時は1982年。他社に比べて遅れているといわれていたトヨタ車のFF化だが、満を持して、トヨタ初のエンジン横置きFF車が発表された。その名は、ビスタ。このクルマを売るために、「トヨタビスタ店」を整備したほどなのだから、当時のトヨタの意気込みがうかがい知れますネ。
イメージキャラクターは、若き日の多岐川裕美嬢と、「マツケン」こと松平健氏である。
このクルマのカタログも、5ドア車が中心に作られている。やや背が低いのが惜しいが、全体のスタイルは伸びやかでイイ感じ。当時ドアミラーが正式に認可されていなかったため、フェンダーミラーがバランスを崩しているが・・・
兄弟車のカムリとほぼ同じスタイルの、4ドアセダンも、もちろんラインナップされていた。
私はこのクルマに乗ったことはないが、当時の雑誌・評論等によると、その室内は、国産車としては異例なほど、ドカンと広かったらしい。
そして、なぜか当時のトヨタが大好きだったデジタルメーター。
アナログメーター仕様は、このように落ち着いた意匠。
このクルマならではの装備として、「バリアブルスピードウォーニング」なるものがある。任意の速度にセットすると、その速度に達したときにチャイムが鳴るというものである。そういえば、かつての国産車は、時速が100km/hに達すると、キンコンとチャイムが鳴ったものだった。いつからその装備が消えたのかは忘れてしまったが・・・
さらに、「2ステップフューエルメーター」というのが面白いというか、なんというか。燃料残量警告灯が付いているので、それで充分だと思うのだが・・・当時はガス欠ギリギリまで給油を引っ張るドライバーが多かったのかもしれない。
搭載エンジンは、2000ccと1800ccの「レーザー」エンジン。
5ドアならではのスペースユーティリティーを謳うカタログ。リヤシートはダブルフォールディング式に倒すことが出来る。
「ボデーカラー」も8色と豊富に揃っていた。
トヨタというメーカーは、プリウスに代表されるように、時々チャレンジングなコンセプトのクルマを発表する。このビスタも、当時としては、相当に理想主義的な思想で作られたクルマのように思える。だが、ビスタというクルマは、カローラやクラウン程の認知度を得るには至らず、つい最近「トヨタビスタ店」も消滅してしまった。今後もトヨタには、カローラやクラウン・プレミオ・ヴォクシー&ノアを売って得た利潤で、「売れないかもしれないが攻めたコンセプト」のクルマをリリ-スしてほしいものだ。合掌。