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上向きの比喩を見つけよ

2009年08月01日 | 読書
 『1分で大切なことを伝える技術』(斎藤孝著 PHP新書) 

 久々の齋藤孝本である。
 本屋では少し立ち読みをするが、食傷気味というところもあって、しばらく読んでいなかったと思う。今回は「1分」に惹かれて思わず購入した。

 内容に入る前に、まず「まえがき」の冒頭の一文に立ち止まる。

 言葉は、チャンスだ。
 
 いかにも著者らしく断言的で歯切れのいい文章である。
 この比喩はなかなか考えるに値する。
 その中身というよりも、こうした修辞の仕方について、こんなふうに考えた。
 
 比喩は、心の向きだ。


 つまり「言葉は、ピンチだ。」と書いて論を進めることもあるだろうし、「言葉は、案山子だ。」と書いてみてもよい。その比喩に従って論を進めていくことは可能だろう。
 著者ゆえに、その比喩は快活に響く。だから次のことがその文章からイメージされる。

 言葉は、チャンスになる。
 言葉の使い方によってチャンスが訪れる。
 言葉によってチャンスをつかむことができる。
 言葉の使い方そのものが、チャンスのつかみ方なのだ。

 そういう強さを感じさせる見事な比喩だ。

 では、「言葉は案山子だ」はどうだろう。

 言葉は、案山子になることがある。言葉の使い方によって、そこにいるだけのモノになる。当初は多少の役割は果たすけれど、その存在は日々薄くなっていく。言葉はいつも同じだとあまり役に立たない…

 上向きの比喩を見つけよ。