3回目、4回目の講座をレポしようと思う。
北大法学研究科附属高等法政教育研究センターの公開講座「外国人の流入と日本社会の変容」第3回講座は8月8日(木)夜に開講された。第3回目は北大大学院法学研究科の准教授佐藤陽子氏が「外国人犯罪:その現状と課題」と題して講義された。
※ 講義を担当された佐藤陽子准教授です。
佐藤氏はまず、日本国内における犯罪発生数について概観した。それによると、我が国では平成に入り窃盗事件を中心として犯罪発生件数が増加したが、平成15年を境にして近年は激減の状況を示している。そして殺人や強盗、窃盗などの発生率を諸外国と比較すると、我が国は圧倒的にその発生率が低いことを示している。我が国が世界的に見て“安全な国”という風評を裏付けている数値を確認することができた。
※ 我が国における犯罪検挙数の推移を表したグラフです。平成15年がピークになっていますね。
そうした中で、在留外国人の犯罪数の推移を見てみると、やはりこちらも平成15年を境にして減少傾向にある。このことは、在留外国人が年々増加の一途を辿っていることを考えると、外国人の流入によって犯罪が増える、という言説は当を得ていないということができる。ただ、気になる数字がないわけではない。それは、窃盗など数値は減少傾向であるが、傷害・暴行などの検挙件数が伸びていることだ。これは、在留外国人が貧困などの問題を抱えているケースが多いのではないかと佐藤氏は分析した。
※ 外国人による検挙件数、人員の推移を表したグラフです。
ここで講義は、諸外国のケースへ移行した。ここで佐藤氏はオーストリアにおける諸外国からの労働者の犯罪の実態について調査した結果を述べられた。現地語(ドイツ語?)でのデータのため、私にはイマイチそれを解読することができなかったが、結論としては「若い・男性の多い移民労働者は、必然的に犯罪を犯しやすい層になるが、犯罪を犯す割合自体はオーストリア人の若い・男性と変わらない」という結論だった。
このことから、佐藤氏は表題の命題に対して、次のように結論付けた。
①若い男性の労働力を受け入れる以上は犯罪の増加は一定程度見込まれる。
②しかし、外国人労働者が社会に定着できれば、犯罪リスクは減少させられる。
③再犯防止のためのシステムがあれば、より犯罪の増加は防げる。
④最初から犯罪行為を行うつもりの者を見極め、受け入れないシステムの構築も必要。
とした。
私たちは外国人労働者というと、それを受け入れた経験が乏しいためにどうしても警戒心が先に立つ。しかし、我が国の世界に類を見ない犯罪発生率の低い“安全な国”で説渇することになる外国人を、上手に日本のコミュニティーの中に“包摂”することができれば、それほど心配することではない、と佐藤氏は言われたように感じた。いずれにしても、これからの日本は変わらざるを得ない未来が待っているともいえる。そうした中で、私たち自身がどう変わっていかねばならないのか、それが問われているようにも思う。
※ いつもそうであるが、こうした講義のルポの場合、講師が意図されたことと私の解釈に齟齬が生じている場合が考えられる。いずれも私自身が講義を拝聴して解釈し、判断したことであることをお断りしておきます。