雪の五輪のラーメンで満腹した後。我々取材班3名は、プジョーのお店に向かった。
お目当ては、この「2008」である。試乗させていただいたグレードは「Premium」(5ETG:税込車両本体価格246万円)だった。
全長×全幅×全高は4160mm×1740mm×1550mm。その大きさは、「ルノー・キャプチャー」とかなり近い。
最低地上高は150mmと控え目なので、その辺はやはり「コスメティックSUV」といえましょう。
全体のスタイル自体も、キャプチャーと較べると、やや控えめというかトラディショナルな趣きである。
だがしかし、詳細を見ていくと、このキックアップしたルーフの形状など、なかなか細かいところにもデザインの手が入っている。
小径のステアリングの上から、俯瞰する感じのメーターパネル。
208との共有部品が多いのは、キャプチャー&ルーテシアの関係と同様である。
シートは大き目の造りで、往年のフランス車のような「柔らかく沈み込んで体を包み込むタイプ」ではなく、「しっかりとした座面とサイドサポートで体を支えるタイプ」だった。
で、走らせると、これがなかなかスポーティーなのだ。
ドイツ語を話すフランス産まれの猫のように、ステアリングの効きは確実である。
試乗中、セールスマン氏に突然「そこの交差点は7時の角度で曲がってください!」と言われ、「ええっ?」と私はとっさに反応できず、ステアリングをやや切り遅れてしまった。
しかしステアリングを切り足すと、この2008はそれをリカバーするかのように、苦も無くそこをトレースしてくれた。
ETGと呼ばれるトランスミッションは、流行のダブルクラッチではなく、シングルクラッチの2ペダルMTである。
さすがにVWのDSGのような、電光石火のシフトワークをこなすワケではない。特に自動シフトアップ時には、ギアとギアが繋がる間に、若干のタイムラグというか空走感を感じる。
とはいえ、パドルシフトを使っての手動シフトダウン時には、きっちりと「中ぶかし」を入れてくれるし、そのようにして走ると3ペダルMTに近い感じのダイレクト感が、なかなか愉しい。
また、万一壊れた時のことを考えると、ダブルクラッチよりもシングルクラッチの方が、費用面では有利かもしれない。
1.2リッター3気筒エンジンは、ノンターボゆえ、82馬力の出力に過ぎない。なので、おそらくはパワー不足なのではないかと、私は先入観を抱いていた。
だがしかし。大人4名が乗っていたにも関わらず、加速にさほど痛痒は感じなかった。むしろ、エンジンを回してパワーを使い切って走る感じが、まさしくフレンチブルーミーティングなのだ。1140kgと、軽い車重が、功を奏しているのだろう。
この3気筒エンジン。アイドリングはフツーに静かで、妙な振動も無い。まあ、回すとうるさいが、フィールは気持ちいい。JC08モード燃費も18.5km/Lと、まずまずの数値。実は、なかなかいいエンジンかもしれない。
天井には、ナスカの地上絵のような、幾何学模様が描かれている。
ここにはLEDライトが埋め込まれており、ナイトドライブではこれが光るらしい。
この辺の遊びゴコロというか演出にも、なにかワクワクさせられる。
リヤシートバックはシングルフォールディングだが、倒すとフラットになる。
開口部は掃き出しで、フロアレールもあり、ステーションワゴン顔負けのユーティリティ。
そして、スペアタイヤは、もちろん標準装着!二重丸ですネ。
2008。実に運転して愉しいクルマだった。
その立ち位置としては、クロスオーバーというよりは、かつての307ブレークに近いような印象を受けた。
ルノー・キャプチャーとのカタログ比較では、エンジンスペックはかなり水を開けられており、全体の印象もやや地味な、プジョー2008。
だがしかし。クルマは、乗ってみないと分からない。
ああ、キャプチャーにも早く試乗して、どちらがイイか悩んでみたいものだ。