もう25年以上も前のこと。今と違って、どちらかといえば真面目な少年だった私は、割と成績が良かったこともあってか、当時の担任から「お前、学級代表をやってくれないか」と要請されて、とても悩んだ経験がある。「自分は自分のことだけで精一杯だし、大体自分はそんな器じゃないし・・・」などと、いろいろ理由を考えて、結局その要請をなんとか断った。しかし、断ったことが割といつまでも尾を引いて、自分の心の中に影を落としていた。
この曲と出会ったのは、そんな出来事があってから1年くらい経ってからのことだった。当時は、どちらかといえば責任感の強い方だった中学生の私は、まず、この曲の歌詞に腰を抜かした。「♪おしつけられたら逃げてやれ 気にする程の奴じゃない」とあっさりと言い切ってしまう拓郎に、爽快感を感じた。そして、非常に気分が軽くなった。逃げるが勝ちとは、まったく卑怯者なのだが、それを肯定するスタンスの歌はそれまで聴いたことがなかったし、とても新鮮に私の心に響いた。そして、拓郎に救われたような思いがした。
中高年のリストラ・フリーターの増加・若年者の晩婚化・・・なんだか昔と違って、安定感のない社会になってしまった今日この頃。
「♪年功序列は古いなどと かんばんだけの知識人よ」
1974年に発表された、吉田拓郎のこの「知識」という曲は、今なお、時代を撃っているような気がするのである。